きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2010.4.9 山梨 中村キース・ヘリング美術館 |
2010.5.26(水)
その1
会社でやっていた詩サークルのOB会に行ってきました。例年通りの泊まりで、今年は熱海のホテル。一度、職場の忘年会に泊まった記憶のある温泉ホテルです。いつも通り10人ほどが集まって、なごやかな会だったのですが、驚いたのは同宿の他のお客さん。なんとヤクザのグループでした。
自慢の露天風呂があるというので、宿に着いた早々、先輩と行ってみました。露天が2ヵ所、半屋内が1ヵ所の立派な温泉でした。そのうちの1つを若い男たち10人ぐらいが占めていましたので、先輩と私はもう1ヵ所の露天へ。若い人たちはいいなあと思いながら彼らの傍らを通って、ギョッとしました。全員が総刺青。それも肩からお尻まである立派なもの。詳しくは見ませんでしたが、唐獅子牡丹や弁天様が彫ってあったようです。私も親父がヤクザ者ですから刺青ぐらいでは驚きませんけど、その壮観さには圧倒されました。
最近は彫るのではなく貼るタイプの刺青があるそうですけど、あれは間違いなく彫ったものでしょう。彼らの態度を見ていても、シャワーの飛沫が他の人に掛からないか注意しているところなど、よく鍛えられたヤクザ者です。注意しなくちゃいけないのはもっと別のことだろうと思いましたけど、もちろんそんなことは言いません(^^;
それにしても温泉にはよく「刺青の方は入浴お断り」と書いてあるんですが、そういえばここにはなかったなあと思い至りました。ヤクザは温泉に入っちゃいけないというのも、なんだかなぁと思いますが、実物を見るとたしかにギョッとしますね。
彼らの部屋は私たちの隣。刺激しないように、騒がないように、いつになく静かな呑み会となりました(^^;
○安藤靖氏句集『蟻の旅』 |
2009.7.10
神奈川県茅ヶ崎市 安藤庄市氏方・文芸海流の会発行 非売品 |
<目次>
平成十八年夏〜十九年夏 33
考ふる蟻を見てゐる休息日
焦燥感白紙の上を蟻あゆむ
族立ちや舟笛ひびく新樹林
山国に命を洗ふ鯉のぼり
みどりの羽根胸にそよいで植樹祭
池の蟻救ふも父の故郷なり(新潟)
上述のOB会で頂戴しました。『文芸海流』という句誌(?)からの抜粋のようで、目次の頁数は句誌の頁数と思われます。冒頭の6句を紹介してみました。俳句はまったくの門外漢なのですが、〈池の蟻救ふも父の故郷なり(新潟)〉には惹かれました。
○詩誌『ユタ』19号 |
2010.5.20
千葉県習志野市 石井真也子氏編集 非売品 |
<目次>
春の日に/白井恵子 1 落下/白井恵子 5
春愁/田中智子 7 真夏の海辺は/濱野なな子 9
昔 むかしの/石井真也子 11
あとがき 14
落下/白井恵子
かたく握った手をほどくと
あきらめなさい
風の声がする
こぶしの花が壊れて
天空にほそいほそい月の船
春には
春の船出があって
人々の過剰な思いに揺らいでいる
川面を流れ
樹々を登るほろ苦い水
黒々とした里山のふもとを
走り抜けた銀色電車の光
そして少しあたたかい身体は
なんてたりないものばかり
白い花びらは舞う
地に着くことなく
はるか
まぼろしの時を落下し闇を深くするのか
寂しい手のひらは
なにかをつかみなおせるだろうか
ふたたびのこぶしを
どのようにふりおろそう
「落下」というタイトルから考えると、〈かたく握った手をほどく〉というのは〈こぶしの花〉を落としたことと採れますけど、冬に握り締めていた手を緩めたとも受け止めました。〈少しあたたかい身体は/なんてたりないものばかり〉というフレーズも佳いですね。ここは冬に様々なものが欠乏していたことかと思いました。まったく作者の意図とは違うでしょうが、そんな読み方も許されるかもしれません。
○季刊・個人詩誌『ぽとり』18号 |
2010.6.1
和歌山県岩出市 きのかわ文芸社・武西良和氏発行 非売品 |
<目次>
18号特集=舟・船=について 1
詩作品
川船 2 川原 3 水郷の町 4
八幡堀 5 八幡堀2 6 釣り船 7
釣り人 8 浜辺 9 尾道 10
海峡 11 帆船 12
ぽとりの本棚・ベンヤミンを読む(8) 13
ぽとりエッセイ 16
川原
川原に
下りて行くと
舟はすでに向こう岸に
着いていた
何時だってぼくが
行ったとき
舟
は向こう岸
ポケットいっぱいになった不平の
饒舌をぼくは川に
流し始める
いつの間にか饒舌は全て川に
流されてしまって
上流から次々と水を
下流へと押しやっている
舟はまだ向こう岸を離れない
灰色の猫が
セメント道に飛び出し自分の
存在理由を探している
夕暮れのなかに
猫は
溶け込もうとしているが
目
だけが光り始める
*和歌山県岩出市にて
第2連の〈何時だってぼくが/行ったとき/舟/は向こう岸〉という感覚は分かりますね。その〈不平〉が〈饒舌〉を齎すのだろうと思いますが、それが詩の発生原因の一つかもしれません。そして、いつまで待っても〈舟はまだ向こう岸を離れ〉ません。だから詩を書き続けるしかない…。そんな、勝手な読み方をさせていただきました。