きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
080503.JPG
2008.5.3 前橋文学館




2008.7.11(金)


 昔、キャンピングカーを持っていた時代に、雪の中でスキーキャンプをやったことのある、群馬県沼田市の玉原(たんばら)高原に行ってみました。昔というのは、もう15年ほど前のことになりますけど、道も風景もかなり覚えていました。玉原をたんばらと読む地名なので印象深いのかもしれません。当時としては珍しいスキー場に併設されたキャンプ場でしたから、それも記憶に留める材料だったのでしょう。
 今回は真冬ではなく真夏。しかも雨模様という最悪のコンディションでしたけど、花畑も散策路も整備されていて、私のような中高年には打って付けの場所のようです。

080711.JPG

 写真はニッコウキスゲ(だと思います)の群落。自生ではなくヒトの手による花畑ですから、ちょっと興醒めなところもありますが、まあ、こうやってムラ起こしをしているのだと思えば、それはそれで納得するしかないでしょうね。むしろ雨の中を手入れして回る人の姿が感激的でした。
 時折り雷も鳴り、滝のような雨が降るかと思えば、すぐに止んでしまうという面白い天気でした。スキーができるほどの標高ですから、完全なヤマの天気ですね。晴れていたら眺望も利いて、晴れ男という私の面目も躍如というところでしたが、こういう日もあるということで…。でも、雨は雨で風情がありましたよ。負け惜しみかな(^^;



山岡和範氏詩集『笑生ちゃん』
nikoi chan.JPG
2008.8.29 東京都豊島区 詩人会議出版刊 1500円

<目次>
T
笑生ちゃん 6    花 8        八月のセミ 9
巣立ちのとき 10   山茶花 12      まちかど風景 13
となりのひと 14   富士街道と富士町 15
U
初恋 20       三橋芙慈さん 23   遺影を見ながら 26
あたらしい浦島のはなし 28
V
山鳩の記憶 38    学徒動員のこと 40  学徒動員その後 46
健在 52       玉音放送 54     記憶のかげ 57
思い出すこと 60
W
攻めてきたら 64   教育基本法改定は戦争国家への道 66
美しい国(一) 69   美しい国(二) 72   雨戸を開けると 74
教育再生 78     年賀短詩 80     桜前線 82
あとがき 84
写真・山岡努/カット・南浜伊作



 攻めてきたら

小さな猫が歯をむいて
とびかかってきたらどうします
とびかかる前にひねりつぶしてやりましょう

とびかかってきたのが
大きな犬だったらどうします
とびかかる前に餌をやりましょう

とびかかってきたのが
大きな熊だったらどうします
死んだふりするしかないでしょう

とびかかってきたのが
鋭い牙の狼だったらどうします
引き裂かれて食べられるほかないでしょう

世界じゅうの生きものたちが集まって
地球生きもの連合を開きます
核兵器のアメリカが攻めてきたらどうします

 2年ぶりの第12詩集のようです。タイトルの「笑生ちゃん」は、作品中ではニコちゃん≠ニ読み、著者のお孫さんで、正式なお名前はにこいちゃん≠フようです。この作品も祖父から孫を見るあたたかい詩ですが、ここでは著者の思想の根源と思われる「攻めてきたら」を紹介してみました。〈世界じゅうの生きものたち〉の前にはだかる〈核兵器のアメリカ〉の、生物界での異質さを感じました。
 本詩集中の「思い出すこと」は、「祖父」と「月月火水木金金」の2部構成になっています。そのうちの
「祖父」は、すでに拙HPで紹介していました。ハイパーリンクを張っておきましたので、合わせて山岡和範詩の世界をご鑑賞ください。



詩誌『詩区 かつしか』107号
shiku 107.JPG
2008.7.20 東京都葛飾区 池澤秀和氏方連絡先
非売品

<目次>
めがね/しま・ようこ            大金鶏菊/みゆき杏子
戦争を知らない(一)/みゆき杏子       子供/工藤憲治
ホームレス/工藤憲治            リハビリテーション/内藤セツコ
菜の花畑/石川逸子             晴れでも雨でも/石川逸子
なみ先生/池沢京子             身の丈/池澤秀和
はなしょうぶ U/池澤秀和         海軍さん/堀越睦子
空に/青山晴江               人間110 ケロイド(7)/まつだひでお
人間111 いつまでも戦争の悪夢/まつだひでお 峠/小川哲史
後味/小林徳明               喜捨/小林徳明



