きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2010.2.25 神奈川県南足柄市・枝垂れ梅 |
2010.3.22(月)
裏の畑の大根を20本ほど引っこ抜いて、そのあとを耕しました。大根は作りすぎだなと思っていましたけど、案の定、食べきれないで捨てることになってしまいました。畑の隅に山積みにして、自然に腐るのを待ちます。腐ったらまた畑に戻して地味を良くします。
そうやって蜜柑畑から普通の畑にして10年ほど。年々畑が肥えてくるのが分かります。素人でも何とか職業農家に近づいているのかもしれません。
○石村柳三氏詩集『夢幻空華』 |
2010.4.8
東京都板橋区 コールサック社刊 2000円+税 |
<目次>
T 津軽平野
十三の木造橋 12. 十三の夏 12
渇き〈秋の木の葉の一葉散り〉「神曲」地獄編 12 影の嗚咽〈泣かねばならぬ風土の掟として〉 13
波 14. 波 14
背の故郷 15. 赤い砂山のなみだ 15
ねぷた〈わたしの夢想の原風景〉.16 峰の頂〈芸術院善巧酒仙居士・葛西善蔵の墓弘前市 徳増寺にて〉 17
輪廻の風景〈北津軽・市浦海岸にて〉.18 恐山 18
岩木山 20. 散華の園 20
小泊〈ここは本州の西海岸の最北端の港である。〉『津軽』太宰治 21
海の声 21. 鶴の舞橋〈一九九三年 二女とふる里津軽富士見湖を訪れて〉 23
鏡の中の四季 24. 老母への讃歌 25
野の父に眼をとじて 27. お盆の詩〈大様に下駄の音して盆の道〉成田千空 28
呼応の道をゆく人〈津軽の歌人加藤東籬の墓前に佇んで〉 29
ふるさとの血 32 .慈しむ風景の地〈津軽をうたうおのが眼よ〉 34
白いピエロの燈台 35 .北国の秋の雲 35
雪 36 .雪〈ああ故郷もいま雪ァ降てるべなぁ。〉高木恭造 36
雪の里〈雪かぎりなしぬかづけば雪ふる〉山頭火.37 雪光 38
U 根の意志
新しい年 40 .春光 40
季節の詩 41 .春ほのぼの 42
桜の風景〈桜は生命の輝き〉小川和佑 43 .桜の墓の風景 44
薫風よ走れ 45 .雨新の紫陽花 47
初夏の一日 47 .ある初夏の散策〈初夏に開く郵便切手ほどの窓〉有馬朗人 48
初夏の樹木〈あらたふと青葉若葉の日の光〉芭蕉.49 スイートピーの幻想性 50
幻裸の花火 51 .幻想螢〈親一人子一人螢光りけり〉久保田万太郎 52
明滅 53 .ホタル 54
ひまわり 55 .ひまわり 56
向日葵の姿 57 .頭上の太陽〈炎天の胸の扉あけて我を見る〉石原八束 58
蝉いのち 59 .蝉 61
虹心情〈虹透きて見ゆわが生の涯までも〉野見山朱鳥.61
螳螂 62 .海の彼岸色 63
秋桜 コスモスや風に乱れて明らかに〉高浜虚子.64 果物 65
秋情 65 《いのち》〈草むらの虫たちへ〉 65
晩秋悲風〈また、回転の影は……〉『ヤコブ書』第一章 66
大木の肌〈人も亦木の葉の如し〉ホオマア 67 .切り株 67
無明鴉 68 .鴉のさけび〈誰でも一度は鴉だったことがあるのだ。〉村上昭夫 70
やせた猫 71 .風のように 72
《楊柳》の意志 73 .水の流音〈水音のたえずして御仏とあり〉山頭火 75
沼 76 .根の意志 76
続 根の意志 77
V 影の記憶
夜 80 〈幻影火〉 80
影の記憶 81 .断ち切れぬ影 82
迷影 83 .影〈人の語る凡ての虚しき言は……〉マタイ伝第十二章 83
こころ 84 .渇いた生 84
生を喰いつくし 85 .何がなんだ!!〈悲痛なモノローグを喰いつづける人よ〉 86
死滅 87 .死が見える 88
死神さんとの対話 90 .貌のふかさ ―わが仮面のための眼を沈めて― 91
自顔を彫る 92 《意志の居眠り》 93
人工風景を走る男 94 .死の回帰〈生れて、すみません〉『二十世紀旗手』太宰治 96
午前三時の残骸 99 .夕映心景〈墜ちていく陽は多くの言葉を知っている〉圓子哲雄 102
幻影回流〈悪夢の影が頭上で笑っている〉 104
W 人間曼陀羅
人間曼陀羅 110. 〈人〉〈時に我しづかなる聲を聞けり〉ヨブ記 111
甘える影 111 愛の引力 112
秋風と女性 113 裸身の華 114
曙 ―或る女性へ 115. 《快楽》―けらく― 115
性 ―さが― 117 美魂 117
踊り子よ!! 118. 《生活人》万歳 119
他者への眼 121 深夜の酔人 122
孤独者の酒 123 酔いの光学 123
酒の色 ―男二人の対話の詩― 124 負の甲羅 片桐歩に 126
