きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.11.18 神奈川県松田町・松田山山頂付近




2009.12.25(金)


 特に予定のない日。いただいた本を拝読していました。




文芸誌『ノア』19号
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2009.8.31 千葉県山武郡大網白里町
ノア出版・伊藤ふみ氏発行 500円

<目次>

禁煙ゴッコ…右近 稜 2           直線縫い…伊藤ふみ 3
馬の泪…倉田武彦 4             そして花…飯島研一 6
見つからず…菊池敏子 8           梅雨の晴れ間に…小倉勢以 10
森吉山…大石良江 11
エッセイ
『裸体美人』と習作…松岡義太 12       吉保さんの庭…高島清子 13
『カマキリと月』という本のこと…遊佐礼子 14 子猫の思いで…海藤純子 15
菩提樹と出会って…保坂登志子 16       夜刀の神…宮崎 亨 18
櫛…馬場ゆき緒 22              馬事考…倉田武彦 24
創作 よい晩年…川村慶子 26         童話 みきちゃんとこのメダか…武政 博 30
短歌 夜ですよ また朝ですよ…細川としこ 33 俳句 夏野…上村ふみ子 34
お知らせ 「ノア」の仲間たち展…35
新刊紹介 詩集『詩人の樹』横倉れい…36    『詩人の樹』横倉れい詩集について…武政 博 38
     有難う…ご馳走様…井田三夫 39
大人の童話 やじろべえ…伊藤ふみ  40    編集後記…44




 
直線縫い/伊藤ふみ

父はどれだけのYシャツを縫ったのだろう
布地の上に針を走らせ
そこに母と五人の子どもたちの時間を縫い付け
ミシンに屈み七十年の頭に血管を詰まらせた
それでも走りたいとミシンに向ったが
指は針を追えなかった

ミシン目を追う指と糸と針が父の生き方だった
−俺二十代にお前の親父さんに
  シャツつくってもらったんだ−
同級生が言った 高いからやめとけといわれたが
男を張って注文したという
−ぴったりして着やすかった 今もとってあるよ−

孤独を背負い世間と繋がりを求めず
裁ち台の前でハサミを動かし
ラジオを聞きながら仕事をした
たったそれだけの男だった

母に遺した数十枚のシャツ
父の仕事は母の実寸で畳まれ
タンスで寝ている

 テーラーだった〈父〉をうたった作品ですが、〈たったそれだけの男だった〉と醒めたような言葉の中に深い愛情を感じます。第1連に〈そこに母と五人の子どもたちの時間を縫い付け〉というフレーズがあるので、読者はそれを真っ先に頭の中に刻むのだと思います。その前提で読みますから、あとにどんな醒めたフレーズが来ようと揺らがないと云えましょう。そんな計算をしていたわけではないでしょうけど、構成で作者の気持ちを伝わりやすくした詩だと思います。最終連の〈父の仕事は母の実寸で畳まれ〉というフレーズも佳いですね。




文芸誌『ノア』20号
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2010.1.1 千葉県山武郡大網白里町
ノア出版・伊藤ふみ氏発行 500円

<目次>

14階のたて長のマンションから眺める景色…うこんりょう 2
歳月…大竹 令 3             菊水吟醸ひやおろし秋一番…伊藤ふみ 4
瑠璃碗…大掛史子 6            たった一匹…倉田武彦 8
渡り鳥…倉田武彦 9            午後の電車…小倉勢以 10
夜の秋…菊池敏子 11
紀行文 世界の半分に船からこんにちは!…森 ケイ 12
短歌  酔芙蓉揺れ…細川としこ 17
エッセイ
「櫻狩り」の経緯…松岡義太 18        寒椿…橋本榮子 19
アルファベット…馬場ゆき緒 20
創作  千恵の場合…川村慶子 22

すーぱー雑草…田中眞由美 24        さんまのオーラ…大沢直江 25
ロシアの森…高島清子 26          画用紙…伊藤ふみ 27
いけしゃあしゃあ…伊藤ふみ 28
エッセイ
畑の仕事…伊藤ふみ 29           人間にとって「用途なし」?…保坂登志子 30
ダイダラボッチの影を求めて…宮崎 亨 32
俳句  ひがんばな…上村ふみ子 36     書評  物語り「アンジュール」のこと…遊佐礼子 37
童話  手品師…伊藤ふみ 40        賑わった「ノア」の仲間たち展…42
広告/お願い…43              編集後記…44




