きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.12.7 神奈川県湯河原町・幕山




2010.1.22(金)


 日本ペンクラブ事務局に依頼していた「国際ペン東京2010」第4回詩部会の開催通知が先ほど発信されました。メールをお使いにならない詩人会員にはFaxやハガキで通知されますが、拙HPでも公開しておきます。P(現代詩)会員の皆さまのご出席をお願いいたします。


日本ペンクラブ 詩人会員各位

  国際ペン東京大会2010 
詩部会
   
第4回会合のお知らせ        2010年1月22日

 皆さまにおかれましては益々ご健筆のことと存じ上げます。
 2010年9月開催の「国際ペン東京大会2010」に関して、第4回の詩部会の打ち合わせを下記のように開催します。
 ご多用中、恐縮ですが、是非ご参加くださいますようご案内いたします。

日時 2010年2月5日(金) 午後1時〜3時
場所 日本ペンクラブ会館 3F大会議室
議題
1.役割分担の決定
 (1)アンソロジー担当:主にレイアウト、校正等
 (2)詩朗読会担当:会場案内、記録、写真等
2.アンソロジー進度状況
  現在までの参加状況、今後の参加予定人数、イメージ見本の確認等
3.今後の日程
  事務局より一覧表を出してもらい、全体の中での位置づけ確認等
4.その他
                 以上

 ご出席の場合は準備の都合上、EメールもしくはFaxにて2月3日までに事務局へご連絡いただければ幸いです。

              (社)日本ペンクラブ「国際ペン東京大会2010」実行委員会




総合文芸誌『中央文學』482号
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2010.1.25 東京都品川区
青山千望氏編集代表・日本中央文学会発行 300円

<目次>
◆小 説◆ふるさとは北海道/柳沢京子/2
     銀行日和/小田真理/24
◆詩作品◆狂詩の人物戯画絵巻展/佐々木義勝/12
●同人短信● 30
●編集後記● 30
●表紙写真●台湾/台北市(元宵節を楽しむ人々)●




 
狂詩の人物戯画絵巻展/佐々木義勝

  「生」

「8888888888の生命の連鎖と輪廻」
     ※
「文明の毒に 染色されて
 魔界で 奇形な怪物に進化する 悪徳文化人」
     ※
「善と悪の 細胞癒着で
 悪性に変態した 細胞の増殖によって
 突然 奇怪な妖怪怪人に 変身をし
 残忍な罪を重ねる
 普通の人々の 百面相の群像」
     ※
「食欲な複数の胃袋を
 凶暴な食欲で さらに肥大させ
 満腹することを知らない 物欲人間怪獣」
     ※
「地球儀の頭蓋骨に
 網
(ネット)の塊を詰めこんで
 群衆に紛れこみ
 仮想の地下繁華街に出現して 闊歩徘徊する
 のっぺらぼう顔の 奇態な夢遊病者」
     ※
「世襲権力者の 格差 組み立てラインで
 大量コピイ生産されて 誕生する 改造模造人間」
     ※
「平和な鳩を多彩にデザインした軍服を
 賛美謳歌して 密造される
 体制教育で洗脳された 擬態平和軍団」
     ※
「膨大な紙幣屑を
 狂乱しながら 食い散らかし 掻き集め
 恥知らずな 巣作りをして
 繁栄する虚構の摩天楼で 際限なく増え続ける
 人間の業と知能をもつ
 疑似溝鼠人間の巨大な強欲猛獣集団」
     ※
「闇の組織に増設された
 精巧な利権製造機で増産される
 横暴な 我欲の利権者と私利私欲の既得権益者」
     ※
「あらゆる生きものを蹴落とし
 幻想の天空にそびえる
 欲望の塔の螺旋階段を よじ登りながら
 血眼で争い 蠢く 権力覇者たちの
 途切れることのない 我欲むきだしの大群」

 「狂詩の人物戯画絵巻展」というタイトルの元に「生」「病」「老」「死」というサブタイトルがあり、12頁に渡る長い作品です。ここでは冒頭の「生」のみを紹介してみましたがスケールの大きさに瞠目させられます。スケールが大きいばかりではなく、〈奇形な怪物に進化する 悪徳文化人〉、〈残忍な罪を重ねる/普通の人々の 百面相の群像〉など、鋭く世相を抉る作品とも云えましょう。特にインターネットを指摘した〈仮想の地下繁華街に出現して 闊歩徘徊する/のっぺらぼう顔の 奇態な夢遊病者〉というフレーズには考えさせられた作品です。




詩誌『どぅるかまら』7号
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2010.1.10 岡山県倉敷市 瀬崎祐氏発行 500円

