きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2010.3.18 早稲田大学・演劇博物館 |
2010.4.27(火)
日本ペンクラブ「国際ペン東京大会2010」の第5回詩部会を開催しました。事務局からは現在までの国内参加詩人が100名を超えたことが報告され、見本のプリントアウトが配布されました。ようやく全体の形が半分だけ見えてきたかなと思います。これに海外詩人の作品が加わり、国際ペン会長と日本ペン会長の挨拶文、詩部会としての記録が加われば完成です。海外詩人の参加予想は50人ほど。全部で350頁ほどのアンソロジーになりそうです。
今日の詩部会としては名前の表記方法の統一などを決定しました。いままで特に指定していませんでしたので、ふりがなを付けたり、英文の表記もまちまちでした。ふりがなは英文がありますから付けないことにして、英文表記も統一しました。例えば「村山 精二 Murayama
Seiji」または好みで「村山 精二 Seiji Murayama」となります。並び順は英文表記方法に関係なくMの項目に入ります。フォントも指定しませんでしたから、これもマチマチ。事務局に一任することにしました。
主にはそんなところで、今回は朗読会の話にはほとんど進みませんでした。次回からいよいよアンソロジーの校正、朗読会会場の分担などが決まってくると思います。今回の参加者は20名。雨の中を遠くは広島県からもおいでくださり、ありがとうございました!
○佐藤雅子氏・詩『こもりうたのように』 詩画集 美しい日本の12ヵ月 佐藤太清・画 |
2010.3.22 神奈川県鎌倉市 銀の鈴社刊 1500円+税 |
<目次>
1月 おめでとう元旦――迎春―――4 2月 しかられた日―――旅の夕暮―6
3月 三月の窓―――――雨あがり―8 4月 はるのかくれんぼ―清韻―――10
5月 緑のなかで――――暎――――12 6月 六月の雨―――――雨の日――14
7月 母なる惑星――――蓮――――16 8月 ぼくのいなか―――行雲帰鳥―18
9月 どこかに秋が―――初秋―――20 10月 きんもくせい―――寂――――22
11月 あなたはだあれ――旅鳥―――24 12月 冬だから―――――玄冬―――26
楽譜 はるのかくれんぼ(曲 甲賀一宏)…28 きんもくせい(曲 湯山 昭)…30
作品一覧…32
表紙画 雪つばき
本扉画 釧路湿原冬の旅
裏表紙画 旅の朝
がんたん
おめでとう 元旦
きのう つづ あさ
昨日の続きの 朝なのに
なに かがや
何もかも輝く 元旦
たいよう
いつもより まぶしい太陽
す とお くうき
透き通った 空気
きぼう
希望あふれる
おめでとう 元旦
きょう
昨日の続きの 今日なのに
はじ
何もかも初まりの 元旦
あたら もくひょう
新しい目標 スタート
がんば
頑張るぞと ファイト
あす しん
明日を信じて
おめでとう 元旦
いま
昨日の続きの 今なのに
しんせん
何もかも新鮮な 元旦
かぞく
家族みんなで おとそをかこみ
わら ごえ
笑い声が はずむ
えがお
笑顔がうれしい
おめでとう 元旦
前出の詩部会で頂戴しました。父上の佐藤太清画伯(1913〜2004)の日本画と組み合わされた詩画集です。父上は芸術院会員、文化勲章受章者で山種美術館や東京都現代美術館に作品が所蔵されているようですから、私もどこかで拝見しているかもしれません。目次の前半が詩作品名、後半が絵の作品名になります。なお、目次は総ルビですが割愛させていただています。ここでは冒頭の詩を紹介してみました。「迎春」と題された絵は、羽子板を持った振袖姿の女の子が紅梅の下に佇む作品です。詩は〈昨日の続き〉に過ぎない日なのに、〈何もかも新鮮な 元旦〉を〈希望あふれる〉タッチで描いていると思いました。
○隔月刊会報『新・原詩人』29号 |
2010.4 東京都多摩市 江原氏方事務所 200円 |
<目次>