 
ロシアの森/高島清子

それは
冬のモスクワ空港のほの暗い飾り棚に
たたずんでいたひと瓶の香水です

香水瓶は厚いクリスタルの中に
針葉樹林の色を沈めて
わたしの顔をぼんやりと映していました

あれから二十年
二度と取りに行けない忘れものが
私の中にたくさん積りましたが
時が過ぎても「ロシアの森」という
その名を忘れません

あの
ひと瓶に出会うには
冬のコペンハーゲン行きに乗ることです

今も
そこで足を止めた女の人が
探していた幸せを手にとるように
見詰めているでしょうか

 〈香水〉のことはまったく分かりませんが、女性にとっては〈探していた幸せを手にとるよう〉なものなのかもしれませんね。作品は〈あれから二十年〉経っても〈その名を忘れません〉ということがひとつのテーマだと思いますけど、私は〈二度と取りに行けない忘れもの〉というフレーズに魅了されました。〈冬のモスクワ空港〉もなかなか行けないでしょう。それ以上に私たちの中には〈二度と取りに行けない忘れもの〉が〈たくさん積〉っているのだと知らされます。いつのまにか〈香水〉のようなかぐわしい時間を置いてきてしまったのかもしれません。それを改めて考えてしまいました。




情報紙『oami あっとほっと』8号
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2009.6.1 千葉県山武郡大網白里町 あっとほっと編集室発行
非売品

<目次>
こっちの水は甘いよ!
鍛冶屋の響きとホタルの宿
ホタルとクレソンとカワニナ
やっています−小里のお店−
やってみませんか!




 
ホタルとクレソンとカワニナ

 クレソンは水がきれいでないと育たないそうです。ですからクレソンがあるところは水がきれいという事です。今回の金谷郷(かなやごう)の小川にクレソンが元気に育っています。その浅瀬にはカワニナもたくさんいました。ここではホタルが毎年飛んでいます。それも貴重なゲンジボタルです。
 近所の方が、へイケボタルがいなくなったと話してくださいましたが、こんなに環境に恵まれているようにみえても、絶えてしまうものもあるのです。大網白里町には再びへイケボタルが飛ぶようになりましたが、以前と比べるととても少なくなっています。
 いまでもゲンジボタルが棲息できる町に住んでいるわたしたちは、この環境をもっと拡げることはできないものかと思います。自然を護ることと生活をしていくことを計りにかけなければならない時代でもありますが、ひっそり静かに桃源郷のような山里を持っていることを誇りにしたくなりました。
 ホタルにちなんだ蛍葛と蛍袋を紹介します。昔子どもたちは蛍袋にホタルを入れて遊んだことがあったようです。一度そんな幻想的な光景を見てみたいものです。

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 今号はホタルに関する記事が多くありました。紹介した文には蛍蔓(ホタルカズラ)と蛍袋(ホタルブクロ)の写真が添付されていました。千葉県大網白里町では〈ゲンジボタル〉も〈へイケボタル〉も見られるようです。それにしても〈蛍袋にホタルを入れて遊ん〉でみたいものですね。




情報紙『oami あっとほっと』10号
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2009.12.1 千葉県山武郡大網白里町 あっとほっと編集室発行
非売品

<目次>
大網の大きな秋 みーつけた!
御料地であった后(きさき)の地名がついた「木崎」と自然の宝箱「十枝の森」
十枝の森
100回目を迎える自然観察と史跡探訪の大網白里町ウォーキング会
やってみませんか!




 
十枝の森

 森には大きな樹がたくさんあるので、その樹木が落とす葉はたいへんなもの。落葉の時期になると紅葉の絨毯になり、その見事な美しさに目を奪われる。森にあるモミジは京都から取り寄せられたようで、普通のものより葉が小ぶり。朝日を浴びた紅葉、色の濃淡がみられるまだら紅葉、葉が薄く透けて見える薄紅葉、西陽を受けて輝く紅葉、枯れる姿のうら哀しい紅葉、と雅び心で幾度も楽しめる。空をおおう大きな栃ノ木は春には赤オレンジの見事な花を、秋には栗に似た実と大きな茶色の落葉で季節を彩ってくれる。イチョウの巨木、珍しい梛(なぎ)、金魚椿という葉の先が魚の尾ヒレのように裂けているのもある。風と樹のささやきが聞こえる森はずっと大事にしたいもの。

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 こちらは大網白里の秋を特集していました。暖かい千葉県でも紅葉が見られるようです。〈十枝の森〉の写真もたくさんあって、楽しませてもらいました。






   
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