きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.4.25 柿田川




2008.6.21(土)


 日本詩人クラブの7月研究会・例会の案内状発送作業を事務所で行いました。私を含めた総務担当理事2名と、理事長、詩界・研究会担当理事、そして広報担当理事の応援を得て、5名で朝11時から始めましたが、なんと大きな問題が発生。
 今回の案内状はメール便で出すことにしていましたので、ヤマト運輸のB2というシステムを使います。B2はインターネットに接続して宛名シール作成の遣り取りをするのですが、事務所のパソコンがインターネットに接続できない!という事態になってしまいました。宛名シールが作れなければ案内状が発送できません。

 実は今月初めにインターネットに接続できないという状況を把握していました。そのときは、たまにはそんなこともあるだろう位にしか思わず、会議に追われて原因究明までやりませんでした。今日は本格的にトラブル解析をしないといけない事態に追い込まれたわけで、発送準備作業を他の人に任せて、私は回復に専念しました。光ファイバーを調べて、LANケーブルを差し替えてみて、トラブルシューティングをやってみて、乏しいながら持てる知識をフル動員して原因究明に奔走しましたけど、ダメ…。
 そのうち、もうひとりの総務担当理事が葉書を持ち出してきました。「こんな葉書があるんだけど、料金を支払っていないからじゃない?」。見ると昨年10月分の請求書、おまけに督促状まである始末。あわててプロバイダーに電話をすると、やはり料金未納で契約を打ち切ったとのこと。あーぁ!

 原因が分かったのは良かったんですけど、その未納料金というのが、たったの735円! 悔しくなりましたね。
 事務所は常駐ではありませんので、そんなことも起こり得るなと思って注意していたのですが、見過ごしてしまいました。プロバイダーには謝罪して再契約の手続きをすることにしましたけど、すぐにB2を使うことはできません。宛名シールは私が自宅で作って、再度事務所に来て発送することにしました。予定より2日遅れの発送ですが、早いものが7月5日の研究会案内ですから、それには間に合うでしょう。作業は宛名シールを貼ればいいだけにして終了。それでも午後4時まで掛かってしまいました。
 皆さまはくれぐれも料金未納なんてことにならないようにしてくださいね。オソマツな話でした。



眞神博氏詩集『修室』
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2008.7.1 東京都大田区 ダニエル社刊
 2000円+税

<目次> 装画 来原貴美
とりかえしがつかない 10          一羽の鳥は一人の人を助けている 14
春には誰かがいない 16           森林 18
夏の夜に咲く新しい紫陽花の花 20      雀たちの巨木 24
緑の影 26                 真夏に浮かぶ道 28
火の粉 30                 川のモチーフ 32
夏の終わりに降る七千五百万粒の雨 36    私たちのオレンジ 40
雑木林のフーガ 42             私は踏切を渡りたい 44
おまえは誰のカラスだ 48          日々の磔刑 52
公園 56                  「私に覆い被さらないで」 58
言葉の素肌(惜別) 60



 私たちのオレンジ

日の光を浴びて
私の身体は私の心と異なってしまった
人に対して 命令形で射して来る
光を見ることは
何かとても難しい本を読んでいるみたいだ

日差しの中を通りかかった人間は
受胎という事故を起こし
自分が個人であることを告白してしまう

風が吹いていると言っても
直接何かが吹いているわけではない
厳選された空間で
扉などないのに 何かを開けて入ってきた
少女は春のアクセルを踏む
そして
空に高鳴る
私たちのオレンジ

 2001年刊『焼きつくすささげもの』以来の、おそらく第2詩集になるのではないかと思います。形而上詩と謂うことが適切かどうか判りませんが、第1詩集以来、シュールレアリズムの絵画を見ているような心地良さで拝読してきました。紹介した作品には、その心地良さと共に言語としてのおもしろ味も感じます。「人に対して 命令形で射して来る/光を見ることは/何かとても難しい本を読んでいるみたいだ」というフレーズ、「受胎という事故」という詩語、ここには視覚とともに言葉として組み合わされた美を感じます。
 本詩集中の
「森林」「日々の磔刑」「『私に覆い被さらないで』」は、すでに拙HPで紹介しています。ハイパーリンクを張っておきましたので、合わせて眞神博詩の世界をお楽しみください。



隔月刊詩誌『東国』138号
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2008.6.1 群馬県伊勢崎市
東国の会・小山和郎氏発行 500円

<目次> ●題字 山本聿水  ●装画 森川e一
●詩     虫類贋図録 2 小林茂        機械と人間と心と 5 柳沢幸雄
       キムチの味 8 本郷武夫           詩の途中 12 堀江泰壽
       うさぎの歌 14 関根正史        三月の鳥が笑う 17 福田誠
        飛び込み 20 綾部健二        夢うつつの中で 23 松浦宥吉
          水棲 28 佐伯圭              病院 34 小保方清
.レイ・A・ヤング・ベア詩篇 36 青山みゆき訳           立つ 44 斎藤光子
    月を取ったおとこ 46 高田芙美     回覧板/冬のゆめ語り 65 中澤睦士
     漂流瓶日常・12 72 小山和郎          言葉がない 78 大橋政人
     デパート/祈り 80 奥重機    ささやかな旅/第一発見者 84 金井裕美子
 師の教え/還暦の楽しみ 87 三本木昇   先様が断りさえしなければ 92 田口三舩
にぎやかな無言劇/紙の音 94 伊藤信一           かむとけ 98 江尻潔
        限界集落 99 愛敬浩一           途中下車 102 若宮ひとみ
        卵/歩く 106 渡辺久仁子        夕陽とともに 110 野口直紀
   記憶の終点/待つ日 111 清水由実             秘密 116 山形照美
          呼吸 119 川島完

