きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2010.1.13 静岡県函南町・丹那断層 |
2010.2.18(木)
朝起きたら大雪でした。10cmも積もっていました。雪国の人には笑われるかもしれませんが、久しぶりはしゃいでしまいました。物音がみんな吸収されて、空はドンヨリとして、スキー場に行った気分です。
写真は拙宅の庭の様子です。奥に見えるお宮さんも、欅の大木もみんな真っ白です!
でも、雪は9時には止んでしまい、午後は陽射しも出て、跡形もなく消えてしまいました。あぁ。せめて明日の朝までもってくれれば、今夜は雪見酒もできたのに…。でも、つかの間の雪国気分は味合わせてもらいました。
○詩誌『撃竹』72号 |
2010.1.30
岐阜県養老郡養老町 冨長覚梁氏方発行所 非売品 |
<目次>
蔵の前 ……………………………頼 圭二郎 2 青い魂 ………………………………北畑 光男 4
細く冷たく ………………………掘 昌義 6 キンニャモニャ〈隠岐・菱浦港〉…若原 清 8
海 せりあがって ………………齊藤 岳城 10 帆 ……………………………………斎藤 央 13
空色 −自閉症 …………………斎藤 央 14 魂(たま)透る空(くう) …………………前原 正治 15
僻地のテレビ ……………………前原 正治 16 淋しい日 ……………………………中谷 順子 18
ヨシキリとノウサギ ……………中谷 順子 20 海色の自転車 ………………………石井真也子 22
西そして東へ ……………………冨長 覚梁 24 櫂を漕いて−幼い三人の孫たちへ−冨長 覚梁 26
詩集装丁探訪 そのU …………頼 圭二郎 28 撃竹春秋 ………………………………………… 32
櫂を漕いて/冨長覚梁
−幼い三人の孫たちへ−
雪原を染める夕焼けに向かって
一羽の真っ白な鳥が その白さを脱ぐように
舞いあがったのだった
舞いあがって君たちを求めて小さく旋回した鳥
真下には一つの足跡が花模様に映えていた
確かにそのあたりは お父さんが
自転車に乗ったまま君たち三人を遺して
天に昇り
春になるとレンゲの花が咲く位置
これからも春になると愛用の自転車で
お父さんがやってくる道
三人の孫たちよ
沈黙の底へと沈んでいこうとしている
白い鳥を見失ってはいけない
花模様の足跡を消してはいけない
夕焼けのはずれた
白い鳥の姿と足跡とをさがしていると
雪原に星が出る
雪原に星に光る舟を浮かべて
お父さんが通るレンゲの花咲く位置まで
櫂を漕いていこう
いつやむとも知れない遠い吹雪のなか
あの星なのであろうか 君たちの小さな肩に 背負った生の
重さを 青い糸でつりあげている
詩作品ですから現実のこととして受け止める必要はないと思いますが、それでも〈お父さんが/自転車に乗ったまま君たち三人を遺し〉たのかと思うと、胸が締め付けられます。〈一羽の真っ白な鳥が その白さを脱ぐように/舞いあがった〉、〈あの星なのであろうか 君たちの小さな肩に 背負った生の/重さを 青い糸でつりあげている〉という美しい言葉の奥の、人生の残酷さを見た思いのする作品です。
○詩誌『饗宴』57号 |
2010.1.30 札幌市中央区 林檎屋刊 500円 |
<目次>
詩論 アメリカのフォークソングにある宗教
吉村伊紅美…4
作品
転身譚 13 塩田涼子…6 花の国3 瀬戸正昭…8
眠り 中村えみりぃ…10 かぐやの夜(1)/村田 譲…12
鰯/スノウ 山内みゆき…14 島国と大陸国家のあいだ 尾形俊雄…16
光 木村淳子…18 方舟−ひぐま 嘉藤師穂子…20
パデイマーケットの入り口 吉村伊紅美…22
