きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2010.2.25 神奈川県南足柄市・枝垂れ梅




2010.3.14(日)


 午後から隣町の神奈川県松田町自然館で開かれている「母なる川・酒匂川写真展」を観に行ってきました。酒匂川は拙宅の裏を流れる川ですから興味があるのですが、今年は築堤400年だそうで、例年になく力作が集まったとは“総評”の言でした。アマチュアカメラマンの作品ですけど、風景写真を撮ることも多い私には参考になりました。それにしても水のある風景は、観ても撮っても飽きないものだなと思います。

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 写真は爆走する「ミニSLお山のポッポ鉄道」。自然館の回りを走っているミニSLです。1/6スケールで25人乗りだそうですが、初めて見ました。踏切もありスイッチバックもあるという本格派。燃料は薪でした。SLのほかに小田急のロマンスカーもあるのは、さすがに鉄道の町・松田。町内を通るJRと私鉄をちゃんと揃えているというわけですね。
 そのあとは近くの菜の花畑を散策。けっこうな登りを小1時間ほどかけて歩きました。春ののどかな午後、地元の空気を満喫しました。




季刊詩誌『舟』138号
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2010.2.15 岩手県滝沢村
レアリテの会・西一知氏発行 800円

<目次>
■エッセイ
(連載)芸術家の生き方・考え方(要約)下/木村雅信 4
(連載)体験的日本モダニズム詩私観10 「詩・フォルム」の動機4/西 一知 8
■作品
月の形(夏の終り)/日和田眞理 16     青空の向こう側 他二篇/平山千春 18
けれど、わたしのなかのわたしは/大坪れみ子 20
冬が来る/本堂裕美子 22          写真/武田弘子 24
空のコンペイト/長谷川信子 26       交差点/坂本真紀 28
雄豚舎/菊地武秋 30            ニックの焼くパン/野仲美弥子 32
コンポジション・夢想家の孤独/松本高直 34 ある日、石と話して 他一篇/熱海一樹 36
にれがむ丘/日原正彦 42
■エッセイ
(連載)ドン・キホーテ、遍歴の軌跡(その二)/高橋 馨 43
■作品
チップ/奥津さちよ 48           さくら1、2/戸塚礼次 50
詩の光/尾中利光 52            冬枯れ/田澤ちよこ 54
人間
(あいぬ)の学校 その一四三/井元霧彦 56 山百合の精/渡邊眞吾 58
ただ穴をほる/高橋美依 60         冬の庭/鈴木八重子 62
少年4/菊池柚二 64            足抜き/日笠芙美子 66
■特別寄稿
(連載)韓国の詩10 (訳)韓成禮
(ハンソンレ)
    キム・ミョンイン(金明仁)、キム・ヘンスク(金杏淑)、キム・ヒオプ(金煕業)、イ・ウォンヒ(李元姫)
■作品
我が闘争/岩田まり 74           川べりの友達/松田太郎 76
爪の花とタンバリンの朝/原田勇男 78    空をあおぐ鮭 他二篇/及川良子 80
風 他二篇/合田 曠 83          足音がいく 他一篇/植木信子 85
ススキ野原/なんば・みちこ 88       おとぎ街道/駒木田鶴子 90
秋――とあなたが言うので/黒田康嗣 92   土 47/松本 旻 94
■エッセイ
(連載)ホイットマン、卜ローベル、長沼重隆7/経田佑介 96
表現について/森田 薫 100
■作品
鉄橋のたもとにて/佐竹健児 103
.      続・緑の金字塔(譚)/河井 洋 104
野垂れ死に願望/岩井 昭 106
.       薔薇と大地/坂本 遊 108
私の祖父(その二)/田中作子 110
.     あの日あの朝 十二月八日/いしづか・まさお 112
笑い/文屋 順 114            「終の住処」とぼく/西 一知 116

「舟」・レアリテの会発足の覚書き(1975年) 118 同人住所録 120
後記●「生活」と「詩」 122         表紙画・構成 松本旻 扉絵 向井隆豊




 
チップ/奥津さちよ

若いころ
チップは
定価がうらやましかった

テーブルの上の
おいしいお料理
それはつまり私のことです
と定価は自慢した

それにひきかえ じぶんの身は
ウェイトレスの言葉つきや
皿の運び方にドキドキして
膨らんだりしぼんだり
上がったり下がったりの
はかない風船暮らし

だけど
旅をしてすこし変わった
ひそかに思う
ひょっとしてじぶんは
店のその日の雰囲気なども
全部をふくんだ代表なのではと

なによりいいのは
直に お客の気持ちがわかること
直に 交感できること

さっきは批判されてしまった
今度のお客は
やあ たのしい時間だったよ
と笑顔をはずませてくれた
最高
やっぱり風船人生かな
膨らんで
飛んでいきそう

 おもしろい観点の作品です。〈ウェイトレス〉に出す〈チップ〉の詩などこれまで見たことがありません。〈チップ〉と〈定価〉の対比も見事ですし、〈はかない風船暮らし〉という視点も良いですね。その上〈店のその日の雰囲気なども/全部をふくんだ代表なの〉だと深めています。つくづく詩人とはいろいろなことを感じとる人種なのだなと感心してしまいました。〈チップ〉と〈定価〉の関係は、経済の中でどういう位置づけになるのか分かりませんけど、詩を通じて経済をも考えさせる佳品だと思います。




詩誌『パンと薔薇』130号
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2010.2.28 北海道室蘭市
パンと薔薇の会・光城健悦氏発行 500円

