きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2010.4.9 山梨 中村キース・ヘリング美術館




2010.5.25(火)


 日本ペンクラブの第54回総会が東京會舘で開かれました。100名近くという、近年になく大勢の人が出席して、全議案が執行部提案通り承認されました。わが電子文藝館委員会の活動報告、事業計画も承認。国際ペン東京大会2010の実行委員会のこれまでの活動も報告されました。もちろん詩アンソロジーを作成中であること、朗読会を企画していることも。形式的と言えば形式的かもしれませんが、一応けじめですからね、何の問題もなく終わって良かったです。

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 写真は懇親会にて。左が阿刀田高会長、右が電子文藝館委員会担当の常務理事・松本侑子さん。真ん中のHさん、目を瞑っている写真しかなくてゴメンサイ。松本さんの着物姿を初めて見たように思いましたから、その旨を伝えると、かなりの頻度で着てくるとのこと。あらら、知らなかったなぁ。こちらもゴメンナサイです。
 2次会は久しぶりに銀座のクラブに行きました。そこのママさんには何度も誘われていたのですが、断り続けていました。で、たまには行かないとな、となったものですが、一緒に行ったメンバーが良かったので楽しかったです。銀座の夜も堪能しました。




詩誌『木偶』81号
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2010.5.25 東京都小金井市
増田幸太郎氏編集・木偶の会発行 500円

<目次>
詩人たち(2)      中上哲夫  1   隠れの墓        田中健太郎 3
花芯          野澤睦子  5   ガニとガラ       広瀬 弓  7
おどっちまえ      天内友加里 9   火宅          乾 夏生  11
正体          荒船健次  15   揺藍          藤森重紀  17
中村銀之助一座 婦系図 土倉ヒロ子 19   浅い春         落合成吉  21
格付伝         沢本岸雄  23   抜米          仁科 理  25
途上にて        増田幸太郎 28
窓 こいつ眠ってやがる乾夏生者『父の声路上の母』          土倉ヒロ子 32
  乾夏生『父の声 路上の母』へのエスキス−〈歴史〉と〈文学〉と− 馬渡憲三郎 33
評論 『毎日グラフ臨時増刊 続・日本の戦歴』を読む         野寄 勉  37
受贈誌一覧 42




 
隠れの墓/田中健太郎

山際に穴を堀り
召された人の亡骸を横たえ
平たい石を積み上げた
墓碑銘も十字架も花もない
死した後も隠れるための墓標

人目を避けた夕暮れ
記憶を頼りに
ただひとり訪れて
亡き人と言葉を交わし
祈りを捧げた

やがて墓標は自然に紛れ
誰の墓であったか
どこが墓であったか
子孫たちにも
誰にも判らなくなる

長い禁教の下
隠れながら
命を懸けて保たれた理想は
達成された自由の中で
どのように生き長らえているのか

 〈禁教〉の隠れキリシタンは〈死した後も隠れるための墓標〉のみ。〈やがて墓標は自然に紛れ〉てしまいます。そうまでして、〈命を懸けて保たれた理想〉は、現在の〈達成された自由の中で/どのように生き長らえているのか〉。大きな命題だと思います。信教の自由が達成されて、ようやく60年余。300年つづいた禁教に比べればまだまだ短いのかもしれません。耐えた年月と同じだけの時間をかけないと、本当の自由は来ないのかもしれません。そんことを考えさせられた作品です。




詩誌『コウホネ』26号
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2010.5.15 栃木県宇都宮市
コウホネの会・高田太郎氏発行 非売品

<目次>
作品
にせ利休伝   佐久間隆史…2       割り箸     石岡 チイ…4
山茶花     星野由美子…6       天国      相馬 梅子…14
赤ちゃん    岡田喜代子…16       花恋文     高田 太郎…20
エッセイ
ふりゆくものは 星野由美子…8       詩の隣り    石岡 チイ…9
子育ての頃   小林 信子…10       災難      相馬 梅子…11
私の詩的体験(6)高田 太郎…12
連載
私の一冊一誌 和田恒男詩集『宇宙塵』 高田太郎…18
話の層籠 執筆者住所 後記




