きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2010.1.13 静岡県函南町・丹那断層 |
2010.2.9(火)
午後から西さがみ文芸愛好会の運営委員会が開かれました。主な議題は、3月3日から開催される第14回「西さがみ文芸展覧会」について。各担当部門や特別展の進度状況が報告されました。各担当の6部門(俳句・川柳、短歌、詩、エッセイ・創作、書画、写真)は毎年のことですから、特に大きな問題もないようでした。写真部門は今回が初めてで心配していたのですが、3人が出品することになって、まあ何とか形になるかなと思っています。ちなみに私も出品します。写真は製造技術という面ではプロでしたが、撮影面ではド素人。それでも出品するのは人数を増やしたいという意図だけです。ご覧になっても、フン、と通り過ぎてください(^^;
特別展「播摩晃一の足跡」については、一昨日、播摩さん宅を訪れて資料をお借りしたことを報告しました。名著『西さがみ庶民史録』を中心に、詩人としての側面、民話・童話作家という側面の3本柱で行こうと思っています。
当番も決まりました。私は3日(水)と5日(金)の午後1時半〜5時までの分担で、8日(月)の午後は撤収ですから会場にいます。どうせなら村山にも逢っておくか、と奇特な方はその時間帯を狙ってください。お前の顔なんか見たくもないわ、ケッ、という方は避けてください(^^;
詳細は下記をご参照ください。皆さまのおいでをお待ちしています。
第14回 西さがみ文芸展覧会
【会期】2010(平成22)年3月3日(水)〜8日(月) 10時〜17時(最終日は15時まで)
【会場】小田原銀座通り 伊勢治書店3F ギャラリー新九郎 0465(21)3386
http://www.iseji.net/index.html
【展示内容】
(1)
特別展『播摩晃一の足跡』(『西さがみ庶民史録』全巻(1〜50号)展示 ほか)
(2)
会員の作品(6部門) 俳句・川柳、短歌、詩、エッセイ・創作、書画、写真
(3) 会員著書の展示及び販売
(4) 本会のあゆみ
*入場は無料です
○詩誌『続 左岸』33号 |
2010.1.31 京都市山科区 左岸の会発行 非売品 |
<目次>
山口賀代子 月光…4 咬まれる…6 はなれよ…8
新井啓子 舟…12 石…14 道…16
広岡曜子 森の時間…20 風景…22 ハンカチ…24
咬まれる/山口賀代子
「このあたり獰猛な毒虫に注意」
と警告の看板があったにもかかわらず
油断していた
あわてて傷の上部を縛り
唇で毒を吸い出す
咬まれたのははじめてではない
毒虫は
かわむかいの草地
売れない建売住宅の境界
階段の三段目
サッシ窓と網戸の隙間
深夜の路上
に 巣くっている
擦り傷
刺し傷
咬み傷は
咬んだときも
咬まれたときも
傷だらけ
若いころならばともかく
毒はゆっくりきいてくる
この〈獰猛な毒虫〉はただの毒虫ではないようです。〈若いころならばともかく〉、いまは抵抗力が落ちていると採れますが、例えば“男”という毒虫ならば〈毒はゆっくりきいてくる〉ことが納得できます。そう思って読み返すと、〈唇で毒を吸い出す〉、〈咬まれたのははじめてではない〉などのフレーズはかなりエロチックに見えてきますね。作者の意図とは違うかもしれませんが、そんな読み方も許されるだろうと思います。
○コミュニティマガジン『い』2号 |
2010.1.20 群馬県富岡市 いの会・樋口武二氏発行 400円 |
<目次>
扉絵・カット 須田芳枝 1
作品
風草/堤美代 2 遡上/新井啓子 4
市立図書館の中庭/柄沢絢子 6 石を投げる/樋口武二 8
エッセイ 本の虫籠2 佐伯 圭 10
評論 場所と経験 黒井千次『羽根と翼』論 愛敬浩一 14
匿名時評 福祉行政から離れて1 匿名子 27
詩集評 かめという女の記憶 金井裕美子 28
作品
よる/金井裕美子 31 ひぐらし鳴いて/関根由美子 32
作業日誌12/樋口武二 34
エッセイ
森番通信2 富沢 智 40 茫々記2 萩原常夫 42
連作短編小説 猫町商店街弐 バナナ連続盗難事件 新井隆人 44
作品
朝だらけの日常/伊藤信一 52 流砂/須田芳枝 54
目次・あとがき 56
遡上/新井啓子
風のない日においでと 渡し守は言う 赤い屋根の小学
校を目印に 川岸でユンボが大きく手を挙げるあたり
鱗を光らせて 鮭が上ってくるから
西から東へ川は流れる 一つは激しい堰を持ち 一つは
浅瀬が長く続く 二つの川はここで並び ゆるく弧を描
いて流れる 大きく流れが曲がったところ 湧くように
さざ波が光るところ あそこに鮭が上ってくるという
向こう岸には白い看板がある 風にあおられた枯れ草で
看板は見え隠れする 西日が藍色の川面を覆っている
