きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.12.7 神奈川県湯河原町・幕山




2010.1.9(土)


 午後から日本詩人クラブの新年会が東大駒場構内のレストランで開かれました。新年会ですから特別なことはなく、挨拶や歌や新人の紹介などで、なごやかな雰囲気でした。参加者は100名ほどで、例年通りでした。

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 写真は、昨年入会した皆さんの紹介です。若い人がずいぶん多く入ってきたなあという印象です。もちろん熟年の実力者も多く入ってきましたけどね。これからよろしくお願いたします。

 2次会は久しぶりに新宿・歌舞伎町のスナックに行きました。そのスナックのマスターにお会いするのも3年ぶりぐらいですかね。男3人で押しかけて、あとから来たお客さんも男同士。店の中は男だけという、まあ、ムサイ雰囲気ではありましたが、みんなでカラオケ三昧。お酒は呑み放題で、面白ろおかしく過ごしました。また今年も呑み続けるんだろうなという予感の、歌舞伎町の夜でありました。




長居煎氏詩集『恋々マトリョーシカ』
現代詩の新鋭15
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2009.12.10 東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊 1800円+税

<目次>
五月の岳に 2
T
胎 18         眠 21         おもはゆく 24
城跡爛漫 29      ふところ 32      恋々マトリョーシカ 35
U
宵の寝覚め 40     真昼の太陽 46     密室 50
ムササビっ ! 54   ウタキに海が眠っている 57
(とり)へんのメルヘン.60 九天直下 66      丸腰礼賛 68
踏み絵かよ 70
V
ラウンド・アバウト・ミッドサマー 72      トンネル掘りのゆめ 78
自画像 84       病棟 87        F宇宙にM宇宙 90
影ななつ 93      しゅゆ 96       雲の上で 99
犬吠 102
.       パレード 106
あとがき 110




 
恋々マトリョーシカ

ほのお
のなかの炎
揺らめく球根の
芽吹き

いずみ
のそこの泉
あふれる真砂
(まさご)
くもり

ふしめ
のなかの節目
次々あらわれる
年輪

ひとみ
のおくの瞳
ひらめき翳
(かげ)
赤光
(しゃっこう)

きみのおなかに
また君がいて
連綿とあたためてきた母がいる

きみのせなかに
また背子がいて
歌い継がれてきた父がいる

こどう
のなかの鼓動
とめどなく巡る
祈り

こえ
のそこの声
一夜で変わる
歴史

 4年ぶりの第2詩集です。ここではタイトルポエムを紹介してみました。ご存知のように〈マトリョーシカ〉は、入れ子構造になっているロシアの民芸品です。そこから想を得て、〈ほのお/のなかの炎〉、〈いずみ/のそこの泉〉などのフレーズが出てきたのだと思います。〈きみのおなかに/また君がいて〉、〈きみのせなかに/また背子がいて〉と人間の世界へ展開させたところが見事です。最終連の〈一夜で変わる/歴史〉は、入れ子の蓋を開けるように新たな世界を希む、詩人の魂の声だと思いました。




アンソロジー『あしがらの詩』
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2009.12.22 神奈川県足柄上郡開成町 足柄新聞社刊 非売品

<目次>
小春日和……/小葉     ふるさと/宵待子      ふたつの影/小葉
もういいかい…/宵待子   うりぼう/小葉       ピー子/お多福
里がえり/宵待子      花に嵐/小葉        春の味覚/お多福
山笑ふ/宵待子       つばめ/小葉        ジャムを煮て/お多福
まきばへ/宵待子      声の訪れ/小葉       初夏/お多福
夏はやっぱり!/宵待子   祈る/小葉         ゆめ/お多福
妖怪に遇える森/宵待子   音/小葉          初夏/お多福
夏惜しむ/宵待子      紙芝居の魅力/小葉     台風過ぎて/お多福
酔うほどに…/宵待子    イノシシの秋/小葉     通い道/お多福
天高く/宵待子       霜月/小葉         理想はPPK/お多福
理想郷/宵待子       干柿/小葉         師走/お多福
初詣/宵待子        カヤネズミ/小葉      はじめの一歩/お多福
風小僧がやって来た/宵待子 節分/小葉         心に栄養を/お多福
サイタサイタ/宵待子    桜は三月?/小葉      春本番/お多福
祈りの桜色/宵待子     河原道/小葉        春満喫/お多福
街の小さな美術館/宵待子  こいのぼり/小葉      一瞬を写す/お多福
ミュージアム・リレーはいかが?/宵待子         同居/小葉
蕎麦 その後/お多福




