きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2009.11.3 足柄峠より箱根・大涌谷を臨んで |
2009.11.11(水)
夕方から日本ペンクラブの第10回「国際ペン東京大会2010」実行委員会が開かれました。今回は、会議運営会社が決定したことがまず報告され、その会社の常務・課長・社員の3名がオブザーバーとして参加しました。さらに招聘作家の名前も報告され、いよいよ軌道に乗り出したなという印象を受けました。その他、全体のスケジュール確認などを行いましたが、ここではちょっと違った角度からの報告をいたします。
まず第1は、会場の一つである早稲田大学ですが、詩朗読会は大隈小講堂に加えて庭園での青空朗読会もやろうということになりました。もちろんマイクなしですから、これは事前に相当声を鍛えておかなくてはなりません。さらに早稲田商店街でのストリート・リーディングもやる可能性が、突然出てきました。
会議の中で、早稲田大学と早稲田商店街が様々なジョイントをやっていることが報告されました。来年9月の会期中にも何かのイベントが計画されていたようですが、なんと商店街はそれを延期しようとしているのだそうです。日本ペンクラブがそんな大きな催しをやるんだったら、邪魔になるといけないから延期にしよう、というのがその理由だそうです。それを聞いた実行委員会のメンバーからはすかさず「それは違う!」という声が挙がりました。
私も声を挙げた一人ですが、私たちは商店街に遠慮してほしくないのです。むしろ、私たちは国際ペン大会をやる、商店街はイベントをやる、一緒になって早稲田の街を盛り上げていく、というのがあるべき姿じゃないのかなと思うのです。たしかに海外からはノーベル賞クラスの作家も来ますけど、私たちは象牙の塔にいるのではありません。街のお祭りと一緒になって国際大会をやる、こんな素晴らしい姿を頭に浮かべました。
その中で、早稲田商店街が予定通りイベントをやってくれるなら、私たちも街に繰り出そうじゃないか、という提案が出されました。例えば海外から来た人には食券を配って、昼食は商店街の好きなお店で食べてもらう、なんていいですよね。それを聞きながら私は、ついでに詩人は、外国人も日本人も街に出て、路上で朗読をする! というアイディアを出したのです。
突然、実行委員会で閃いたアイディアですし、商店街がイベントをやってくれるか、路上の朗読で道路使用許可が取れるか、まだまだ未知数です。が、ぜひ実現させたいと思います。詩人、作家が街に繰り出して、地元の人たちと交流して見聞を広める、街の人たちには詩人、作家のナマの姿を見てもらう、これが本来の文学の姿ではないかなとも思いました。
第2は、記念出版の話です。実行委員会では東京大会に合わせて、来年9月までに出版される会員の本の帯に、ロゴと「国際ペン東京大会2010」の文字を入れてもらおうということがすでに決定しています。その現物として阿刀田高会長の文庫本が回覧されました。
携帯で撮ったので見づらくてスミマセン。帯の右下に木をデザインしたロゴと「国際ペン東京大会2010」の文字が入っています。現在まで10冊ほどの本がこんな感じで入っているそうです。これから続々とロゴ入り本が書店に並びます。現在確定しているだけで100冊近くになっているようですから、来年9月までには200冊、300冊になるかもしれません。全国の書店で本を手に取ってくれた皆さまが「あれ?ペンクラブが何かやっているのかな?」と思ってくださるのが狙いです。ちなみに上の写真は、一足早くお帰りになる阿刀田さんを追いかけて、拙HPに載せてよいという許可を得てあります。
日本ペンクラブの会員なら、どなたでもご自分の著書にロゴを入れることができます。ただし、出版社との関係などがありますから、ご希望の方は会報をひっくり返して内容を把握し、事務局と連絡を取り合ってください。
そんなこんなで、なかなか実のある実行委員会でした。会も10回を数えましたから、お互いに気心も分かってきたのかもしれません。少し馴れ馴れしくなってきたところで、懇親会では浅田次郎さんに以前から疑問に思っていたことを聞いてみました。
「浅田さんのように本も売れて、忙しい人がなぜ、さらに忙しくなる、しかも無給のボランティアをやるんですか?」
「誰かがやらなくてはいけなくて、でも、他に誰もやってくれる人がいなきゃあ、オレがやるしかないじゃないですか!」
うーん、大物は懐が深い。
○森やすこ氏詩集『おお 大変』 |
2009.9.20 東京都千代田区 花神社刊 1000円+税 |
<目次>
野原へ 8 二人 12 きく子さん・ちえ子さん 14
おお 大変 16 モリさんの話 18 不在 22
最期 集め 26 あさ、あさ、明るいあさ 30
愛しい刃物 34 相談室 38 泣きながら 40
