きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.11.18 神奈川県松田町・松田山山頂付近




2009.12.7(月)


  その1

 メタボ対策で湯河原町の幕山に挑戦してきました。標高は625mと低山ながら、ハイキングとしては標高差350mほどを歩きますから、それなりの距離になります。幕山山頂まで1時間半ほど、帰りは山裾を巻いて2時間ほど、途中休憩を入れて4時間の行程でした。登り道では2頭の猪にも遭遇して、ちょっとしたスリルも…。拙宅の近くでは猪が出没します。先日も畑に入った猪を駐在さんと自治会長が追い払おうとして、駐在さんが猪の牙で負傷するという事件が起きていますから、あなどれないのです。でも、今回は向こうがさっさと逃げてくれました。

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 幕山はロッククライミングの練習場としても知られた処だそうです。この日はたまたま大勢の人が練習に励んでいました。写真はその様子ですが、驚いたことにクライマーは年配の女性ばかり。私より年配の方が多いようでした。熟年オバさまパワーはこんなところにまで及んでいるんですね。整備された登山道を軽装でトボトボ歩く自分がみじめになりました(^^;

 いつか私も挑戦したいですね。もともと高いところは、装備さえしっかりしていればそれほど苦手ではありません。アマチュア無線のアンテナ工事でタワーに昇ったり、ハンググライダーやパラグライダーで飛んでいたりしましたから…。でも、その前にメタボ解消だろうなあ。今のままでは腹が岩につかえて登れない(^^;;
 で、念願のメタボ解消は…。4時間歩いた程度ではどうということはない、しつこい腹でありました。




新・日本現代詩文庫73『葛西洌詩集』
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2009.11.30 東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊 1400円+税

<目次>
詩集
『わが青春碑−6月29日の谷間−』(一九六〇年)全篇
二十歳
(はたち)の遺言・10. 壊れる・12.       小字宙の中の一ツの顔・14
中毒・17.        記憶の積分・19.     天を越える眼・20
疲労の国・22
.      遠い国(1)・23      遠い国(2)・24
門・26
.         里標・27.        帰る・29
暮れる・30
.       部屋・31.        母への詩・33
詩集
『記憶する鳥』(一九七三年)全篇

暦・35
.         手術・36.        時計・37
蚊帳・38.        風・39.         墓・40
義足・41
.        迷い・41
不毛の国
貝・43
.         ガラスの旗・44.     不毛の国・46
遠い村・47.       ある夜明けの物語・48.  呑む・50
閉ざされた道・52
.    背後の街・54
帰らぬ朝
夜明け・57
.       帰らぬ朝・58.      砂・59
きみの街・61.      虚構の愛・62
ねずみ
晩夏<1>・63       晩夏<2>・64       めるへん・65

ねずみ・66
葛西洌に寄せるノート(高橋秀一郎)・67
詩集
『風祭り』(一九七八年)抄

鐘・71
.         耳・72.         旅・73
習慣・74.        日輪・76.        塀・77

広場・79
.        井戸・80.        ひとり・80
鬼・81
風祭り
風祭り・82
.       遠い街・84.       熱い街・86
風の街・87.       村へ帰る・87
冬伝説
声・89
.         伝説・90.        冬伝説・90
詩集
『橋の上で拾った十円玉』(一九八五年)抄
T
岬・92
.         梢・92
U
「お伽噺」を探して・93  橋の上で拾った十円玉・94
 誰か歌ってくれ・95
港叙景・96
V
紅い月・97
.       川・98.         小包み・98
悲しい朝・99
.      黒の街・100       風のうなじ・101
下り列車の音・102    捨ててきた鬼・102
W
潮騒・103        いのち・104       するめ・105