 
もういいかい…

すでに 肌をさす風に
冷たさは和らぎ
木々の枝という枝には
清楚な白
濃淡をわけた紅と
あしがらの里に
揃って花を咲かせた梅
澄みわたる空に向って
放つ香りに誘われ
鳥が歌い 人が集う
あの黄色い絨毯
(じゅうたん)
菜の花
あっ あそこにも
あそこにも そこにも
うっかり顔を出しては
ひっこめていた
春の赤ちゃんに
…もういいよぉ
と声をかけると
安心したかのように
おおきな南風が
本物の春を連れてきた
          (宵 待子) No.3 2007.2.25

 足柄地方の旬刊紙『あしがら新聞』は2007年1月1日に0号が創刊され、2009年11月5日の100号まで続きましたが、残念ながら現在は休刊となっています。しかし、
「あしがらネットラジオ」としてインターネットでは継続していますので、興味のある方はアクセスしてみてください。2007年9月の台風9号では、酒匂川に架かる築100年の十文字橋が落ちて全国的なニュースにもなったのですが、『あしがら新聞』は歴史的な背景も含めて詳細な報道をして、一躍、時の新聞にもなったりしたのですがね…。

 紹介したアンソロジーは毎号、3人の女性執筆者により載せられてきた「あしがらの詩」をまとめたものでした。0号から50号までを「上」とし、51号から100号までを「下」とした2冊組です。手作りの和装綴じ。あたたかみのある作りで、「あしがらの詩」にふさわしい装幀だと思います。作品「もういいかい…」には、温暖な足柄地方であっても〈本物の春〉を待ち望む気持ちがよく出でいると云えましょう。〈春の赤ちゃん〉を見つけた作者の〈もういいかい…〉〈…もういいよぉ〉という呼びかけが、読者を和ませてくれる詩だと思いました。




アンソロジー『あしがらの詩』下
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2009.12.22 神奈川県足柄上郡開成町 足柄新聞社刊 非売品

<目次>
まわり道/宵待子     巣立ち/小葉       まずは…の心で/お多福
箱根彫刻の森/宵待子   いつか来る/小葉     大変だけど/お多福
虫リンピック/宵待子   セミの抜け殻/小葉    無理なお願い/お多福
還暦/宵待子       紫式部/小葉       今日の話題は/お多福
古樹を描く人/宵待子   まぼろしの瀑
(たき)/小葉  頭は柔軟に/お多福
緑と清流のまち/宵待子  花が咲かない/小葉    お味は?/お多福
浮寝鳥/宵待子      乳牛のゆめ/小葉     年の初めに/お多福
冬の花/宵待子      あやかりたい/小葉    ご存知ですか?/お多福
駿河の国から/宵待子   初舞台/小葉       切実な願い/お多福
哀しき白木蓮/宵待子   花冷え/小葉       新学期/お多福
写真家の使命/宵待子   緑のやさしさ/小葉    次世代へのバトン/お多福
玉解く芭蕉に/宵待子   びわの効用/小葉     ありがとう!/お多福
国境を越えて/宵待子   ハクビシン/小葉     どうする?/お多福
涼を求めて/宵待子    トウモロコシ/小葉    夏/お多福
晩夏/宵待子       ススキのお箸/小葉    初秋/お多福
相思華
(サンチョ)/宵待子.  十三夜/小葉       くつろぎの空間/お多福
風の盆/宵待子      百寿/小葉        小さなしあわせ/小葉
大切なもの/宵待子    あすなろ?/お多福    詩
(うた)の旅立ち/山田行雄




 
ハクビシン

 ほんとうはかわいいヤツな
んだ。名前の由来の真っ白い
鼻すじ。くるっとした目。軽々
とした身のこなし。
 でもやっぱり、何とかしな
くちゃという気になる。だっ
て、一粒残らず食べたさくら
んぼに続いて、今度は、びわ
だもの。毎朝新しい皮が、根
元に散らばっている。
 ある夜、ドアを開けてみる
と、案の定ハクビシンと目が
合った。悪びれる様子もない。
 翌日、びわを一粒残らずも
いで、ジャムにした。
 ハクビシンはきっとやられ
た、と思ったにちがいない。
             (小葉) No.88 2009.7.5

 下巻で紹介した〈ハクビシン〉は木登りが得意なジャコウネコ科の動物で、日本では四国と本州の東半分に生息しているそうです。足柄地方は生息の限界地域に近いのかもしれません。作品は〈ハクビシン〉と人間との駆け引きを面白おかしく書いていますが、このあとにはトウモロコシを食べられた作品も出てきますから、被害は深刻なのだろうと思います。〈ほんとうはかわいいヤツなんだ〉と思いながらも〈ある夜、ドアを開けてみると、案の定ハクビシンと目が合った〉という状況を想像すると、そう、面白がってもいられないのでしょうね。






   
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