きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.8.1 東京日仏学院




2007.8.25(土)


 近くのパソコンショップにプリンター用紙を買いに行ったら、Bフレッツのキャンペーンをやっていました。日本詩人クラブの事務所にネットも電話も繋がなければいけないので、どんな感じか聞いてみる気になりました。こちらは神奈川県の西部、事務所は神楽坂ですから、ここで契約できるとは思っていません。神楽坂で契約するときの参考にしようと考えたのです。
 すると、何と東日本をカバーしているからここでも契約できるとのこと。俄然その気になって話を聞きました。

 結論から言うと、仮契約を済ませました。現地調査がありますから、まだ本契約には至りませんけど、たぶん出来るでしょう。月々プロバイダ料金1,470円、IP電話6,930円は、まあ妥当な線だと思っています。初期投資840円はちょっと怪しくて、現地調査の結果によっては数万円になる可能性があるでしょうが、これは一過性だから我慢です。メールアドレスも変更になります。それでも、いつまでも愚図愚図していられませんから、この辺で手を打つつもりです。
 これでようやく封筒にも名刺にも電話番号が入れられるなと一安心しています。設置状況はここで逐一報告していきますから、日本詩人クラブの会員・会友の皆さん、ご期待ください。



『原圭治自選詩集』
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2007.8.15 大阪府北区 竹林館刊 1800円+税

<目次> 装幀・表紙画 川中實人
詩集『口のなかの旗』より
トロッコ 8                黒い鳥 10
朽ちる家 12                飛ぶ鳥 14
公園−A PARK− 17          口のなかの旗 20
詩集『歴史の本』より
ギャンブラー 24              尾行するものは 26
天空
(そら)の柩(ひつぎ) 30         白鷺の墓 32
消えた夏 35                乾いた島 37
太鼓を打て 39               歴史の本 42
詩集『火送り 水送り』より
想像の箱で 54               みずの舌
(ベろ)は 56
ウェールズの羊 60             火送り 水送り 63
地の棺は 66                遅れた死者たちの 68
幻想ゲルニカの絵 71            花の記憶は 73
天皇の戦争 76
詩集『海へ 抒情』より
海へ 愛 81                海の墓碑銘 83
海丘の向こう 84              海の舌は 86
海の眼 88                 海の耳 89
旅立ち 球形の海を超え 90         海のエスキス 96
詩集『地の蛍』より
ずれてもなお 98              イーストギャラリー 100
死者のかたちは 103
.            受け継ぐ記憶の 105
大きな耳は 108.              ちいさい耳たち 110
解けない暗号 112.             星宿の厠まで 115
亀裂は生死を漏らす 118
.          地の蛍 120
仮設の戦場 122
.              崩壊しない木 125
スミソニアンの誤算 127
エッセー テーマをなくした現代詩 132
続・回想の詩的な自己略伝 143
あとがき 185



 ちいさい耳たち

友だち 超たくさん欲しいから 待ってます
話を聞いてくれる人 連絡ください
誰でもいいので わたしにかけてきてください
いろいろ遊びまくるお友だち 百人募集中
連絡番号と 暗証番号を打ち込めば
あまりにも簡単につながって
録音や 再生ができるしくみは

なんでもいいから しゃべっていないと
見えない不安につかまるから
入り込んできて 流れ出ていく伝言の
ひとつの結接点にすぎない <私> は
話したがるちいさい耳になってしまうから
生身の肉体を
電脳社会の仮想現実
(バーチャルリアリティー)に委ねては
刹那的な <私> の存在を見失って
自分の居場所を捜すことに夢中で

肉体をはなれたちいさい耳たちは寂しがり
たくさんのひとの声を聞きたがって
どうだかわからない会話の中身まで
確かめたこともなく
顔の見えない危険が潜んでいる関係で

とっても なにかとつながりたい関係の
タイミングがずれてしまった <私> は盗まれ
ごくありふれた ばらばらの日常光景までも
隠された秘密の指図で
電子の糸に収斂
(しゅうれん)されては
<私> の情報が 売り買いされていたなんて
知る手立てもなくて回収もできず

