きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
080122.JPG
2008.1.22 爪木崎・水仙群生




2008.2.29(金)


 わが家の犬は昨日とまったく同じで、痙攣を起こしてひっくり返ったかと思うと、次には室内を全速力で走り回って、エサをパクついて、いったいどうなっちゃったんだろうと不思議です。これで心臓病もなく痙攣もなかったら、14歳の元気婆さんと笑って済ませるんですが、、、。それにしても犬の生命力とは凄いものだと改めて思います。獣医から今夜にも死んでしまうかもしれないと宣告されて半年、若い頃の元気さはないものの、矍鑠として生きているという感じです。15歳まではあと4ヶ月余、少なくともそれまでは生きてほしいものです。誕生パーティーやってやるかなね!



詩と散文RAVINE165号
ravine 165.JPG
2008.3.1 京都市左京区
薬師川虹一氏方・RAVIN社発行 750円

<目次>
詩■
『天野大虹作品集 画と詩』より 坂 1
 ※
久代佐智子 送り火 2           木村 彌一 そのときとあのとき 4
中島 敦子 コスモス 6          ヤエ・チャクラワティ 幻の現実 8
牧田 久未 声のない空 11         谷村ヨネ子 とい 他 14
乾   宏 没り陽 17           薬師川虹一 訳詩リジア・シムテーク詩集『輝く風』の「木々の木霊」より 24
中井不二男 地の糧 27           並河 文子 たき火 30
苗付 和正 かぐやの月 33         成川ムツミ 逃げる 36
村田 辰夫 鰯の缶詰 38          白川  淑 ああ 昭和レトロ]T 42
藤井 雅人 書記 44            早川 玲子 浮く飛ぶ−『シャガール展』によせて 46
山本由美子 
BLEU BROUILLARD 50    古家  晶 水底の自画像 51
荒賀 憲雄 石くれ如来−智積院 54     名古きよえ 東京メトロの花 57
堤  愛子 数え日 60           木村三千子 慣れ 62
石内 秀典 峠にて 64
同人語■
苗村 和正 遠い記憶のなかの青春 20    並河 文子 変りゆくもの 21
成川ムツミ 平和 22            早川 玲子 うたは世につれ 年齢につれ 23
エッセイほか■
薬師川虹一 第十回 ヨーロッパ諸言語による国際作家会議に参加して(3) 40
福田 泰彦 月日かさなり、年経し後は、……] 66
村田 辰夫 T・Sエリオット詩句・賛(33 )70
荒賀 憲雄 路地の奥の小さな宇宙−天野忠襍記(十五) 72
〈表紙〉『天野大虹作品 画と詩』より「白い船」(1933)



 峠にて/石内秀典

山に囲まれて
静まり返る街は
雪がうっすらと家々の屋根を被っていた
古い農家を
新興の瀟洒な家々が取り囲み
まるでくすんだ
がくあじさいの花のように見える

恩師の葬儀からの帰り
峠道から振り返る街は
家々が寄り添うようにつづき
人々の暮らしの匂いは
ここまでは来ないが
水底のように
静かだ

こんな隔離されたような街では
新しくやって来た人たちと
旧来の生活を守る人たちの間で
いつも緊張が続いた

先生はいつもその真中にいた
先生の微笑みは静かだった

家人は
見知らぬ多くの参列者に
頭を下げた

幾たびも越えたこの峠を
私はもはや訪れないだろう
雪に沈む街は
私の視界から消えた

 「恩師の葬儀からの帰り」に「峠道から振り返る街」を描いた作品ですが、「古い農家を/新興の瀟洒な家々が取り囲み/まるでくすんだ/がくあじさいの花のように見える」という描写に現代性を感じました。郊外の新興住宅地の多くが「新しくやって来た人たちと/旧来の生活を守る人たちの間で/いつも緊張が続い」ているでしょうし、私の居住する地域も似たようなもので、よく分かります。そんな中で「先生はいつもその真中にいた」とさり気なく書かれていますが、「先生」のお人柄がこの1行に凝縮されていて見事です。日頃から「私」が「先生」と接していてこそ書ける1行ではないでしょうか。「私はもはや訪れないだろう」地を、「峠にて」というタイトルで象徴させた佳品だと思いました。



