きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
100225.JPG
2010.2.25 神奈川県南足柄市・枝垂れ梅




2010.3.4(木)


 西さがみ文芸愛好会の「第14回西さがみ文芸展覧会」は今日が2日目。私は受付当番ではなかったので行きませんでしたが、後日、来場者が60名近くだったことを知りました。昨日の初日は70名をこえていましたけど、通常は50〜60名ですので、今日はまあ通常通りかなと思います。後日来場者名簿を見ると、私がお誘いした人に中でお一人来てくれていました。ありがたいことです。




後山光行氏著『詩の卵をさがして』
海外異文化紀行記T
shi no tamago wo sagashite.JPG
2010.3.1 大阪府岸和田市 私家版 非売品

<目次>
小乗仏教の国 タイ国         6   ポインセチア咲く フィリピン記憶記  10
うるわしの台湾 二十年前の記憶から  14   中国(広東省)雑 情報(1995)1 18
中国(広東省)雑 情報(1995)2 20   中国(広東省)雑 情報(1995)3 24
中国(広東省)雑 情報(1995)4 27   中国(広東省)雑 情報(1995)5 29
果物実る島  インドネシア      32   ビルは大きな芸術品 シンガポール   36
夜熟れて落ちる果物 マレーシア    40   欧州の記憶から            45
光眩い国 アメリカ合衆国       47   絵本の風景から ドイツ        52
あとがき




 
中国(広東省)雑 情報(1995)3

                   (二〇〇一年十一月発行 粋青二十七号)
 古いメモを見ながら、もうこのような事は無いのだろう、と想像しながら写している。私が三ヶ月足らず駐在した深
の風景の一部である。

21 広東省内を見た限りでは、様々な形のビルが建てられている。丸や三角や様々なデコレーションである。但し、鉄筋を入れたのみの構造(十階程度までは)で、レンガを積み上げたものである。(ビルはまだ溶接構造、H型鋼構造になっていない)
22 移動(携帯)電話を持っている人は多い感じ。公衆電話(公用電話という)はほとんど無い。少ない。
23 公衆電話が無いので、町のたばこやさんなど電話機を店先までだして、有償で「公衆電話」をしているところがある。多分高いのだろうが、使わざるを得ない。
24 レターファイルを購入(外幣免税商場で)したが、使用されているホッチキスの針は錆びていた。ちなみにファイルは Mide in Germany。
25 書店で本を買うと、本屋の記念スタンプを押してくれる。どうも中国の本屋さんの習慣のようです。
26 とにかくほこりっぽい。一応舗装がされている(特に深
は)が、工事中が多い事。深以外では田舎に行くほど土道が多い為と思う。(いつか電車に乗っていて、窓の外、農道に近い主要道路を走る車の後ろにできる、大きなほこりの舞い上がる様は、車窓からは美しい風景でもあった。)
27 唐山(天津から百五十キロの北部の都市)あたりと広東省とはやはり大きく異なる。香港に近い為かこちらが裕福な感じ。一般の給料ベースも高いらしい。(加工区内は更に高い。)広告看板(ネオンサインも含め)、北はわずか、南は多い、しかし夜が暗い。
28 田舎を見た感じでは、(1)大きな建物でも破壊され放置された感じのもの。(2)新規建設中の途中放置、(3)つぶれた工場?等々が多く目立つ。
29 中国の省の名前(現地の人とは中国語、日本人間では日本語読み)、場所、中心都市名(中国語も)が頭のなかに入っていれば話しが早い。
30 深
は中国の中では製品(購入品)が豊富にある。従って各地から、観光?兼買物(観光地が一ヶ所、ミニワールドと言って世界の有名物のミニチュア=と言ってもテレビ塔など五十メートルくらいか?=とショーなどする遊園地。入場料 中国人九十元、外国人百八十元。中国文化村等あり)目的で来る人が多いらしい。デパートでも田舎の人がウロウロしている。
31 外国人二重価格が生きている。(右記、これは会社のレクレーションで行ったのだけど)
32 工場訪問時(標示が少ないので)場所や道を尋ねても、半分以上は出鱈目(まるで知っているように云うが)。例えば守衛に聞いて指示通り(2F、3F)行っても、目的地に着かない。合っていた事が無い。
33 深
は各地の人が集まっており、漢字の名前の読み方、アルファベットが異なることあり。(古里の発音で名前を表示するため)
34 レストランヘ入ると何処でも「何のお茶?」と聞かれる。
35 一般の郵便荷物(小包類)は配達してくれない。郵便局まで取りに(戴きに)行かねばならない。