<目次>
−小特集−
岡 隆夫  アッケシソウ 2  水島 3      川曲の漁り 3  無錫の白柏 4
坂本法子  月と卵 6     はらほげ地蔵 7
河邉由紀恵 祖母の物語 8
タケイリエ 白秋 10
蒼わたる  泰山木 12     雨 13
境 節   急いで 14     自分の足で 15
川井豊子  連詩 眠る女 16
北岡武司  十一月の雲 18
水口京子  珠春 20
秋山基夫  神殿 22
小山淳志  徘徊 24
郡 宏暢  鎖 26
沖長ルミ子 同級生 28
斎藤恵子  坂 30
瀬崎 祐  蛇娘 32
長谷川和美 万華鏡 34
田中澄子  ヒロ子さんに 36
斎藤恵子  書評 魂のふるえ 38




 
鎖/郡 宏暢

錆びた足跡が
すべての価値を失った夏
灼けた街路に骨を擦り付けるようにして
歩いていたのだ
貝殻のように群れる不在へと呼びかけるために
あるいは
窄んだ手首に嵌められた不潔な時計を
別の正確さに置き換えるために
私たちは
紙と木でできた路地を分け入り
耳と目と口の垂れ下がる洗面台を覗き込んだりしながら
歩いていたのだ

体臭が黄色く涸びてゆく時代は
もう終わった
過去の躊躇を保存することに苦心した時代も過ぎ去り
今は
プラスチック色をした空の下で
子どもたちのように噴水に濡れている
緑豊かな公園に埋もれた旧市街を抜けて
産業道路の広い歩道を辿るとき
多くの見知らぬ家族たちが暮らす矩形の郊外に
私の故郷がいつの間にか準備されていたように
かつてそこにあったもの全てを打ち潰して
土人の皮膚と
合皮でできた固い踵とを交換するためのフリーマーケットに変えてしまえば
この街も
東京のようになれたはずなのに

いろんな人がやって来て
いろんな人が去って行く、夏
全ての必要な場所は道路で結ばれて
私たちは
どこまでもとどまれないことを知る
そして
いつしかそれを自明のものとして受け止めるようになってゆくように
黒いあぶらにまみれた種子と
乾燥した果実
そしてどこにでも持ち運べるような粉末の海を手に提げて
食べこぼしの海水浴の中に
ぶよぶよと白く浮かび上がる
誰にも見えない場所で
かつて自分が帰属した場所をかきむしりながら

海底には
走錨の痕のような
深い疵があるはずだ
明るい海辺の下を這う鉄鎖を引きずりながら
誰のものでもない故郷を懐かしみ
私たちは

錆びた脚を
ばたつかせている

 〈貝殻のように群れる不在〉とは、中身のない貝殻というものの本質を謂っているのだと思います。〈いろんな人がやって来て/いろんな人が去って行く、夏〉というフレーズからは、夏とはそういうものであったか!と改めて感じさせられました。〈どこにでも持ち運べるような粉末の海〉は塩のことかもしれません。そのようにおもしろい喩で満ちた作品ですが、この詩の鍵はタイトル通りの〈鎖〉なのでしょう。それも〈錆びた足跡〉〈錆びた脚〉を生み出す鎖。それは私たちの生を取り巻く鎖なのかもしれません。




会報『「詩人の輪」通信』28号
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2010.1.20 東京都豊島区
九条の会・詩人の輪事務局発行 非売品

<目次>
詩 夜明けは いつ/小森香子
「輝け9条! 詩人のつどいパート8in埼玉 桶川」
開会の言葉 実行委員長 大河原巌
「詩人の輪」呼びかけ人メッセージ 芝憲子・中正敏・甲田四郎
[つどいで朗読された作品=一部] 凝固/中原道夫 水について/平野秀哉 命の叫び/塚田英子 吹雪の晩
(ばんげ)/野田恵子
詩 二十一世紀の枕詞/佐相憲一
ご報告とお礼




 
夜明けは いつ/小森香子

年が明ける 昨日から今日へ
日本列島で一番 陽の出のおそいのは
沖縄なのだ この六十余年
九条の光の そそがぬ島は

明日を創る子らの 保育所を
造る金はない と言いながら
生活にあえぐ国民の 税金を
湯水のようにそそぎこむ 聖域

本当に核空母や原潜や 米軍基地が
この日本に必要か 国民のくらしに
なぜ国は憲法九条の 陽光をさえぎるのか
本当の夜明けは いつ 列島の果てまで

 第1連で〈沖縄〉の地理的な位置が〈日本列島で一番 陽の出のおそい〉場所だと気づかされます。その沖縄が〈この六十余年/九条の光の そそがぬ島〉であるとしたところに作者の洞察の深さを見た思いです。最終連の〈なぜ国は憲法九条の 陽光をさえぎるのか〉という問に、国はどう答えられるのか、私も聞きたいところです。今号の巻頭詩はコンパクトながら問題の核心を突く佳品だと思いました。






   
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