詩とエッセイ『樹音』57号
jyune 57.JPG
2008.2.1 奈良県奈良市
樹音詩社・森ちふく氏発行 400円

<目次>
残像 他1編…汀さらら 2         蟻地獄 他1編…結崎めい 4
ジャンケン/ホイ憲法 他1編…中谷あつ子 6 今しか見えない人たちへ 他1編…かりたれいこ 8
冬木立 他1編…寺西宏之 10        見えない線 他1編…安田風人 12
タンスの底から 他1編…森ちふく 14

良き日のために…板垣史郎 16        人を悲しませない…大西利文 18
樹のこえ 19                編集後記 20
樹音・会員名簿 21



 見えない線/安田風人

まっ白な紙に横線を引く
そこには上と下が生まれる

まっ白な紙にたて線を引く
そこには右と左が生まれる

線は区別を生み
互いの主張を創り出す
こちらとあちら
あなたとわたし
正しいと正しくない

やがて……戦いが始まる

知らないうちに
せっせと線を引き
いくつもの戦いを続ける私
いつも窮屈の中で呼んでる

もともとは何もない
まっ白な紙なのに

 何気なく「まっ白な紙に」「線を引く」ことはよくあることですが、そうすることによって「上と下が生まれ」、「右と左が生まれる」という発想に驚きました。たしかに「線は区別を生み/互いの主張を創り出」しますね。それを人間社会の「こちらとあちら/あなたとわたし/正しいと正しくない」へ結びつけたのは見事です。さらにそれを他人事とせず、「いくつもの戦いを続ける私/いつも窮屈の中で呼んでる」と、自分へ引き寄せたところに作者の人間性を感じます。新同人のようですが、今後のご活躍が期待できる詩人だと思いました。



『白鳥省吾研究会会報』5号
shiratori seigo kenkyukai kaiho 5.JPG
2008.2.27 宮城県栗原市 佐藤吉人氏発行
非売品

<目次>
宮城県内白鳥省吾文学碑の紹介 1
詩の紹介(寄贈詩集より) 4
第四回「白鳥省吾賞」最優秀賞受賞作品 根本実「お日様
(ひいさん)の唄」誕生記 6
『地上楽園』バックナンバー その二 7
『日本詩人』と白鳥省吾 その三 7
現代詩・言葉と音楽のバイリンガル −栗原との対話− 8
寄贈図書の紹介 8




●薬師山民謡碑
 (昭和二十四年十一月二十日建立)
   栗原市築館薬師山天神馬場
 昭和二十二年八月七日、昭和天皇ご巡幸の際に、省吾が「明治天皇と東北ご巡幸」と題してご進講したのを記念して、同地に民謡碑が建立されている。撰詩については、省吾自身が以下のように書いている。
 「私は、私の郷里に詩碑を郷里人が建ててくれる場合、誰にでもわかる次のような簡単な民謡を選んだ。」『人生茶談』白鳥省吾著より
 生まれ故郷の 栗駒山は
  ふじの耶まより なつかしや

--------------------

 紹介したのは「
宮城県内白鳥省吾文学碑の紹介」の中の一部です。この紹介は「その三」となっており、今回は全部で13碑が記載されていました。これは民謡ですから分りやすいのは当然としても、故郷の山に対する人々の思いが端的に示されていると思います。日本人なら「ふじの耶ま」を懐かしいと思うでしょうが、富士山から離れた「生まれ故郷」を持つ人は、やはり「栗駒山」を懐かしく思うという二重性も表現していると言えましょう。白鳥省吾の感性の深さを改めて知らされた作品です。



   
前の頁  次の頁

   back(2月の部屋へ戻る)

   
home