 数枚のメモからアットランダムに抜き出してみた。ここに書いたそれぞれが、異文化との接触で驚きだったが、既に五年以上を経過し、大きく変わってしまったことだろう。いや、中国五千年の歴史のなかで瞬間だから、変わってはいないかも?。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 サラリーマン時代の大半を海外関連の仕事で過ごしたという著者の、個人誌『粋青』に発表したエッセイをまとめたものです。ここでは「中国(広東省)雑 情報(1995)」から「3」を紹介してみました。行頭の番号は「1」からの通しナンバーです。体験した頃から起算すると15年ほど前の話になりますから、中国も大きく変わったかもしれません。あるいは〈中国五千年の歴史のなかで瞬間だから、変わってはいないかも?〉。32や35はいかにも中国らしいなと感じますが、今はそんなことはないんでしょうね。〈異文化との接触で驚きだった〉ことを追体験させてもらいました。




詩誌『きょうは詩人』15号
kyo wa shijin 15.JPG
2010.2.18 東京都足立区 長嶋氏方発行 400円

<目次>
●詩
眠れ             長嶋南子 2   火事            長嶋南子 4
ヘイ叔父           小柳玲子 6   雀の宿           吉井 淑 8
秋日             鈴木芳子 10   つまずく          万亀佳子 11
大嵐のあと 朝のウォーキング 森やすこ 12   ふつうの日         森やすこ 14
上の湯にて          伊藤啓子 16
●エッセイ 詩の森に迷い(1) 小柳玲子 18   表紙デザイン 直井和夫




 
眠れ/長嶋南子

眠りかけると
じゃまするものがいて
わたしの胸を針でつつく
ハッとして目が覚める
つついたのは
死んだ父のようでも母のようでもあり
暗い目をした息子のようでもあり
わたしには息子がいないようでも
いるようでもあり
おまえが息子のお面をかぶって
自分の胸をつついているのだろう
と声がする
母が眠れないのはかわいそうといって
針をひき抜き
わたしをほどいて縫い直している
母だと思っていたら
おまえは母のお面をかぶっているのだろう
なにも縫えないくせに
手元を見ればすぐにわかる
と別の声がする
これらのことは
本当は眠っているのに
眠れない夢を見ているのだと
自分にいい聞かせる
眠れよ
わたし

 〈おまえが息子のお面をかぶって〉いるのだろう、〈おまえは母のお面をかぶっているのだろう〉という〈声〉は〈眠れない夢を見ている〉からだと〈自分にいい聞かせる〉わけですけど、それは内心の声なのかもしれません。私たちは実は日々、そういう声と格闘しながら生きているようにも思います。その一時の休息を得るために〈眠れよ/わたし〉と言わざるを得ない、そういう詩ではないかと感じました。おもしろい視点の作品です。




詩誌『パレット倶楽部』9号
palette club 9.JPG
2010.3.3 埼玉県三郷市
植村氏方連絡先・パレット倶楽部発行 非売品

<目次>
笠間由紀子…咲く/書きとどめて…2
藤本敦子……水産み/木のことば…6
熊沢加代子…自画像のための忠実な画布/白いものは良い…10
植村秋江……きょうはどこまで/BGMはバッハで…14
重永雅子……また あした/食べる…18
<エッセイ>
熊沢加代子…詩のタイトル…22
<スケッチノート>…24
あとがき




 
咲く/笠間由紀子

水色の洗濯バサミで
角を ピンととめられたような
春の朝の空気だ

先週一週間は
冬に逆もどりの寒さだったから
ようやく開きはじめた桜は
もういいかい? まだだよ
とまどい気味だったけど

刻一刻
太陽の光ですべてが
あたためられて行く
あと数日で
桜は まあたらしいランドセルや
少し緊張した新人たちを
祝福して 舞いおちる

昨日 彼女は云った
もう一度 夢を見る と
思いがけず まぶしい言葉だった
たぶん や もしかしたら
かもしれない なんて曖昧なシッポはつけずに

もう一度 夢をみる
百年の桜だって
新しく鮮やかに 花開かせるのだ と
 (知りあった十代の頃の
 まっすぐな瞳を思い出した)

もう一度 夢をみる
そう 春なのだから

 第1連から魅了される作品です。〈春の朝の空気〉をこのように書いた詩に初めて出会いました。この〈ピン〉とした感触が最後まで読者を離さないと思います。〈たぶん や もしかしたら/かもしれない なんて曖昧なシッポはつけ〉ない、〈もう一度 夢を見る〉という〈彼女〉の言葉も良いですね。春は〈まあたらしいランドセル〉に代表される〈少し緊張した〉面持ちが、大人たちにも伝播する季節なのかもしれません。






   
前の頁  次の頁

   back(3月の部屋へ戻る)

   
home