その会話が なんの関係もないものとなるまで
いくらでも傍受することができると
「電子的監視に関するマニュアル」の
スポット・モニタリング(試し聴き)にあり
一通の令状で 盗み聴かれた通話回数は
平均でも二千九百九十七回にも及んでいて
記録では 五台の公衆電話ボックスから
四か月間に 十二万人の会話が
盗み聴かれたということも

弱いつながりの関係であるかぎり
犯罪と無関係な <私> が多数派であっても
肉体からちぎれたちいさい耳たちの会話は
深い闇のなかへさぐりを入れてくるものに
密かに記録をとられ
知らない間にデータ化されては
隠して保存されていると考えても

そこでは暗示の意思も通用せず
応答のかたちをなさない家族の関係は
容易に切り盗られるのはあたりまえで
アリバイのない耳たちが無数に
プリントされた盗聴テープを持ち出して
家族の絆を証明せよとせまられるから
互いに 明示の行為のみを主張しあっては
身近な家族を壊すことに

生きていくうえで大切なことは
<私> の内部の言葉までは
盗み聴かれないようにすること
お互いの暗黙の約束事を守ることで

遠く離れた他人の家族と付き合わなくても
身近なところにいるちいさい耳に
肉声で対話すること

  *朝日新開記事「盗聴捜査」他参照

 1958年の第1詩集『口のなかの旗』から2003年の第5詩集『地の蛍』までの中から自選した作品集です。ここでは第5詩集より「ちいさい耳たち」を紹介してみましたが、この詩は直前の「大きな耳は」と対になっていると考えられます。「大きな耳は」では人工衛星からの「盗み聴」きを扱い、「ちいさい耳たち」で私たちにより身近な携帯電話・家庭の電話、そして「公衆電話」からの盗聴を告発しているわけです。最終連の「遠く離れた他人の家族と付き合わなくても/身近なところにいるちいさい耳に/肉声で対話すること」というフレーズがよく効いています。

 著者の作品はすでに拙HPで『海へ 抒情』より
「旅立ち 球形の海を超え」の一部を、『地の蛍』より「崩壊しない木」を紹介しています。ハイパーリンクを張っておきましたので、合わせて原圭治詩の世界をご鑑賞いただければと思います。



隔月刊詩誌『石の森』140号
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2007.8.1 大阪府交野市
交野が原ポエムKの会・金堀則夫氏発行 非売品

<目次>
ソウル メイト/夏山なおみ 1       想念のシンクロニシティ/夏山なおみ 2
眼鏡をかける/四方彩瑛 3         Sky/山田春香 4
かめとうさぎのIRONY/佐藤 梓 5   石/佐藤 梓 6
呼吸に、すら/大薮直美 6         星の世界/西岡彩乃 7
解放への道/西岡彩乃 7          切り替え/高石晴香 8
牢獄の生活/高石晴香 9          水が・・/金堀則夫 10
《交野が原通信》第二五四号/金堀 11    石の声/山田春香・佐藤 梓 12
蚕神オシラサマ/大薮直美 13        あとがき



 眼鏡をかける/四方彩瑛

世界は
私が思っていたよりもずっと
輪郭がはっきりしており
鮮明であったようだ

その色 その形が
一つ一つ 騒がしすぎて
その存在を主張しすぎていて
見る
ぞっとする
冷蔵庫の色 机の形 自分の顔
見る

世界は
私が思っていたよりもずっと
残酷なものだったようだ
全ての事実は尖っており
曖昧な色彩は存在せず
白黒はっきりしている

事象は
私の見るところ全てに横たわる
とても明確に
そしてそれらは
もっと明確にするように
訴えてくる
もっと 明確に
中間地点などない

見る

私は眼鏡を外し
目を閉じた

 この作品はよく判ります。私も始めて「眼鏡をかけ」たときは「思っていたよりもずっと/輪郭がはっきりしており/鮮明」なんだなと感じたものです。しかし私の感想はその程度。作者のように「一つ一つ 騒がしすぎて/その存在を主張しすぎていて」とまでは感じ取れず、ましてや「思っていたよりもずっと/残酷なもの」とも「全ての事実は尖っており/曖昧な色彩は存在せず/白黒はっきりしている」、「もっと 明確に/中間地点などない」とまでは思い至りませんでした。この感性は佳いと思います。そして私もまた「眼鏡を外し/目を閉じた」くなりますね。眼鏡の煩わしさを見事に表現した作品だと思いました。



