きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.11.18 神奈川県松田町・松田山山頂付近




2009.12.23(水)


 午後から静岡県御殿場高原の「時之栖」にあるチャペル[桜の礼拝堂]に行ってきました。姪が通っていた音楽教室の出身者による「
Winter Concert」があるから聴きに来てくれというので、親類縁者総出でした。音楽教室の出身者とは言っても、その後は音大に行って、現在はそれなりに活動している人ばかりですから、ちゃんとした音楽会でした。姪はピアノ演奏が担当でした。歌はソプラノばっかりだったのは女声が多いから当然としても、なかには友情出演で現役男子高校生のオーボエがあったり、女声コーラスがあったりして楽しませてもらいました。

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 写真は姪と高校生の2ショット。チャペルでのコンサートですから、バックはステンドグラス。結婚式にも使っているそうです。曲目はシュパンやシューベルト、ベートーベンはオーソドックスですけど、堀内幸枝さんの詩「サルビア」が使われていることには驚きました。もっとも、堀内さんは歌曲用の詩も多く書いていますから、当然といえば当然でしょうね。ネットで検索したら、私の詩も関西の音楽大学の課題曲となっていました。学校で教材として使う場合は著作権があいまいになっていますが、厳密に言えば著作権法違反です。もちろん訴える気はありません(^^; どんどん使ってください。それで一言知らせてくれればもっと嬉しいですけどね。

 余計なことを書いてしまいました。やっぱりナマで聴く音楽、しかもマイクなしの肉声ですから、聴いていて心地良かったです。帰りには話題のイルミネーションも見ました。私にはピンと来ませんでしたけど…。人工的なものは拒否反応が起きてしまうようではトシなんでしょうね。いずれにしろ、呼んでくれてありがとう!




まるこるま氏詩集『彼岸邪楽』
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2009.11.30 埼玉県上尾市 杉未来舎刊 1000円

<目次>
羊の船 6                 コモドドラゴンのこども 10
カシミヤ山羊 14              ナツメヤシの夢 18
オオアリクイのママ 22           ナンパオさんの糸 26
犬の木 30                 NEO-JAPANESE 34
ウイルス 38                SPAN U 42
輪舞 46                  雲海メール 50
タランチュラ雛 54             プルプル ブルブル 58
PARTS・SHOP 62          伝書鳩 66
二十三夜 70                満月の虹 78
アイルランドのネコ 80           十二時までに 84
せみしぐれ 88               すれちがう初恋 90
マダム・バタフライの墓 94         損ねる 98
ヒカ゚ンジャーラク 100
あとがき 110




 
雲海メール

御来光が
雲海を 照らし
ソーラーエナジー
が 充ちる

頬を輝かせ
富士山を
下りる人々

八合目の
岩のすき間に
白い花

――こんなところに岩爪草

ケータイで
写真を送り
はしゃいでいる
若い女性

だれも気づかない
岩爪草の小さなため息

南アルプスの恋人と
メールが繋がらない

――高度差がありすぎて

雲海は
気の毒そうに
立ち去った

――十年後、私の住処はあるかしら

岩爪草は
かつて咲いていた
五合目を懐かしむ

連なる
登山者たち
を 射る
陽光

 第1詩集です。ご出版おめでとうございます。詩集タイトルの「彼岸邪楽」の意味が判りませんでした。読み方は最後に置かれた作品「ヒカ゚ンジャーラク」でよさそうです。“カ゚”は発音できませんが、鼻濁音だそうです。「ヒカ゚ンジャーラク」の注釈によれば、春彼岸の頃の寒気団による風雪のことのようでした。
 紹介した作品はすでに読んでいた記憶がありました。調べてみましたら、2009年4月4日に開催された日本詩人クラブの作品研究会に提出されたものでした。そのときにも言わせてもらったと思いますが、〈――十年後、私の住処はあるかしら〉がよく効いている詩です。〈五合目〉から〈八合目〉へと移動せざるを得なかった〈岩爪草〉は、地球温暖化の象徴です。その結果〈南アルプスの恋人と/メールが繋がらな〉くなってしまったわけですけど、ここには声高に環境保護を叫ぶ声がありません。むしろマンガのような世界が描かれています。著者のお人柄が表出した作品と言えましょう。今後のご活躍を祈念しています。




