きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.12.7 神奈川県湯河原町・幕山




2010.1.25(月)


 午後から日本ペンクラブの電子文藝館委員会が会館4Fの小会議室で開かれました。いつもは3Fの大会議室を使うのですが、今日は珍しく小人数でしたから、広い部屋を暖めたり煌々と灯りを点ける必要はなかろうということで、10人も座ればいっぱいという部屋でやりました。小人数と言っても7人ですから、それなりの人数です。今日は久しぶりに担当役員の松本侑子常務理事もご出席になって、議論も深まりました。

 主な議題はHPのリニューアル。先日のコアグループでの結論が報告され、委員会として承認されました。国際ペン東京大会2010の特別予算としてリニューアル費を計上してもらい、それを元に数年計画でHPを更新していこう、後世に残る作品群を提供しようというものです。もちろん東京大会に間に合わせるべきものは早期に進めます。また、東京大会で電子文藝館のデモもやることになっていますから、その面での計上も含まれます。
 具体的な一つとしては、外国語HPを充実させます。電子文藝館の未使用の独自ドメインを持っていますから、それを使って外国語版のHPを構築します。英語・フランス語を主体として、できれば少数言語も読めるようなHPにしたいですね。
 いずれにしろ最終的には理事会の承認が必要ですから、2月理事会のあとの作業となるでしょう。生まれ変わる電子文藝館にご期待ください!




詩誌『孔雀船』75号
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2010.1.15 東京都国分寺市
孔雀船詩社・望月苑巳氏発行 700円

<目次>
魂の平和を永遠に−中村真一郎とその友人たち/佐岐えりぬ――6
*詩
コアラも、いる。パンダも/小笠原鳥類――10  未満/吉本洋子――13
その日/尾崎幹夫――16            アポロの船長/苅田日出美――18
空の遠慮/川上明日夫――20          尾びれ/中井ひさ子――22
裏庭で/坂多瑩子――24            飛行/岩佐なを――26
糸くず虫/小林あき――29           存亡/文屋 順――32
*新連載* パンドラの詩匣 宮沢賢治を読む(1)藤田晴央 34
*孔雀船画廊(24)岩佐なを――38
*吃水線・孔雀船書架/竹内貴久雄――40
*リスニング・ルーム/竹内貴久雄――42
*試写室――ウディ・アレンの夢と犯罪/おとうと/Drパルナサスの鏡/すべては海になる/カラヴァッジョ〜天才画家の光と影/新しい人生のはじめかた/サロゲート/息もできない  赤神信&桜町耀・選+国弘よう子 44
*連載 絵に住む日々《第二十一回》「少女の友」展とセザンヌ 小柳玲子 48
*詩
旅の途中アムステルダム郊外の町に泊まった   色が見えた/臺 洋子――57
 /日砂順二――54              ひまわりキッチン/望月苑巳――60
贅沢な死体についての一考察/望月苑巳――62  あのね/掘内統義――64
水曜広場〈クノップフのブリュージュ〉     ヤッテクルノダロウカ/福間明子――68
 /福間明子――66              コーネルおじさんの小箱/尾世川正明――70
いい薬旅立ち/松井久子――72         シンプル ライフ(6)/小紋章子――75
水/紫 圭子――78              鼓楼に躓いて/朝倉四郎――81
再生/脇川郁也――86
光り輝いた一瞬−それまでとそれから/川野圭子――86
*連載エッセイ 眠れぬ夜の百歌仙夢語り《第六十一夜》 望月苑巳 90
*航海ランプ――98 *執筆者住所録――99




          
かんだ
 
アポロの船長/苅田日出美

アポロ(11)号の
ニール・アームストロング船長は
はじめの一歩を月面に下ろすとき
なにも考えてはいなかった
自分の影が長くても短くても
そんなことはどうでもよいことだった
まして自分に影がないなどということは
気にもとめないことだった

月面ウォークが嘘の映像だなんて
とんでもないことなのだ
いま思い出しても身震いがするほどの場所だった
作り物のロボットのような
いやロボットよりもダサイ宇宙服を着せられて
(当時では最先端だった)
ピエロの気分で
求められるままにポーズを決めたさ

月で拾った石ころまで
世界中で展示されたさ

言いたいことは一杯あるが
年はとりたくないものだねえ
アポロ計画は成功していないなんて
月に人は着陸していないなんて
ニール・アームストロング元船長は
愚痴ってばかりだ

 しばらく前に私も〈月面ウォークが嘘の映像だ〉と言われて驚いたことがあります。たしかに、当時の私たちは白黒TVで映像を見ていただけですから、その裏で騙そうと思えば技術的には可能だったでしょう。しかし、そんなことをしたからといってどういうメリットがあるのか、仮に騙したとして永久に騙せるものではないとも思います。この作品は、そんな〈ニール・アームストロング元船長〉の〈愚痴〉を描いていますが、果たして真相はどうなのか。いずれはっきりしたことを知りたいものです。




詩誌『詩創』21号
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2010.1.31 鹿児島県指宿市
鹿児島詩人会議事務局
宇宿一成氏編集・茂山忠茂氏発行 350円