月刊詩誌『柵』249号
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2007.8.20 大阪府箕面市
詩画工房・志賀英夫氏発行 572円+税

<目次>
現代詩展望 詩的言語の生成 『現代詩展望X』をめぐって…中村不二夫 74
審判(12) 責任…森 徳治 78
流動する今日の世界の中で日本の詩とは 33…水崎野里子 82
 歴史意識とコミュニティヘの努力と 長津功三良『影たちの墓碑銘』
薄田泣董と大阪(3) 口述で名随筆 新聞編集に手腕…黒田えみ 86
風見鶏 宮田小夜子 金指安行 小林重樹 鈴切幸子 鎌田庸子 100
書評 子どもにおくる本『沖縄は戦場だった』…池澤秀和 107
書評 言葉の花を求めて 水野ひかる著『恋の前方後円墳』…横田英子 112

今泉協子/午下りの紅茶 4         中原道夫/黒い布 6
松田悦子/握る 8             進 一男/消えた鳥たち 10
江良亜来子/向日葵 12           南 邦和/阿万さんの帽子 14
名古きよえ/徐々にと言うこと 16      小城江壮智/秋 18
山南律子/ぎん色の蛇 20          大貫裕司/木曽路 22
肌勢とみ子/いる お母さん 24       柳原省三/詩作について 26
佐藤勝太/迷い星の行方 28         宗 昇/陸橋 30
小沢千恵/黒いリンゴ 32          織田美沙子/それっきり 34
北村愛子/どうなってるの? 37       山崎 森/首 40
忍城春宣/いとこ三兄弟 44         岩本 健/徘徊詩 46
ゆきなかすみお/村の戦争 48        西森美智子/言葉にできないくらい 50
北野明治/造花 他 52           鈴木一成/老残日記 54
月谷小夜子/還暦の団塊世代 56       小野 肇/地球と月と 58
若狭雅裕/九月 60             安森ソノ子/民の平安へと 62
門林岩雄/いとなみ 64           山口格郎/話が横に逸れました 66
野老比左子/伯耆大山 68          前田孝一/愛 70
徐柄鎮/日陰の梅 72

現代情況論ノート 16 ナポレオンのペニス…石原 武 90
世界文学の詩的悦楽−ディレッタント的随想(15) T・S・エリオット再読 『からっぽ人間』と現代的状況…小川聖子 92
世界の裏窓から−カリブ篇 「誰でもない」わたし…谷口ちかえ 96
ベトナム現代詩人レ・パム・レの詩4 約束の地へ…水崎野里子訳 102
中国古典詩英訳(3) 李白…郡山 直 104
コクトオ覚書224 コクトオの詩想(断章/風聞)数々4…三木英治 108
東日本・三冊の詩集 新川和江『記憶する水』 南川隆雄『火喰鳥との遭遇』 細井章三『友達になれた気分で』…中原道夫 114
西日本・三冊の詩集 石井春香『贅沢な休日』 寺本美智子『何が起こるかわからない』 大谷典子『自転車旅行』…佐藤勝太 118
受贈図書 124  受贈詩誌 121  柵通信 122  身辺雑記 125
表紙絵/申錫弼 扉絵/中島由夫 カット/野口晋・申錫弼・中島由夫



 村の戦争/ゆきなかすみお

五月のある日、晴れわたった丹波の山奥へ十機ほどの戦闘機が突
然現れた。鉄道もない、車で一時間以上も行かないと駅もない山
また山の村の上空へ、小さい黒点はみるみる拡大して凄まじい轟
音で大地をゆすって、尾根の杉や檜をかすめる超低空で飛びさっ
た。

「ウワアッ! 空襲じゃっ!」「戦争じぁあっ!」 としよりた
ちが家から転がりだして大騒ぎ。戸口で腰を抜かしたおばあちゃ
んが柱にすがって悲鳴をあげている。

六十年も昔。大阪、神戸、名古屋を空襲したB29がこのあたりで
反転、残った焼夷弾を気まぐれに何回か捨てて行った、その記憶
が瞬時によみがえったのだ。山火事が起きた。家も三−四軒燃や
された。

