きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.12.7 神奈川県湯河原町・幕山




2010.1.31(日)


 横浜のマンションに住んでいた弟が、平塚の一戸建てに住み替えたというので、新居を見に行ってきました。新居とはいっても中古住宅をリフォームしたものですけど、2人暮らしには広すぎるほどでした。2階建てですが、まあ、半分でも大丈夫だわなあ。もっとも、2階建てじゃないと陽が入らない…。都市の住宅密集地の日当たりの悪さには驚くばかりです。日本人の平均的な住宅事情というところだろうと思います。おそらく、7割8割の日本人が同じような条件なんでしょうね。

 お土産には「土佐鶴」の一升瓶を持って行きました。もちろん私が呑むためです(^^; 久しぶりに弟と歓談して痛飲。子ども時代の思い出話やら親父の悪口やら。話は尽きることがありませんでしたが、そのうち酔いが回ってゴロリ。兄弟の家で呑むというのもなかなか良いものです。




詩誌『驅動』59号
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2010.1.31 東京都大田区
驅動社・飯島幸子氏発行 450円

<目次>
現代詩と「笑い」(十四) 周田幹雄 18
焚き火/ささおかみねお 1         元日に大弓を引く/長島三芳 2
時雨
(しぐれ)の人/長島三芳 4        迷路案内人/小山田弘子 6
御師
(おんし)の宿/忍城春宣 8        桜桃と入水(じゅすい)/中込英次 10
僧徳一と会津/飯坂慶一 12         台風の目/内藤喜美子 16
使い捨てられしもの/池端一江 26      バンコク通信 フィッシュテールロッジで/石川文絵 28
バンコク通信 わたしはトラ/石川文絵 30  駄目/周田幹雄 32
鞄/周田幹雄 33              了解/周田幹雄 34
追憶/金井光子 36             咆哮する虎/田中雄 38
バルコニーの鳥たち/飯島幸子 40
同人氏名・住所 42             寄贈詩集・詩誌 42
編集後記                  表紙絵 伊藤邦英




 
駄目/周田幹雄

明眸皓歯とは 美人の形容だが
七十歳を過ぎたその女性は 歯は総て自前で
漬物など小気味よい音を立てて噛み砕くのだ
眼底検査で 機器に顎を乗せると
 大きく目を開いてください
と眼科医が その女性に言った
 開いています
その女性が言った
 もっと大きく
と眼科医が言うと
その女性は 語気を強めて言った
 駄目です
検査が終わると その女性が言った
 目がもっと大きければよかった
眼科医が 素っ気なく言った
 ゴミが余計入るだけですよ

 失礼ながら、思わずアハハと笑ってしまいました。〈明眸皓歯〉の〈美人〉は、〈眼科医〉に言わせると〈ゴミが余計入るだけ〉なんですね。眼科医の言葉を拡大解釈すると、美醜と機能とは違うということなのでしょうか。日頃、美醜にしか目がいかない私などは、笑ったあとで我が身を振り返ってしまいました。ま、ゴミが入るほどの明眸ではなく、煙草のヤニで黄色く濁った歯は皓歯とはほど遠いのですが…。「駄目」というタイトルがよく効いている作品だとも思いました。




詩と音楽のための『洪水』5号
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2010.1.30 川崎市麻生区   800円+税
洪水企画・池田康氏発行 草場書房発売

<目次>
詩...02 國峰照子/西岡光秋/三井喬子/一色真理/中井ひさ子/坂多瑩子
短歌 川野里子/野樹かずみ...18 杉中雅子...87
Crazy Bard Airing...79 木下奏
原点の詩...68 嶋岡晨/聞き手=小笠原鳥類
特集 新美徳英の自然
 対談…北沢方邦+新美徳英...20 「縄文の音、生命の歌」
 詩...32 北沢方邦「青の瞑想」
 アンケート&CD guide ...34
  池辺晋一郎・中川俊郎・細川俊夫・井上道義・西村朗・横尾龍彦・寺嶋陸也・井阪紘・
  三縄みどり・堤剛・高橋アキ・佐野光司・畑中良輔・鍋島幹夫・高橋多佳子
 インタビュー...38 「世界肯定の音楽へ」聞き手=和合亮一
 論考…50 池田康「ヴァイオリン雷神となり」
 作品リスト...59
The Creating Players ...60 上野信一
往復書簡...64 ◆三輪眞弘+河津聖恵 文明の闇を透視する
論&文
◆岩崎美弥子 瀧口修道の音楽...80
◆玉城入野  次郎長わっしょい...88
◆海埜今日子 エッシャー、幼年が自在に境界を跨ぎ、私たちを…...92
◆池田 康  詩のための〈転〉の論理(5)...98
書評...67/96
野樹かずみ・河津聖恵『天秤−わたしたちの空』(評)松村由利子
原田道子詩集『曳丹』(評)南原充士
鈴木孝『鈴木孝 詩 作品集』(評)竹田朔歩
川野里子『幻想の重量』(評)池田康
木下奏詩集『
display』(評)深澤紗織
青木やよひ『ベートーヴェンの生涯』(評)池田康
雲遊泥泳...100 津田於斗彦




 
電車/坂多瑩子

なんどもシミュレーションをして
かあさんがこのことを知ったら
おかしな子だね
電車のなかで
ふとそんなことを考えたりして
赤と白の電車とすれちがう
速度が急に速くなって
あっという間にすれちがって
ちょっと考えたら当たり前のことだけど
ふしぎで不思議で
かあさんに何度も聞いた
ずっとむかしのこと
もしかしたら
聞きたくても聞けなかったのかもしれない
通過算や鶴亀算が
理解できるようになって
不思議も消えてしまったけど
かあさんがどんどん小さくなって
なにもしゃべらなくなって
なにもたべなくなって
不思議でふしぎで
どうしてって
かあさんに聞いてみたけど
通過列車が遅れています もうしばらくお待ちください
アナウンスが終わると
ゆっくり電車がやってきて
追い越していく
すれちがう電車がもう一台やってきて
一瞬とまったけど
私の電車は
動きだす
そしてまた電車とすれちがった
かあさんが死んだときのことを
なんども考えた

 算数の〈通過算〉や、その中の〈追い越し〉算、〈すれちが〉い算と〈かあさんが死んだときのこと〉を考え合わせると、無性に哀しい詩だなと思います。父親の歳、母親の歳を何歳越えた、などの言い方をしますが、これもある意味では追い越し算なのかもしれません。〈聞きたくても聞けなかった〉ことも多く、〈かあさんがどんどん小さくなって〉というフレーズは私にも実感です。日常、何気なく使っている「電車」から人間の生死を見た佳品だと思いました。






   
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