きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2010.3.18 早稲田大学・演劇博物館




2010.4.7(水)


 父親の介護保険の件で、静岡県内の町役場に行ってきました。それ以外は特に用事もなく、いただいた本を拝読して過ごしました。




詩とエッセイ『想像』128号
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2010.4.1 神奈川県鎌倉市
羽生氏方・想像発行所 100円

<目次>
名護の新しい歴史が始まった!……………………浦島 悦子 1
ごくらくとんぼ…………………………………………………… 4
わたしの村の小さな小さな夜伽噺(3)…鳥…おくむらすみこ 6
弊舞橋−旅日記抄(11)………………………………井上 通泰 8
野山の植物・写真はがき(9)………………撮影 菅  泰正 10
S・J・グールドと『ワンダフル・ライフ』………羽生 康二 11
浜のはなし=…………………………………………羽生 槙子 14
詩・「二十日大根」ほか4編………………………羽生 槙子 15
花・野菜日記10年2月…………………………………………… 17




 
二十日大根/羽生槙子

ひときわ大きく 美しく形が整った二十日大根が
「なぜわたしは
 若いうちに食べられねばならんのだ 不条理」
そう考えている
わたしに その二十日大根の気持ちが
少し伝わってくる気がする

 〈二十日大根の気持ちが/少し伝わってくる気がする〉という作者には、小さなものたちへの愛情が感じられますけど、それ以上に彼らを〈食べ〉なければならない人間の性、動物の業の深さを感じずにはいられません。特に〈美しく形が整った〉もの、〈若いうち〉のものは栄養も豊富で、真っ先に狙われます。短い作品ですが、その裏にある生物の営みという避けて通れないものを考えさせる佳品だと思いました。




詩・小説・エッセー『青い花』65号
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2010.3.20 埼玉県所沢市 青い花社・丸地守氏発行
500円

<目次>

怖ろしい部屋 木津川昭夫 4        友だちの姉の…… 平田好輝 7
夜ごとみる夢 柏木勇一 10         地獄図抄 菊池柚二 12
羽虫−38歳で死んだNさんへ 北川朱実 14  落葉 宮尾壽里子 18
人の頁 内藤紀久枝 20           落日 鈴木豊志夫 23
兵士のように 高橋玖美子 26        小さな祝祭 さとうますみ 29
拾う 後藤基宗子 32            バルーン 野仲美弥子 35
眼の記憶 河上 鴨 38           クラシカルに おしだとしこ 40
始まりの日 真崎希代 42          雪玉 橋爪さち子 44
一人静 香咲 萌 47            十五のこころ 伊勢山峻 50
書評
森田薫著『Tρανωδια
(トラゴーディア)−山羊の歌』.原子  修 52
柏木勇一詩集『たとえば苦悶する牡蠣のように』   内海 康也 54
北川朱実『電話ボックスに降る雨』         相沢正二郎 56
菊池柚二詩集『散歩の理由』            柏木 勇一 58
新・日本現代詩文庫『武田弘子詩集』       こたきこなみ 60
新・日本現代詩文庫『野仲実妹子詩集』       中村不二夫 62
おとなの童話 取らぬ狸の破れ腹 坂本登美 64
ショート・エッセイ 西岡光秋「詩魂断章」 相良蒼生夫「熱の花」 72
詩譚 い花(補遺)−『詩譚「い花」と太宰治』初出記録と関連事項− 山本龍生 74

譚詩 病中有閑−暁夢朦朧 比留間一成 82  瀧 高山利三郎 86
真夜中詩集空き缶 本郷武夫 89       日溜り 武田弘子 92
太陽系第二惑星の狂気 埋田昇二 95     海風と共に 溝口 章 98
松ぽっくり 吉田章子 100
.         夜の庭 坂本登美 102
理不尽な森よ 北松淳子 104
.        段差 相良蒼生夫 107
ねかされている間に 山本倫子 110
.     光 柏木恵美子 112
芙蓉 こもた小夜子 114
.          碇石 古賀博文 116
乱反射考 田園 丸地 守 119
詩書評
山本龍生詩譚『青い花』と太宰治 高市順一郎詩集『樹の中の鐘』 今村秀子詩集『山姥考』 埋田昇二 122
長嶋南子詩集『猫笑う』 硲杏子詩集『水の声』 崔龍源詩集『人間の種族』 新・日本現代詩文庫『野仲美弥子詩集』 高山利三郎 125
後記 西岡・比留間・高山・丸地 128
表紙デザイン・カット 大嶋 彰