 峠/小川哲史

僕は九つ妹は六つ
母さんと三人で束の間の刻
廣島深尾の山路を登る
姉ちゃん一人がここにはいない

戦いで父さんを亡くした母さんは
子供三人をひき連れて
母さんの出所に身を寄せた
十一人の貧しい大家族

出所に落ち着けるはずもなく
乗合自動車と汽車を乗り継いで
岡山笠岡の織物工場に
母さんは女工として働きに出た

姉ちゃんがふいにいなくなった
遠い親成に養女として預けられ
女中まがいの暮らしぶり
と知らされたのは後のこと

休みを貰って母さんが
年に一、二度帰ってくる
久しぶりに会う母さんは
なんだか他人の女
(ひと)みたい

山路を登りきると村境の峠
ここで別れて母さんはまた
笠岡に向かって峠を下る
母さんの背が段々小さくなってゆく

 詩作品ですから作者の身に実際にあったことと採る必要はありませんが、1945年から1950年代にかけて、このようなことが全国にあったことは事実です。私自身も生母の死去で家族がバラバラになるという体験をしました。しかし、この作品はそれをノスタルジックに描いているのではないと思います。現在に突きつけた過去の傷だと読み取りました。
 敗戦後から高度成長期に至る日本では、この作品のような悲惨な状態が相次ぎ、それを何とかしようと労働組合も教職員組合も、そして政府も不十分ながら動いたのだと認識しています。まだまだ満足できる状態ではありませんでしたが、その経験を通して日本は社会福祉を目指してきたのだと思います。ところが小泉政権以後、社会福祉費は大幅に削られ、現在のワーキングプアなどに至っているのが現状です。
 この作品は、過去の傷を表出させることで現在を批判しているのではないでしょうか。決してノスタルジーではないと思う所以です。そのように読まなければならないとさえ感じています。



詩誌『北の詩人』66号
kita no shijin 66.JPG
2008.7.10 札幌市豊平区
日下新介氏方・北の詩人会議発行 100円

<目次>
写真・詩−信号が変わる前に/佐藤 武 1  春の恵み/大竹秀子 2
父母の思い/大竹秀子 2          夫の姉の死/大竹秀子 3
短詩 花に寄せて/佐藤 武 4       澤地久枝講演会/佐藤 武 5
ヒューマニズム/かながせ弥生 5      犬/かながせ弥生 6
食べる/かながせ弥生 7          通り魔事件を憂う/たかはし・ちとせ 9
カレセン/たかはし・ちとせ 9       NAKBA(大惨劇)/たかはた しげる 11
紀行文 新生ブータンの息吹に触れて 高畑 滋 12
短歌 海/濱村 彰 14           短歌 花香る季節を/幸坂美代子 14
邪悪に生きる−正見に目覚めよ/仲筋義晃 16 私の信念/仲筋義晃 17
カッコウの鳴く季節/日下新介 17      エコ/八木由美 18
茂子 25/阿部星道 19
ミニ・エッセイ
中国映画「白毛女」/もりたしげはる 21    ある母の死/かながせ弥生 211
教育とは何か/日下新介 22         私の生活スタイル/大竹秀子 24

北海道詩史補遺の紹介 10          村山精二さんから(日下新介の詩) 23
文化活動団体紹介(北の詩人会議) 25     平和・反戦詩集作品募集 25
大島博光記念館をつくる会に 26       「北の詩人」65号 短評 阿部星道 26
受贈詩集・詩誌紹介 佐藤武29 日下新介30  もくじ・あとがき 32



 エコ/八木由美

サミットが 近いからか エコの話でもちきり
「スーパーの袋が五円だって…」
「私は 前から買い物は マイバッグ持って行くよ…」
「生ゴミは 畑に…」
「前からそうしているよ」
物を作り過ぎない 買い過ぎない
室内温度を一度下げる
あれ? 灯油 高いから?

「エコについて 話し合う集まり」に出席した時の事
話はつきない
昔は 豆腐を買うとき 鍋持っていったよね
買い物だって かご持っていったしね

すっかり なんでも発泡スチロールや
プラスチック容器 ビニール袋に入っているのが
あたりまえ と思って暮すようになって
どれ位になるのだろうか

これが ゴミの素?
リサイクルといったって
洗うのに 又 水を使うし…

昔に戻ろう 昔ってどのあたりに
昔? 私の子供の時代に…
ゴミを出さないために…
食べ残しを出さないために…
太ってしまうよ

 主婦の観点で書かれた、無理をしない〈エコ〉の話で共感しますが、特に〈リサイクルといったって/洗うのに 又 水を使うし…〉という疑問は重要だと思います。日本は幸い水が豊富な国ですから、今のところは大丈夫でしょうが将来は判りません。そこを押さえている作品と云えましょう。やはり〈豆腐を買うとき 鍋持っていっ〉て、〈買い物だって かご持ってい〉くのが理想なんでしょうね。
 私事ですみません、私は最近、買い物によくつき合わされています。嫁さんから重いのを持てと命じられての行動ですが、自前の籠を持って行きます。そこで発見したのですが、自前の籠を持って行くと、それに直接、買い物をした野菜や魚を入れてくれるので、〈スーパーの袋〉に入れ直す手間が無くなるんですね。主婦の皆さまはとっくにご存知なのでしょうけど、〈エコ〉は余計な容器を使わないばかりでなく、時間の節約にもなるんだなと感心しました。
 作品は最終連の〈太ってしまうよ〉がよく効いていると思います。私はここで笑って(失礼!)、ヘンな深刻さを感じなくて済みました。生活から出てきた詩の底力も感じた作品です。
 なお、今号も拙HPの紹介を載せていただきました。御礼申し上げます。



   
前の頁  次の頁

   back(7月の部屋へ戻る)

   
home