《この詩 27》長谷川修児「詩集 緋」より 1
詩 道/まつうらまさお 3
句と写真−山梨県・志村勇 3
読者の声 3
詩 ケイタイメールの淋しい話/江素瑛 4
詩 「暴力やむなし」の言葉を捨てましょ/raipati 4
『礫』39より ユビキタスは夢満タス!? 4
短歌 早春の歌/伊藤眞司 4
「サン通信」11号より 悦子のかじまーい(第7回)地先の小島とジュゴン 5
おばあさん、おいくつ?/小山田美智子 6
事務局より 6
ケイタイメールの淋しい話/江素瑛
馬や飛脚の時代は
一通の手紙
届くまで何か月もかかる
待つ喜びと希望
ときめきがある
ケイタイ時代は
郵便屋もいらない
刻々メールしないと
仲間はずれ
世間に捨てられて
手紙や電話やファックスの
連絡手段を忘れてしまう
メール症侯群になる若者が多い
口は食べるだけで言語を失い
言語が声を失った文字盤になり
指ばかりが踊っては止まらない
気持ちはショートで
落ち着きはない
立っても座っても歩いても
人々の目はケイタイの銀盤に釘付け
神経は針でピンとめられ
寝床に着いてもケイタイを身から放さない
閃く着信メールのシグナル
一瞬込み上げた喜びは
受信ボックスを開くまで
迷惑メールは人の心の虚ろを狙う
夜中まで暴走
ますます淋しい夜を耐えられなくなる
私も〈ケイタイメール〉をかなり使う方なので、身につまされる作品です。たしかに〈口は食べるだけで言語を失い〉つつありますね。固定電話もケイタイでも話しをするのがおっくうになりつつあります。もともとは利便性のために開発されて器械。道具だと思って使っていますが、〈寝床に着いてもケイタイを身から放さない〉状態だけは避けたいものです。
○個人詩誌『ほいさ通信』19号 |
2010.5.1 大阪府交野市 金堀則夫氏発行 非売品 |
<目次>
のう作業/金堀則夫 1
溝埋/金堀則夫 3
白/金堀則夫 5
あとがき
溝埋/金堀則夫
田植え前の〈川ざらえ〉は
一斉に村人とともにしなければならない
畦と畦の溝は一面の田に水を満たし
水を排していく
溝の土を上げ 鎌で畦の草刈りをする
鳥居をくぐるように水田は神へのいとなみである
誰だ 手に鍬も鎌ももたず
除草剤を散布しているのは
草の根は畦の土手をささえ田を守っている
根を枯らせば 畦は崩れていく
崩れる土は もとにはもどりはしない
土は溝を埋め 田との境をこわしてしまう
水は流れず 他人の田も侵していく
水の流れる溝を堰きとめてはならない
水はどこの田畑にもゆきわたるように
大昔から溝は掘られている
池水は先祖からひかれ 田を守っている
大量の除草剤や 殺虫剤 化学肥料が
家庭排水の洗剤とともに流れてくる
恵みの水は 薬物が溶け込んでいる
神聖な田は侵されている
土に残留農薬が滲み込んでいく
苗を育てながら 何の養分が入り込んでいる
わたしたちの生きる養分に何が混じり込んでいる
畦をこわす 溝をうめる
弥生の古代から犯してはならない
罪 田をこわす怖さをだれも知らない
土地として領有する境界をセメントで囲ってしまう
セメントの畦は土も水も息苦しく
溝には雑草が生えない
みずから成長するちからの
土も水も草も生きものも還ってはこない
壊すものは田から追放される
土は作物を植てこそ水と共に生きていく
川ざらえをする村人はどこにもいない
稲穂の黄金を迎える儀式はどこへいった
農作を薬物でいとなんではならない
先祖の耕作地を農薬で守ってはならない
わたしは苗ももたず 鍬も 鎌ももたず
手に負えない田は雑草が伸びほうだい
溝だけは草を刈り 土をあげる
水を流すため
最近の田圃は〈セメントで囲ってしまう〉ものが多いように見受けられますけど、〈セメントの畦は土も水も息苦しく〉なってしまうんですね。〈土地として領有する境界〉のためなのでしょうが、それでは〈みずから成長するちからの/土も水も草も生きものも還ってはこない〉のだと知らされます。ポリシーを持って農作業をする作者の姿が見える作品だと思いました。