きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.6.29 山形県戸沢村より 月山

2006.4.27(木)

 とうとう最後の勤務の日が来ました! うれしいです。38年間もサラリーマン生活を続けて来られたのは、もちろん上司・同僚・部下、そして家族の支えがあったからですが、そんな奇麗事で済まそうとは思いません。はっきり言えば私の我慢の成果です。これは私に限らず大方のサラリーマンの実感ではないでしょうか。特に日本の企業では、一度入社したら定年まで勤めないと不利になります。終身雇用の是非は別として、それが現実です。余程の頭脳に恵まれた人にはヘッドハンティングもあるかもしれませんけど、我々凡才は我慢できるか出来ないかで生涯収入が大きく変ってしまいます。だから皆な我慢しているんですね。日本のサラリーマンはエライ!

 リストラに手を挙げた早期退職ですが定年退職扱いですから、会社主催の祝賀会や工場長との懇親、タクシーでの帰宅などが企画されていましたけど、全て断りました。泣く泣くリストラされていく1000人(世界中では5000人)の仲間のことを考えると、そんな気分にはなれませんでした。しかし職場の皆さんには礼を述べたいので、通常の全体会議の席で5分ほど時間をもらいました。昼食が済んで、午後一の時間帯です。

 それが終ったら、皆さんの拍手に送られて帰宅する、これが一番格好良かったのですけどね、そうはいきませんでした。午後3時から会議が入ってる、、、結局、残業までやって帰宅しました(^^; そこまで義理立てする必要はないんでしょうが、ま、それも私らしくていいかぁ、と受けた次第です。会社の経営陣に対しては、発つ鳥跡を濁さず、なんて気持はこれっぽっちもありませんけど、職場の人たちは別です。彼らも犠牲者です。

 帰宅して、いつも通りの夕食で、いつも通りいただいた本を読んで、いつも通り22時から酒を呑みだして、変り映えのしない一日でしたね。実に私らしい過ごし方で、満足しています。でも、最後にもう一度、、、嬉しいです!



坂本絢世氏詩集『結露の風景』
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2006.5.5 神奈川県鎌倉市 港の人刊 1800円+税

<目次>
弧島 6       立ち入り禁止 10
報国寺 14      花菖蒲 18
帯 22        白い時刻 26
帰路 28       紫陽花のとき 30
ローカル線 34    どくだみ 36
白いテーブル 40   ガーべラ 44
「おまえ」 48    霊園にて 52
梨 56        さびしい魚 58
サルビア 60     祭り 62
秋の午後は 66    残されて 70
目白山まで 74    祭りが終わった 78
雪虫 82       十二月の雨 86
冬の砂 90      セキレイ 94
結露の風景 98    リビングルームにて 102
海岸通りで 106

あとがき 108



 海岸通りで

海を背にして立つと
背中に海が聴こえてくる
ゆるやかだけれど間断のない波の饒舌が
 いらだたしいのは
私の内部のせいだ
届かない手紙はただのパズル
とどかない言葉はただ音の集合
両手を高くさし上げて
三月の空の青さを切る
昨日の雨の名残の水溜りは
明るすぎる空の色を映してまどろんでいる
ひとりの旅を命じるものがある
そうだ
次に来るバスのステップからはじめよう。

 10年ぶりの第2詩集です。紹介した作品は詩集の最後に収められていました。「そうだ/次に来るバスのステップからはじめよう。」というフレーズは、次の詩集へつながるようにも読めて、本詩集の最後を飾るのにふさわしいとも云えるでしょう。「私の内部のせいだ」「とどかない言葉はただ音の集合」などのフレーズにも魅了されています。
 詩集タイトルの
「結露の風景」を初め「セキレイ」 「秋の午後は」はすでに拙HPで紹介していました。ハイパーリンクを張っておきましたので合わせてご覧いただき、坂本詩の世界を堪能していただければと思います。



詩誌VOID9号
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2006.4.30 東京都八王子市
松方俊氏他編集・発行 500円

<目次>
墓碑銘 ……………………………小島 昭男 2
イチゴ畑の月の雫に ……………中田昭太郎 5
ゑゑ、厭や ………………………原田 道子 8
二人三脚は足の引っぱりあい …中田昭太郎 10
間にさしはさむまい ……………森田タカ子 16
弘前城址他二篇 …………………松方  俊 19
後 記 ………………………………………… 24



 弘前城址/松方 俊

天守閣は四季を問わず
蒼穹
(そら)を画していた
それは濠に架かる赤い橋の上からよく眺められた

老いた樹は安らかに昔日を語り
城跡の庭園は広がる時の去来を静かに迎えている

戊辰の役を哭する魂の声はすでに消え
緑を映す濠の水は波紋の言葉を控えめに語りかける

鋼の風に育てられた風土に生きた
農夫や町屋の人々は
辛抱強く 勤勉に
凍てる土を穿ち
己が山河を満開の桜花で
(はなばな)埋めているではないか。

 旅の詩と思われますが色彩が奏効している作品です。「蒼穹」と「赤い橋」、「城跡の庭園」、「緑を映す濠の水」。そして「凍てる土」と「満開の桜花」。作者生来の色彩感覚なのか旅行先で鋭敏になった感覚なのかは判りませんが、自分の体験から考えると後者の可能性が高いかもしれません。非日常が呼び起こす感覚は確かにあると思っています。
 「広がる時の去来」「波紋の言葉を控えめに語りかける」「鋼の風に育てられた風土」などの詩句も佳いですね。一度しか訪れていませんが「弘前城址」を想い出しながら鑑賞した作品です。




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