きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.1.22 爪木崎・水仙群生




2008.2.4(月)


 西さがみ文芸展の最終日。今日は60名を超える来場者があって、賑やかでした。この5日間の来場者総数は230名だったそうです。一日平均46名。日本詩人クラブが銀座の画廊を借りても300名ほどの来場者ですから、それに比べても立派なものです。分析をすれば、詩人クラブが現代詩対象なのに対して、こちらは短歌・俳句、エッセイもありで、その人口の差だろうと思いますが…。やはり裾野が広いということは、こういうところにも表れるのだなとつくづく思います。

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 大きな人口には大きな写真、というわけではありませんが、会場風景です。ご覧のように展示された本をじっくりお読みになる方もいて、来場者の熱心さも伝わってきますね。

 今日は最終日ですから16時でおしまい。そのあとは撤収に入って、オープニングバーティーならぬクロージングパーティーとなりました。私はさらに先輩お二人に連れられて近くの鮨屋へ。このお二人とは初めて呑んだのですが、話題が豊富で聞福も脳福も味わいました。お一人は絵描きさん、もうお一人は大学講師も勤めたエッセイスト・歌人ですから、幅の広さ、深さは敬服ものでした。長く生きるということは、それだけいろいろなものを吸収するのだと、勇気が湧いてきましたね。お薦めの旨い寿司も食べさせてもらって、ありがとうございました!



詩誌『ONL』95号
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2008.1.30 高知県四万十市
山本衞氏発行  350円

<目次>
現代詩作品
徳廣 早苗 この街が好き 2        河内 良澄 日本のことば 4
土居 廣之 主張 5            文月 奈津 人生観 6
岩合  秋 外は、しぐれ 8        浜田  啓 父と母 10
水口 里子 家 11             宮崎真理子 思慕 12
大森ちさと 空は果てしなく 13       北代 佳子 孫のしぐさ 14
土志田英介 素空の女 15          丸山 全友 不勉強 18
森崎 昭生 水鏡 19            山本 歳巳 手の記憶 20
柳原 省三 黒雲 22            山本  衞 詩人の生涯 24
西森  茂 終わり無きテロリズム 26    大山 喬二 橡の木の森へ(十)他 28
福本 明美 下宿のおばさん(5) 30     山本  衞 食べなかったお弁当 42
俳句作品  瀬戸谷はるか 寒月光 31
短歌作品  岩合 秋 写経 32
寄稿評論  村上利雄 ONL九十四号を読んで 34
随想作品
小松二三子 コメンテーター 38       芝野 晴男 寒い朝 40
秋山田鶴子 食べる 41
評論
谷口平八郎 幸徳秋水事件と文学者たち(8)33 柳原 省三 棹見拓史詩集『かげろうの森で』 37
後書き 44
執筆者名簿 45               表紙 田辺陶豊《群像》



 水鏡/森崎昭生

青い空をうつす水たまりに
小石を落とす
青い空はゆれてひずみ
底から ぽっと濁りがわきあがる
またひとつ小石を落とす
あらたな濁りがわきあがる
疑いは疑いを呼び明るさを蝕んでいく

またひとつ
また ひとつ
(みずからのうらぎりも口にしながら)
小石を落とす
濁りはひろがりつづける
青い空は もう見えはしない

水たまりを見つめている
ちいさな水たまりの…果てしなき深さを

 「青い空をうつす水たまりに/小石を落とす」と、「濁りがわきあが」ります。その濁りが「疑いは疑いを呼び明るさを蝕んでいく」ものの象徴として表現されていて、見事なものだなと思いました。その濁り、その疑いは「みずからのうらぎり」にもある、としたところには作者の真摯な態度を感じさせます。最終連の「ちいさな水たまりの…果てしなき深さ」というフレーズも佳いですね。小品ですが人間の持つ闇の深さを端的に表出させた佳品だと思います。



詩誌『礁』5号
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2008.1.30 埼玉県富士見市
礁詩社・穂高夕子氏発行 非売品

<目次>
詩作品
時雨の街/佐藤 尚 2           もう少し……/佐藤 尚 4
十一月/近村沙耶 6
俳句 寒蝉/川端 実 8
エッセイ
終焉・『生きてをる』/川端 実 8     正岡子規最終回 子規とカリエスと短詩文学/川端 実 10
金子みすゞの詩を読む(5)/穂高夕子 16   映画「ALWAYS」に思う−あれから半世紀−/秦健一郎 20
こぼれてにほふ桜花かな/中谷 周 26
詩作品
許されていること/穂高夕子 32       遠ざかる船/穂高夕子 34
編集後記…36                表紙デザイン 佐藤 尚



 許されていること/穂高夕子

上弦の地球が
青く浮かんでいる
まるで 月のように

くっきりと南アメリカ大陸が見えるから
地球に違いないのに
あの青さに染まった球体が
地球だなんて 本当だろうか

一つの生命が生まれ
進化しはびこり消滅し
輪廻を繰り返す年月の間
いつも青いまま暗闇の中に浮かんできた
他愛ない時間 ほんの少しの時間
生命のなくなってしまった未来まで
星にとっては ささいな時間

地球は
いつまでもありのままに
水を湛え 輝きながら
月の地平を昇降する
あでやかに体を開き
すみずみまでを照らされて
ヴィーナスのように笑いながら

その上で
今 起きてはいけないことは何か
わたしたちは気づく

大切なことは
わたしたちが
時間の大きさで 許されていること

 上弦の月ならぬ「上弦の地球」。おそらくかぐや≠ゥらの映像に想を発した作品ではないかと思いますが、古人に比べると、私たちはおもしろい時代に生きていると言えるでしょう。しかし作者は、そんな上辺だけのおもしろさにとどまらず、地球の歴史を「いつも青いまま暗闇の中に浮かんできた/他愛ない時間 ほんの少しの時間」と捉えます。そして私たち人類は「時間の大きさで 許されている」存在にすぎないと説きます。この視点は宇宙から地球を見ることができるようになった人類の、古人とは違った感覚なのかもしれません。その感覚を「大切」にしている作品だと思いました。



   
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