きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.11.09 表参道「Gallery Concept21」




2007.1.12(金)


 ようやく拙詩集の発送が終わりました。昨年暮に土曜美術社出版販売より550部ほどを代送してもらいたましたが、それは同社発行の『詩と思想』誌「全国詩人住所録」に載っている人が対象です。それ以外にも私とお付き合いいただいている方は大勢いらっしゃるわけで、毎日2冊、3冊とお贈りさせていただきました。今日は時間が取れたので最後の40人分を包装してクロネコに取りに来てもらいました。これで私の手持ちは70部ほど。全部で630部ほどお贈りしたことになりますが、それでも義理を欠いている方はいらっしゃると思います。今月末になっても、村山から詩集が来ないのはおかしい! とお思いの方、ご請求ください。ただし先着50名様とさせていただきます(^^;

 ほとんどいらっしゃらないと思いますが、上記以外でどうしても村山の詩集が読みたいとお考えの奇特な方は、申し訳ありませんが大手の書店でご注文いただくか、インターネットでご購入ください。新宿東口の紀伊国屋書店に置いてあることは確認しました。ネットでは「ジュンク堂書店」「セブンアンドワイ」「喜久屋書店」「Yahoo」などで販売しているようです。書店扱いは400部だそうです。どうせ返品の山でしょうから、1年ぐらい経ったら買占めようかなと思っています(^^;



関西詩人協会アンソロジー
『言葉の花火』第3集
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2006.12.10 大阪市北区 竹林館刊 2500+税

<目次>
はじめに 関西詩人協会代表 杉山平一 3
のろし/秋野光子 12            小さな庭/飽浦 敏 14
狐の嫁入り/杏 平太 16          まだ固い蕾が/青木はるみ 18
宝石/後山光行 20             父の場所/遠藤カズエ 22
結び目/藤井雅人 24            surrounded by stalkers/藤谷恵一郎 26
浄化人/船曳秀隆 28            スイートピー/ごしま たま 30
冒険のしかた/原 圭治 32         雨/日高てる 34
冬の日/以倉紘平 36            群れの論理/岩井 洋 38
時のしずく/蔭山辰子 40          流れるもの 漂ふもの そして 花/梶谷忠大 42
葉脈/金城則夫 44             平和がいいと叫びたい/神田好能 47
Old/神田さよ 48            浄土/加納由将 50
白い帯/川中實人 52            風の譜/香山雅代 54
風の夢/和比古 56             ヤング・ドーター/岸本嘉名男 58
引越し/北原千代 60            箱船/北村こう 62
シリウスよりも/清沢桂太郎 64       母さん 拭いて/ますおかやよい 66
二木(ふたき)の松/松本一哉 68       はる嵐/水野ひかる 70
まほろばの夜明け/森ちふく 72       朱いレモンになる/森井克子 74
手拭/村田辰夫 76             未来の兵士たち/永井ますみ 78
肉/名古屋哲夫 80             鈴懸(すずかけ)の通は黄葉(もみじ)して/中井不二男 82
夏深し/中尾彰秀 84            四五ミリの憂愁/中岡洋一 86
滴り行くもの/名古きよえ 88        蟋蟀の歌/西田彩子 90
水溜り/野際康夫 92            石庭/姨嶋とし子 94
生きるために生きて/岡本真穂 96      希望/岡本光明 98
サイホン/おれんじゆう 100
.        星も都会も/尾崎まこと 102
願い/左子真由美 104
.           葡萄の房(クラスター)/佐古祐二 106
憧れ/真田かずこ 108
.           侵略戦争を隠すものたちへ/佐相憲一 110
稔らない米/佐藤勝太 112
.         滝/関 中子 114
もう一つの時計/島田陽子 116
.       糸とりうた/清水一郎 118
藍の森/下村和子 120
.           研げ/白川 淑 122
錦鯉/園田恵美子 124
.           邂逅/杉山平一 126
塔/冨岡みち 128
.             ひとりだけのクリスマスイブ/外村文象 130
叫ぶ/辻下和美 132
.            平城宮跡にて/司 茜 134
潮時/司 由衣 136
.            ラウンジのピアノ曲/後 恵子 138
歩く/薬師川虹一 140
.           ヘルマン・ヘッセの墓/安森ソノ子 142
母とさくらの二重唱/横田英子 144
.     時間/吉田國厚 146
おわりに 薬師川虹一 148



 冬の日/以倉紘平

ロケットから送られてくる地球の映像を
茶の間のテレビジョンが流している
地球の弧の上をうっすら覆っている大気圏
地球をリンゴの大きさとすれば
大気の層の厚さはリンゴの皮ぐらいですなどと。
(ほそ)いブルーのリングが濃紺になって
宇宙の闇に溶けている
手袋とマフラーの重装備で
娘と二人手をつないで外出する
木枯らしの吹く空を見上げたが
まずは何ごともない
近所の眼科で腰かけて順番を待つ
最近 肉眼でみる活字がたよりなげに見える
眼鏡はかけないでねと
足を揺らしながら娘は言うが
不器用なぼくにコンタクトレンズの使用は無理だろう
<角膜の上には涙の薄い層があり、レンズは
涙の上に浮いた状態で安定しています> と
ポスターにはある
眼の半球を覆っている薄い涙の膜に
レンズが浮かんでいる拡大写真
危なげだなと眺めていると
急におかしみがこみあげてきた
どうしたのと 尋ねられても
まだ小さなお前には
わかってもらえそうにない
存在は〈涙の薄い層〉につつまれ
見るとは〈涙の薄い層〉を通すことだなんて!


