きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2010.1.13 静岡県函南町・丹那断層




2010.2.16(火)


 朝8時半ごろから雪がパラパラと降り出しました。しかしこの冬2回目の雪は、10時半には止んでしまい、積もりもしませんでした。この数年は本当に雪が少なくて、今年もあと1回降るかどうかだろうと思います。去年は遠出の予定がありましたから、クルマのタイヤをスタッドレスに替えましたけど、今年はそれすらもやっていません。少々の雪なら運転の仕方さえ注意すれば問題ないのです。過ごしやすい冬は歓迎すべきかどうか、迷うところではありますけれどね。




詩誌『黄薔薇』188号
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2010.2.14 岡山県倉敷市 田千尋氏発行 500円

<目次>
流れて・涼しい夏・遠く/境 節 P1
ことば/吉田重子 P4           夜の風鈴・ばった/井久保勤 P5
さくら/あおやますずこ P9        太宰治考/岡田久美子 P11
目的/水島睦枝 P13            寄り道/定岡久美 P14
十三夜/柴田洋明 P15           瀬戸内海のレモンの木・ふるさとは 春の海/吉川悠子 P17
街、嫌悪、わけ/麻耶浩助 P21       ふん・ふん・猫ふん/白河左江子 P24
特集 境節詩集『十三さいの夏』.P27    日笠芙美子 P27 井久保伊登子 P30 沖長ルミ子 P34
失意の日から・短詩2篇/椚瀬利子 P37
初恋/小舞真理 P40            歩きはじめた魂が・最後にあなたが選んだこと/井久保伊登子 P43
様相・いつの間に/一潟千里 P48      おやすみーっ・年の瀬/川越文子 P51
風/志智桂子 P55             部屋の中で/田千尋 P58
区長の仕事/小林一郎 P59
雑詠/木村真一 P61            血とわたし・婆藪仙人像・母の遺したもの/吉田博子 P62
随想(一瀉)P8 (小舞)P42(川越)P54 同人の詩集・評論P36 「永瀬清子の里づくり」P57
詩集紹介 川田絢音詩集(境)P65      詩集評 岡隆夫詩集(吉川)P66 崔龍源詩集(田)P67
編集後記(境・白河・吉田重子)P69     同人名簿P70
表紙 近藤照恵




 
目的/水島睦枝

人間には二種類ある
望まれて生れた者と
自ら望んで生れた者と
後者は人生の目的を持っている

この言葉を読んだ時
彼は前者で
私は後者であったのだ
と 知った

私は人生の目的を一つ達成した
それは悲しみを知るということ
抱かれているのに
彼はここには居ない

私ははるか遠くから歩いて来た
と 思った
中国では枕を交わすためには
千年の祈りが必要と言う
そのようにはるかな旅を

私にはまだ目的があるのかもしれない

 〈人間には二種類ある〉というのはよく聞く言葉ですが、〈望まれて生れた者と/自ら望んで生れた者〉は初めて知りました。〈私〉は〈後者であったのだ〉と自覚するのですが、その理由を〈悲しみを知るということ〉としたところに〈私〉の誠実さを見た思いです。そして〈私にはまだ目的があるのかもしれない〉のは、いまを生きている人間すべての「目的」なのだろうとも思いました。




季刊詩誌『新怪魚』114号
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2010.1.1 和歌山県和歌山市
くりすたきじ氏方・新怪魚の会発行 500円

<目次>
 五十嵐節子(1)空は見えたでしょうか    上田 清(4)冬の林道にて
  細川治男(6)夜が来て朝が来て      細川治男(7)暮れる
  前河正子(8)十月の声          桃谷延子(11)赤い靴
佐々木佳容子(12)彼方から          今 猿人(14)賭ける
  井本正彦(16)残像            岡本光明(18)続々空白の時間
  北山りら(21)しゃぼんだま        北山りら(22)あしなが蜂
くりすたきじ(25)夢の入口         中川たつ子(26)蝉
  エッセイ(31)山田 博                 編集後記
装丁/くりすたきじ




 あしなが蜂/北山りら

軒下の あしなが蜂の巣を
スズメ蜂が 喰い荒らしていた

スズメ蜂の胴体は
あしなが蜂の 三〜四倍はありそうだ

三羽のスズメ蜂は あしなが蜂の巣の
ひとつの穴よりも 大きな顔をして

小さな巣を いとも簡単に破壊している
我が身のため スズメ蜂には
当然のことだったのだろう

巣を喰われていても
ただ 浮かんでいるしかない
あしなが蜂の成虫が 三〜四羽いた
少し離れた場所で

呆然と立ち尽くすように 弱々しく浮いて
そばで見ているわたしも 電柱のように突っ立っていた

スズメ蜂は幼虫を喰い尽くすと さっさと立ち去った
あしなが蜂は もう 巣に戻ることはできない

突然の襲撃の恐怖と 居場所を無くした喪失と
子育ての役割を失った パニックのまま
やっと 浮かんでいた

二〜三日後 わたしは抜け殻になった巣を
棒で落とし そっと拾って手にのせた
穴には幼虫の残骸すら 残っていなかった

幼虫の生きる力は スズメ蜂の体で
魂ごと消化され 彼らの排泄と共に浄化するのだろうか

今度生まれてくるときも あしなが蜂に生まれてくるんだよ
生き抜いていける環境に 生まれてくるんだよ
スズメ蜂に 生まれなくてもいい
強そうだけど ほんとうは無力だ
わたしも 同じだよ
おまえ達を 助けてやれなかったね