<目次>
詩作品
四季(死期)に問う‥‥‥‥‥茂山忠茂 2   瓦の音‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥茂山忠茂 6
来光‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥宇宿一成 8   僧‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥宇宿一成 11
発症‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥宇宿一成 14   しんがた‥‥‥‥‥‥‥‥‥宇宿一成 17
不起訴不当‥‥‥‥‥‥‥‥妹背たかし 19   老い‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥妹背たかし 21
うつ(上)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥美  澄 23   うつ(中)‥‥‥‥‥‥‥‥‥美  澄 25
躁(中)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥美  澄 26   うつ(下)‥‥‥‥‥‥‥‥‥美  澄 27
腕立て伏せ‥‥‥‥‥‥‥‥おぎぜんた 28   凝縮された水‥‥‥‥‥‥おぎぜんた 30
粉雪‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥植田文隆 32   迷うんだね‥‥‥‥‥‥‥‥植田文隆 33
春の雨‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥田中秀人 37   磯野家の秘密‥‥‥‥‥‥‥田中秀人 39
日本考‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥松枝 徹 43   五月の季節‥‥‥‥‥‥‥‥松枝 徹 45
この歌‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥岩元昭雄 47   講演雑感‥‥‥‥‥‥‥桐木平十詩子 51
言うことではないけれど‥桐木平十詩子 54   応答‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥徳重敏寛 57
花の美しさは‥‥‥‥‥‥‥‥徳重敏寛 58   花達の中で‥‥‥‥‥‥‥‥徳重敏寛 59
ひたすらなる歩み‥‥‥‥‥‥徳重敏寛 60   過渡期‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥野村昭也 62
鳩がとんだ‥‥‥‥‥‥‥‥‥野村昭也 64   矛盾‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥野村昭也 66
比べる‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥松元三千男 68   エッチ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥岩元 茂 70
お天道様と米の飯‥‥‥‥‥‥岩元 茂 72   冬の朝‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥江本 洋 74
節約‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥園田實則 76   お湯の町指宿市‥‥‥‥‥‥園田實則 77
詩集評・詩集評                詩創二〇号読後感
培養室‥‥‥‥桐木平十詩子/宇宿一成 78   生きる姿勢を詩に‥‥‥‥‥茂山忠茂 90
おたよりから‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥93   後記‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥97
受贈詩誌・詩集‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥98




 
発症/宇宿一成

肌をきれいにしたいから
君はコラーゲンを食べるのだという
では鶏を食うと鶏肌になるか
食べた物はみな
消化されて違うものになって
アミノ酸とかブドウ糖とか脂肪酸とか
そんなもので吸収される
吸収された後で
体の求めに応じて
それぞれの組織になったり
エネルギーになったりするので
食べたそのままで
君の肌をうるおすものではない

実際このテのコマーシャルは多すぎる
核酸だの
ヒアルロン酸だの
健康食品は売れているらしい
食べたものが
そのままのかたちで
体の成分になるなんて
ナンセンスもいいところだ
鋼鉄の体になりたいプロレスラーが
鋼鉄をつぶして食っちゃうかもしれないぞ
貴乃花になりたい新弟子が
よってたかって
貴乃花を食べちゃったり
そう言うと
めちゃくちゃ言うなと
鼻膨らませて君はおこった

だがかつて
(そんな昔の話ではない)
東南アジアの原住民もそう思った
英雄や祖先が死ぬと
その偉大な叡智を
少しずつ分け持ちたくて
住民たちはその脳を食ったのだ
かれらはクールーというプリオン病を
多く発症した
神経に潜む
病原物質を
取りこんでしまったからだ
ヒトがみょうな飼料を与えなければ
狂牛病だってあらわれなかったさ

いつか健康食品を介して
似たような病気が顕われるのではないかと
ぼくは思っているのだけれど
いっこうに
核酸もコラーゲンもその他もろもろも
売られやむ気配がないんだ

もしかすると
多くの日本人が
すでに
感染して発症しているのかもしれないよ
みょうに人をうらやんだりうらんだり
おちつきがなかったり
テレビなしではいられなかったり
死にたくなっちゃったり
そんな病気かもしれないさ
こんなことを書いてるなんて
僕ももう発症してるのかもしれないね

 私は興味がないので気にもとめていませんでしたが、たしかに〈このテのコマーシャルは多すぎる〉ようです。それはそれで効き目があるのかなと漠然と思っていましたけど、〈では鶏を食うと鶏肌になるか〉と言われると、そんな〈ナンセンス〉はないなあと気づきます。説得力のある言葉です。〈だがかつて/(そんな昔の話ではない)〉行われていたことと、現在の〈健康食品〉が同じ土俵にあるというのは、皮膚科医という作者の言葉だけに真実味を感じます。
 作品としては最終連の〈こんなことを書いてるなんて/僕ももう発症してるのかもしれないね〉というフレーズに好感を持ちました。高見に立ったモノの言い方ではなく、自分を低く描くことで作品の質を高めていると思います。






   
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