風・106         道・107         地図・108
廃園・109        深呼吸・110       視点・110
声を研ぐ・111
詩集
『日本詩人文庫 野の意味』(一九九〇年)抄
野の意味
野の意味・112      橋・112         種なしスイカの種・113
醒めない・114      心象遠近法・115     宿酔い・115
風の暦・116
青森情歌
演歌調でいこうよ・117  珈琲
(コーシー)のませろ・117.ダンゴ屋のミッちゃん・118
月々の詩
10月の言葉・119     11月の石・119      12月の温もり・120
1月の窓・121      2月の樹・122      3月の航跡・122
4月の潮・123      5月の碑・124      6月の火種・125
7月の鬱・126      深夜・8月の電話・127  9月の伝言・127
詩集
『百鬼曼陀羅』(一九九四年)全篇
百鬼曼陀羅
百鬼曼陀羅−1−・129  百鬼曼陀羅−2−・130  百鬼曼陀羅−3−・131
百鬼曼陀羅−4−・132  百鬼曼陀羅−5−・133  百鬼曼陀羅−6−・134
百鬼曼陀羅−7−・135  百鬼曼陀羅−8−・136  百鬼曼陀羅−9−・137
百鬼曼陀羅−10−・138  百鬼曼陀羅−11−・138  百鬼曼陀羅−12−・139
百鬼曼陀羅−13−・140  百鬼曼陀羅−14−・140  百鬼曼陀羅−15−・141
百鬼曼陀羅−16−・141  百鬼曼陀羅−17−・142  百鬼曼陀羅−18−・143
百鬼曼陀羅−19−・143  百鬼曼陀羅−20−・144  百鬼曼陀羅−21−・145
百鬼曼陀羅−22−・145
ごるびーの手帳
川倉地蔵寓・146     名簿・147        すてんからーじんの川・148
ごるびーの手帳・149   魚拓・150        密室・150
ジェニーが泣いた・151  ぶなの譜
(うた)−白神賛歌−・152
エッセイ
日々断想
飢えの行方・156     北転船愛歌・158     草笛のこころ・160
ちょっといい話・163   私がなぜ……・165    愛竿物語・166
ねぶた抄・168      おんなの音・172
解説
郷原 宏 抒情の極北をめざして・176
中村不二夫 抒情精神と津軽魂の根源・181
年譜・193




 
百鬼曼陀羅 −2−

鬼はきのう「角」の帽子をそっと被った。
中国からの女子留学生 女鬼が
対面を求めてきたからだ。

「日本ノ将来ハ、アト二十年カラ三十年……ネ」
女鬼の言葉に 鬼は腕組みをした。

「日本ノ若者 全部トハ言ワナイケレド 誰モ
勉強シテナイシ努力モシテナイ。中国ダケデナイ
アジアノ若者、ミンナ勉強 努力シテルヨ。
イマ 日本ハ経済大国世界一誰モ認メルヨ
デモソレ イマノ日本ノ大人 五十歳以上ノ人達ノ努力ネ
ソレ尊敬シテ 私タチ勉強シテル。ダケドソノ人達イツカ
ミンナ死ヌヨ ソノ時 日本モウダメネ。私タチ中国ヤ
アジアノイマノ若者ノ時代ネ。私タチ 日本ノ間違イモ
勉強シタヨ」

鬼は黙した。応えられなかった。
鬼を消したのはこの国だ でも鬼にも責任はないか?
鬼は答えを自問しつつ女鬼と別れた……。

 1960年の第2詩集から1994年の第7詩集の主要な作品を網羅した文庫です。青森県出身で現在は東京在住。私より1回り上の先輩詩人です。浅学で、この詩人の作品に初めて触れたのですが、紹介したい作品ばかりで困ってしまいました。詩作品のみならずエッセイも佳いのです。本当は1冊まるまる紹介したいところですけど、そうもいきませんので、よろしかったらご購入をお薦めします。

