きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2010.5.23 静岡 中勘助文学記念館 |
2010.6.4(金)
日本ペンクラブの電子文藝館委員会が開かれました。今回はオブザーバーとしてHP制作会社も出席して、HPのリニューアル進度が確認されました。9月の国際ペン東京大会2010に間に合わせますから、早ければ8月末には新しいHPになるでしょう。ご期待ください。
今回からちょっとやり方を変えました。とは言ってもたいしたことではないんですが、白板を使うようにしたのです。事務局が事前に人数分の資料を用意してくれて、各自がそれに勝手に書き加えていたんですけど、重要な決定事項は白板に書いて、言葉の定義まで含めて全員で確認する、というふうにしただけです。内容も写真の文字数でお分かりの通り、たいしたものではありません。
こういうことは現職時代、当然のようにやっていました。白板もコピー機能が付いたもので、すぐに複写して参加者に配布します。ペンの白板にはそんな機能がありませんから、携帯のデシカメでパチリとなった次第です。それでも、細かいところまで参加者の合意が得られるのはいいなと思っています。書記は私。今後も続けていくつもりです。
○詩誌『石の森』155号 |
2010.6.1 大阪府交野市 美濃千鶴氏発行 非売品 |
<目次>
隔てるもの/西岡彩乃 1 どちら側/ほりみずき 2
Condition=Total/山田春香 3. リリアン編み/石晴香 4
「煉獄の茶室」のゆくえ/夏山なおみ 5. 絵に描いた餅/夏山なおみ 6
一口(いもあらい)/金堀則夫 7
《交野が原通信》二七〇号 金堀則夫記 8 青春のサリンジャー/美濃千鶴 9
第三十三回−交野が原賞−詩作品募集 10 あとがき
隔てるもの/西岡彩乃
霞んで伸びる濃霧が山の端を隠す
黒色と白色の境目を探すと灰色が見える
灰色と灰色の境目を探すと新たな灰色が見える
その狭間で
隔てられた大地の一部と空の始まりは
いつになっても交わることはない
そこには確かに
山があって空があった
隔てられた青と赤は
生まれた紫をどこまで完成させられるだろうか
分析された紫の中にあるのは
青と赤でしかない
紫を作った青と赤
紫の中にあるものが赤と青
最初にそこにあったのは
色という抽象物だった
善のための悪は悪の中の善であって
私にとっては悪ではなかった
赦されないことが悪であって善は赦されるのならば
答められることも罰せられることも必要ない悪は悪ではなかった
そこには二分された名前があった
名前ゆえに隔てられ
境界を求められた
自と黒がそこにあった
〈大地の一部と空の始まり〉、〈青と赤〉、〈善のための悪〉と〈悪の中の善〉、それぞれを〈隔てるもの〉ものは何であるかという哲学的な命題の作品です。作者の結論は〈名前ゆえに隔てられ〉たに過ぎず、〈境界を求められた〉だけであると謂っているように思います。おもしろい視点ですが、ヒトの生き方に関わる重要なものだと思いました。
○詩とエッセイ『裳』109号 |
2010.5.31
群馬県前橋市 裳の会・曽根ヨシ氏発行 500円 |
目次
<詩>
釣り人 2 須田 芳枝 疾走する若者 4 曽根 ヨシ
蝶 6 鶴田 初江 ハッピーアイ 8 真下 宏子
娘よありがとう 10 宮前利保子 墨をする 12 金 善慶
流れ星 18 宇佐美俊子 落花 20 黒河 節子
刑場跡の春 22 佐藤 恵子 朝の明るさの中で 24 篠木登志枝
ムシ族 26 志村喜代子 繋がって 28 神保 武子
<エッセイ>
言葉の花びらに埋もれて 14 篠木登志枝 どうにもならない 16 志村喜代子
表紙「湧水」 中林 三恵 詩 ボッソウ村で 中林 三恵
岡人の詩集紹介 30
108号で解放され 31. 曽根 ヨシ 後記 32
釣り人/須田芳枝
さりげなく私は傷つく
斜めに背中を見せたあなたが
向かい合った人と笑いさざめくその時間
私は遥か沖合に流され
なお
引き潮に引かれ遠ざかる
その疎外感を
二度なら許そう
そう 私も壊れかけた船べりにつかまる
独りの心許ない指だから
誰かに繋がっていたいと思う
素朴な願いに
ただ正直に手を差しのべている
けれど
三度は
そう叫ぶ声の震えを
幾千里届けようとしただろうか
あなたは自分ひとりの孤独に夢中だった
さびしいよ
たったひとりだよ
と海原に釣り糸を投げ続け
何を釣り上げて来たのだろう
喰らいついた私は痩せた魚
あなたの孤独にはちっとも足りない
そうだとしても
存在の尾びれに力を込めて
あなたの顔に飛沫を浴びせる
それくらいのことは出来る
まだきっと
素直に男女の間柄と採ってよさそうですが、難しいですね。私なども〈ひとりの孤独に夢中〉になる部類ですから、きっと〈海原に釣り糸を投げ続け〉ているのだと思います。せいぜい〈顔に飛沫を浴びせ〉られないように気をつけます。
と、自分に引き寄せて読むことができる作品でした。
○詩誌『薇』2号 |
2010.6.1
さいたま市見沼区 飯島正治氏連絡先 非売品 |
<目次>
詩作品
日曜日 石原 武…2 繋留点 杜 みち子…4
蝙蝠の在処 宮尾壽里子…8 橋上のチャスラフスカ 中尾 敏康…11
アーケード 栗原 清子…14 ほどける 北岡 淳子…17
ねじ花 秋山 公哉…20 歩く 植村 秋江…23
黒蝶 山中真知子…26 更地 飯島 正治…29
訳詩 夜の詩 ガルウェイ・ケンネル 石原武訳…32
小景
石原 武…36 杜 みち子…37 宮尾壽里子…38 中尾 敏康…39
栗原 清子…40 北岡 淳子…41 秋山 公哉…42 植村 秋江…43
山中真知子…44 飯島 正治…46
編集室から…47
題字 飯島 誠
日曜日/石原
武
身繕いにてこずる男を
そしらぬふりで女は見ている
菜を刻んでいる
羽織ったシャツがからまって
袖が通らない
ボタンの穴が見つからない
朧な春の日輪が勝手口から覗いている
このざまでこの日曜日
神さまの前に立てるだろうか
ようやく男は靴下に足を入れる
仄暗い回廊を終夜歩きはてて
白むころどこか泥濘に落ちた
記憶のままに汚れた足を
黒い靴下にこじ入れ
男はやっと鳥になる
男の変身を見定めると
女は陽気な雌鶏にかえり
二羽の膳に光る飯を盛りつける
子どもたちも成長して、初老の夫婦の〈日曜日〉と採りました。〈神さまの前に立てるだろうか〉とありますから、教会の日曜礼拝に行くのかもしれません。〈朧な春の日輪が勝手口から覗いている〉というフレーズからは穏かな日曜日を想像しますが、決してそうではありません。昨夜は〈泥濘に落ち〉るほど呑んだのでしょう。しかし、それもささやかなこと。〈男は〉あくまでも〈鳥になる〉のです。次から次へと想像させる、上手い創りの作品だなと思いました。