きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2010.3.18 早稲田大学・演劇博物館




2010.4.20(火)


 午後から西さがみ文芸愛好会の事務局会議が開かれました。主な議題は会報の検討。新編集長の作業が早く、8、9割方できあがっています。誤字・脱字、事実誤認がないかなどを確認して終了しました。あとは24日に印刷・発送するだけになりました。スケジュール通りに事が運ぶというのは気持ちのよいものです。




月刊詩誌『柵』281号
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2010.4.20 大阪府箕面市
詩画工房・志賀英夫氏発行 572円+税

<目次>
現代詩展望 詩集賞アンケートの功罪 −原田道子詩集『曳船』−…中村不二夫 76
戦後史の言語空間 続・(4) 重き流れのなかに…森 徳治 80
流動する今日の世界の中で日本の詩とは(62) 日本の「現代詩」と「アジア」との葛藤 〇六度九月から十一月…水崎野里子 84
風見鶏 保高一夫 砂川美那子 服部隆幸 平野 敏 小林尹夫 88
現代情況論ノート(50) 国境のアメリカンディアン…石原 武 90

佐藤 勝太 ふるさと東京 4        名古きよえ 都会の空の下で 6
平野 秀哉 9か月革命 8         長谷川昭子 梅の木の話 10
山崎  森 ステルスの二行詩 12      小沢 千恵 冬の風 14
中原 道夫 冬牡丹 16           肌勢とみ子 ねこ 18
進  一男 またも夢の中で 20       黒田 えみ 聞こえますか 見えますか 22
南  邦和 リア王 24           松田 悦子 後ろ向きの・・ 26
柳原 省三 夜の海の思い 28        秋本カズ子 通いあう野仏のみち 30
小城江壮智 哲学者とネズミ 32       江良亜来子 手品 34
北村 愛子 吹き矢なるもの初体験 36    織田美沙子 石ころみたいで 39
小野  肇 ことわざあそび 42       西森美智子 ひとりぼっち 44
北野 明治 合歓の花のみえる場所で 46   川端 律子 地球の不思議を求めて 18
八幡 堅造 隔世遺伝的巨人・阪神ファン 50 米元久美子 十年前の私へ 52
中林 経城 人生の印象 54         月谷小夜子 ちりぬるを 56
門林 岩雄 夕映え 冬の寺 58       水木 萌子 能面 60
鈴木 一成 酒飲めば 62          安森ソノ子 教室での時を経て 64
若狭 雅裕 五月晴れ 66          野考比左子 死の舞踏 春愁 68
前田 孝一 ねずみを捕るのを忘れた猫 70  今泉 協子 負けない男 72
デボラ ケニストン 郡山 直訳 なりたいわ 74

世界文学の詩的悦楽−ディレッタント的随想(47) 詩劇についての一考察・北川冬彦の「巨大な胃袋の中」をめぐって…小川聖子 92
現代アメリカ韓国系詩人の詩(14) こころの河 ヤング・ホ・パーク…水崎野里子 96
映画逍遥(4) キャロル・リードの『第三の男』…三木英治 98
戦後詩誌の系譜・補充(2)昭和27年〜30年…志賀英夫 100
北村愛子詩集『今日という日』を読む…宮崎 清 107
深く自然な愛 中原道夫詩集『ほのほのと百四十歳』…中井ひさ子 110
松田悦子詩集『草色の雨』 喪失に対する〈倫理の眼差し〉…川島 完 112
「柵」の本棚 三冊の詩集評…中原道夫 114
 崔龍源詩集『人間の種族』114 宇津木愛子詩集『春耕』115 若松丈太郎詩集『北緯37度25分の風とカナリア』117
受贈図書 121  受贈詩誌 119  柵通信 120  身辺雑記 122
表紙絵 中島由夫/扉絵 申錫弼/カット 野口晋・申錫弼・中島由夫




 
ねこ/肌勢とみ子

にんげんがねこに飼われているのは本当だろう
日暮になると
見えない糸を手繰り寄せられるように
一目散に飼い主の元に帰る
餌を出してやればそれでお役ごめん
いつまでも放っておかれるにんげん

湯けむりの中のように何もかも曖昧で
なんとも頼りない手ごたえの奥に
鋭い爪を隠し持つ
生あたたかい家

 逆転の発想でしょうが、〈にんげんがねこに飼われている〉、〈いつまでも放っておかれるにんげん〉というのは〈本当〉のように思います。私たちはなんとなく猫を飼っていると信じていますけど、あちらからすれば飼ってやらせている、となるのかもしれませんね。視点を変えることで見えるものがあるかもしれないと感じさせる作品です。




投稿詩とイラストレーション
『詩とファンタジー』11号
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2010.6.1 神奈川県鎌倉市 かまくら春秋社発行
1000円+税