なんやなんや!
どうしたんや!
役場に電話してもわからない。消防署も警察も知らない。村人は
あちらこちらにかたまって、不安気に空を眺めているばかり。

やがて、ここからは五つも六つも山を越えた奈良航空自衛隊基地
祭り、その空中ショーに出動する戦闘機だとわかったが、丹波の
山また山の、鉄道もない田舎にもあった戦争が急に思いだされ
て、
「びっくりしたのおー」
「わしゃまた、てっきり空襲じゃとおもうたぞー」
「なあに心配せんでもええんじゃ、
 日本はもう戦争はせんときめとるんじゃからー」
「そうじゃのー」

人々は戦闘機が飛びさった空を眺めてしばし立ちつくしていた。

 「山また山の村」にも「六十年も昔」に戦争があったことを思い出させた「空中ショーに出動する戦闘機」だったわけですが、「なあに心配せんでもええんじゃ、/日本はもう戦争はせんときめとるんじゃからー」という言葉が印象的です。戦争はしないなら戦闘機も必要はないわけですけど、そこには言い及ばない村人の会話に今の日本が象徴的に現れているとも思います。本当のところは「戦闘機が飛びさった空を眺めてしばし立ちつくしていた」人々がどう感じているのかは判りませんが、おそらくとりあえずの原因≠ェ判ってホッとしているんでしょうね。それを責める気にはなりません。静岡県御殿場と神奈川県厚木の自衛隊・米軍基地を往復するヘリ、戦闘機が隣の山の上空を毎日飛んでいるのを見ながら、私もまた無感覚になっていますから…。考えさせられた作品です。



総合文芸誌『中央文學』473号
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2007.8.25 東京都品川区
日本中央文学会・鳥居章氏発行  400円

<目次>
◆小説◆
花占い/水島 怜/2            再びタイ・カンチヤナブリへ/柳沢京子/7
写真/曾根 聖/21
◆詩作品◆
喪失/佐々木義勝/15            ナナトマミ/田島三男/17
看守/朽木 寛/19
◆翻訳◆
カードは語る(原題:
CARDS DON’T LIE)/原作:B・Verginia Lee 訳:根津徹也/24
◆特集◆ 創刊60周年に際して/27
日本中央文学会60周年を祝う・本多 爽    私と中央文学・菅野敏子
縁は異なもの・曾根 聖           居心地のよい場所・寄田恭子
『中央文学と私』・柳沢京子         創刊60周年にあたり・田島三男
「詩造型」との出会い・黒澤和夫       中央文学会と私について・鳥居 章
白い光り・寺田量子
●編集後記● 34
●表紙写真● イタリア/東リヴィエラ地方/ボルトフィーノ●



 看守/朽木 寛

まだ泣いているのか
雷はとうにやんでいる

<おや ここはなんと……>

なんと?

<……暗いんだろう>

なんと? なんと!

<また ふんぞりかえっているね
ヘルニアは大丈夫かい
それもみな
その詰襟のおかげ というわけか
ホックがきつすぎて
さぞかし胸も苦しいことだろう>

ふん
せいぜい勝手におだをあげていろ
自由をわれらに……ってか
ご苦労なことだな
哀れなやつらよ

<さて 哀れだと
しかし 君も鉄格子の中にいるじゃないか>

 今号は創刊60周年記念号になっていました。創刊は1947年7月25日とのこと、なんと私が生まれる2年も前のことなのです。息の長い文学活動に敬意を表します。
 紹介した作品は < > が囚人、それ以外が看守の言葉と採ってよいでしょう。最後の連が意味が採りにくいのですが、牢獄の中から外を見ると、「君も鉄格子の中にいる」ように見えるという意味と、牢獄の内も外も変わりはないのだという二つの意味に採れると思います。後者は「ホックがきつすぎて/さぞかし胸も苦しいことだろう」というフレーズに象徴されています。看守も囚人も結局は大きな檻の中にいるとも読み取りました。



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