山本龍生氏著「詩譚『い花』と太宰治」
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2009.11.10 東京都千代田区 砂子屋書房刊 2000円+税

<目次>
1 雑誌の名は秘密 10           2 ノヴァーリスの「い花」 12
3 中村地平と山岸外史の文学談 15     4 ダザイに会いにゆく山岸外史 18
.『青い花』創刊は十二月に 21.      6 中原中也を嫌っていた太宰 24
7 草野心平と檀一雄の喧嘩 26       8
.『い花』を出すための意気込み 29
.『い花』の発会式 32.         10 代作「洋之助の気焔」の稿料 34
11 久保喬に誘われ川端宅を訪問 37     12
.『文藝春秋』の「話の層籠」欄 40
13 初代を伴い三島の坂部宅へ 42      14 「世に認められるのは百年後」 45
15 三島から杉並の借家に戻る太宰 47    16 太宰から久保宛の二通のハガキ 50
17 「芥川・直木賞宣言」の記事 53
.     18 「あわれ、太宰治をかかる屈辱に……」 55
19 元箱根の関所址記念館の太宰 58     20
.『い花』発刊の太宰の本心 61
21 最初の同人会に集まった面々 64     22 太宰の手紙と木山捷平 66
23 菊田一夫作・演出『太宰治の生涯』 70  24 主治医中野嘉一のカルテ 73
25 今官一宛「二月
(フタツキ)ほど休刊」の手紙.75 26 「新進作家死の失踪?」(読売新聞) 78
27 義に勇んで一とハダ脱いだ檀一雄 81   28 なめくじ横町の文士たち 84
29 横町に越してきた上野壮夫夫婦 90    30 尾崎と檀の奇妙な同居生活 92
31 烈火の如く怒った上野壮夫 93      32 妻の衿首を掴んで投げ飛ばす 95
33 特高が見回りに来た上野宅 100
.     34.『い花』は有力な同人雑誌だった 102
35 同じ郷土の作家を大事にした太宰 103
あとがき 107
.               装幀・倉本 修




 
1 雑誌の名は秘密

「久保さん
*1 故郷の宇和島から早く帰つて釆て 私たちの会*2の 歴史的な文学運動に
参加してください 雑誌の名は秘密ですが『い花』 文学史に残る運動をします」
太宰
*3は半年程前 彼とノヴァーリス*4について語り合ったことを憶い出しながら 手紙*5
を出した

会の仲間だった中村地平
(ぢへい)*6は「『い花』なんて名は少女趣味で厭だね」と語ったが 山
岸外史
*7は「『青い花』は英知の花で苦悩のシンボル」と共鳴 即座に太宰の家を訪れた
彼は太宰が気に入り初対面のその夜から急速に仲を深めた それにしても地平を太宰
はわざと「じべえ」と呼んで 彼を厭がらせたのはなぜだろう

ふたりは性が合わなかったのか ふとしたことから殴り合いになりかけた にも拘ら
ず ニヒリスティックな太宰の性格や生活に魅力を感じ さらには自分には及びもつ
かない秀れた小説を書いている だからふたりはすぐまたどこかで出合ったりする
不思議な仲である

どうして睨み合うことになるのだろう 地平は太宰に親愛の情で接していながら「自
分に対する大きな不信の念を発見」してしまう 同人の皆が集まった席上で激しい口
論が始まり ふたりはすっくと立ちあがると 顔と顔とを突き合わせて睨み合った
「太宰は一生僕の友人ではない」 そう言い放って仲間の止めるのも振って 地平は太
宰の前から姿を消した やがて『い花』は創刊号
*8を出しただけで終わってしまう

