きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.11.3 足柄峠より箱根・大涌谷を臨んで




2009.11.24(火)


 市役所から国民健康保険の督促状が届いて、驚きました。退職から2年間は会社の健康保険に入っていられたのですが、その期限も切れて、いよいよ国保です。しばらく前にその通知が来て、面倒だから口座振替にしてよと市役所に頼みましたけど、最初の1回は現金で振込み、その次からは口座振替にできるとの説明でした。それで現金で振込んだあと、次回の振込み日までに口座振替をやろうと思っていたましたが、すっかり忘れていました。

 督促状でムッとしましたが、意外に私のような人が多いようです。私の友人も督促状が来たと言ってましたし、市役所の窓口も慣れたような扱いでした。忘れた私が悪いんですけど、いきなり督促状じゃあ精神衛生に悪い…。窓口で喧嘩するような口調になった自分に気がついて、ちょっと引きました。口座振替の手続きを済ませましたから、今後は督促状が来ませんが、なんか、もっとやり方があるだろうになあ、と思ってしまいました。少なくとも民間企業でこんなことをやったら、お客さんは逃げてしまいます。市役所もお上意識からなかなか抜けられないようですね。




月刊詩誌『柵』276号
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2009.11.20 大阪府箕面市
詩画工房・志賀英夫氏発行 572円+税

<目次>
現代詩展望 詩人と脱世俗精神の根拠 新日本現代詩文庫・門林岩雄詩集…中村不二夫 78
戦後史の言語空間(13) 頂点(権威と権力)続…森 徳治 82
流動する今日の世界の中で日本の詩とは(58) 心敬生誕六百年記念集『伊勢原の心敬』との出会い…水埼野里子 86
風見鶏 折山正武 寺西貞子 黒羽英二 住吉千代美 高階杞一 90
現代情況論ノート(45) 詩人と自動車産業…石原 武 92

小城江壮智 いのち 4             松田 悦子 炎上する馬の運搬車 6
山崎  森 ボレロのように 8         肌勢とみ子 夜飛ぶ鳥 10
柳原 省三 壇上の悪夢 12           水木 萌子 天守閣が見える道 14
中原 道夫 訃報 16              織田美沙子 この秋 行方不明 18
進  一男 作られた自然の中で 20       小沢 千恵 朝の通勤時間 22
佐藤 勝太 少年の孤独 24           黒田 えみ くりかえすのか きえるのか 26
小野  肇 山の雨 28             長谷川昭子 八月の記 30
門林 岩雄 珍態 32              北村 愛子 眼中にない 34
森  徳治 アスペルガー症候群 36       秋本カズ子 水の音 38
南  邦和 山法師 40             安森ソノ子 ススキの教え 43
鈴木 一成 都々逸もどき11 46         西森美智子 道標 48
三木 英治 セニョーラ・ブランカ・ルス・ブルムに 50
月谷小夜子 プレゼント 求愛 52        北野 明治 孤独な徒歩 54
米元久美子 旅立ち 精神病院 56        八幡 堅造 フク・トラ・ゴン 58
江良亜来子 朝顔 60              赤嶺 盛勝 日常 62
名古きよえ 息子 64              平野 秀哉 歯 66
今泉 協子 イブと私 68            若狭 雅裕 年の瀬 70
野毛比左子 私のラプソディ 72         前田 孝一 消えていく森 74
徐 柄 鎮 日向灘 76

世界文学の詩的悦楽−ディレッタント的随想(42) 両性具有的しなやかさを求めて エイドゥリエン・リッチの詩…小川聖子 94
現代アメリカ韓国系詩人の詩(9) クム・スック・ムン…水崎野里子 98
随想・介護と介錯 その終りが死の道となるものがある…山崎 森 100
寺田 弘さんの詩の朗読運動…中原道夫 103
「柵」の本棚 三冊の詩集評…中原遺失 104
 有馬 敲詩集『古都新生』104 荒船健次詩集『ブナに会いに行く』105 丸山乃里子詩集『赤梨』107
受贈図書 113  受贈詩誌 109  柵通信 110  身辺雑記 114
表紙絵 野口晋/扉絵 申錫弼/カット 中島由夫・野口晋・申錫弼




 
アスペルガー症候群/森 徳治

ハンス・アスペルガーは
二十世紀オーストリヤの精神医である
彼の発見した病気の研究中だが
特徴の一に非言語的伝達の感受不能がある
相手の心や 場の空気が読めない
周囲の思惑に関係なく思いつきを口にする
恥ずかしいと怒った顔になり 誤解を受ける
時々爆発して事態を収拾できなくする
常にどこにいても居心地の悪さを感じる
大脳辺縁系の扁桃体異常と
脳内セロトニンの分泌に問題があるらしい
高機能自閉症という呼び名もあるが
研究書は私には要らない
私がその病の標本なのだ
年老いてから自分の病気を知ったが
人づき合い苦難の道のアスペルガー人生は
最後の崖をみつめながら
坂を登りきるより他にない

