きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.11.3 足柄峠より箱根・大涌谷を臨んで




2009.11.17(火)


 午後から御茶ノ水のクリスチャンセンターで開かれた第9回「自作詩を朗読する会」に行ってきました。昨年に引き続いて2回目の参加ですが、今回はなんと私も朗読してしまいました。私自身の作品ではなく、予定していた人が欠席になったので、その人の作品を読んでくれ、というものでしたけど、良い機会を与えてもらったと思っています。日本ペンクラブが来年9月に開催する「国際ペン東京大会2010」の、詩部門の責任者としては、できるだけ朗読の機会を増やしたいと思っていた矢先だったのです。

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 写真は会場の一齣です。どんな詩が朗読されたかは下のパンフレットで紹介しますが、心情を素直に表現した作品が多く好感を持ちました。終わったあとの懇親会は、昨年は会場の片隅でつつましく行われましたけど、今年は隣の喫茶店で賑やかに…。皆さんは紅茶にケーキのセットで、私だけがビール。賑やかだったのは私だけかもしれません(^^;
 久しぶりの雨。10人ほどの小さな会でしたが、雨をついて出かけて良かったと思っています。お呼びいただき、ありがとうございました!




パンフレット第九回 自作詩を朗読する会』
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2009.11.17 青森県青森市 自作詩を朗読する会発行 非売品

<目次>
 第一部
「赤い海」          須藤あきこ    「お母さん」「包丁」「叫び」  堀川きみ子
「牛に見倣え」        山下 邦雄    「道を説く人」         駒田  隆
「映画パッションを観て」   遠藤 幸治    「聞こえてならなかった」    遠藤 幸治
「み翼の下に」        佐藤 一枝    「叫び」「夏の思い出」「みどり」浅見 鶴蔵
「あなたと わたし」     西山 純子    「あなたと わたしV」     西山 純子
 第二部《海外受賞作品朗読》 水崎野里子
Ode to the Sunflower.   ひまわりへのオード
Alone at My Palace.    たった一人の御殿――私は千姫
I am Komachi.       私は小町




 
赤い海/須藤あきこ

何気なく立ち寄った
ギャラリーの一角から
激しい勢いで
眼に飛び込んできた
赤の絵の前に 立ち尽くす

夕焼けに染まり
空と 一体になった
「赤い海」

眼を輝かせ
エネルギッシュなオーラを
放ちながら
画家は 言う
「赤は 力を与える色だ」 と

ほっそりとした体の
どこからそのような力が
湧いてくるのか
不思議だった

道すがら
それは
自然を創造された
大いなる方の
愛に 触れた感動が
彼の心を
捉えているのだと
思った

 上述の「自作詩を朗読する会」で配布されたパンフレットです。ここでは巻頭作品を紹介してみましたが、〈自然を創造された/大いなる方〉とは、もちろんキリストのことでしょう。〈赤は 力を与える色〉であり、キリストの〈愛に 触れた感動が/彼の心を/捉えているのだ〉とするところにクリスチャンらしさを感じました。




会報『かわさき詩人会議通信』53号
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2009.12.1 非売品

<目次>
「誇張の命令形」の詩の創造を試みる方法もある/河津みのる
我が家の古希/斉藤 薫  市長選の勝負/斉藤 薫  可憐な花/さがの真紀
トランプ考/枕木一平   黄昏/寺尾知紗      地球のどこかで/山口洋子
赤トンボ/小杉知也    今生/寺尾知紗      キジバト/小杉知也




 
地球のどこかで/山口洋子

地球の核は見えない
あらゆる国と国をむすぶ地底は
ひとつの点となり結びあっている
そんな気がしている
誰も其処へたどりつけないけれど
るつぼの中でなにかが鬱積している
激しい熱と怒りを抑え

地球の表面は分断され
争いが絶え間なく続いている
民族が宗教が政治が 輪と和を拒絶し
見知らぬ国々の地上に
飢えた子と親のいない子をつくりだし
さまよえる民衆を
狭いテントヘ囲い込んでいる

   異国の哀しみは何処かで凝固し
   荒野は可憐な花を咲かせない

地上に見えるもの 見えないもの
一つの地球は立っている場所
二つの地球も三つの地球も
誰かが立っていれば
其処が大事な地球の真ん中
地底も地上もつなぎあわせれば
争いなど不必要

   戦争は要らない
   基地も要らない
   理屈も要らない
   無条件に
   人が人を殺す世界をゆるせない

 第1連の〈あらゆる国と国をむすぶ地底は/ひとつの点となり結びあっている〉というフレーズが新鮮です。空によって国と国とが繋がっているとは誰もが感じることでしょうが、地底が繋がっているという発想はなかなか出来ないのではないでしょうか。第4連の〈誰かが立っていれば/其処が大事な地球の真ん中〉は、第1連からの連想でしょうけど、これも大切な視点だと思いました。




アンナ ホーリー氏/結城文氏
対詠歌集
『命のさざなみ』
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2009.11.18 東京都千代田区 万来社刊 2000円+税

<目次>
Life and Afterlife 今生と後世 5        Nightmares 悪夢 13
Flower Power 花の力 21             Winds of Chance, Winds of Fate 偶然の風 運命の風 29
A Space Opens 空間が開く 37
.          Daydreams 白昼夢 45
0ne String ひとすぢの糸 53           0n the Wing 翼に乗つて 61
A Legend Tells 伝説は伝ふ 69          Realm of the Five Senses 五感の領域 77
Meeting and Parting 出会ひと別れ 85
あとがき 92
プロフィール 94




life's end
may be a beginning
elsewhere...
ripples spreading out
reach the far shore      Anna
命の終はりはもうひとつの始め さざ波はひろがり遠き岸につくなり

地球といふ水惑星のひとしづく われにひとすぢの光たまへな
send
a beam of light
to me,
I who am a mere drop
on this water planet, Earth  Aya

 米国人のアンナ・ホーリーさんと日本人の結城文さんによる、日米語の対詠歌集です。歌集のタイトルは紹介したアンナさんの歌から採っていると思われます。あとがきによればアンナさんは乳癌に犯されているようですから、切実さと達観さを感じさせます。一方、結城さんの歌にはそれと呼応したスケールの大きさと祈りを感じます。短歌は門外漢ながら、そんなことを感じさせられました。






   
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