きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2010.4.9 山梨 中村キース・ヘリング美術館 |
2010.5.1(土)
群馬県榛東村で知人の講演会があったのですが、行きませんでした。連休で高速千円。大渋滞が予想されますからね。いただいた本を拝読して過ごしました。
○詩誌『COAL SACK』66号 |
2010.4.30
東京都板橋区 コールサック社発行 952円+税 |
<目次>
扉詩 平原比呂子 未だ解けず 1
詩
結城 文 修道院で 5 武藤ゆかり 座禅教室 6
安永圭子 木精(こだま) 7 塚越祐佳 海囲 8
豊福みどり 速さ 10
エッセイ うおずみ千尋 盲目の日に 晩秋の市立図書館 11
詩
李 美子 水への偏愛 12. 高 炯烈/訳・李 美子 アジア詩行(最終回)13
御庄博実 鄭さんの左手/メガネのおじいちゃん 20 崔 龍源 ユクサあるいは囚人番号263(イユクサ) 22
シュレヤ・パンディー/訳・結城 文 詩集『戦争の余波』より 24
エッセイ
伊藤眞理子 ヒロシマと私(1) 26 小村 忍 川内原発関連報告(その2) 30
詩
後藤 順 配達人 31. 宇宿一成 祈祷師/軽業師 32
石村柳三.《石》の品格 34 酒井 力 夜の虹 35
朝倉宏哉 老木の桜 36. 山本十四尾 嫁菜考 37
エッセイ
山口賀代子 吉野 西行庵への道 38. 淺山泰美 久高島の神人 40
杉本知政 ほととぎす考 48
詩
橋爪さち子 トカゲの尻尾 49. 山野なつみ 父の答え 50
村永美和子 茶の間 51. 貝塚津音魚 息子よ 52
鳥巣郁美 時のかけらが 53
講演記録 デイヴィツド・クリーガー/訳・水崎野里子 長崎での核兵器廃絶講演 54
書簡論考 鈴木比佐雄 高炯烈氏への手紙 59
詩
山本泰生 鳥 68. こまつかん 金のなる木によせて 69
下村和子 ディーバ 70. 徳沢愛子 ゴーヤ 71
山本倫子 植皮・デブリードマン/凹みますが 72 皆木信昭 認知症 その7 73
連載 亜久津歩 〈自殺者〉を繋ぐ 第二・三回「東尋坊の“ちょっと待ておじさん”」74 「祖父とのこと」78
詩
平井達也 新宿/保存方法/私的因果論 82. 森田海径子 スウィング 84
木村淳子 左手と右手 85. 森 常治 せかいの熟れごろ 86
郡山 直 素朴な果糖焼酎製造者の言葉 87. 山本聖子 水位/シンガポール 88
詩人論
森 三紗 石川啄木・論 89. くにさだきみ 金光洋一郎・論 93
吉村伊紅美 堀内利美・論 100 鈴木比佐雄 大井康暢・論 105
詩
くにさだきみ ホタルイカの自決 110 水崎野里子 ながさきの鐘(二行詩十篇) 112
小村 忍 鎮魂(たましずめ)の川 113. 吉田博子 核廃絶 114
英独俳句 尾内達也 欧文俳句の試み/ノート 116
小詩集
畑中暁来雄『握手』五篇 120 林 木林『鳥かご』四篇 124
未津きみ『草々の風』八篇 128 亜久津歩『こころのよはく』七篇 140
青柳俊哉『白い像』七篇 144
書評
長津功三良 149 山本 衞 151 中原秀雪エッセイ集『光を旅する言葉』
三島久美子 153 黛 元男 158 大崎二郎『大崎二郎全詩集』
崔 龍源 161 山口賀代子 164 淺山泰美エッセイ集『京都 銀月アパートの桜』
西岡寿美子 166 増田幸太郎 168 下村和子エッセイ集『遊びへんろ』
都月次郎 171 牧葉りひろ 176 北村愛子詩集『今日という日』
池下和彦 178 山本倫子 181 郡山直詩集『詩人の引力』
石村柳三 184 岩崎和子 187 くにさだきみ『くにさだきみ詩選集一三〇篇』
堀内利美 190 結城 文 193 中津攸子俳句・エッセイ集『戦跡巡礼』英語版
岡崎 純 196 岸本マチ子 199 徳沢愛子詩集『加賀友禅流し』
佐々木洋一 203 烏巣郁美 205 堀内利美日英語詩集『長詩 円(まど)かな月のこころ』
南 邦和 207 磐城葦彦 210 吉田博子『吉田博子詩選集一五〇篇』
追悼・遠藤一夫 遺稿集九篇 212
川島完 郡山の「時よとまれ、君は美しい」人 216
山本十四尾 寒緋桜と梅のよく似合う詩人 217
鈴木比佐雄 阿武隈川の支流のほとりで詩作した人 218
新連載 佐相憲一 現代詩時評・展望 地球は回り、社会は動き、詩は降り注ぐ 220
詩
うおずみ千尋 花しずく 226 淺山泰美 うつくしい楽器 227
堀内利美 死のドラム/亡き母へ贈る言葉 228 横田英子 遠い海鳴りよ 231
佐相憲一 モンタージュ/桜だより 232 鈴木比佐雄 五輪峠にはどんな山桜が咲いているか 234
よびかけ 鈴木比佐雄 『鎮魂詩四〇〇人集』最終公募 236
執筆者住所一覧 240
後記 242
左手と右手/木村淳子
右手はうぬぼれていた。
ぶきっちょな左手、
あんたは何もできないんだ。
