きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2010.2.25 神奈川県南足柄市・枝垂れ梅




2010.3.10(水)


 日本詩人クラブでは隔年で関西大会を開いています。今年は開催年にあたり、5月8日〜9日に大阪で開催されます。理事は出席を義務付けられていますけど、今年の私は理事ではありません。たまにはサボるか!と思っていたのですが、そうもいかなくなりました。プログラムの中で毎回10人ほどの会員が詩の朗読をするのですが、その中に私も加えられてしまいました。日本詩人クラブのイベントで朗読をするのは初めてだと思います。これはきっと、私をサボらせないようにしようという謀略だわな(^^;

 朗読詩集も作りますから、事前に詩を寄こせと関西担当理事から連絡がありました。今日はそれを作って送りました。5分ほどの朗読だそうで、短い詩なら2〜3編で調節しろというので、最新の2編を送りました。おいでになる皆さんは、よろしかったら聞いてください、読んでください。




個人誌『ばらいろ爪』創刊号
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2010.3.21 滋賀県大津市 北原千代氏発行 非売品

<目次>
ルルのいる家
薬草園
花束 須賀敦子さんへ(i)――フレスコバルディのtoccata
(トッカータ)――




 
ルルのいる家

ルルは甘いのです
足も尻尾も
くたりとした耳のうしろの毛も
眼やにまでも
「ルルは幾つになったの」
ため息がでます
ルルはおしっこがしたくて
足をふるわせている

里は山に取り囲まれ
おどろいたように日が翳って
ストーブの炎が濃くなる
風がうねっています

ト長調のほがらかな音楽に
うるんだ眼をするルル
しおからいおしっこを絨毯に撒いて
叱られている
歩きはじめの仔犬よりおぼつかない
うしろあし
ルルはすぐにまどろみます

ルルとわたし
身を寄せあって
たがいの骨と肉をたしかめる
ルル ルル
ルルの耳はゆるいのです
「ねえ あの音はなんでしょう」
風の渦巻く山家で
魚もおそれる海溝を聴いています

 新しい個人誌の発行です。おめでとうございます。誌名の『ばらいろ爪』には健康的なものを感じました。紹介した詩は創刊号の巻頭作品ですが、〈ルル〉は〈歩きはじめの仔犬よりおぼつかない〉とありますから子犬ではなくハムスターなどの小動物かもしれません。詩語としては〈おどろいたように日が翳って〉、〈魚もおそれる海溝を聴いています〉などのフレーズがおもしろいと思いました。今後のご発展を祈念しています。




詩誌『極光』13号
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2010.3.10 北海道小樽市   1000円
原子修氏方・極光の会 花井秀勝氏発行

<目次>

きょうが終わって/野村良雄 2        オリーブ・オイル/橋本征子 4
旅のはじまり/岩木誠一郎 6         ペダル/竹津健太郎 8
ポエティック・エッセー 一瞬の奇跡にすぎないという意味で/熊谷ユリヤ 10

裏窓/鷲谷峰雄 14              伴侶/渡会やよひ 16
済州の秋風/若宮明彦 19           さむけ/谷崎眞澄 22
上海行/田中聖海 24             残照の村/坂本孝一 26
文明論 縄文の海−豊饒の渚から/若宮明彦 28

八月の父の行方/斉藤征義 32         八月/石井眞弓 36
叙事詩 原郷創造 序曲 天狼泣走/原子修 38




 
旅のはじまり/岩木誠一郎

ガード下の店で
焼き鳥をほおばっていたとき
わたしの旅は
はじまっていたのかもしれない

そのように
火の匂う場所から
いくつもの旅立ちを重ね
今夜も
うまく閉まらない扉を鳴らし
店主の声に送られながら
雨あがりの街に踏み出せば
頭上を通過する列車のひびきに
記憶はかすかに泡だって
追い越そうとするものの影が
濡れたひかりの上をすべってゆく

目を閉じるだけでいい
そろそろ出発を告げるベルの音が
ホームから降ってくるころだ

 〈ガード下の店〉には私も魅かれるのですが、なぜ魅かれるかの一つの回答がここにはあるように思います。そこから〈わたしの旅は/はじまっていたのかもしれない〉のですね。そして私たちは〈火の匂う場所から/いくつもの旅立ちを重ね〉てきたのでしょう。お酒で気分をリフレッシュして、また新たな旅を始める、〈ガード下の店〉はその再出発の店なのだと改めて感じました。




詩と評論『操車場』34号
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2010.4.1 川崎市川崎区 田川紀久雄氏発行 500円

<目次>
■詩作品
タダイの末裔――14 坂井信夫 1      人生の四季 冨上芳秀 2
路地から 秋葉長榮 4           Daylight――ひのひかり 野間明子 5
かぼちゃ仙人 新保哲夫 6         胸の痛み 田川紀久雄 8
旅 長谷川 忍 10
■俳句
シャツ脱ぐ 秋葉長榮 11          雪の深さ 井原 修 12
■エッセイ
「徇情街路」によせる 井原 修 13     ポオ、ルドン、そして気球譚−つれづれベルクソン草(21) 高橋 馨 14
ランボー追跡(一) 尾崎寿一郎 16      亀岡新一画集 畑にて2000年より〜2008年
浜川崎博物誌(8) 坂井のぶこ 19      晩秋まで 新保哲夫 20
末期癌日記・二月 田川紀久雄 21
■後記・住所録 31




 
旅/長谷川 

 V

雨音は
藍色のしじまを辿る
家並みも
海も
まどろんでいく一滴の表情。

朝の吐息に
ぬぐわれたはずの坂道で
ひとつの心持ちを
掌にのせてみる。

どの道も同じ場所へと
つながっているのかもしれない。

濡れた塀のしみに沿って
町の色彩は
あてもなく
私の中を下りていくのだ。

 前号の「旅」T、Uに続く連作です。〈家並みも/海も/まどろんでいく一滴の表情。〉というフレーズに魅了されます。旅先では〈雨音〉さえ違って見え、聞えるのかもしれません。第3連の〈どの道も同じ場所へと/つながっているのかもしれない。〉も佳いですね。ここでは旅先での道のことを言っていると思いますが、人生でたどり着く最終的な道のようにも感じました。






   
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