露伴の墓〈寶塔長へに天に聳え〉『五重塔』幸田露伴.126
墓中の魂〈芸術院善巧酒仙居士・葛西善蔵の墓にて〉.127
白秋の碑〈雨はふるふる城ケ島の磯に……〉 128 てんぷら人間 128
ピアノの鍵盤〈地下生活者の手記〉 129 樽の中 130
曙〈友、宮崎祥二郎と蒲生賢治に〉渾沌霧なす夢より.啄木 130
出合いの詩.―板村真民『念ずれば花ひらく』を読んで― 131
『死の壁』を読んで 133 匂う魂 134
屁は菩薩の匂い 135 わが放屁譚〈屁にも魂の匂いあり〉 136
《屁》の哲学 ―そのささやかな効用― 137 哀しみを背負い 畏友の歌人K氏へ 139
春の風〈一九七三年初春 広島市平和公園を訪れて〉.139
穏やかな日々にこそ 〈戦争は愚かなものと湛山翁〉(石) 141
われらは太陽の子 142
X 修羅と涅槃
断崖 146 修羅自然回帰のわが原野の声!! 147
耳について 148 おれの耳 149
心音 150. 《心音》回帰への旅 151
存在への足音 152 足音と足跡 ―時代の峠の歩みを背負いつつ― 153
石ころの唄 155 足考〈流露する思念を捉えて〉 158
足もとの風景 159 通勤人の足たち 160
あるがままの足 161 業の花びら 162
さけび 163 盲目 ―もう一つの自己内在論として 164
硬くなったティッシュペーパー 165 残像 166
口よどこへ行く 168 舌について 169
語れ語れ語れ 百の舌で語れ 170 鎌なす舌 174
鎌なす舌〈鎌なす舌をもって、強く叫び〉「アグニの歌」 175
力あらば〈まことの詩人に……〉 176
Y 深夜の人生哲学
《深夜の人生哲学》〈われらおでん学派〉 178 世の回転〈世は耳にきこえないで回転する〉ニーチェ 179
続・世の回転〈わが言を信ぜよ!〉ニーチェ 180 高層ビルは墓だ!! 180
見知らぬ街 182 鍵盤 182
《扉》 183 鋸の作用 184
炎の樹木 185 玉
、今日わ!! 186
〈酒〉 187 化粧のとけた顔 188
てんぷら 188 鏡の効用 190
鏡の笑い 191. 《針》 191
骨の本音 193 素朴な音 194
夢と音と光と 195 足音 196
Z 化城の世人
化城の世人 198 精神の借金 199
無明地図 200 わが《空華》花火 201
予感の眼 202 眼球 ―詩人の眼考 203
流転の眼〈私たちは死への存在である〉ハイデッガー.204
《徒労》 206 自己眼底 207
いのちの見方 208 源流地図 210
地平への泪 211 風景をみつめよう 212
運勢 213 空の一念三千 215
前を行く人〈石はそのことのみを語る〉『リグ・ヴィーダ讃歌』 216
狂 雷 ―精神麻痺の闇光を背負う人たちよ 217. 〔密封〕〈われら誓願としての認識へ〉 219
《仏讃歌》仏陀は座す 222 仏さまは飛ぶ 222
[ 夢幻空華
万年筆 226 夢幻空華〈過ぎし子供のころを回想して〉 226
好い児 227 一匹の蝶〈一九七九年八月十一日に無事誕生した長女栄子と妻に〉 229
たんぽぽ ―幼ない二人の娘たちへ 230 乳母車〈―嫁ぐ娘へ〉 231
春の心音 232 絆 233
除夜の鐘 234 梵鐘 235
迎夢 236 元旦の夢〈命継ぐ深息しては去年今年〉石田波郷 236
光明 238 ときには夢想のなかで 238
未来圏からの風 240 風のかたらい 241
燈明 242 曙光〈新たな時代は世界が一の意識になり生物となる方向にある〉賢治 243
21世紀への光彩 244 深呼吸 245
深呼吸はウィットな哲学 246 五重塔〈寶塔長へに天に聳え〉露伴 247
祖師堂〈下総中山法華経寺にて〉 247 身軽 248
青い波 249
詩作品初出一覧目録 250
あとがきにかえて 258
著者略歴 263
夢幻空華〈過ぎし子供のころを回想して〉
るるる
ひらひら り
とぶとぶ
さくらがとぶ
古刹の寺のしめった土に
幾万のすきとおった
さくらがとぶ
とんでちって
おのれを滅するのが
ひとつの美のように
るるる
ひらひら り
幼児(おさなご)のちるかなしいいのちのように
さくらは
おのれをちるもののごとく
みごと
孤高にちる
すきとおった
はかなさの
再生することをつつんで
るるる
ひらひら り
静謐のやみに沈む去年(こぞ)の思念
空華のさくらは
ただただ
夢魂をみせ
影ひく夕映のいのりに
ちるいのちの〈生(しよう)〉のひとときをみせ
(一九八〇年四月中旬 市川市中山法華経寺にて)