<目次>
[やなせたかしの詩と絵] セールスポイント…4  凡才の幸福…6
特集 白寿の詩人 柴田トヨの詩 絵・君野可代子…9
 やさしさ…10  流行…11  お友だち…12  地団駄…13  空に…14
 特別対談「くじけない」ために 新川和江×やなせたかし…16
[ファンタジー]
 時空のファンタジー ある日覚まし時計の話 谷山浩子 絵・綱中いづる…21
 風のファンタジー 風の実 星野智幸 絵・寺門孝之…73
[シリーズ 少女だったとき 少年だったとき]
 縁側の洗濯バサミ 有吉玉青 絵・味戸ケイコ…86
 ヤジのなかの混声合唱 服部公一 絵・後藤貴志…88

詩とイラストレーション
ノクターン 磯貝裕美 絵・東 逸子…26       空になってしまった 砂川理図 絵・小太刀克夫…28
トッピング 平井深海魚 絵・メグホソキ…30     夕焼けの種 関根裕治 絵・植田 真…32
『モトカノフォルダ』 三浦史帆 絵・宇野亜喜良…34 ドラマのように 鵄尾 勇 絵・松永禎郎…36
ほんとうの傘 遊窓夢 絵・山口はるみ…38      みず 桐生奈津 絵・西田知未…40
手紙 若菜 亮 絵・畑 典子…42          存在 藤田和実 絵・北見葉胡…44
象の物語のひとかけら 漆原正雄 絵・建石修志…46  永代橋 たなかひとみ 絵・蓬田やすひろ…48
駅の売店 小林俊英 絵・倉部今日子…50       小さな暮し たんぽぽ 絵・田村セツコ…52
 やなせ兎賞
野菜ノート 下野栄子 絵・雨宮尚子…54       フケータイ 稲垣勝己 絵・飯野和好…56
月夜の海岸 橋本篤隆 絵・スズキコージ…58     春の雨 山下文子 絵・松尾たいこ…60
名前のない猫 佐々木貴子 絵・藤本 将…62     ふきのとう 宮せつ湖 絵・黒井 健…64

やなせたかしさん 91歳の誕生日おめでとうございます!…66
[歯とファンタジー] さよならプラーク やなせたかし…68
[とおい国からの手紙] 絵・田沼利親、東 千代…70
[イラストレーション公募] イラストレーション入選作発表…78
[星屑ひろい] 絵・渡辺リリコ…81
[足みじかおじさんの旅 第二話] 学者犬アルキメダス やなせたかし…84
[ほんの三行詩] 絵・なみきたけあき…90
[お便りのコーナ]…93
[執筆者・画家プロフィール]…94
[編集室だより]…96
[表詩記/編集後詩]やなせたかし…96




 
とまらない/水無月ようこ

涙腺修理の上手い
水道屋さん
至急 来てください

 評 と言われても順番待ち。
 今、いそがしいから。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 「ほんの三行詩」というコーナーの作品です。「評」は責任編集人のやなせたかしさん。ちゃんとコメントをつけてくれるんですね。それも詩のようなコメントで、読んで楽しくなります。それにしても〈涙腺修理の上手い/水道屋さん〉は、今の世の中、〈いそがしい〉んでしょうね。




二人誌『すぴんくす』10号
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2010.4.15 東京都世田谷区 海埜今日子氏発行
250円

<目次>
寄稿 一本の線を お願い 新延 拳 ……2
背後のバーミリオンの空に佇む 佐伯多美子 ……6
寄稿 詩集『セボネキコウ』ノート−海埜今日子『セボネキコウ』  桐田真輔 ……10
《くさ、ひ、るるる》  海埜今日子 ……17
Bastet's Room




 
背後のバーミリオンの空に佇む/佐伯多美子

(近づくために
(近づくために
(毒を撒く 同性Fにはむえんな毒を撒く

同性F
空の檻の華著な管理人
むしょくとうめいな爪をもつ
(毒が湧き出す ふつふつふつ毒が湧き出す

毒は
むしょくとうめいな爪から侵食していく
やがて
爪は赤みをおび
バーミリオンに色づいていく

バーミリオン
その特性は
朝焼けの空のようにひんやり澄みわたった
あざやかな朱赤であった

ながいじかんがたって
廻って
あざやかな朱赤はさらにあざやかに

(毒はしつように侵食をくりかえす
(近づくために

だが
むしょくとうめいな爪が毒色に染まっていくのが
見えない

ながいじかん
それは 見えないじかん

毒は
見えないじかんにばら撒く
(あるいは
(毒色に染まるためではなく純度をたかめるため

見えないじかんを手さぐりでそろそろと歩いていく

同性Fがふりむく
バーミリオンの空がひろがっている
その空は毒がながしこまれ
見えないじかんが毒色に染められていくのに
他人事のようにただ佇む

毒は
滅ばない(だろう
(近づくために

見えないじかんも滅ばない(だろう
気づいても気づかなくてもあまり差はない

同性Fは
背後のバーミリオンの空に佇む

あさやけのそらがひろがっている

 〈バーミリオン〉という言葉に初めて接しましたが、〈朝焼けの空のようにひんやり澄みわたった/あざやかな朱赤〉のことなんですね。この作品の〈毒〉と〈同性F〉とに関連づけられた言葉としては合っているように思います。私たちは〈見えないじかん〉の中で、日々〈毒色に染められていく〉のかもしれないなと思った作品です。






   
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