きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2009.11.3 足柄峠より箱根・大涌谷を臨んで |
2009.11.6(金)
その2
○徳丸邦子氏詩集 『リンゴをかじったあとで』 |
2009.10.30 川崎市麻生区 てらいんく刊 1400円+税 |
<目次>
五月 4 妹 6 十一歳 8
ひろしま 11 過ぎ去りし日々 14 朝・イメージ 16
つもり 20 いすとりゲーム 23 不毛の夏 26
生ぬるい雨の日に 28 九月 30 リンゴをかじったあとで 34
新生 36 交換日記 39 形 43
命の色 46 冷や奴 50 巨乳 52
クラーク・ゲーブル 54 月光の庭で 56 噛む 58
湯たんぽ 60 本日は晴天 62 絶版 66
地図のない旅 68 若葉寒む 70 あなたにバラを 74
夜明け 76 落剥 78 ティータイム 80
ドミノ倒し 82
あとがき 84
妹
妹は絵が上手(うま)かった
私の絵はいつも最低点だった
「妹さんは上手(うま)いのになあ」
と美術の教師が言った
不思議に悔しくはなかった
語学でも料理でも
私の後からきて
私を越えていった
不思議に悔しくはなかった
姉というより
母の気持で妹を見守っていた
終戦の翌年生まれたあんたを
子守り唄 唄って寝かせたのは
私なんだからね
13年ぶりの第5詩集のようです。紹介した作品は〈不思議に悔しくはなかった〉というフレーズが2度も出てきて、なぜかなと思いながら読み進めました。その理由は最終連で分かりました。〈母の気持で妹を見守っていた〉姉の矜持が大らかな気持ちにさせるのでしょう。〈妹〉の直接的な気持ちは書かれていませんが、姉妹という女性同士の感覚が分かるように感じた作品です。
○詩とエッセイ『さやえんどう』33号 |
2009.11.1
川崎市多摩区 詩の会 さやえんどう・堀口精一郎氏発行 500円 |
<目次>
詩
和田 文雄●わくら葉・4 惜春・5 隅田の花火・5
なべくらますみ●屋台村のキャシー・6 闖入者・7
崎岡 恵子●満月と猫・8 ぼけ猫・8 波・9
袋江 敏子●鍋と蓋・10 とかくこの世は・11
吉田 定一●月影・12 からだ・13
平野 春雄●乱舞する人工滝・20
大貫 裕司●冬の夜・22
徳丸 邦子●快楽・24 酒・25
前田嘉代子●向日葵・26
倉田 武彦●つぶやき・28 おっ月さん・29
田代 卓●出合川から蟹喰橋にかけて・30 照葉樹林・31
山中 正則●メメント・モリ・32 ポトス・33
北川理音子●霞んでゆく・34 それぞれ・35
長尾 雅樹●炸裂する金属的頭部・36 樹根・37
堀口楕一郎●コトバの病気・38 お花見・38 昔話・39 六月・39
詩論 書評
なべくらますみ●韓国詩紹介 許英子(ホ ヨンジャ)・14
和田 文雄●『宮沢賢治のヒドリ』とその外延−風狂の会、講演要旨(一)・16
堀口精一郎●〈詩集評〉身近な暮らしの物語詩は愛(いと)しい−井川博年詩集『幸福KOFUKU』・18
エッセイ
袋江 敏子●日々是好日 U・40
同人近況・41
詩集詩誌等受贈御礼・19 編集後記・43 同人住所録・43 表紙デザイン 吉田定一
とかくこの世は/袋江敏子
ジュニーは走る
ふんわりまるい尻尾を右に寄せ
左に寄せ
出口はないか
廊下を走る
のら猫はベランダで
家の中をうかがう
閉じられたまま開かない
扉がいつ開くのか
外に出たい猫と
家に入りたい猫と
ガラス越しに
鉢合わせ
とかくこの世は……
働き盛りの頃は
時間がなくてながめるだけだった
旅行雑誌
年金暮しの今は
先だつものがなくてながめるだけの
旅行雑誌
とかくこの世は……
〈猫〉と〈旅行雑誌〉を対比させた〈とかくこの世は……〉ママならぬ嘆きが伝わってきます。とりわけ〈旅行雑誌〉は、〈年金暮し〉になった私も実感しています。〈時間がなくてながめるだけだった〉方が良かったのか、時間はできたものの〈先だつものがなくてながめるだけの〉今が幸せなのか、判断は難しいところです。やはり人生は時間もお金もとはいかないようだなと考えてしまいました。
○文芸誌『礁』12号 |
2009.10.31
埼玉県富士見市 礁詩社・穂高夕子氏発行 非売品 |
<目次>
詩作品
空に 佐藤 尚 2 夕立ち 佐藤 尚 4 鳴き砂 濱 泰雄 6
石舞台 濱 泰雄 8 予感 穂高夕子 10 日傘 穂高夕子 13
俳句 写経の墨 川端 実 14
エッセイ
阿木翁助先生七回忌公演に 川端 実 15
平家物語の世界(7) −平家の興隆と滅亡の奇跡(三)− 川端 実 16
とうとうやってしまった政権交代 −衆議院総選挙に思うこと− 秦健一郎 22
私の読書日記 −まどさん− 穂高夕子 28
作品 マドンナの青(三) 中谷 周 32
編集後記 36
表紙デザイン 佐藤 尚
日傘/穂高夕子
失くしてしまった
日傘
その下で出会えた人も
その下で見ていた虹も
失くしてしまった
失くしてしまった
日傘
その下で吹かれた風も
その下で包まれた香りも
失くしてしまった
ひたすら 暑くて 遠い道
〈失くしてしまった〉ものは〈日傘〉ばかりではありません。〈その下で出会えた人も/その下で見ていた虹も〉、〈その下で吹かれた風も/その下で包まれた香りも/失くしてしまった〉のです。もっと大きなものも〈日傘〉は象徴しているようです。その大きさゆえに〈ひたすら 暑くて 遠い道〉が続くように思われるのです。傘ですから、自分を守ってくれるもの、あるいは守ってくれた人と捉えることもできそうです。失くして初めて、その存在の偉大さが判る、人生はその繰り返しなのかもしれません。