 
花恋文/高田太郎

出来立ての新制中学校三月の雪の別れから、
早みどりすがし五月になって、ぼくら土地っ
子のあこがれだったあの人から、風にのって
手紙が来た。予期せぬ出来事だった。手渡し
てくれた母の手も心なしかぎこちなくふるえ
ていたのはなぜだろう。ぼくはうしろめたさ
を隠しながら、少年らしい無関心をよそおっ
て机の片隅に投げすて、英語のリーダーに目
を移したが、胸の高鳴りは止まらなかった。

だれもいなくなったところで、ぼくは覚えた
ばかりのはずかしい指先で封を切った。〈こ
の手紙、宇女高の校門のポストに入れます。
遅れてごめんなさい〉 さらにコクヨ箋一葉
めくると、はらりと落ちたものがある。紅入
り友仙ではなかったが、ぼくにとっては謎め
いた形の押し花だった。

〈私、毎日のようにどこかでお便りしていた
のですけど――私、もう花になってもいいの
よ〉 ぼくは意味も分からず目眩がした。そ
の晩のぼくのお仕着せ仕事風呂焚き、麦わら
と反古ががよく燃えた。哀傷また限りなく煙
となって燃えつづけた。

遅ればせながらぼくも大人となって、あの花
が堅香子であることを知った。そしてその花
言葉も。それは針にかかった小魚の銀鱗のよ
うに苦しくきらめきながら、今もこの老いの
身につきささってくることがある。よい春の
夢を見たら人に話すな――の掟を破った罰と
して。

 青春の1頁と言っては陳腐になりますが、こういう時代もあったなぁと懐かしい作品です。〈堅香子〉には“かたかご”とルビが振ってありましたけど、奇麗に表現できないので割愛してあります。カタクリの花ですね。そして〈花言葉〉は“初恋”。〈針にかかった小魚の銀鱗のように苦しくきらめ〉く思いを共有させていただきました。




パンフレット第十回 自作詩を朗読する会』
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2010.5.9 青森県青森市 自作詩を朗読する会発行 非売品

<目次>
 第一部
「表と裏」       須藤あきこ 3   「再び」        金子 勇男 4
「わたし」       田澤ちよこ 5   「台所のヴィーナス」  對馬 輝子 6
「落日への広かな明り」 岡本としゑ 7   「生きる」       市田由紀子 8
「すき家の牛丼」    福井  強 9   「忍冬(すいかずら)」 吉崎 光一 10
 第二部《晩翠賞作品朗読 U》
「動物記」       小山内弘海 11   「空」         小山内弘海 12
「名なく土地なく」   小笠原茂介 13   「水無月 みどりは」  小笠原茂介 13
「その日」       泉谷  明 14   「フロム・ヒア」    泉谷  明 15




 
台所のヴィーナス/對馬輝子

空きビンを
水につけて
レッテルをはがすのが
好きです

空きビンを
窓辺に置いて
みつめているのが
好きです

 酢のビン
 ハチミツのビン
 コショウのビン

容器としての役目から
レッテルをはがすことで
それらは
色と形以外の何物でもなくなる

初めて自由になったビンたちが
水の中から現われるとき
それは 確かに
ヴィーナスの誕生だった

 〈容器としての役目〉を終えた〈空きビン〉を〈ヴィーナスの誕生〉と見る視線が新鮮です。〈レッテル〉を張られて、何の入れ物かという強制から解放されて、〈初めて自由になったビンたちが/水の中から現われるとき〉、ビンたちは瑞々しく固有の〈色と形〉を主張します。そこまでは私も体験していますけど、〈ヴィーナスの誕生〉とまでは思い至りませんでした。想像力の豊かさに敬服しました。






   
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