 事実かどうかは別にしても〈私がその病の標本なのだ〉としたところが面白いと思いました。〈相手の心や 場の空気が読めない/周囲の思惑に関係なく思いつきを口にする/恥ずかしいと怒った顔になり 誤解を受ける/時々爆発して事態を収拾できなくする/常にどこにいても居心地の悪さを感じる〉などの“症状”は誰にでもあるもの。それをこと改めて〈アスペルガー人生〉と呼ぶところに詩人らしい矜持さえ感じました。




詩誌『アル』40号
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2009.10.30 横浜市港南区 西村富枝氏発行
450円

<目次>
●特集 数字
魔法使い…荒木三千代…1            一或いはエックスに向かって…江知柿美…5
日蝕…阿部はるみ…9              数えあげれば…西村富枝…13
●エッセイ 文鳥プー雑記…江知柿美…15
●詩篇
あの娘
()はピアノを弾いています…江知柿美…19. カム!グレイ Come!Gray…江知柿美…21
しがらみ・しらかみ…江知柿美…23        苦い夜…平田せつ子…25
すぎる…荒木三千代…27             種…荒木三千代…29
関白な大男へ…西村富枝…31           長瀞にて…西村富枝…33
不眠…西村富枝…35               動から静へ…西村富枝…37
編集後記…荒木・西村
表紙絵…江知柿美




 
数えあげれば/西村富枝

議席三〇八
議席一一九
多数決原理で採否が決まる
民主主義だから
人徳・能力・見識あり先を見通す勝れ者
ではなくて
数字で決まる国のリーダー
子どもの学力はテストの点数で決まり
良い子につける点数はない
インフルエンザも発生件数で
その猛威を知る
今何歩
今日何歩
数えながら歩く昨今
七十五以上を後期高齢といわれ
末期高齢という数字はないが
羊が一匹羊が二匹
疲れるほど数えても眠りにつけず
この世は数字に満ちている
あと何年
数字がめぐる寿命まで

 「特集 数字」の中の1編です。考えてみれば〈人徳・能力・見識あり先を見通す勝れ者/ではなくて/数字で決まる国のリーダー〉というのは怖いですね。〈多数決原理で採否が決まる/民主主義〉が全て良いとは思っていませんけど、それに代わる手法が見つからないので甘んじているに過ぎません。本来の“少数意見の尊重”が機能していないことが問題です。〈数字がめぐる寿命まで〉に解決されるか…。そんなことを考えさせられた作品です。




詩誌『衣』18号
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2009.11.20 栃木県下都賀郡壬生町 700円
森田海径子氏方「衣」の会・山本十四尾氏発行

<目次>
十六日−初盆 江口 節 2
雨と紫陽花 青柳俊哉 3            春の宵空・T 大磯瑞己 4
金木犀 山田篤朗 5              黄泉という国へ 小森利子 6
もっと 高畠 恵 7              雨の日断章 酒井邦子 8
鉱石 小坂顕太郎 9              椅子 颯木
(さつき)あやこ 11
振り向いて風 佐々木春美 12          神様の隠れん坊 大原勝人 13
踵 豊福みどり 14               終
(つい)の願い 喜多美子 15
絆 江口智代 16                千年の都・平安京(京都)そして大津 酒木裕次郎 17
待つ女に 石川早苗 18             塊魚
(かいぎょ) 須永敏也 19
新体の書・三一二句(その四) 須永敏也 20    柿の実 貝塚津音魚
(つねお) 21
酔う 千本 勲 22               夕食の時間になると 山下貴実代 23
明日 相場栄子 24               夜の浜辺 うおずみ千尋 25
二つの十四行詩                 紫山 森田海径子
(かつこ) 27
 −短歌のモチーフによる 岡山晴彦
(はるよし) 26. 螢袋考 山本十四尾 28
同人近況 29  同人詩集紹介 32  後記 33  住所録 34
表紙「衣」書  川又南岳




 
春の宵空・T/大磯瑞己

男と女は
よく焼けていない肉の話をした
胡椒の出てこない胡椒引きの詰もした
たて付けの悪くなってきた戸の詰もした
ほかには何も話さなかった
本当にしたかった話は煙になって
少し開けた窓から出て行った

女と女は
働きアリの話をした
卵を産んでしまうことのある働きアリの話を
女王アリ以外の卵は
もちろん壊されて
卵のにおいで見つけ出された母アリを
みんなで引き裂いてしまう話
そして二人とも黙っていた
ためいきは女の体温を空に持ち上げる

なまぬるい空の底で
黄緑の声をして
猫が啼いている
ぼやけた月は
こちらをみない

いえない言葉たちが
けぶらせる春の宵に
人は木になって
だまって生い茂っていく

 〈男と女〉の間では〈本当にしたかった話〉は出来ないものなのかもしれません。巧い点を突いていると思います。第2連はちょっと衝撃的です。最終連の〈人は木になって/だまって生い茂っていく〉というフレーズはこの詩を象徴しているし、映像として浮かんできました。〈春の宵〉という季節感も奏功していると思いました。






   
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