きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.6.5
「宇都宮美術館」にて
 

2005.6.24(金)

 午後から東京本社に出張してきました。関連会社との会議でしたけど、この会社は優秀で、特に大きな問題点はありません。問題と云えば、会議終了後に懇親会へ誘ったのですが、それを断ったことぐらいかな(^^; 毎回ではないけど、3回に1回ぐらいは断られます。そういう社風なんでしょう。それはむしろ好ましいことで、その面でも信用できるな、などと語りながら弊社の社員だけで八重洲で呑みました(^^;




個人詩誌『夜凍河』2号
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2005.6
兵庫県西宮市
滝 悦子氏 発行
非売品
 

  <目次>
   ゲーム
   932番地



    ゲーム

   ええ、これはゲームです

   すこしいいかげん
   すこし 慎重に
   もっと 愉快に
   けれど侵略してもされてもいけません

   正体はみえすいて
   逃げ道をいくつも仕掛け
   条件に腹八分目で残りの二分を捨て
   手口は 必然を偶然にすりかえること
   だから切り札はありません

   ここには合図もタイムもありません
   うっかり落ちるのは
   ひそかに夜にすべりこんでいる
   甘い罠

   ところで、ビールでものみますか

 「ゲーム」は男と女との、あるいは社会との。いろいな採り方があると思いますが、ここでは前者として読んだ方がおもしろいかもしれませんね。「条件に腹八分目で残りの二分を捨て」というフレーズは、詩語としてもおもしろいと思います。そして何より最終連の1行が光ります。この転調が詩として昇華させていると思った作品です。




苗村吉昭氏詩集『オーブの河』
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2005.7.1
大阪市北区
編集工房ノア刊
1800円+税
 

  <目次>
   第一章 リ・バース
    棺  10
    火葬  12
    骨壷  14
    復活  16
    風  18

   第二章 童子の川
    タイル採り  22
    童子の川  26
    祗王  30
    百千万劫  34
    朝の香り  38

   第三章 トキの死
    アオスジアゲハ  42
    
The Last Supper  44
    鰯雲  46
    ラジオ深夜便  50
    約束  54
    サイダー  62
    ICU症候群  66
    鬼門  72
    臨死体験  76
    永遠の命  80
    トキの死  84
    兄と弟の携帯メール交信記録  86

   第四章 オーブの河
    死亡診断書  92
    回転蓮灯  96
    火葬 再び  98
    遺族年金  102
    オーブの河  106
    チェックリスト  110
    イヴ  114
    誕生  118
     *
   解説 森 哲弥  124
   あとがき  130
   初出一覧  132
   カバー装画 
Nature Works 山本 浩



    オーブの河

   父の葬儀が済んでしばらくすると 「おまえの撮ってくれた
   写真にオーブが写っていたよ」と兄が伝えて来た

   葬式前日 頂いた樒や盛籠の記録用に 僕はデジタルカメラ
   で何枚もの写真を撮っていた そんな一連の写真の中に 一
   枚だけ「オーブ」と呼ばれる物体が写っているという
   僕はパソコンを起動して一枚ずつ写真をチェックしてみた
   すると兄の言ったように 実家の前の道路から玄関に向かっ
   て並ぶ日没後の樒の列に 二つの淡い白色球体が写っている
   写真があった 一つの球体は人の腰の高さくらいを漂い も
   う一つの少し小さい球体は頭の上あたりを上昇していくよう
   に見えた

   オーブ=
orb(英) ……球体そして霊体とも魂とも呼ばれ
   る存在……あるいは単なる光の屈折や錯覚だと一笑に付され
   ることがある危うい存在…… オーブ

   「このオーブは父の魂の残骸だろうか」と兄は言った いい
   や違うだろう 僕はいま素直に信じることが出来る きっと
   この二つのオーブは 父を迎えに来た僕の姉さんと坊やだ
   そして四十九日が過ぎる頃 父は娘と孫に導かれ 天高く昇
   っていくに違いない
 
   僕は目を閉じて考える 地上を離れ 地球を離れ 太陽系を
   離れ オーブは何処までも上昇していくことだろう そして
   この地上から振り仰げば 遠い宇宙の何処かで 太古から連
   なる無数の死者たちのオーブが 河の如く流れているところ
   があるだろう

   そう 僕もいつの日か 父と姉さんと坊やが待つ オーブの
   河の 真っ白な一点となるに違いないのだ。

 前詩集
『バース』では仮死状態の未熟児として生れた我が子の、誕生から10ヶ月余を描きましたが、本詩集では「坊や」と「父」の死、そして新しい子の誕生までを描いています。詩集の最後に置かれた「誕生」の、最後のフレーズは「おかえり・・・・・ 坊や」です。前詩集の続編とは一言も言っていませんが、非常に感動的な詩集です。

