きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2010.3.18 早稲田大学・演劇博物館




2010.4.22(木)


 午後から新宿の京王プラザホテルに行ってきました。日本ペンクラブ「国際ペン東京大会2010」の記者会見です。
 最初は行くつもりではありませんでした。執行部が説明をすればいい話で、1担当者にすぎない私が行ってもしょうがないと思っていたのです。ところが執行部からは「各部門の担当者は、記者からの質問に答えてもらう場合があるから、全員出席せよ」とのお達し。詩部門担当者としては出席しないわけにはいかないな、となった次第。行きましたよ、久しぶりにスーツを着て(^^;

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 写真は記者会見の様子です。正面で立って話をしているのが阿刀田高会長。阿刀田さんの左手に浅田次郎専務理事、右手に吉岡忍常務理事と司会の松本侑子常務理事。記者は大勢来ましたね。TVは来なかったものの、新聞社や出版社など50社ほど。やはりマスコミには知名度が高いのだと思います。

 でも、質問は2〜3あった程度。配布された資料がよくできていましたから、それで質問が少なかったのかもしれません。当然、詩部門への質問もなく、これじゃあジーンズでも良かったかなあ。まあ、ホテルだからいいか、と自分を慰めました。

 本番は今年9月23日〜30日。マスコミでも採り上げてくれるでしょうし、日本ペンクラブのHPには詳細も出ています。いまから予定に入れていただいて、是非おいでください。私はほぼ連日“出勤”のつもりです。




○詩とエッセイ『ネビューラ』12号
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2010.4.15 岡山市北区 壷阪輝代氏代表 非売品

<目次>
かばん男………………………武田 理恵 2  運河……………………………下田チマリ 3
荒野の巨人……………………武田 章利 4  木霊の滴………………………広畑ちかこ 5
大空にふわり熱気球…………川内 久栄 6  つくし…………………………田尻 文子 7
桜衣……………………………香西美恵子 8  ひこばえ………………………吉形みさこ 9
神を探す旅……………………中尾 一郎 14  どうしたもんだか……………田原 伴江 15
君の声………………………岩アゆきひろ 16  プリムラからのメッセージ…西崎 綾美 17
吉備野の花詞(XVI)−菫−…中川 貴夫 18  黄砂……=……………………三村 洋子 19
三日間…………………………今井 文世 20  巣立ってゆくものと…………谷口よしと 21
春のめまい……………………日笠芙美子 22  ちょうぶく箸…………………壷阪 輝代 23
エッセイの窓
欠落するものへの挽歌のように−岩アゆきひろ詩集『宇宙にかかる木』……おしだとしこ 10
今井文世著『青い指を持った』を読む………………………………………………原 かずみ 11
展覧会ノート 三……………行吉 正一 12  私の詩歴………………………川内 久栄 13
装幀・尾崎博志




 
神を探す旅/中尾一郎

猫は知っている 目に見えない
だけで 僕らの身近にそういう
世界があることを 半分の月が
昇る夜 なくしたものやなくな
ったひとが 風と一緒に通り過
ぎ ガードレール沿いに歩いて
バス停に辿り着くと 目の前の
景色は歪んでいる 神の姿をコ
ピーして創られた人は 何万年
という時が過ぎてなお 心の皮
膚に薄い寂しさを貼り付けたま
ま 細胞分裂を繰り返して命を
伝えている

 信仰者ではなくとも、私たちは一生をかけて〈神を探す旅〉をしているのかもしれません。それに対して作者は〈僕らの身近にそういう/世界があることを〉〈猫は知っている〉と説きます。〈神の姿をコ/ピーして創られた〉と言われる〈人〉ではなく、猫はすでに知っているのだという発想が新鮮です。




詩誌『宇宙詩人』12号
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2010.4.15 愛知県高浜市
鈴木孝氏代表・宇宙詩人社発行 1000円