 Winter Day
        Kohei IKURA

Rocket-transmitted pictures of the Earth
Flow upon the living room television screen,
The exosphere forming a patina over the Earth's arch,
Its thickness likened, relatively
To the skin that covers an apple.
The thin, blue ring gradating to cobalt,
And then melting into the cosmic dark.
Heavily equipped with gloves and scarves,
Daughter and I leave the house hand in hand.
I look up into a biting winter sky -
Nothing amiss happening today -
Then we seat ourselves down in the local eye clinic, waiting our turn.

Recently, the printed page is too faint for the naked eye,
But my daughter, swinging her legs,
Asks me not to put my glasses on.
I cannot imagine someone clumsy like me using contact lenses,
Though the poster reads,
    ‘A thin film of tear covers the cornea,
     And the lens, floating on top, is stabilized by it’
An enlarged photo shows the lens floating
On the thin patina of tear that covers the eye's outer arch;
Then unexpected laughter begins to swell up inside
To think of its precariousness.
Even when she asks me what is wrong,
I think, how could one still so small
Understand these thoughts of mine:
     That existence itself is wrapped in a‘thin film of tear';
     And to see is to see through that‘fi1m of tear'?

 関西詩人協会はこれまでも国際交流の一環として『言葉の花火』英語版:2000年、フランス語版:2003年と出してきて、今回の英語版が第3集だそうです。全編英訳が付いていて、大変な労力だったろうと推察します。
 紹介した作品は最終部の「存在は〈涙の薄い層〉につつまれ/見るとは〈涙の薄い層〉を通すことだなんて!」というフレーズに惹かれました。私たちは〈涙の薄い層〉を通してしか見ていないという発見は暗示的であると思います。
 本集の中で北原千代氏
「引越し」、森ちふく氏「まほろばの夜明け」、司由衣氏「潮時」はすでに拙HPで紹介しています。ハイパーリクを張っておきました。英文はありませんが関西詩人協会メンバーの実力のほどをご鑑賞いただければと思います。



文藝誌『セコイア』31号
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2006.12.25 埼玉県狭山市
セコイア社・松本建彦氏発行 1000円

<目次>
美しい日本…高橋次夫…2          影たちの墓碑名U…長津功三良…60
山代飢饉…長津功三良…73          村・点描…木暮克彦…92

葉月…千葉 文…4             すがれゆく日々…内藤喜美子…8
箪笥町抽斗横丁(上)…篠崎道子…24      蔓陀羅随筆(19)…松本建彦…42
夜刀の神の祭り(19)…友枝 力…50      クリスマスケーキ…内苑竹博…77
黒塗りの箱…小野川俊二…80         あの道この坂 夢の町…高野保治…84
回国の岸辺の眼(XI)…吉川 仁…96
<魚眼>…110
・同人名簿…表3    ・広告…91



 美しい日本/高橋次夫

『美しい日本』とは
これはまた 身震いするほどにも
何とも うつくしいことば であることか
と そのひとは 悦に入って
こころ充たしているのであろうが
『美しい』その向こう側に包みこまれた 中身は
どんな色に染められているのか
もしかすると バラ色?
まさか 日本の桜花?
確かにその桜花には 息を呑むうつくしさはある
だが
嘗て 満開の花の下に立って 詩人北川冬彦は
瞞着だ と喝破している
万朶の桜は私にとっても
欺瞞そのものの歴史であった
『美しい』このことばは 曖昧そのもので しかも
何の実体もない ただのブロッケン現象
(こころ)だけを惹きつけようとする虚飾である
と そのひとは 気づいていない ただ
ことばに取り憑かれて
ことばに酔い痴れて
ことばの怖さを
知らないままに振り撒いている
『美しい日本』を先頭に振りかざして
そのひとは 何処に歩き出すのか
『美しい日本』に背を向けたなら 私は
即座に 村八分にされ
非国民の刻印を受けるだろう
『美しい日本』に隠されている 猛毒が
狂いだすからである
七十年前の時代がそうであったように

『美しい日本』はかつて 血みどろであったのだ  ('06・9・20)

 『美しい日本』という言葉が首相の口から出たときには「身震いするほど」恥ずかしい思いをしました。米国追従、弱者切捨て、腐敗官僚の続出でどこが美しいんだ!と思いましたけど、まぁ、我々が選んだ政府、首相だから当然か、と開き直っています。その「うつくしいことば」を最終連で「『美しい日本』はかつて 血みどろであったのだ」としたところは見事ですね。「ことばに取り憑かれ」ず、「ことばに酔い痴れ」ず、「ことばの怖さを/知」って表現する、これが詩人の仕事だとつくづく思います。「七十年前の時代」を繰り返さないためにも言葉を磨かなければいけないのかもしれません。



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