 紹介した作品はタイトルポエムです。「この二つのオーブは 父を迎えに来た僕の姉さんと坊やだ」という「僕」が「いま素直に信じることが出来る」という気持は説得力がありますね。そして「そう 僕もいつの日か 父と姉さんと坊やが待つ オーブの/河の 真っ白な一点となるに違いないのだ」という最終連には、三人の死を乗り越えてきた「僕」のギリギリの勁さを感じることができます。

 本詩集に収められた作品の中で
「風」 The Last Supper は、すでに拙HPでも紹介していました。ハイパーリンクを張っておきましたので、合せてご覧いただければ、と思います。




復刻版・藤田文江詩集『夜の聲』
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2005.4.24
鹿児島県薩摩川内市
セダー社刊
1200円+税
 

  <目次>
   自序                           九
   夜の聲……………………………………………………………… 一六
   黒いショールの女………………………………………………… 一八
   誘 惑……………………………………………………………… 二〇
   逝く夏……………………………………………………………… 二二
   島!………………………………………………………………… 二四
   或る手紙…………………………………………………………… 二八
   秋…………………………………………………………………… 三八
   五月の竹林にて…………………………………………………… 四〇
   遥かなる小守唄…………………………………………………… 四五
   疾 む……………………………………………………………… 四八
   疾 む……………………………………………………………… 五〇
   信ずる……………………………………………………………… 五一
   時雨の中…………………………………………………………… 五二
   若葉の頃…………………………………………………………… 五三
   若葉の頃…………………………………………………………… 五六
   若葉の頃…………………………………………………………… 六〇
   泣いているこども………………………………………………… 六二
   水の上……………………………………………………………… 六四
   鬱…………………………………………………………………… 六七
   憎 悪……………………………………………………………… 六八
   墓碑銘……………………………………………………………… 六九
   荒淫の果ての孤独祭……………………………………………… 七〇
   おのれに就いて…………………………………………………… 七一
   滅…………………………………………………………………… 七二
   日の中をゆく人…………………………………………………… 七三
   一輪車……………………………………………………………… 七四
   一輪車……………………………………………………………… 七五
   暁の陸……………………………………………………………… 七六
   満 潮……………………………………………………………… 七七
   断 片……………………………………………………………… 七八
   病 体……………………………………………………………… 八四
   桟橋にて…………………………………………………………… 八八
   北の窓……………………………………………………………… 九〇
   拒 絶……………………………………………………………… 九二
   棹さす……………………………………………………………… 九五
   物語りの序曲……………………………………………………… 九八
   無 題…………………………………………………………… 一〇一
   風に病む午前の日誌…………………………………………… 一〇四

   藤田文江年譜                     一〇七
   編者あとがき −新装改訂版発行に際して− 村永美和子 一〇九
                   表紙装画  坂井貞夫



    夜の聲

     Ah! Selgneurl donnez-moi
     la force et le courage De
     contemplermon coeur
     mon corps sans degoutl
        (un voyage a cythere)
          BAUDELAIRE

   
お ま え
   夜の聲は何故こゝまでやって来た。
   おまえの咳を聞いていると
   私はたまらなく寂しくなる。
         
ナタアル
   然し私は私の 里 おまえに媚びるよ
   私はおまえと共にある時
   ほんのわずか富んでいるのだから。

 鹿児島県薩摩川内市の詩人・村永美和子さんの自費出版による復刻版です。1933年の4月24日(本著の発行日)に24歳の若さで夭折した鹿児島の詩人・藤田文江の唯一の詩集で、生前、詩集を見ることはなく通夜の席に届けられたというものです。新装改訂版と銘打っていますが、1991年に浜田知章氏らにより復刻されており、今回は現代仮名遣い・新漢字に改めての復刻です。ただし自序と巻頭詩の「夜の聲」の聲≠セけは原文通りとしたそうです。

 紹介した作品は巻頭詩で、欧文はフランス語です。パソコンの制約で一部不正確なことをお詫びします。フランス語の詩について本著では特に説明がありませんでしたが、添えられた讀賣新聞の記事によるとボードレールの「シテールへの旅」の一節で、
   ああ! 主よ 私の心と私の肉体とを
   嫌悪なく見つめる力と勇気とを私に与えたまえ!(阿部良雄訳)
 という意味だそうです。藤田文江の詩とともにこの詩集を象徴しているものと思います。1933年といえば昭和8年。モダニズム・シュールリアリズム・プロレタリア詩の最盛期に、日本の代表的女流詩人になるだろう人が急逝したわけですが、二度の復刻に草葉の陰で喜んでいるだろうと思います。大正末から昭和初期の詩人研究には欠かせない1冊と云えましょう。




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