きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2010.3.18 早稲田大学・演劇博物館 |
2010.4.30(金)
4月最終日。特に予定はなく、いただいた本を拝読していました。
○隔月刊詩誌『サロン・デ・ポエート』285号 |
2010.4.25
名古屋市名東区
中部詩人サロン編集・伊藤康子氏発行 300円 |
<目次>
作品
若葉のあいさつ……………野老比左子…4 菫によせて…………………足立すみ子…5
さくらの時間………………高橋 芳美…6 二才十ヶ月…………………小林 聖…7
生の充実 河田忠氏逝く…阿部 堅磐…8 川辺の語らい………………荒井 幸子…10
宴の果て……………………横井 光枝…11 寅年生まれ…………………田渕千恵子…12
三日月…………………みくちけんすけ…13 桜の季節に…………………伊藤 康子…14
「あっざぁーす!」…………岡本 はな…15 子猫と街灯り………………福田実佐枝…16
散文
詩集「ねごろ寺」を読む…阿部 堅磐…17 詩集「海の血族」を読む…阿部 堅磐…18
同人閑話……………………諸 家…19
受贈誌・詩集、サロン消息、編集後記 表紙・目次カット…………高橋 芳美
桜の季節に/伊藤康子
引き出しの片隅に
忘れられた様に潜んでいた
ものたちが 突然
踊りだしてくることがある
手紙であったりメモであったり
捨てられずにいたものが
その存在を主張する
私はここにいます
あの時の気持ちを
忘れたのですか
古く黄ばんだ一枚の写真が
今はそばにいない人達が
語り掛けてくる
元気にしていますか
あの時の場所を
覚えていますか
戻れない刻の彼方から
遠い先の道まで照らしながら
心の中に染み込んでくる
この気持ちを抱え込みながら
桜吹雪の川端に立ち早くす
「みかん一つだけど どうぞ」
花見の見知らぬおばさんが
ほほ笑みながら手渡してくれた
〈手紙であったりメモであったり〉、〈古く黄ばんだ一枚の写真〉が語りかけてくるものは、懐かしさとともに確かに〈その存在を主張〉してきます。この作品は、それだけにとどまらず〈桜吹雪の川端〉につなげたことが見事だと思います。最終連も佳いですね。〈ほほ笑みながら手渡してくれた〉のは、懐かしいものたちの精神なのかもしれません。
○詩誌『北の詩人』82号 |
2010.5.5
札幌市豊平区 日下新介氏方・北の詩人会議発行 100円 |
<目次>
版画・詩 祝って踊ろう たかはたしげる 1
よしつぐ阿弥陀 仲筋義晃 2 核兵器廃絶を 佐藤 武 4
短詩 呪縛・安保破棄できない国・骨折・ショートステイ・クロッカス・ピースチャレンジャー・増税・ビラおり/佐藤 武 5
日本世界幸福度九五位 佐藤 武 6 短歌 卒業そして入学 幸坂美代子 7
エッセイ
戯作者 井上さん逝く もりたとしはる 8 「馬糞の川流れ」 もりたとしはる 8
続『ガリガリ博士』から 『銀河鉄道の夜』を読み解く 倉臼ヒロ 10
怪物爆撃機B52 たかはたしげる 13 小さな波 たかはしちさと 14
昏い国へ戻るか たかはしちさと 15 ネイロ そのいち 内山秋香 16
ネイロ そのに 内山秋香 16 ネイロ そのさん 内山秋香 16
鈴虫 大竹秀子 17 塗り絵 大竹秀子 18
叙事詩 白石(11) 阿部星道 19 ある日 朝・昼・夜 高柳卓美 20
赤いズボン 日下新介 21 本の紹介 「カデナ」池澤夏樹 高畑 滋 22
「日本現代詩歌文学館」より 9 「平和詩集」応募要項 21
おわび 日沖 晃 23. 『北の詩人』81号作品評 佐藤 武 23
受贈詩誌寸感 日下新介 25 もくじ・あとがき 28
祝って踊ろう/たかはたしげる
核廃絶