2010・海外詩特集(アメリカ、カナダ、イタリア) 三人のラテン系女性詩人
マリアナ ルーチャ・コルピー 木村淳子訳…24 やさしい交わり パット・モーラ 木村淳子訳…25
熱 ジュデイス・オーチス・コフアー 木村淳子訳…26 アビの歌 ローナ・クロウジァー 松田寿一訳…27
雪の天使たち/野ガン 松田寿一訳…28 詩集「愛の空虚」から聖地 アルダ・メリーニ 工藤知子訳…30
ヨルダン河の近くで/わたしたちの勝利.工藤知子訳…31 (また無色の朝) 工藤知子訳…33
解説 90年代のラテン系詩人たち/ローナ・クロウジァー アルダ・メリーニ
レクイエムの詩学(4)(ベルリオーズ〜ブラームス)瀬戸正昭…37
連載エッセイ 林檎屋主人日録(抄)(18)(2009.10.1〜2009.12.31) 瀬戸正昭…42
●「饗宴」春季詩話会…36
●受贈詩集・詩誌…33
饗宴ギャラリー 朝田千住子「壁」…2
転身譚13/塩田涼子
それでね
と 風花は
枯れた草の上を舞い
すでに冬陽は
遠く低く かしいでいて
そこかしこに消え残る雪は
うすい紅に染まる
そして
深いため息のような
しじま
ひれ伏すかわりに
棒っ杙のように立っていると
風はふと止絶え
一本の蝋燭を
吹き消したような夕闇に
ああ あんなにたくさんの
鳥が飛ぶなんて
連作のようですから、この詩の感想だけを述べるのは難しい面もありますが、〈冬陽〉が〈遠く低く かしいでいて//そこかしこに消え残る雪は/うすい紅に染まる〉というフレーズが美しいと思います。さらに〈一本の蝋燭を/吹き消したような夕闇〉が佳いですね。北海道の情景と考えてよいでしょう。本州とは違う、凛とした空気を感じます。本号の巻頭作品にふさわしい詩だと思いました。
○季刊詩誌『タルタ』12号 |
2010.2.28 埼玉県坂戸市 千木貢氏発行 非売品 |
<目次>
米川 征 冬の日 2 伊藤眞理子 落穂を拾う 4
柳生じゅん子 海鳴り 7 峰岸了子 とりどりみどり 10
千木 貢 ひび 12 田中裕子 冬の日 14
寺田美由記 一日 16
*
現代詩のいま 柳生じゅん子 三十年たって 18
*
峰岸了子 魂の軽さ 22 柳生じゅん子 ウィークデー 25
伊藤眞理子 星の行方 28 田中裕子 流儀 30
寺田美由紀 夜回り 32
*
詩 論 千木 貢 文体の確立・第五章 34
一日/寺田美由記
看られる方は
行き場のない者に嫌なら他に行けというのでは
あまりにも酷な話ではないかと嘆く
看る方は
こんなにもこき使われて
道具のように扱われるのではたまらないと悩む
答えはいつも
その人がその人らしくと
教科書に書いてある
その人がその人らしくということは
手も足も出ず絵筆を口にくわえて
スケッチブックに向かうことか
あるいは身動きできず文字盤で
意志伝達を図ることか
朝起きて顔を洗う
この顔の洗い方は自分らしいか
この水の滴り具合はどうだ
使い古したこの顔で
都会の自由を不自由に生きる
看る方看られる方は常に行き来し
わたしは被害者になり加害者になり
複数の自分を使い分けて
夜 灯りを消す
何も見えない何も聞こえない
たった一人で
一人の自分に出会いに行く
〈看られる方〉〈看る方〉という現代的なテーマだと思います。〈答え〉が〈教科書に書いてある〉というのも、いかにも現代と云えましょう。しかしここでは〈その人がその人らしく〉とは何かと問いかけます。結果、〈たった一人で/一人の自分に出会いに行く〉しかないわけですけど、ここにも〈都会の自由を不自由に生きる〉現代人の姿があるように思います。
作品の内容とは離れますけど、〈使い古したこの顔〉はおもしろい表現だなと思いました。