ひ弱に散ってしまった あしなが蜂の成虫は
また どこかで やり直しているだろうか
何度も やり直せばいいんだよ
小さなアリが 大きな虫の死骸を
懸命に 運んでいるよ

わたしは 土を深く掘り
喰い痕の残る巣を 置いた
息の根を失った巣は
土の色に 馴染んでいた

 〈あしなが蜂の巣を/スズメ蜂が 喰い荒らしていた〉というのはよく聞く話ですが、〈今度生まれてくるときも あしなが蜂に生まれてくるんだよ〉という発想には驚かされます。普通なら、今度は〈スズメ蜂に 生まれ〉てこいと言いたくなるところでしょうが、作者は〈スズメ蜂に 生まれなくてもいい/強そうだけど ほんとうは無力だ〉と喝破します。この視線が大事なんでしょうね。〈何度も やり直せばいいんだよ〉と言われて、納得しました。

 なお、本号の全編を 
http://blog.goo.ne.jp/shinkaigyo-417 で読むことができます。ご参照ください。




詩誌『山形詩人』68号
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2010.2.20 山形県西村山郡河北町 500円
高橋英司氏方編集事務所・木村迪夫氏発行

<目次>
詩●小詩集 いろはにほへと/菊地隆三 2
詩●わたしの好きな浮舟X/佐野カオリ 5
特●k坂四丁目/佐藤伝 7
詩●墜ちる秋/木村辿夫 10
評論●詞華論あるいは花という余剰 ――菊地隆三随筆集『花病』/万里小路譲 12
詩●電柱/高橋英司 18
詩●眠れぬ魂・落ち葉の便せん/近江正人 21
詩●冬の構造/高啓 26
詩●人生論メモリー・抄/阿部宗一郎 29
後記 33




 
電柱/高橋英司

四六時中詩のことばかり考えているので
(いや、実は考えていない。考えた振りか、ぼんやりしている)
散歩道の凸凹に足を取られる
よろめいて オットット
傍らの電柱に掴まったら
無礼者とばかりに睨まれる
(電柱に目があるとは、勘違いかもしれないが)
むっと来て
電柱ごときが人間様に向かって何事だと
思い切り蹴りを入れてやったら
見かけ倒しの弱い奴で
倒木のごとくめりめりと悲鳴をあげて
スローモーションで横倒し
(どうだ参ったか、どんなもんだと威張ろうとしたが)
いつまで経っても
起き上がって来ないので
ありゃりゃ 困ったこと 本気じゃなかったのにと
おろおろしていたら 誰が通報したのか
ものの数分で救急車がやって来て
やがて警察と電力会社の係もやって来て
あんたやり過ぎだよ こんな長い物を
どうやって始末するつもりかと警察が聞くので
(一応詫びを入れて、ついでに)
伐れば何とかなるのではないかと提案する
救急隊員は慣れたもので
手際良く電動のこぎりを唸らせる
よくしたもので救急車に常備されているのであった
(この手の事故はよくあることらしい)
さて一件落着
電柱がなくなったので
散歩道は妙にさびしくなった
供養のつもりではないが
電柱が立っていたあたりにしばらく座り込んで
飯を食ったりペットの水を飲んだり
雑誌を読んだりしていた
往来に時々目をやる
(電柱はこんなふうにして毎日を過ごしていたのだと思う)
様々な人間が通る
老若男女 金儲けを考えたり
借金の工面を考えたり 女の口説き方を考えたり
受験に失敗してくよくよしていたり
中には何が嬉しいのかスキップして行く者もいる
電柱には申し訳ないことをしたので
身代りにずっとそこにいる

 おもしろい詩だなあと思います。何かの喩と捉えることもできるでしょうが、そんなことは考えなくてもいいでしょう。このまま素直に愉しめばよいのだと思います。それでも〈供養のつもりではないが/電柱が立っていたあたりにしばらく座り込んで〉、〈(電柱はこんなふうにして毎日を過ごしていたのだと思う)〉ところに作中人物の人間像を見ることができます。お前は〈申し訳ないことをした〉と思って〈身代りにずっとそこにいる〉ことができるか、それも問われているのかもしれません。






   
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