*1 久保隆一郎(筆名・喬)(一九〇六〜九八)。愛媛県出身。児童文学作家。
*2 二十日会。メンバーは太宰治、伊馬春部、今官一、中村地平、北村謙次郎、久保隆一郎、檀一雄、山岸外史らであった。後に、木山捷平、津村信夫、中原中也、森敦、小野正文、小山祐士らが加わり、18名となった。『い花』はその中の何人かで出した同人雑誌だが一号を出したきりでつぶれてしまった。
*3 太宰治(本名・津島修治)(一九〇九〜四八)。
*4 ノヴァーリス(一七七二〜一八〇一)。ドイツの詩人。『い花』の原作者。
*5 昭和九年九月十三日付書簡(太宰から久保隆一郎宛)。
*6 中村地平(本名・治兵衛)(一九〇八〜六三)。戦後は、郷里宮崎県の図書館長や銀行取締役などを務めた。
*7 山岸外史(一九〇四〜七七)。文芸評論家。『い花』で太宰治、檀一雄らと親交を結ぶ。
*8 『青い花』創刊号、昭和九年十二月十八日頃刊。創作は太宰の『ロマネスク』一篇、他に詩・エッセイを掲載したのみで、二号以降は原稿・同人費の集まりが悪く、創刊号を出しただけで廃刊。
   創刊号の目次は、〈創作〉「ロマネスク」太宰治〈詩〉「信濃ところどころ」津村信夫、「近刊詩集『山羊の歌』より」中原中也〈エッセイ〉「われ失ふ」北村謙次郎、「
Van Goghの画に」久保隆一郎、「広告」伊馬鵜平(春部)、「詩譜」檀一雄、「一枚の絵葉書」山岸外史、「三つの祈り」今宮一、「い花の感想」木山捷平、「あをければ」斧稜(小野正文)で、中村地平の名はなかった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 あとがきに<本書は同人誌『青い花』29号(平成10年3月号)から同誌64号(平成21年11月号)(内55号を除く三十五回分)に掲載の作品を加筆・訂正したものである>とありました。タイトルの“詩譚”という言葉に注意する必要があると思います。ここでは冒頭の「1」を紹介してみましたが、本文はご覧のように句読点がありません。詩として書かれたものと思ってよいでしょう。註釈も充実しています。知らないことが多く、勉強させていただきました。




詩誌『しけんきゅう』153号
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2009.12 香川県高松市 しけんきゅう社発行
350円

<目次>
<詩作品>
世界の詩人たちの森から(上) 笹本正樹 2  黄金の葉 かわむらみどり 4
エウロパ天守物語 秋山淳一 6       私に返してください 葉山みやこ 8
あるきかた/あんなに
.ほそい.からだ..して くらもちさぶろう 10
おへんろ かしはらさとる 12        たったひとつのものを 水野ひかる 14
あの早春の道は 森 常治 16
<評論/創作/エッセイ>
『水野ひかる詩集』について 田千尋 18
儚いゴキブリと儚いボク (「ナルシスへの伝言」シリーズ) さやまりほ 23
キャロル・ダフィーの「さいご の ぶしょ」(フィルム を ぎゃくに まわす) くらもちさぶろう 28
広場(すくえぇあ) 31




 
あんなに ほそい からだ を して/くらもち さぶろう

あんなに ほそい からだ を して
どうして くさ わ まっすぐに たっていられる のだろうか
しかも ふさふさした あたま を のせて

てん を めざして まっすぐに たっている
かぜ に ふかれて みな いっせいに あたま も からだ も
ゆれて かたむいて
あたま が じめん に つきそうに なるが また おきあがり
なにごと も なかったように ならんで たっている

がっこう かえり の しょうがくせい が
くろい こうもりがさ を かたな の ように ふりまわして
ほそい からだ を つぎつぎに
なぎたおしている

 たしかに考えてみれば不思議ですね。植物学や材料力学では周知のことなのかもしれませんが、〈どうして くさ わ まっすぐに たっていられる のだろうか〉と思います。詩としては最終連の〈がっこう かえり の しょうがくせい〉がよく効いています。〈くろい こうもりがさ を かたな の ように ふりまわして〉いる中から将来の科学者が出現するかもしれません。そして詩人にもなってくれればいいなと思います。科学と詩を統合できる人間。そんな希望まで語りたくなる作品です。






   
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