そのまま影が深くなり さざ波を際だたせる 海のない
この土地を 鮭は覚えているという
風のない日にもう一度おいで 浅瀬まで舟を出してあげ
よう しばらくおいて迎えに来るから 鮭の掘った穴を
ごらん 渡し守は重ねて言う
土手の上から見渡すと 川は二枚の布になり はたはた
とはためいている 盛り上がった織り傷に すばやく風
が流れ込む 獲物を探す勢いで 川は流れる そのなか
に 鮭も 疲れた身体を並べるのだろう
鮭の掘る穴は深いのか その時澄んだ水は白く濁り 大
きく開いた口から 音にならない声が漏れるのか 立ち
枯れの草むらへ誘われる 不在の淵へ指を浸すと すり
抜ける水は 生温かいはじまりの証
身体の奥で風が舞う 轍がうねる砂利道を 薄い影をた
たみながら 命尽きるまで続くという産卵の 光の欠片
を抱いていく
〈鮭が上ってくる〉のを見においでと言う〈渡し守〉は、三途の川の渡し守なのかもしれません。〈命尽きるまで続くという産卵〉を見せることによって、〈遡上〉という生の役割と死の意味を教えているように思います。〈鮭の掘った穴〉は私たちの日常の澱の喩のようにも感じられます。たぶん作者の思いから外れているでしょう。そういう読み方もできるかなと拝読しました。
○護憲詩誌『いのちの籠』14号 |
2010.2.15
神奈川県鎌倉市 350円 戦争と平和を考える詩の会・羽生康二氏発行 |
<目次>
【詩】
メッセージ‥森田 進 5 虹‥原子 修 6
ヤサシゲや‥麦 朝夫 6 辺野古・五人のボート‥芝 憲子 7
いのちの木−渡嘉敷島にて‥日高のぼる 8 燕よ2‥御庄博美 10
千羽鶴‥絹川早苗 11 黒い太陽‥草野信子 12
紅彩‥石川逸子 13 六根清浄‥中 正敏 14
二〇〇九年八月三○日‥掘場清子 14 もやい石‥奥津さちよ 16
人間の学校.その144‥井元霧彦 16 われわれは安らかに生きたい‥竹内 功 18
薊‥柳生じゅん子 18 グローバル・ニュース/地上最大のショー‥崔 泳美 佐川亜紀訳・紹介 20
四字熟語‥南 邦和 22 貝のすむ町で‥李 美子 23
みんなで手をつなごう‥築山多門 24 死の肖像4‥関 中子 26
記憶にない‥ゆきなかすみお 27 おばあちゃんとハイカラ・ランデブー‥佐相憲一 28
氷の電流‥草倉哲夫 29 コンパニオン‥山田由紀乃 30
赤紙‥馬場晴世 31 千人針‥篠原中子 32
眩暈のする歩行〈稚児沢〉‥大河原巌 33 形見‥山野なつみ 34
用心‥岡たすく 35 ちゃあちゃん‥島崎文緒 38
日本近現代史の実像と虚像‥池田錬二 39 かくれんぼ‥南條世子 40
坂‥稲木信夫 42 検問‥伊藤眞司 43
嘘/尻拭い‥比尼空也 44 紙生‥日高 滋 45
人間は奇跡的な存在‥吉光 悠 46 鳥の声‥白根厚子 47
【エッセイ】
木下恵介作品に見る母親像(上)(「反核反戦映画」考六)‥三井庄二 2
二〇〇九年歳末の〈ぼやき〉‥若松丈太郎 36
拝啓アメリカ大統領オバマ様‥池田久子 37
あとがき‥48 会員名簿/『いのちの籠』第14号の会のお知らせ‥表紙裏
赤紙/馬場晴世
初冬の晴れた日
桜木町駅を出たところで
“赤い紙”を貰いました
「これが赤紙です」と書いてあります
あ 今日は十二月八日
太平洋戦争の始まった日です
従姉妹から聞いた話を思い出しました
終戦の前の年の九月 イタリアは無条件降伏し
追いつめられて東条首相は
大学生などの徴兵猶予をやめ
「満二十歳以上は全て入隊すべし」と――
冷たい雨の中を伯母と一緒に 十一月二十一日
神宮外苑の出陣学徒壮行会で
お兄様を見送ったときのことを
その一ヶ月後彼は空爆で戦死し
伯母が悲しみと夫のいない苦労で
病に倒れたことなどを
“赤紙”をくれたのは母親連絡会の方でした
従姉妹も恋人を戦争に奪われて
独身を通し十年前に亡くなりました
“赤紙”が決して出現しない
徴兵制度のない国が
二十七ヶ国もある*と知ったのは
この夏でした 嬉しい驚きでした
小さな国が多いけれど
軍隊の無い国をもっと増やしたい
日本の九条は守る
彼女の大好きだった海は この日
強い風に波だっていました
*前田朗著「軍隊のない国家」(日本評論社)
〈“赤い紙”を貰〉ったということに驚きましたが、そういう活動に敬意を表します。どこかの博物館で赤紙の現物を見たことがありますけれど、嫌な思いで眺めた記憶があります。その嫌な思いを忘れないためにも、いまの若い人たちに赤紙がどういう意味を持っていたのかを知ってもらうためにも〈母親連絡会の方〉たちのような人が増えればよいなと思います。
〈徴兵制度のない国が/二十七ヶ国もある〉というのも驚きでした。中南米の数カ国が〈軍隊の無い国〉だそうですが、徴兵制のない国はそんなにも多いのですね。もちろん日本もそのうちの一国です。二十七ヶ国が二十六ヶ国にならないようにしたいものです。