きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2010.1.13 静岡県函南町・丹那断層




2010.2.25(木)


 一日中あたたかい日でした。関東地方では春一番だったとか。拙宅でも午後から風が強くなりました。でも、午前中は風もなく穏やかでしたので、久しぶりに近所を30分ほど散歩しました。カメラを片手に菜の花や梅を撮って歩きました。マクロレンズだけを着けていきましたけど、これも1年ぶりぐらいだろうと思います。

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 撮った写真がこれです。結局、最後に戻って来て、畑の隅に植えている枝垂れ梅が一番気に入りました。なんのことはない、青い鳥は拙宅にあったという次第。マクロの威力を堪能した、春の散歩でした。




片山礼氏小詩集『本屋で』
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2010.2.10 大阪府貝塚市 私家版 250円

<目次>
途上………………3  本屋で……………4  とくべつ…………6
染まり方…………8  王様………………9  いなくなる前に…10
終電………………12  路上の自由………13  使命………………14
くまさん…………15  冬に旅を…………16  世相………………17




 
本屋で

駅前の本屋で
幼稚園くらいの女の子が
お母さんに
「これ買って。」
好きな本があったのね
よかったね
「何これ。」
?お母さんの声
「これ絵本じゃないの。」
??絵本がどうしたのでしょう
「駄目!
あなたもう五才でしょ。
絵じゃなくてもっと字の多い本にしなさい。
漢字をたくさん読みなさい!」

ああ人生とは
なんてつまらないものだろうと
思っても
そんな言葉をまだ知らないので
子どもは黙って立っている
空に浮かぶ妖精やオバケの一家やメガネをかけたウサギさんたちと
もう会えなくなった本屋の真ん中で。

 小詩集と銘打っていますが、もう何冊も詩集を出している方のようです。ここではタイトルポエムを紹介してみました。〈五才〉の〈幼稚園くらいの女の子〉に〈漢字をたくさん読みなさい!〉という〈お母さん〉は、すでに小学校受験などを考慮しているのでしょうか。漢字がそのためだけに覚えられるとしたら哀れなことですね。〈空に浮かぶ妖精やオバケの一家やメガネをかけたウサギさんたちと/もう会えなくなった〉女の子は、この先どういう人生を歩んでいくのでしょうか。そんなことを考えさせられました。




詩誌『谷神』17号
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2010.3.1 千葉市稲毛区
楓舎・中村洋子氏発行 非売品

<目次>
春隣 中村洋子 1             眼鏡 中村洋子 2
初夢 田中憲子 4             十二単 田中憲子 6
《顔》−その皺− 石村柳三 8       早朝の入江にて くろこようこ 10
こぼれる 肱岡晢子 12           喪失 肱岡晢子 14
楓舎の窓 中村洋子 16
あとがき




 
早朝の入江にて/くろこようこ

漁夫の家か
農夫の家か
番犬が吠えている広い庭を見ながら
防潮林の角を曲がると
房総の海の入り江が
目の前にひろがる

浅草海苔を養殖するという
その場所は
淡い光の糸に潮の香がたわむれ
そのとき
遊歩の足はしばしたたずむ

風景の墨色の輪郭線が
視界のはじから
体のすみまで引きこまれ
体内に残像となるころ
冬の朝は
夜の出口のあたりで
波音もなく静まり

透明に張りつめた空気の
房総の浜辺で
人はたゞ
点景のひとつとして在るだけ

 〈房総の海の入り江〉が眼に浮かぶような作品です。〈淡い光の糸に潮の香がたわむれ〉というフレーズ、〈風景の墨色の輪郭線が〉〈体内に残像となる〉という描写が墨絵のように浮かんできます。〈冬の朝は/夜の出口のあたりで〉という詩語も佳いですね。まさに〈透明に張りつめた空気〉を感じさせる佳品だと思いました。




個人誌『サヴァ?サヴァ』8号
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2010.2 岡山市北区 苅田日出美氏発行 非売品

<目次>
籠盛卵        たまごかけご飯    西南西
河骨         洪水        
.『てんぷら山田』
あとがき




 
『てんぷら山田』

そこで揚げられていたのは
れんこんや海老などでなく
せまいカウンターに座っている客の
時間だったのかもしれない

30年以上も前から
てんぷらが食べたくなると通っていた
昼のおまかせ定食を注文すると
「おまかせ ひとちょう」と大きな声でかえってくる

どうして一丁が
ひとちょうとなるのか
威勢のいい声なので耳にもうれしかったし
かき揚丼につゆをかけるときのパリパリとはねる音も

食べたいと思ったらいつでもそこに
真っ白い割烹着のご亭主がいるはずなのに
くも膜下出血であちらの世界へ
店じまいされていた

 拙HPでは初めての紹介になる個人誌です。〈そこで揚げられていたのは〉〈せまいカウンターに座っている客の/時間だったのかもしれない〉という新鮮な感覚に驚かされました。〈威勢のいい声なので耳にもうれしかった〉というフレーズにも共感します。最終連は意表を突かれましたけど、それだけに作者の詩心を刺激したのでしょう。この作品には該当の店らしい看板の写真が添えられていましたが、わずかに見える背景のシャッターは閉まっていました。






   
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