●外接円《言葉の優しい美》を読んだ 48 小島きみ子
●ことばの花束 福田誠詩集『水たまりを飛ぶ』を読む 54 金井裕美子
●針の穴 鈴木朋成詩集『言葉の近況』58 川島完
     小笠原茂介詩集『青池幻想』59
      山崎森詩集『石の狂詩曲』60 小山和郎
弓田弓子詩集『ベケットが少し動いた』62
    岸本マナ子句集『通りゃんせ』63
●あとがき 122



 デパート/奥重機

市電がガタンゴトンと
目の前をゆっくり過ぎていった
線路を横切って
弟と二人きりで
デパートに向かっていた
何を買うという目的もなく
異常なほどの好奇心で
ひたすらデパートに急いだ
入り口から中を覗くと
嗅いだことのないいい香りがして
何か気持ちの良いざわめきが
耳をくすぐった
中へ一歩踏み出そうとしたが
すぐには踏み出せずに
自分の身体が固くなっているのに
気づくと
やっと弟を促して一歩を踏み出していた
この別世界はたしかに
自分の住んでいる街にあるのだ
華やかな色彩ときれいな女の人たち
その中に立っている自分
不思議な時間が
周りを取り巻いて
そして過ぎていった
一階から二階 二階から三階
更に上へと歩き回って
外へ出たとき
急に便意をもようして
家に急いだが
ついに我慢が出来なかった
弟は心配そうに顔を見上げるのだった

 この詩を拝読して、パーッと子どもの頃の情景が浮かび上がりました。小学生の3年までは現在の福島県いわき市で過ごし、その後1年間を北海道芦別市に居て、4年生のときに静岡市に転居しました。それまでの炭鉱町とは違った都会には松坂屋という大きなデパートがあって、私も「弟と二人きりで/デパートに向かっていた」のでした。そこには「嗅いだことのないいい香りがして/何か気持ちの良いざわめきが/耳をくすぐっ」て、「華やかな色彩ときれいな女の人たち」がいました。初めてエレベーターなるものに乗って、何度も往復を繰り返すうちに、とうとうエレベーターガールに叱られていまったことを覚えています。
 「外へ出たとき/急に便意をもようし」たというのも分かりますね。「心配そうに顔を見上げる」「弟」の姿に、男同士の兄弟の親密さも出ているように思います。なんということはない子ども時代を描いた作品ですが、共感する人は多いのではないかと感じました。



詩誌『ネビューラ』創刊号
2008.6.15 岡山県岡山市 壺阪輝代氏代表
非売品

<目次>
雨の日の猫のように…中尾一郎 2      五月の童子…手皮小四郎 4
朝に目覚めるということは…下田チマリ 6  冬の日溜まり…荒木忠男 8
時を染める−ヨモギ−…今井文世 10     かるべむらの桜…川内久栄 12
無情の庵
(いおり)…谷口よしと 14       薔薇…エイタロー 16
五月の海辺…広畑周子 18          顔…田原伴江 19
呼びかけるもの…岩崎ゆきひろ 20      夏臘梅…田尻文子 22
訪問…石原美光 24             轍…三村洋子 26
白の宿題…中原みどり 28          自分でない自分…西ア綾美 30
清音…香西美恵子 32            野菜ぎらいのりょうちゃん…平 麻美 33
吉備野の花詞(W) 芹…中川貴夫 34     祈り…白川比呂志 37
母の愛…黒沢俊和 38            五月の畑…日笠芙美子 40
落とし箸…壷阪輝代 42
装幀・尾崎博志



 落とし箸/壷阪輝代

ふいに 手元がゆるんで
落ちていく箸
母よ
痛む腰を曲げて拾わなくてもいい
あわてて言い訳などしなくてもいい

幼い日
はじめて箸を握ったあの日
わたしが落とした箸を
何度も拾い上げ
エプロンで拭いて持たせてくれた
励ましの声のぬくもり

わたしの人生の箸使いは
あなたから受け継いだもの
母と娘の
絆を今こそ食してください
わたしの五味で
淋しさを充たしてください

いま
何度でも
あなたの箸を拾って
こわばった手に持たせてあげる
わたしの心を添えて

 岡山県で新しく発刊された詩誌の創刊号です。おめでとうございます。誌名の
『ネビューラ』とは星雲という意味だそうです。耀く星々のような、20代から80代の25名の出発。今後のご発展を祈念しています。
 ここでは代表者の作品を紹介してみましたが、「落ちていく箸」という現象を通じた「母と娘」の歴史に思わず胸が熱くなりました。そうやって人は成長し、やがて老いるもの。しかしその過程で「何度も拾い上げ/エプロンで拭いて持たせてくれ」る人があり、「心を添えて」「何度でも/あなたの箸を拾って」くれる人があれば、「淋しさを充たしてく」れるものかもしれませんね。創刊号を飾る佳品だと思いました。



   
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