きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2010.5.23 静岡 中勘助文学記念館 |
2010.6.1(火)
静岡県焼津市の日本坂峠に登ってきました。東名高速日本坂トンネルの名称由来地です。トンネルの西側出入り口近くに駐車場があって、そこから歩いて1時間ほどで峠に着きます。この峠は万葉時代の東海道だそうで、かつて日本武尊も東征の折に通ったと云われています。
途中に「花沢の里」という集落があるのですが、ここが素晴らしいですね、何もなくて(^^; 休日には地元野菜の直売所や無人売店が出るらしいのですが、残念ながらこの日は何もありませんでした。
写真は花沢の里の一角です。実はこの写真、焼津市が発行している観光パンフレットと同じ構図です。何枚も写真を撮ったのですが、気に入った1枚が同じだったというわけ。写真のベストポジョンは一つしかないのだなあと改めて思います。
峠自身はどうということはありません。暗い木立ちを抜けると青空が見えますけど、山頂ではありませんからそれほど展望も良くありません。標高も300mほど。峠から標高で150mほど上がった両隣の花沢山や満観峰が見晴らし良さそうですが、結構キツそうで今回はパス。健脚の方は行ってみるといいでしょう。
焼津はさかなセンターだけではないという宣伝でした。
○詩と散文『RAVINE』174号 |
2010.6.1
京都市左京区 薬師川虹一氏方・RAVINE社発行 750円 |
<目次>
詩■
古家 晶 雛箪笥 2 堤 愛子 早春のシーソー 5
谷村ヨネ子 単語 ほか 8 山本由美子 信頼 12
木村三千子 よそ者 14 乾 宏 後悔について 16
牧田 久未 皿 18 並河 文子 放火 21
村田 辰夫 ゼロ小唄 24 薬師川虹一 黒い太陽(二) 26
白川 淑 ご近所さん(り) 32 苗村 和正 もえる木 34
名古きよえ 雨の日 36 藤井 雅人 共生 38
早川 玲子 えっ えっ? 40 成川ムツミ 拾ったもの 44
ヤエ・チャクラワルティ 無題 46 久代佐智子 深夜のハイウェイバス 48
木村 彌一 黄金虫 50 中島 敦子 素晴らしい友人の皆様です 52
荒賀 憲雄 足の裏の思想 54 中井不二男 音楽散歩 57
藤田 博子 光陰の矢 60 石内 秀典 なにもない春です−病院 63
同人語■
乾 宏 「戦前・戦後の詩誌の系譜」から.28 木村三千子 盗作 29
木村 彌一 心の森 30 石内 秀典 唱歌「ふるさと」のこと−ある卒業式で 31
エッセイ■
福田 泰彦 月日かさなり、年経し後は…XV.65. 村田 辰夫 T・Sエリオット詩句・賛(42) 70
後悔について/乾
宏
後悔のない人生なんてある筈はないが
したことについての後悔
しなかったことについてのそれ
気も付かなかったことについてのそれら
惑いを楽しむたちではないが
いつでもやれると思ったこと
そんなこと俺がやるかと尊大ぶったこと
今頃気付いたこと
勇気を出せなかったこと
あいつに唆かされたこと
乃公出でずんばと買って出たこと
それ位いならと請け合ったこと
あのあたりでやめておけばよかったこと
あれ程やったのに結果を謗られたこと
己れの智慧や力が足りなかったこと
考えも分別も浅かったこと
後悔と槍持は前には出ない
ということはようく知ってるが
まあ
生きているからのこと
なのだ
この作品は身に覚えがあって、辛いですね。〈後悔と槍持は前には出ない〉という言葉を初めて知りましたが、後悔先に立たずと同じ意味だと思います。手持ちのことわざ辞典では、参考として提灯持後に立たずというのがありました。逆の意味なんでしょう。それにしても〈したことについての後悔/しなかったことについてのそれ/気も付かなかったことについてのそれら〉のなんと多いことか。これからも後悔だらけの人生を送るのかもしれませんね。
○詩誌『饗宴』58号 |
