きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2010.1.13 静岡県函南町・丹那断層




2010.2.19(金)


 昨日から書き続けた原稿をようやく仕上げました。月刊誌『詩と思想』に載せるもので、テーマは「ネット詩の可能性」。400字詰め原稿用紙9枚半の分量ですから、ちょうど見開き2頁になると思います。サイト主催者としての活動の紹介と、今後のネット詩の可能性について記せ、というものでしたから、これはまあラクチン。この11年に及ぶ拙HPのことを書けばいいし、私なりのネット詩の予測を立てればいいだけですから。意外とシンドかったのは、合わせて日本詩人クラブで開催したオンライン現代詩作品研究会の中から、5編を選び出せというものでした。

 日本詩人クラブではインターネットのメーリングリスト(ML)機能を使って、2005年から2008年の間に13回の研究会を行いました。会員会友の希望者約80名を対象に、作品提出者の詩をMLに流して相互に批評するというものです。総数200編ほどの中から5編を選びましたけど、取りこぼしが多くなってしまいました。今でも、あの作品の方が良かったかなという思いが続いています。まあ、それをやったのではきりがないですし、編集者の端くれとしては思い切りも必要なので無理やり納得させています。

 この依頼原稿の中で、自分でも驚いたのは〈ネット詩の可能性〉でした。いろいろ考えていくと、これからの詩は〈ネット詩の可能性〉ではないのです。〈ネット詩の可能性〉しか、ないと思えます。
 これまでの現代詩人の多くは、同人誌から登場してきました。今後ももちろんその流れは続きますが、いまの10代・20代の若者は当然のようにパソコンを使います。ネット詩にも当たり前のように投稿したり、自分のブログで発表したりするでしょう。その中から既成の同人誌に加わる人も出てきますが、ネット詩を体験した人がほとんどになると考えられます。従って、〈ネット詩の可能性〉ではない、〈ネット詩の可能性〉しかない、と思うのです。

 まあ、そんなことを書きましたが、4月末発売の『詩と思想』5月号(土曜美術社出版販売)に載ると思います。よろしかったらお求めになってご高覧ください。大きな書店で発売されますが、入手が難しい方は土曜美術社出版販売のHP 
http://www5.vc-net.ne.jp/~doyobi/ からご注文いただけます。




詩誌『石の森』154号
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2010.3.1 大阪府交野市 美濃千鶴氏発行 非売品

<目次>
旅路のあと/夏山なおみ 1         約束の言葉/西岡彩乃 2
糸/美濃千鶴 3              天からの使者/石晴香 4
一杯のコーヒー/山田春香 4        眠り/上野 彩 5
ひめくり/金堀則夫 6
吉野恵詩集「雫」を読んで 美濃千鶴 7
《交野が原通信》二六九号 金堀則夫記 9
あとがき




 
眠り/上野 彩

寒く、冷え切った仏間に入ると
肌をピリリと刺すような
透明な空気が鼻腔をかすめた
刺繍の施した白い掛け布団のふくらみに
紙につつまれた刀がへこみを作っていた

わたしの視線が
足元から順に動いていく
首、肩・・・・
頭部を見ると祖父の表情は見えず
白い布で覆われていた

布をとると
祖父は眠っていた
半開きの口から
呼吸もしないくらいに
ぐっすりと
おでこが寒そうだったから
撫でて声をかける

幼い頃寒い日の朝に
凍った水たまりの破片を
一枚つかんで友達に見せた
あの温度がした
こんな寒いところに寝かせていたら
風邪をひく
みんながいる
隣の部屋で寝かしてあげたほうがいい
そうしたら
きっと目を覚まして
よく来てくれたなって
言ってくれると思うから

 〈祖父〉の遺体に接した作品ですが、最初は〈わたし〉の〈幼い頃〉の思い出だろうと考えましたが、違いました。現在のことと採ってよさそうです。ある面では冷めた視線ですけれど、それだけに〈わたし〉の哀しみが感じられます。最後の〈きっと目を覚まして/よく来てくれたなって/言ってくれると思うから〉がそれを物語っていると思います。




詩誌SPACE90号
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2010.3.1 高知県高知市
大家氏方・
SPACEの会発行 非売品

<目次>

防空壕と畑のある家/中上哲夫 2      まわりについて考える/近澤有孝 5
安眠枕/高岡 力 8            かかしの忘却/松田太郎 10
景品/木野ふみ 14             さぁ唄いましょう・カタコト記/かわじまさよ 16
この冬は/坂多瑩子 18           サンダル/萱野笛子 20
還暦(3)/中原繁博 22           じゅごんの芽/豊原清明 24
あかりのなかを/日原正彦 27
  §
ムダな生の/中口秀樹 51          転生へ/尾崎幹夫 54
とびら/山川久三 56            高速バス/筒井佐和子 58
『にげかすもどき』/南原充士 60      天使・日食/笹田満由 66
無題/内田紀久子 70            シェフ/秋田律子 74
回り燈籠の絵のように(15)/澤田智恵 78   ヘリコプター/指田 一 86
きりぎりす/大家正志 88

詩紀 毛糸の帽子/山崎詩織 76       短歌 大石聡美 68
俳句 内田紀久子 71  秋田律子 72    エッセイ 「とんちゃん」幻想/山沖素子 92
シナリオ 飢える恋人/豊原清明 94     評論 サロメとヨハネの運命/内田収省 30
編集雑記 大家 96




 
とびら/山川久三

起きあがれない
ベッドにかけて
せめて かゆ
すすってみたい

呼ばないでくれ
返事しようとする
力が失せている

遠くに霞む白い腕
伸ばしてくれ
もっと近く もっと

手を引きずり込む
替わってくれ
しなければならないこと
が まだ ある

葬儀はしてやる きっちり
少人数だが
こころ 込めて

秋の光 はねかえす
川 越えて 山道
のっそり 鈍重な横腹
突き出す エントツ

職員の最敬礼
なんだ よせ
おれを押し込むのは

閉めるなっ

はじめて見る 血と肉汁
たっぷり吸い込んだ
(かま)の天井
おっ
炎が噴き出す

 「とびら」は死体焼却〈窯〉の扉のことでよいと思いますが、なんともリアルです。生きている人間にとっては誰ひとりとして体験したことのない状態ですけど、まあ、こんなものでしょうか。それにしても詩人の想像力というのは凄いものだなと思います。この想像力の自由さも詩の一つの魅力だなと思いながら拝読した作品です。






   
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