みじかい時間 42 豆が煮えたら 44 ジム・エレガンス 46
テントハウスの青 50 お菓子教室 54 榧の実2年 56
青空 60 桑の実 62 5月の風吹く 64
これから 68 しあわせ症候群 70 出かけます 74
友だち 78 ふたり 80 おとうと 84
ひと攫い 86 途中下車 88 指が曲がる 90
がおか 94
野原のこちら 98
おお 大変
おくさん
おじいちゃま 1月の帽子かぶっていますよ
おお そうだった
1月は するりと逃げていった
黒い 長いマントの裾さえつかめなかった
2月の階段を のぼり始めた
ネズミの心臓でなくて ゾウの心臓がほしい
きっと ゆったりした鼓動が 時を長くする
1か月が 35日あればいいと
つつましい望みをいった友がいた
商家に嫁いだひとだった
果樹園のひとり娘だった
50歳をすぎたら 急さかを転げるように
時がすぎてゆく 年長の友がいった
おお 大変
おじいちゃまに 2月の帽子とマスクとコートを着せなくては
おじいちゃまの誕生日がやってくる
まごとひまごが集まるこの日
ひまごとまごと まごまご まごまご
いっそ黒衣です
あしたは 3月 おじいちゃまの肌着 1枚また1枚
脱がせないと背中がかゆくなる
あさって 春がおわる
しあさって 1年がおわる
12年ぶり第2詩集のようです。「モリさんの話」、「青空」などもおもしろい詩ですが、ここではタイトルポエムを紹介してみました。〈おじいちゃま〉の衣替えに託しながら〈商家に嫁いだひと〉である〈友〉や〈年長の友〉、そして〈おくさん〉の日常をからませた視点がユニークだと思いました。〈ネズミの心臓でなくて ゾウの心臓がほしい〉、〈50歳をすぎたら 急さかを転げるように/時がすぎてゆく〉などのフレーズも良いと思います。それにしても、あっという間に〈1年がおわる〉。本当に〈大変〉なことですね。
○個人誌『榎の木の下で』3号 |
2009.11 埼玉県所沢市 北野丘氏発行 非売品 |
<目次>
Poem:南無狐狐 北野丘 …2
Poem:六甲面影ロープウェイ 三都城 丈 …5
Guest Essay:酉の市 横野正義 …8
Essay:桑実期 北野丘 …13
Thanks:寄贈詩書紹介 …18
Column:十能……ことば掬い …24
南無狐狐/北野丘 Kitano Kyu
夕べ荊原は淋しいかと
狐にたずねる
もみじの簪まだあるか
恋しければという道は
コンと鳴けば
無明の甘さ
切って落とされる
村はずれは南無妙
南無狐狐
狐狐媽媽
南無媽媽 南無妙
媽媽狐狐 南無妙 南無媽媽
南無南無媽媽 南無妙
媽媽南無 南無妙
荊原を過ぎれば
石ノ上
看板の剥がれたペンキノ下
一本の奥歯が燃える
なかにあかく燠火がもえて
ふりむく狐の
しろい柔毛の尻は
ぽっと放たれる燐は
跳びあがるもののうえに
ひろがる夕焼けの途方で
遊弋(ゆうよく)をはじめる
〈狐〉という文字をキツネと読ませ、コと読ませるおもしろい作品だと思います。ちなみに〈媽〉は音読みでモ、またはボと読み、訓読みは“はは”。意味は母で、中国語ではマーと読んだと思いますが、朝鮮語、ベトナム語にも同じ文字があるようです。作品はナムココ、ココマーマーと読んでよいと思いますけど、この繰り返しが視覚的にも音声上も良い効果を出しています。御伽噺のような作品で、朗読して楽しみました。
○個人詩紙『おい、おい』71号 |
2009.11.8 東京都武蔵野市 岩本勇氏発行 非売品 |
<目次>
ローマ字日記
ローマ字日記
kyou
supootuhouti no koukokurann miteite
sokonideteiru eroi onnnanoko mite
kahannsinn ga muzumuzusita
bokkisunnzenn made itta
sonnnakoto mettaniarukoto jyanai
koremo kanndou to yuunnjya naikanaa
kanndou
kannji ugokasareru koto
watasimo tamaniha yaritainaa
nikutoniku ga kuttukiatte
tada soredake
rikutunannte naannmo aryasinai
rikutu rikutu de nennjyuu tukareru
oresamatati
ninngennsamtati nanndayona
aa
tamaniha
rikutu nukide
zukozuko yaritai naa
今号は葉書1枚というシンプルさ。しかし内容はなかなかのものです。せめてカタカナに直そうかと思いましたが、やめました。公序良俗に反する(^^; 忍耐強い人は読んでみてください。後半に“リクツ リクツ デ ネンジュウ ツカレル/オレサマタチ/ニンゲンサマタチ ナンダヨナ”とあり、ここが一つの眼目でしょう。