<目次>
■表紙裏 同人詩集 渡会やよひ『途上』、宮脇惇子『スローグッバイ』
■詩作品
2 帰り道は無くなったけれど/峠谷光博   3 記憶・あるいは・・・/加藤茶津美
6 樹の下で/宮川美樹           7 春の雪/百合原杳子
8 観覧車/村田譲             9 地底の森/村上抒子
12 捜す/横平喜美子            13 夕暮れ なぞなぞ/宮脇惇子
14 青の未来/本庄英雄           15 海辺/田中空海
16 讃歌として/谷崎眞澄          17 静謐/高野敏江
18 峠/山口敬子              19 夏の訪問/渡会やよひ
20 山ん中/原武ふみえ           21 ゆきがくる/増谷佳子
22 梟/光城健悦              23 十二月の窓/櫻井良子
■同人の受賞
4 ◆第43回・北海道新聞文学賞佳作受賞 谷崎眞澄詩集『カナリアは何処か』 詩集評〜静謐な告白の刃よ/光城健悦
10 ◆第2回・北の詩賞(本賞)受賞   作品「ノート 夏の伏せた内海」尾形俊雄
■その他
24 伝言と短信(連絡と同人からの便り) あとがき&同人名簿
■ 題字/尾本裕二〈グラフィックデザイナー)
■ 表紙絵&挿画/宮川美樹(日本水彩画会会員、道展会員)




 
観覧車/村田 

KONNNITIHAと
パソコンのモニター画面からのご挨拶

どこかでわたしたち
出会ったことがあるのだろうか
この街のなかで……
お互いにサッポロという遠景を
画面のなかで歩きまわって
<この居酒屋はいいよ>とか
<このラーメン屋だけはお勧めしない>とか
案外、同じ店をクリックしていたりする
本当にまだ
直接にはお話ししたことがない
それだけのことかもしれないね、と
マウスをおく

開けた窓からは冷たい風が迷いこんで
向かいに垂直に立ち並ぶガラスの入口には
空が映りこんでいる
のっぽのホテルのロビーヘと
歩く人の姿を見下ろし
乗ったことは数える程の
TV塔のエレベータを見上げて

同じ街に住んで
同じ街に勤めて
それでも見つめあう瞳は
持ちあわせていない
触れると冷たいのだろう
点景の あなたは

 〈パソコンのモニター画面〉と〈サッポロという遠景〉がおもしろく繋がった作品です。その繋がりを「観覧車」というタイトルが果たしているわけで、この作り方は巧いと思いました。〈パソコンのモニター画面〉でも〈サッポロという〉街の中でも、私たちは〈本当にまだ/直接にはお話ししたことがない〉人たちばかりです。それでも〈同じ街に住んで/同じ街に勤めて〉生きている…。現代を象徴する佳品だと思いました。




詩の雑誌『鮫』121号
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2010.3.10 東京都千代田区 鮫の会発行
500円

<目次>
鮫の座 飯島研一――表紙裏
[作品]
遺言 松浦成友――2            とび 原田麗子――4
「牛の鈴音」 前田美智子――6        古希を占う いわたにあきら――8
夏の出口 井崎外枝子――11         こわれかけのさよなら 飯島研一――14
[詩書案内]
海埜今日子・詩集『セボネキコウ』 高橋次夫――16
沢田敏子・詩集『ねいろがひびく』 原田麗子――16
新・現代詩文庫『吉川仁詩集』   瓜生幸三郎――16
[謝肉祭]
遊びたい・む 前田美智子――18       歴史はミステリィ 仁科龍――19
[作品]
夢もまた夢? 仁科龍――20         歳月 瓜生幸三郎――22
ねがお 芳賀稔幸――24           生花 芳賀稔幸――25
ハマギク 芳賀稔幸――27          少し羞じて 高橋次夫――28
正気か 大河原巌――51           眠る時 岸本マチ子――32
跪いて、このぬくもり 原田道子――34
[詩誌探訪] 原田道子――56
[鮫(100〜120号)の回顧] 高橋次夫編――58
編集後記  表紙・馬面俊之




 
遺言/松浦成友

やまいを えた いま
いつ この じいしきが とだえてしまうのか

あなたがたへの めっせいじを おくらぬまま
むいしきの やみの なかへ いくことは
たえがたきことであり かなしいことだ

あなたがたも やがて おとなになり
おかね の いみを しり
せくす の よろこびと かなしみを しるのだろう

ぞくじん にまみれ しだいに せこ にたけ
よごれていくのかもしれぬ

この ちち の よわき じんせいの さいご の さいご
どれだけの すがたを あなたがたに みせられるか

そして ちち の いっしょうが ひかり の ように のうりを
かすめるなら
あしきことば あしきこういを おもいだせ
それこそが あなたがたへの めっせいじ だ

へいぼんに そして みずからの やくめを しずかに
やりとおすこと
ちちが できなかった きよらかな せい を おくっておくれ

にくしみは じしんを にくんでいることに きがつくだろう

あの すきとおった そらのもと
わたしの いない この せかいは ひかりが みちているはずだ

 〈ちち〉から〈あなたがたへの めっせいじ〉ですが、それは〈わたし〉の〈あしきことば あしきこういを おもいだ〉してほしいことだとする点が、いかにも詩人らしいと思います。詩人というものは〈きよらかな せい を おく〉りたいと願いながら、決してできない人種なのでしょう。ひらがなも奏功している佳品と云えましょう。






   
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