はさみも使えないし、
鉛筆もだめだし、
私がいなければ何もできない。
ある日 左手が音をあげた。
いたい、いたい、もうだめだ。
右手は言った、
あんたはもうだめ。
私がする、私ひとりで十分よ。
右手はわかってはいなかったのだ
何も。そしてようやく
気がついたのだ、左手なしには
顔を洗うことも、
タオルを絞ることも、
ご飯を食べることも、
できないと。
いま 右手は左手をさすっている。
もう痛まないようにと祈りながら。
優しい人が
病む人の
足や腰や背中をさするように。
たしかに私たちは〈ぶきっちょな左手〉と思っている節がありますね。私は30年ほど前にハンググライダーで墜落事故を起こし、そのときに左手を骨折していますが、いまだに筋力が衰えたままです。そのためにこの詩の〈右手〉の〈うぬぼれ〉はよく分かります。しかし、〈左手なしには〉なんにも〈できない〉んですね。そのことに改めて気づかされる作品です。
○詩とエッセイ『』29号 |
2010.4.20
埼玉県所沢市 書肆芳芬舎・中原道夫氏発行 700円 |
<目次>
詩作品
崩壊感覚…青野三男 6 描く・朝…江口あけみ 8
闇の川…築山多門 10 短詩三題(願い・円空木喰展・薬師寺)…門林岩雄 12
お握り…中原道夫 14 お墓のこと…平野秀哉 16
紙芝居…みせけい 18 地上の呼吸…新沢まや 20
ファクス…王 秀英 26 夜のブルース…浅野 博 28
昨日生きて…肌勢とみ子 30 刻印…香野広一32
広げて…河野昌子 34 海は…菅野眞砂 36
秋−立ち止まる季節(秋日和)…北村朱美 38 落とし物…小野正和 40
幻聴…田所桂華 42 胡桃…後藤基宗子 44
熟す李…浅井たけの 46 手紙…向井千代子 48
発表会…竹下義雄 50 ひきこもり…月谷小夜子 52
梅につられて…長谷川昭子 54 けらけら…内田武司 56
見舞い…吉見みち 58
エッセー
宮沢賢治の祈りと山尾三省の祈り…中原道夫 1
朝鮮と中国 二人の詩人…みせけい 22
中原道夫詩集『ほのぼのと首四十歳』を読んで…後藤基宗子 24
カラス何て鳴くの…北村朱美 26 二月の雪…長谷川昭子 28
ゴミ屋敷…田所桂華 30 乱箱…後藤基宗子 32
ありがとう…竹下義雄 34 如月の雪に…浅井たけの 36
筆に想う…吉見みち 38 ものもらい…月谷小夜子 40
リディエツェの子供たち…菅野眞砂 42 約束を破る理由…内田武司 44
山の夢…向井千代子 46 読み返してみると…河野昌子 48
悪い夢…浅野 博 50 親分はどこですか…小野正和 52
森田君のこと…肌勢とみ子 54 里山を徘徊する…香野広一 56
言葉は国の魂…王 秀英 58
猗の本棚(書評)…平野秀哉 60
混沌としている世相から脱出する方法(詩誌評)…香野広一 62
猗の窓…64
題字・表紙目次装画…中原道夫
ファクス/王 秀英
送ったあとにも
残る原本
蝶と蝉は
抜け殻を残すのに
私の心と誠意がこもる
原本は届かず
複写の紙をもらう相手
用件だけ行き来する器機に
文句をいうことはないけど
本物の私を置いて
偽物が相手に届いたようで
眼の前に
立ち塞がる原本に
照れてしまう自分が
恥ずかしい
この感覚はおもしろいなと思います。たしかに〈相手〉は〈原本は届かず/複写の紙をもらう〉だけです。それを〈本物の私を置いて/偽物が相手に届いたようで〉〈恥ずかしい〉とする作者が新鮮です。〈用件だけ行き来する器機〉とはいえ、相手のことを念頭に置く作者に敬服しました。
○文芸誌『礁』14号 |
2010.4.30
埼玉県富士見市 礁詩社・穂高夕子氏発行 非売品 |
<目次>
詩作品
枯れ草の土手 穂高夕子 2 ピアノ協奏曲 穂高夕子 5
いつの日か 佐藤 尚 6 駆ける 佐藤 尚 8
昨日と今日 濱 泰雄 10 俳句 枯孤木 川端 実 14
エッセイ
平成掌編随想 文人俳句を読む 川端 実 15 平家物語の世界(9) 西へ西へ(一) −二人の天皇誕生− 川端 実 16
耳も耳なら腹も腹 秦 健一郎 22 私の読書日記 −まどさん− 穂高夕子 28
作品 メメント・モリ 中谷 周 32
編集後記 38 表紙デザイン 佐藤 尚
ピアノ協奏曲/穂高夕子
胸の中にたまっていくものが
あたたかい思いなら振り向きはしない
すわり癖のついた思いだけが残るなら
未練など捨てる方がいい
悲しいときに悲しい曲をきくもんじゃない
闇の中で眼をあけて 見えない思いに耐える
指先の血管にまでこみあげてくる
ことばの和音のモノトーンの連なり
意味を持たない音などはない と
ピアノはいつも
黒の鍵盤から 立ちあがってくる
〈すわり癖のついた思い〉という詩語に惹かれます。この場合は〈未練〉と採ってよさそうですけど、妙に納得のいく言葉です。〈悲しいときに悲しい曲をきくもんじゃない〉、〈意味を持たない音などはない〉などのフレーズにも魅了されました。短い作品ですが、内容の濃い詩だと思います。