*夢幻空華(むげんくうけ)=道元の『正法眼蔵』の一文に見られる。
3年ぶりの第2詩集です。1972年から2009年までに発表された作品のうち、216編が収められていました。ここではタイトルポエムを紹介してみましたが、仏教用語の深い意味は理解できないまでも、〈幼児のちるかなしいいのちのよう〉な〈さくら〉の姿を感じ取ることができます。〈るるる/ひらひら り〉というオノマトペーも成功している作品だと思いました。
○市村幸子氏詩集『はじける』 |
2010.2 千葉県茂原市 草原舎刊 1500円+税 |
<目次>
T
はじける 10 こわれる箱 14
逃亡 18 亀裂 22
シクラメンの寝姿 26 勘違い 30
愛のかたち 34
U
リモコン 40 すきま風 44
小さな中指 48 菜の花の見たもの 52
錯覚の衣 56 花化粧 60
置き去り電車 62
V
晴れのち曇りのち雨 68 カバンの中の秘めごと 74
プラタナスの並木で 80 六月の風 84
雪 88 失いしもの 92
あとがき 96
はじける
一月が閉じようとする ある日
庭の梅の小枝のつぼみが
ひとつ はじけた
もう春なのかしら
のぞきこむと
八ヵ月まえに
かくれん坊をしたまま
まだ見つけられなかった あなたが
そこにいた
み――つけた
とじていた わたしの心が パチンとはじけ
沈殿していた重いかたまりが
とびちった
まだまだ冷えた空気の中から
ぬくもりを一身にあつめて はじけた花弁
その奥から みずみずしい生命(いのち)が
勢いよくふきだしてくる
圧倒され一瞬たじろいだ
わずかな間に
あなたの姿は消えている
明くる日 また 明くる日と
つぎつぎに つぼみは はじけるけれど
あなたは もうどこにもいない
CD詩集を含めると第4詩集になるようです。ここでは巻頭作品でもあるタイトルポエムを紹介してみました。〈あなた〉は種でよいと思いますが、人間の幼児と採ることもできましょう。〈みずみずしい生命が/勢いよくふきだしてくる〉姿を思い浮かべます。〈はじけ〉て成長して、やがて私たちの手を離れていく後進たち。それが最終連の〈あなたは もうどこにもいない〉というフレーズに表されていると思いました。
○詩誌『たまたま』19号 |
2010.3.20
東京都多摩市 小網氏方・たまたま本舗発行 300円 |
<目次>
■ 詩
富山直子 蜜盛り・プラネタリウム 2 松原みえ 里山・邯鄲の里 6
季 美子 始皇帝のあんず・シャッター 10 丸山緑子 薔薇の名・手紙 14
山岸光人 酔って火をつけて! 18 皆川秀紀 夢への旅路・New
Change 22
小網恵子 三月 26 中村博司 植物人間の話・塩化ビニール人間 28
● 訳詩 私が読んだ韓国詩 李 美子 33
■ 詩集紹介 日笠芙美子詩集『夜の流木』を読んで 小網恵子 38
★ 俳句 秋から冬へ 丸山緑子 42
● エッセイ
金縛りぺろぺろ 吉元 裕 43 電話三題 松原みえ 46
東京での生活 中村博司 48 柿沼徹『ぼんやりと白いタ舶について思うこと。 山岸光人 50
表紙・吉元 裕
手紙/丸山緑子
何度電話しても連絡がとれないと言う友に代わって
手紙を書いた
二ケ月過ぎた日近所の者だという人から電話をもらった
「遺品の整理の手伝いをしていて
ポストのあなたからのお手紙を読んでしまいました
ずいぶん迷ったのですが・・・」と
手紙は読まれる日まで待っていたのだ
ふるさとの友だちしゅうちゃんは
便箋の半分も使って私の健康を気遣った後
「俺はもう手紙が書けなくなるだろう
この手紙で終りです」
と結ばれていた
電話の便があるというのに
いつものように手紙で理由を尋ねる
いつものように季節の変わるたび書く
春 夏 秋 冬 また春が来て夏になった
学校の行き帰りよく私の家に寄った
海に潜るのが得意で貝や魚を届けてくれたり
夕食を一緒に食べたり
一人っ子の私には弟のようだった
しゅうちゃん手紙読んでいますか
それとも手紙はポストに待っているのだろうか
あの時のように
近所の人が読んでくれるのを
いや返事は毎日届いていて
私が見つけられないだけ
今日も玄関にコトンと音がする
〈ふるさとの友だちしゅうちゃん〉という人間像が浮かび上がってくる作品だと思います。〈便箋の半分も使って私の健康を気遣〉い、〈この手紙で終りです」/と結〉ぶところに、幼馴染み以上の交流が感じられます。それが〈一人っ子の私には弟のようだった〉というフレーズなのでしょう。最終連の〈今日も玄関にコトンと音がする〉というフレーズもよく効いている作品だと思います。