 著者についての一つのキーワードは〈鬼〉ではないかと思います。その端的な表れが詩集『百鬼曼陀羅』でしょう。ここではその中から「−2−」を紹介してみました。書かれた時期は今から15年前です。2009年の現在が〈私タチ中国ヤ/アジアノイマノ若者ノ時代〉となりつつあることは周知の事実です。〈アト二十年カラ三十年〉という予言が的中しているわけで、その先見性には驚きました。〈イマノ日本ノ大人 五十歳以上ノ人達ノ努力〉によって〈経済大国世界一〉になっているという指摘は、ある意味では恐怖です。15年前は私は45歳。50歳以上ではなかったわけで、〈日本モウダメ〉な先頭を走る世代です。この短い詩でそこまで考えさせられました。著者自身は決して“啓蒙”などと思っていないでしょうが、そう読んでしまう優れた詩集です。




詩とエッセイ『異神』106号
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2009.11.20 福岡市中央区 各務章氏発行 500円

<目次>
「小詩集とエッセイ」
各務 章  竹の道 1  秋日 2      痛みと身体(エッセイ) 5
田中裕子  帰省 7   わたしたちの 9  一年間書き続けて(エッセイ) 11
金子秀俊  夕暮れ 13  滄波を捗る5 14  私自身の考える 私の詩の功罪(エッセイ) 14
田中圭介  河童 19             誇大妄想狂と嗤いますか(エッセイ) 22
麻田春太  沈みゆく島嶼 25         振り返っても振り返っても (エッセイ) 26
「編集後記」 各務 章 28




 
竹の道/各務 章

山道をのぼる
風にしなる竹の音
まとまりながら一つの方向へ
青竹の林は奥が深い
ゆっくりと横に通りぬける風に
竹はひと時静まり
一つの集団となって
大きな季節をつくる
再び風は天からの強い力で吹きおろす
青竹に私の魂はゆさぶられ
風と共にしなりながら運ばれていく
体は幹のふれあう音を聞き
激しい葉づれに手足が痛む
そうして魂は遠い未知のふる里へ向う
何があり何が無いのか
問われる風に私は応えられない
応えないまま
再び青竹の中に吸いこまれていく
青竹は足もとの若い竹の声を吸いあげ
(わず)かに時が過ぎるまま
明るくて暗い青竹の道をつづける

 〈風にしなる竹の音〉を聞きながら〈山道をのぼる〉様子が眼に浮かぶようです。特に〈一つの集団となって/大きな季節をつくる〉というフレーズに竹林の特徴がよく出ているように思いました。そこから〈遠い未知のふる里へ向う〉〈魂〉へとつながって行くわけですけど、〈何があり何が無いのか/問われる風に私は応えられない〉のは私たちそのものかもしれません。「竹の道」を歩く機会ごとに思い出しそうな作品です。




詩・仲間『ZERO』22号
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2009.12.10 北海道千歳市
綾部氏方「ZERO」の会発行 非売品

<目次>
森 れい 初冬
斉藤征義 フキの葉の家
綾部清隆 もう少し・・・




 
初冬/森 れい

洗濯をしている
こする手の平を耳にして
流れの彼方に重ねられる
時の襞を手繰り寄せながら
足は肩幅に
過去からやってくる濁流に流されないように

象の耳をまねて眠る少年の
青い体臭が横切っていく

洗濯をしている
頭上にはめ込まれた星座を濯いで
さわれない領域の
真理の淵をこすっている

無事を呼び交わす鳥の声音をまねて
タブラを打つ青年の
目の中を大白鳥の群が渡る

悲哀を洗いつづけながら
きたえられるココロネ

誰れを真似て今日を眠る

 「初冬」に〈洗濯をしている〉のは〈時の襞〉であり、〈星座〉であり〈真理の淵〉、そして〈悲哀〉と読み取りました。そこから表出するのが〈きたえられるココロネ〉なのでしょう。それから一日の終わりには〈今日を眠る〉わけですけど、それは〈誰れを真似て〉いるのか…。散文的にはそんな風に捉えられると思いますが、この作品の背景には〈少年〉と〈青年〉がいることも忘れてはならないてじょう。「初冬」らしいキリリとしたものを感じた作品です。






   
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