きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2010.2.25 神奈川県南足柄市・枝垂れ梅 |
2010.3.11(木)
行ってきました、確定申告。とは言っても青色申告会経由ですけど。今回は私も慣れて、必要な収支計算をやった一覧表を作っておきましたから、青色申告会の職員とも最低限の話で済みました。いろいろ質問されても答えられるように考えてはいたのですが、特にトラブルもなく終了。税務署への書面提出は青色申告会が代行してくれます。
年会費1,000円が高いか安いか判りませんけど、私は安いと思いますね。税務署員と直接顔を合わせないだけでも1,000円の値打ちはあるでしょう。書面も用意してくれますし、再計算は別の職員がやるという念の入れよう。退職したての人にはお薦めです。ちなみに私は数万円の還付金があるという計算になりました。
○徳沢愛子氏詩集『加賀友禅流し』 |
2010.3.21 東京都板橋区 コールサック社刊 2000円+税 |
<目次>
T 加賀友禅流し
金沢の娘たちよ 10 加賀友禅流し 16
加賀鳶(とび)梯子登り 20 紅箸 24
金沢方言・短詩抄 富山大空襲 打木南瓜(かぼちや) 30
「かさだかであるようなないような日常」 26 あ・鳩が −長崎報告− 32
焼場に立つ −長崎原爆投下− 36 「徒党を組んで 腕組んで」 −地球温暖化に寄せて− 39
蒼ざめた万歳 −地球温暖化に寄せて− 48 石棺に −原子炉廃棄物− 52
あなたは 物もらいではないか 同志よ 58
−阪紳大震災直後 助けの手を− 54 ハイ 61
ひとつ 64 心に森を 67
葉鶏頭がコンクリートから
−詩友・宮本善一さんに− 70
U 光に包まれて
夜明け 76 早春 7S
斧 80 卒業式 83
あ・うん 86 光に包まれて 89
向うに 92 野仏 94
猫 96 お父さぁーん 99
揺り椅子 102. 父の遺産 106
少年院運動会 109. 一人旅 112
ゲンちゃん 114. しずちゃんの秋の歌 116
寒立馬(かんだちめ) 118 椿がほたり 122
V ひまわりのように
神の魚 126. 贈物 130
老い 133. 失神 136
水底で 138. ひまわりのように 141
お多福 146. ルツ 149
寂光 152. 棘(トゲ) 154
土の器に 157. 言葉 160
私が弟の番人でしょうか 163. 使徒ペテロ 166
矛盾の間(あわい)から 171. 冬日 174
あとがき 178
略歴 181
加賀友禅流し
男川 女川が街を巡る金沢
遥か呼び交わす艶やかな声
金沢の鈍重な空を明るませる
男川で産湯をつかった鐵山さんは
代々引染職人
胸まであるゴム長靴が似合う
投網のように一枚の友禅を
空中に開く
金沢が あ と叫ぶ
黒一点の鐵山さんは宇宙のコア
色鮮やかな一条の加賀友禅
情念の権化 女蛇が放たれる
男川に華やかな裸身を踊らせ
大海を目指すが
寒椿より紅い彼の両手は
めくるめく命を離さない
金沢は底冷えの冬
友禅の糊や余分の染料を洗い流す作業
必要なものはほんの少し
本当のものは質素な言葉と
素朴な働き やさしさのオーラ
最後の仕上げのため
振り落し 魂削って 祈り織りこみ
腰を折って洗い続ける
加賀友禅に取り憑かれた男に
命を吹きこまれた女蛇は切なくくねる
橋の上から見下す旅人たちは
浮世を浮き立つ水中の宴の賓客
だが 見よ今は 地球はいじめ抜かれ
男川も女川も浅くなり
女蛇の花模様の腹は傷だらけ
わが半身よ と逞(たくま)しく空へ叫んだ人は
わが半身よ と今 深くしょぼくれる
少し老いた鐵山さんは
町を四角く流れる薄闇の用水で
痩(や)せた女蛇の裸身を洗う
しゃら しゃら しゃら
寂しい水音たて
*友禅流し
加賀友禅の工程半ば流水で糊や余分な染料を洗い流す。昔は金沢の犀川(男川)、
浅の川(女川)でよく見られた風物詩であったが、今は建物の中の人口川や
町角の用水で洗っている。
詩を書きはじめて56年という、金沢市生まれ、金沢市在住詩人の第10詩集です。ここではタイトルポエムを紹介してみました。華やかな〈友禅の糊や余分の染料を洗い流す作業〉に従事する〈引染職人〉の姿を詩情豊かにうたいあげていると思います。そればかりではなく〈地球はいじめ抜かれ/男川も女川も浅くなり/女蛇の花模様の腹は傷だらけ〉になっているという現実まで織り込んだ佳品と云えましょう。友禅を〈情念の権化 女蛇〉、〈華やかな裸身〉とした点も見事な作品だと思いました。
○詩誌『詩区』128号 |
2010.3.20
東京都葛飾区 非売品 池澤秀和氏連絡先・詩区かつしか発行 |
<目次>
語り継いで/しま・ようこ 降りていった/田中眞由美
身をわける/池沢京子 名護の海/みゆき杏子
涙/工藤憲治 花子/工藤憲治
鬼っ子/内藤セツコ 梅のはなびら/石川逸子
遠心力/池澤秀和 てぶくろ捜索隊/堀越睦子
雪降る夜に/青山晴江 人間171
二千年前のキリスト教徒/まつだひでお
第四 ヴィア.ドロローサ(2)大司祭カヤパ宮廷/まつだひでお
嘘/小川哲史 呪文/小林徳明
生死(まよい)/小林徳明
梅のはなびら/石川逸子
梅のはなびら
ひとひら
ふっと 掌に
まっしろ
赤ん坊の耳たぶのように
かすかに ふるえて
梅のはなびら
ひとひら
ほのかに 香って
無垢のしろさ
いいえ 闇をくぐっての
まっしろ
皺だらけの掌に
なんという
贈り物
梅のはなびら
ひらり
汚れた星を浄めるかのように
第4連の〈無垢のしろさ〉は〈闇をくぐっての/まっしろ〉という詩語が新鮮です。〈梅のはなびら〉の〈赤ん坊の耳たぶのよう〉な〈まっしろ〉さは詠われることもありましょうが、それが闇をくぐったからだという視点に初めて出会ったように思います。これが詩なのでしょう。自身の掌を〈皺だらけの掌〉と低めたところにも好感を持ちました。最終連の〈汚れた星を浄めるかのように〉というフレーズで、ただの花鳥諷詠ではない梅も感じさせてくれた作品です。