きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
091103.JPG
2009.11.3 足柄峠より箱根・大涌谷を臨んで




2009.11.27(金)


 速報 贋・電子文藝館を告訴!

 拙HPでも何度かお知らせしています通り、日本ペンクラブの電子文藝館が何者かに違法にコピーされ、発見した半年ほど前から著作権法違反容疑と登録商標法違反容疑(「電子文藝館」は登録商標)で告発を準備してきました。私は昨日の理事会を傍聴し、その後に開かれた記者会見に委員長と二人で臨み、朝日・毎日・読売・共同通信・時事通信の各社に明日、警視庁に告発することを伝えました。理事会の席上、委員長はNHKからの電話取材があり、今朝のニュースで放送されたようですから、ご覧になった方も多いかもしれません。本日、多くの新聞でも記事が載ったようです。

 今日は午後から予定通り警視庁中央署に告訴人である委員長、委員、そして私と事務局員、弁護士の5名で行ってきました。警察としては被告訴人が氏名不詳であるのがネックのようで、正式な告訴状を受け取る前にコピーを受け取り、それに基づいて氏名不詳者を特定する調査を始めると約束してくれました。氏名が判明したところで正式な告訴状を受け取ってもらえます。

 私たちは中央署で待ち合わせをしていたのですが、そこにTBSテレビ、テレビ朝日、読売新聞が取材に来ました。告訴状提出後は玄関前でテレビ2社のカメラが待ち構えていて、さっそく取材を受けました。回答は主に委員長が行いまして、今夜のニュースで出るかもしれません。よろしかったらご覧になってください。また、ネットでは昨夜の会見の模様が多く出ていますので「電子文藝館」で検索してニュースを読んでみてください。もちろん贋電子文藝館も見ることが出来ます。捜査に気づいて削除してしまう可能性がありますが。

 電子文藝館は著作権が切れ、パブリックドメインになった作品については許可を得ていませんけれど、それ以外はすべて著作権者の許諾を得ています。私たちが得た許諾は、100人を超えているだろうと思います。その努力、さらに電子化の努力、校正の努力を無視して、自己の利益のため(贋電子文藝館はアクセスがある度にCMスポンサーから入金される仕組みのようです)パクるなど、到底許せるものではありません。私たちは民事訴訟を起こして、お金で解決しようなどと思っていません。あくまでも刑事罰を科し、野放図なネット社会に警告の一矢を撃ちたいと思っています。皆さまのご理解をいただければ幸いです。




宇津木愛子氏詩集『春耕』
shunko.JPG
2009.12.10 東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊 2000円+税

<目次>
T
春耕 8        屋根の上 12      橋 16
レーサー 20      写す 24        さくら闇 28
輪切り 32       階段 36
U
花すだれ 40      九輪草 44       薬研 48
百葉箱 52       道草 56        竜胆 58
萩の花が 62
V
アキアカネ 66     ポピーの原っぱ 70   冬の朝 74
アメリカンブルー 76  洗濯 80        かぞえる 84
隠れ家みたいな 88   今はまだ空っぽの 92

跋 詩集『春耕』によせて――当り前のことに気づく豊かさ 内山登美子 96
あとがき 104




 
春耕

耕やされた土が匂ってくる
夕暮れの畑

肩から 紐で斜めにさげた青い箱を
左手でかかえ
箱の中から掴んだものを 右手でパッと撒く
掴んでは撒く
男の大きな手がリズミカルにひらくと
白い紛が 土の上に拡がる
祖父たちの踏んだ土に
さらに 大股の 力強い足跡をつけて

バルビゾンの夕暮れ
わたしは絵描きの目になって佇む

日が翳りはじめる
林では
こぶしの花がひときわ白さを増した
若い男の姿が しだいに濃くなる

受け継ぐ土地を持たないわたし
わたしの中の
堅い痩せた畑を耕やさなければならない
草を抜き
石ころを拾って

 6年ぶりの第2詩集です。ここでは巻頭詩でもあるタイトルポエムを紹介してみました。〈バルビゾンの夕暮れ〉とありますから、ミレーの「種まく人」を想定しています。ミレーが蒔いたのは種ですが、ここでは〈白い紛〉。内山登美子さんの跋によれば、カキなどの貝殻を蒸し焼きにして作った貝灰で、飼料だそうです。〈若い男の姿〉も印象的ですが、最終連が佳いですね。〈堅い痩せた畑を耕やさなければならない〉のは、私たちもまた同様でしょう。




詩誌『詩創』20号記念号
shisoh 20.JPG
2009.11.30 鹿児島県指宿市        350円
鹿児島詩人会議事務局・宇宿一成氏編集 茂山忠茂氏発行