足を高く上げて祝おう
ヒロシマの子らに伝える
あやまちは繰り返しませんの約束
いま果たした喜びに舞い上がる
軍事基地廃絶
手を高く上げて祝おう
沖縄の子らに伝える
すべての軍事基地は消えた
もうおびえることは無い
平和的生存稚確立
体いっぱい踊って祝おう
世界中の子らに伝える
平和な世の中 皆のもの
祝って踊ろう
踊って祝おう
今号の表紙の版画はたかはたしげるさんの「四人天女の舞」というものでした。紹介した詩はそれに付けられたもので、〈核廃絶〉〈軍事基地廃絶〉〈平和的生存稚確立〉という希望がすべて叶えられたという前提の作品です。こういう手法もあるんだなと感心しました。現実の問題を鋭く抉ることも詩の大きな役割ですが、問題が解決された状態を想像するのも詩の力だと気づかされました。
○詩と批評『逆光』74号 |
2010.4.25
徳島県阿南市 宮田小夜子氏発行 500円 |
<目次>
海鳴り 鈴木千秋 2 冬の日 嵯峨潤三 4
タンポポ 大山久子 8 椿の花 大山久子 10
晩節の時 儚田侑子 12 迷うための地図 藤原 葵 16
座間味 ただとういち 18 古座間 ただとういち 19
阿嘉 ただとういち 20 慶留間 ただとういち 21
外地 ただとういち 22 シラハマ ただとういち 23
恋人以上 沙海 24 リハビリ病棟 −ヘルパーの日記から 川西温子 26
いのちの詩 木村英昭 28 未解決なんだけど 細川芳子 30
夫婦なのだろう 細川芳子 32 深海の光 香島恵介 34
オブラート(oblate) 宮田小夜子 38
シリーズ 詩(詩人)との出会い(40) 小野小町 宮田小夜子 42
集団自決の島・座間味を訪ねて ただとういち 48
コラム〔交差点〕 老人力 51
あとがき 56 表紙 嵯峨潤三
座間味/ただとういち
千枚岩に挟まれた
サンゴの化石があるらしい
旅館の主人が案内する
林道開発で削られた露頭に
それらしい塊を見つけた
「誰にも教えたことがありません」
…………………………………………
どうやら
皆に同じことを……
同じ作者により、写真入りの「集団自決の島・座間味を訪ねて」というリポートがありますから、おそらくそのときの作品だろうと思います。「座間味」「古座間」「阿嘉」「慶留間」「外地」「シラハマ」と連作になっていました。「古座間」では〈生徒たち〉という言葉が出てきますので、中学校か高校で引率していたのかもしれません。紹介した作品には笑ってしまいました。観光地は、案外そんなものなんでしょうね。
○個人詩誌『SUKANPO』7号 |
2010.4.30 群馬県高崎市 田口三舩氏発行 非売品 |
<目次>
(詩)
風の画家はきょうも・・・・・・・・・2
もう一人のわたし 十年後のおまえに・4
膝を抱えた羅漢さん・・・・・・・・・6
(あとがき)
もう一人のわたし 十年後のおまえに
多分おまえにはまったく似合わない格好で
ちょい悪風な老人を演じているだろう
暗い日々の中で 呻き苦しんでいた私を見て
ほくそ笑んでいた もう一人のわたし
生きるってことは などと
ときに深刻ぶった言葉をかき集めては
季節はずれの物語を綴っていたおまえ
そう言えば口癖だった
目を閉じればこの世はがらんどう
私から剥ぎ取っていった陰は
きょうもおまえの虚勢を飾りたてているか
高崎市制110周年記念式典に参加して、「十年後の私」に宛てた手紙を書いたそうです。10年後に届くとのことでした。世の中の10年後はときどき夢想しますけど、そういえば自分の10年後についてあまり考えたことがありませんでした。よい切っ掛けを与えていただいたので、少し考えてみたいですね。作品は〈目を閉じればこの世はがらんどう〉というフレーズに魅了されています。