 
怖ろしい部屋/木津川昭夫

一日中騒いでいた街の鴉どもが寝静まり
凍みる夜が更けてゆく書斎に
絶え間なく霧のような香煙が立ち昇る

そこには沢山の詩集が無秩序に積み重なり
この世とあの世を隔てる距離もなく
鏡の中の故郷の街角に赤い雪が降っている

歩く場所もなく老残の男は幽閉されている
夜が更けるにしたがって奇妙な声がする
それは鬼籍の友や それを惜しむ妻たちの声だ

書棚から詩集がつぎつぎと跳び下りてきて
空間を漂い 戦争や事業失敗の怨み言をいう
ああ 作品を読むかれらの悲しい声

活字は翅虫となってぼろぼろと零れおち
床に積み上げた詩集の固い表紙を噛み破る
パニックの虫の大群が結露した壁に匐い上る

蜥蜴に変容して喘いでいる詩集がある
狐になって半分尻尾が生えている詩集がある
大きな卵になって沈黙している詩集がある

騒々しくて眠れない奇妙な朗読会の夜が続く
男は世界で最上等という秘酒を開ける
卓の前に見知らぬ男女が後向きに待っている

酔うと 女は夫
(つま)恋しと歌って哭き
男は亡びの顛末を物語るが かれらは蝉になる
物語っていたのは蝉たちの悲歌らしい

酒がまわって 部屋の騒ぎが一層大きくなる
こつこつと戸を叩く音がする 白衣の女が
大蝋燭を灯して 荘厳な姿で侍っている

僧院長と思いきや よく見ると男の妻で
彼女の皮肉な目が覗くと 詩集の山はひっそりして
老残の男が独り酒に寝ているばかりである。

 作者のような有名詩人の多くには詩集がたくさん寄せられ、〈書斎〉は〈歩く場所もな〉いほど〈沢山の詩集が無秩序に積み重な〉っているようです。私は無名ですけど、それでもこの作品に近いのかもしれません。この詩の素晴らしいところは、そんな寄贈詩集の多さを嘆きつつも詩の世界、詩人の世界をちゃんと見ていることだと思います。それが各連に具現化しています。最終連も佳いですね。〈老残の男〉と自身を規定するところに真の詩人の矜恃を見る思いです。




詩とエッセー『橋』61号
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2010.3.1 石川県羽咋市
若狭氏方・「橋」発行所 非売品

<目次>
あの空/相良俊子 1
二人の詩人が詠んだ妻の詩/若狭雅裕 2
二つの造形(詩・百四十)――地球人と写人の警喩詩――/高橋サブロー 3
春の雪 ――“春の雪少女の夢をのせてくる”(藤田千代子)/若狭雅裕 4
橋畔雑記 2
受贈御礼 後記 4




 
二つの造形(詩・百四十)――地球人と写人の警喩詩――/高橋サブロー

翼空に拡げれば城は白鷺城に
地球人の美意識は広く育んで
写人の心情はサギ草の撮影に

 翼
(ツバサ)
伸展
 光求め
  天空で
 サギは
真理の
 探究

        根
(ネツコ)
           進展
         水を求め
          地中で
         サギ草は
          善根の
           追求

古代哲人が求めた真・善・美
造形写真から見た光線と水分
神からの恩恵は二つの造形美。

 〈サギ〉と〈サギ草〉の〈撮影〉を素材にしていると思います。それを〈神からの恩恵は二つの造形美〉としているわけですが、〈光線と水分〉という二つの別の視点を持ってくるところがおもしろいと思いました。作者は写真撮影もおやりのようですから、そこから得られた収穫と云えましょう。






   
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