<目次>
短歌 銀色のピアス‥宮崎結子 2
詩作品
冬の旅(鳶の飛ぶ空)‥田中秀人 4         冬の雨‥田中秀人 7
筆の流れのままに余計ごとを書き連ねます‥田中秀人 9
げえむ‥美 澄 12                青二才‥美 澄 14
受容の旅‥岩元昭雄 15              花いちもんめ‥桐木平十詩子 17
帰り道‥桐木平十詩子 19             流れて尽きず‥野村昭也 21
武器は人を殺す‥野村昭也 24           インフルエンザ‥野村昭也 26
おやすみなさい‥植田文隆 28           白いドレス‥植田文隆 30
オブジェ−切断された手への鎮魂歌‥おぎぜんた 32 クロアゲハ‥おぎぜんた 34
存在と時間‥おぎぜんた 36            草花と時間‥徳重敏寛 38
花さん達‥徳重敏寛 39              私は貴方‥徳重敏寛 40
石‥松枝 徹 41                 影‥松枝 徹 42
八月十五日を知らぬまま‥桑山靖子 43       杜甫を訪ねて‥茂山忠茂 45
学生ジャズフェスティバル‥茂山忠茂 47      むかしむかしの物語‥妹背たかし 49
突風‥妹背たかし 50               人が不完全な理由‥岩元しげる 51
いい子いい子してあげる‥海千山千 54       四季‥松元三千男 56
西日棚‥松元三千男 58              煙は斜めに‥宇宿一成 60
地獄‥宇宿一成 63                図書代贈る‥園田實則 66
敬老の日に思う‥園田實則 68           この不幸な国・日本‥神崎英一 69

宇宿一成詩集「固い薔薇」評 生命を見つめる詩集‥茂山忠茂 70
詩集評・詩誌評 培養室‥宇宿一成 71
詩創十八号読後感 拡散する自我を収束する方法‥茂山忠茂 81
詩創十九号読後感 生きていく強さを‥桐木平十詩子 85
おたよりから‥91
後記‥98
受贈詩誌・詩集‥99




 
花いちもんめ/桐木平十詩子

花いちもんめは嫌いだった

勝って嬉しい花いちもんめ
負けてくやしい花いちもんめ

あの子が欲しい
あの子じゃわからん

相談しよう
そうしよう

くすくす笑いながら子供らが顔寄せ合って
なにやら話している
頬には残酷な笑い
わかっている
誰も私を欲しがらないこと

手をつないでいた友達は
欲しいといわれて嬉しそうに
手を振りほどいて離れていく
ちらりと振り返る子もいたけど
わかっている
ひとり最後に残るんだって
だから 見ないで

私のことを忘れて
みんなどこかへ行ってしまった
わかっている
わかっている
一人遊びのほうが気楽でいいもんね

負けて嬉しい花いちもんめ

 童謡や子どもの遊びというものは、意外に〈残酷〉なもののようです。〈花いちもんめ〉がどういう遊びなのか知らないのですが、作品によれば〈ひとり最後に残る〉ゲームのようです。椅子とりゲームでも同じことを感じますが、常に一人を仲間外れにしていくという残酷さは、とうぜん大人の世界の反映でしょう。詩人とは、とり残された側、〈一人遊びのほうが気楽でいいもんね〉と呟く種族なのかもしれません。そんなことを考えさせられた作品です。




季刊個人詩誌『ぽとり』16号
potori 16.JPG
2009.11.30 和歌山県岩出市
きのかわ文芸社・武西良和氏発行 非売品

<目次>
特集=寺=について 1
詩作品
根来大門  2     古家の瓦  3     三千院の雪 4
慈照寺   5     新年    6     土壁の家  7
法隆寺   8     法隆寺2  9     那智の滝  10
根来山門  11
ポトリの本棚・ベンヤミンを読む(6) 12
ぽとりエッセイ(16) 15




 
根来大門

門を見上げ
ぼくは時間を
見上げた

門をくぐると
歴史
に触れることができるのではないか
歴史は柱の
くすみ
のなかへくぐもっていく
柱の
枠組みのあいだに分け入って
隠れてしまう

古さが
時間を隠し
木目が時間を計算して
弾き出している

だが男には
時間がとらえられない
時間が重すぎる

背を向ければつかめるかもしれないと
男は門に背を向けるが
その気配すらない

長い時間をかけて
たたずまいのなかに
時間は
時間を
隠してしまったのだ

 〈根来大門〉とは、和歌山県岩出市にある根来寺の大門のことのようで、画面では見難いのですが表紙の写真に遣われていました。作品「根来大門」は似たような名で2編あり、ここでは最初の詩を紹介しています。第1連の〈門を見上げ〉ることが〈時間を/見上げ〉ることだというフレーズから魅了されました。最終連の〈時間は/時間を/隠してしまったのだ〉というフレーズも見事です。改めて〈時間〉について考えさせられました。






   
前の頁  次の頁

   back(11月の部屋へ戻る)

   
home