2010.5.1 札幌市中央区 林檎屋発行 500円 |
<目次>
詩論 逍遥−塚本邦雄 嘉藤師穂子…4
作品
魚篇・公魚(わかさぎ) 吉村伊紅美…6 転身譚14 塩田涼子…8
花の国4 瀬戸正昭…10 かぐやの夜(1) 村田 譲…12
ほたる/氷 山内みゆき…14 禾本科のめしべ 尾形俊雄…16
いつものように 木村淳子…18 方舟−従柿 嘉藤師穂子…20
エッセイ
人間鴎外の魅力−外形と内実 木村真佐幸…22 庭におだまきが咲き始めると 工藤知子…40
京都暮らし(3) 吉村伊紅美…42 レクイエムの詩学(5)(ドヴォジャーク、ヤナーチェク、フオレ) 瀬戸正昭…44
連載エッセイ
林檎屋主人日録(抄)(19)(2010.1.1〜2010.4.30) 瀬戸正昭…50
●受贈詩集・詩誌…49
●朗読ライヴのご案内…39
饗宴ギャラリー 朝田千住子「ぷよぷよ」…2
いつものように/木村淳子
一秒にみたない静けさが
私の眠りを覚ました。
それまでいびきのような音を
立てていた呼吸器が
一瞬止まったのだ。
人は 静寂の中でだけ
眠れるものでもないらしい。
薄闇を透かしてみる。
腹は動いている。
呼吸している。
起き上がった身を横たえたとたん
また いびきの音が復活する、
私は安心して 眠りに落ちる。
時間はこんな風にして
すぎていくものだ。
明日の朝
私は おはよう と、
あなたは 今日もいい朝だね と、
ネイティブ・アメリカンのチーフのように
手を上げて挨拶するだろう、
いつものように。
おそらくご主人が入院中という設定なのでしょう。私も亡くなった母の付き添いで何度か徹夜していますから、〈人は 静寂の中でだけ/眠れるものでもないらしい〉というフレーズがよく分かります。〈いつものように〉とありますので、入院はきっと長いのでしょう。後から2連目で、この二人の日頃の関係がよく分かるようにも思いました。
○詩誌『ニンゲン』3号 |
2010.6.15
岡山県瀬戸内市 現在実験箱・森崎昭生氏発行 400円 |
<目次>
副葬花束(三) K・いずま 1 つくる・夢二残影 森崎昭生 4
齋藤國雄ノート(三) 平 博志 8 おいしい水 山本治彦 12
四万十川の名称 森崎昭生 13 一篇の詩が… 森崎昭生 15
変容−3 黒住泰子 24 掌説・市べえ畑 浅木母里 17
現代詩の鑑賞(二) 汐見哲夫 20 万葉集拾遺(三) 森崎昭生 21
詩集紹介 7
つくる −その行為の先に/森崎昭生
男を突き動かしているのは
〈創る〉という意識だけだ
何をつくりたいのか
当初の思いや目論見はとうに消えていた
切る 貼る 削る 組む 壊す
『何を求めているのか』
男は自問自答する
行為の意味と結果の意義を
なにもないのかも知れない
期待などしてはならない
男は意識を集中させてはいるが
それを超えて手が動く
まるで他者の意志に操られているかのように
刻々と時間が過ぎていく…
背中に鉛の網のような疲労が
手足に粘(ねば)い接着剤のような疲労が
それでも男はやめない
……瞬間
男の白い思念の隅でなにかがはじけた
限りなく続くような行為に
明確な区切りをつける時がきたことを男は感じた
発砲スチロールやアルミニュウムで形づくられた
大小のオブジェは、高く低く直立し、あるいは丸く
うずくまり、角張って広がり、それぞれに静かな存
在感を漂わせている。無機質なイメージの未来都市
を想起させる。しかし、いくつもの凹みや風穴(かざあな)の濃
淡のある陰影に、人間の営みの優しさというか、感
情というか、少し湿ったぬくもりが巣くっているよ
うにも感じられる。
「2010-1 森下勲 彫刻展にて」
絵や彫刻を見て詩にすることはよくあることで、私はやったことがありませんが、これが意外と難しいものだろうと思います。この作品はその中でも成功していのではないでしょうか。言葉でイメージがふくらんできます。詩で彫刻を説明するのではなく、作家の内面に踏み込んでいるからでしょう。新しい詩のあり方かもしれません。