<目次>
・詩
村田しのぶ…倫理 6             紫 圭子…鉱物
(ミネラル) 8
土屋純二…天空にいる恋人達 加代子 9    藤原 伴…メア 38
太田千尋…水かき 40             宇佐美宏子…殺人者 42
漆畑結音…エミリー・フラゴス 48       土屋秋明…幻想病棟 50
高田杜康…美の探究者 52           村井一朗…二重奏 54
丹羽康行…断片/繭 56            久野 治…大平峠の満月 58
今井好子…顔 72               林口香代子…薔薇 74
清水弘子…カリブーの仔も ろうそくも 76   甲斐久子…嘆かい 82
大西 豊…追憶(U) 88            みずしなさえこ…宇宙からの伝言 91
阿部堅磐…子供達の山車 93          高井 泉…頭
(かぶ)る 100
曽谷道子…病と生活の戯れ/無題 102
.     小林陽子…ニレ池 104
尾崎淑久…育てられる 106
・評論 中村 誠…鳥見迅彦の〈山の詩〉−「歴程」「アルプ」との関わりの中で− 12
・エッセイ 砂村 洋:・ぼくのおじいさんは魔法組 21
・報告 韓日詩人交流会 釜山+ソウル 24
・韓国現代詩 ペ・ハンボン(「漢奉)30 パク・ジュテク(朴柱澤)31 クァク・ヒョファン(郭孝恒)33 キム・ソンウ(金宣祐)35
  訳・詩人の紹介 ハン・ソンレ(韓成禮)37
・評論 久野 治…黎明期の中部詩人(10) 45
・フランス現代詩 パトリック マルカデ 60 チェリー サジャ 61 ジョエル コント 62 ジャン=ジャック ケルネ 63
・報告 紫 圭子…詩誌《宇宙詩人》第十一回懇親朗読会「宇宙の波動、声の森へ」 64
・書評 清水弘子詩集『しらゆきひめと古代魚ゴンドウ』 小柳玲子…もうろうとしたあたり 78  清水 信…美しい詩集 80
・書評 甲斐久子詩歌集『華紅』 仲泊眞理子…歌人・画家 甲斐久子について 84  伊藤康子…甲斐久子の恋と愛の世界 85  泉田圭子…共に揺れて 86  倉知亮子…『華紅』−その美的世界と哀しみ 87
・エッセイ 澁谷 義…日本の将来、期待と不安 92
・現代詩鑑賞 阿部堅磐…わが愛する詩〈福田万里子の詩 二〉 96
・短歌 佐山広平…不安な景色の彼方へ 108
・エッセイ 佐山広平…TranslationとBilingual Formatについて 114
・書評 佐山広平詩集『時の彼方へ』 五十嵐勉…彼岸への橋 118
・詩
遠藤昭己…臨終あるいは、いま 120
       名村和実…夜の図書館頁 122
山ア 啓…男って 124
.            森 和枝…書けない理由 126
宮田澄子…鳥を待つ 128
.           いいださちこ…八月の出来事 130
角谷義子…シヨチャンとマアチャンとラクチャン 132
人見邦子…橋 134
.              間瀬義春…危険 138
尾関忠雄…視姦の美学 140
.          太田昌孝…無題 −逝き再び生まれる者へ− 142
中原眞理夫…貧乏万歳 144
.          中川ヒロシ…ニューヨーク ブルックリンの春 146
高谷和幸…「ハイ・ムーンとぼくが言う」 148
.  鈴木 孝…紅色の雪/黄金に割れ 150

・評論 駒瀬銑吾…詩的認識と散文的認識(8) 136
・書評 『鈴木孝 詩 作品集』  岡本勝人…『鈴木孝 詩 作品集』についての管見 154  尾関忠雄…炸裂スル反逆の意志 168  紫 圭子…『まつわり』とは何か 170  嶋岡 晨…『
nadaの乳房』について 172  加藤恵子…鈴木孝 詩 作品集〈ある〉への思いめぐらし 174  青木 健…ランボオの詩句を反転させた言葉の乱舞 176  小手毯奈加…あるの唄声をキャッチしました 178
・報告 伊神健太…盛大に出版記念会 179
・後記 鈴木 孝…「共存と自我と・12」 184




 
顔/今井好子

みおぼえのある子供が
自転車にのって走ってくる
ようやく名前を思い出したころ
自転車はすっかりみあたらない
M子はすでに成人して
あの子はいつ
M子から顔をもらったのだろう
いや
M子からほかのだれか
ほかのだれかから
ほかのほかのだれか
M子もだれかから
顔をもらったにちがいない
いがいとよかったわ
ふつうよ
ぜんぜんよくなかった
などといわれ
髪のながい たまご型の顔は
子供からつぎの子供へと
てわたされつづけている
そう
自転車の子供が
あんなにいそいでいたのは
角をまがったところで
あしたの子供へ
顔をわたす約束があって
おくれてごめんなさい
さあ どうぞ

 〈顔をもら〉う、〈子供からつぎの子供へと/てわたされつづけている〉という発想がユニークです。私たちは、顔は個別のもの、その人のアイディンティティーと思い込んでいますが、視点を変えれば顔など問題ではないのかもしれません。例えばアリを見たときに、アリの個別の顔などを考える人はまずいないでしょう。アリの集団としか認識しません。人間を見つめるもっと大きな眼。この作品をそれを示唆しているのかもしれません。




個人誌『知井』10号
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2010.4.20 京都市北区 名古きよえ氏発行 非売品

<目次>
[特別寄稿 詩] 花思うひととき/星 雅彦 2
        つう/岸本マチ子 5
知井の歴史(8)長谷寺の仁王像/名古きよえ 8
エッセー 久々の感動/前田芳子 11
京都新聞記事 名古きよえ詩集『水源の日』/河津聖恵 15
[返礼の詩] 闇、伝承の水源/森 常治 16
詩集「水源の日」より 闇に包まれて/名古きよえ 20
オリオン座三ツ星/名古きよえ 23
空木
(うつぎ)の花/名古きよえ 25
心に残る詩 愛のもつ二つの矢
(ベクトル)/日野原重明 28
      入山/鄭
(チョン)浩承(ホスン) 30
あとがき




 
オリオン座三ツ星/名古きよえ

冷たい空気に首をすくめて
深まる闇夜の空を見上げる
目を洩らして
三ツ星を見つけた

三ツ星を囲む四つの星も輝いている
故郷の冬の夜は
もっと小さな星も出ているだろう
遥か彼方へ届くとも思わないが
遠くの人を思う

ここに立つ私が消えても
何も変わらない
とても小さな存在が
星との距離で照らされて

これまで出会った人 別れた人
涙でうるむように星影は届くので
記憶の襞も早送り
映像が霊気の空へ飛んで

見えないけれど
姿を変えて輪になっているのだろう
頬を射す風は懐かしい
今夜は 私の頭上で
オリオン座三ツ星またたいている

 “冬の星座”という曲が聞こえてきそうな作品です。〈とても小さな存在が/星との距離で照らされて〉いるという情景が佳いですね。〈故郷〉と〈これまで出会った人 別れた人〉を想い、〈オリオン座三ツ星〉を見つめている作中人物に、誰もが共感する詩だと思いました。






   
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