きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.8.28 松島 |
2008.9.8(月)
午前9時に地元の印刷所に行って、日本詩人クラブ用の封筒印刷を頼んできました。長形3号を3000枚。これでどうにか3回分は間に合います。本当は5000枚でも10000枚でも印刷しておきたいところですが、法律改正により年末に法人名が変えられてしまうようです。従来の有限責任中間法人という何がなんだか分からない名から、一般社団法人となり、少しは法人らしいものになるものの、朝令暮改で嫌になります。中間法人法ができてまだ3〜4年だと思います。
法律を作る人や行政は、変わったよと言えば済むことかもしれませんが、それによって印鑑や印刷物を変えなければならない方はたまったものじゃありません。近いところでは郵便番号がありました。いまだに枝番を手書きにしている郵便物があり、私も縦書きの判は一部手書きです。お上の言うことには逆らわないという国民性が根底にあると思うのは、下司の穿った見方かもしれませんけどね。まあ、それによって儲かる中小零細の業種もあるのかなあ、と、ここは納得しておきましょう。
○詩誌『COAL SACK』61号 |
2008.8.30 東京都板橋区 コールサック社・鈴木比佐雄氏発行 1000円 |
<目次>
〈扉詩〉詩(うた)う理由…上田由美子 1
〈特集1「浜田知章さんを偲ぶ会」全記録〉
浜田知章さんを偲ぶ会 5 咆哮(ほうこう)を聴け…吾川 仁 26
浜田知章という人…内田聖子 28 あえかな紅(くれない)が一瞥を…大掛史子 29
私の義父・知章さんが教えてくれたもの…緒方哲也 30
リアリズム詩壇の巨星落つ…御庄博実 32 浜田知章さん…たかとう匡子 34
浜田知事さんを悼む…/中岡淳一 36 浜田知章さんの思い出…蓼原百合子 38
平和へのふるまい…原田道子 39 巨星堅つ…長津功三良 42
浜田知章氏の講演から(要点) 46 浜田知章詩集『海のスフィンクス』書評…森 徳治 48
浜田知章 海嘯記 51 「広島に行くべきだ」と浜田知章さんは語った…鈴木比佐雄 54
〈詩〉
八月…江口 節 56 誰か…崔 龍源 58
車前草の花/柊…山本十四尾 60 拝み箸…壷阪輝代 61
聖火護送…西村啓子 62 空の道…酒井 力 63
ミセスエリザベスグリーンの庭に…淺山泰美64 時には空を飛んで…杉本知政 65
切開…山本聖子 66 繋がり…星野典比古 67
玉/闇の音…村永美和子 68 美(ちゅ)ら海水族館…平原比呂子 70
渡良瀬 遊水池…遠藤一夫 71 白爪草序奏…うおずみ千尋 72
輪…こまつかん 73 落ちない角…森田海径子 74
アレルギー体質…吉田博子 75 認知症 その2…皆木信昭 76
放つとき…鳥巣郁美 77 キリンの欲求…宇宿一成 78
雪女考/玄米漬…未津きみ 80 椅子…山本泰生 82
心音…石村柳三 83 懐疑…豊福みどり 84
千日介抱…石下典子 85 風のかなしみ…日原正彦 86
エピローグ…岩崎和子 87 衛士の焼く火…倉田良成 88
夏旅の迷路…安永圭子 90 父をつつむ/踵から…石川早苗 92
名もないリスの記…北原千代 93 酷暑/八百屋の店先で…横田英子 94
朝顔と入道雲とみんみん蝉と…朝倉宏哉 96 もうひとつの島唄…李 美子 97
「森に入らないか」ロバートフロスト作/大山真善美訳 98
花のある教室(下)…大山真善美 99 折鶴…鳴海英吉 100
Folded-Paper Cranes in Hiroshima…水崎野里子訳 101
高炯烈 アジア詩行 高 炯烈作/李 美子訳 102
〈特集2 長崎原爆の詩とエッセイ〉
任務/フォールアウト…伊藤眞理子 108
半生の記…杉谷昭人 109
蝉の声のまにまに…崔 龍源 110
雲仙岳とキノコ雲とボーヴォワール…丸山由美子 111
記憶…河野洋子 112
蒼白の八月…結城 文 113
浦上天主堂・黒いマリア/故長崎市長・伊藤一長さんへ…水崎野里子 114
長崎の空に…龍 秀美 116
長崎特集にあたって/島原/長崎外海(そとめ)/天草/八月、長崎にて…佐相憲一 117
中原澄子詩集『長崎を最後にせんば』を読む…池山吉彬 122
尊い仕事…柳生じゅん子 125
NHKラジオ朝一番(八月十日午前六時四十分放送)カルチャーアンドサイエンス≠聞いて…中原澄子 128
テレシンカ・ペレイラ女史の原爆詩・その2 水崎野里子訳 130
アメリカからの原爆の詩 デイヴィッド・クリーガー氏からの応答/ナガサキの鐘/被爆者は自然発生したものではない/犠牲者はどこへ行った?…水崎野里子訳 132
〈エッセイ・詩論〉
ポエトリーガーデン…浅山泰美 135
地名、詩、差別のことなど…倉田良成 137
Against Nuclear Weapons¥o版にあたって…佐藤典子 140
《石》について…石村柳三 144
『花影』から『桜鬼』へ…水崎野里子 149
〈特集3 新鋭新人特集 林木林/亜久津あゆむ/小坂顕太郎〉
小詩集『海の見える喫茶店』五篇…林 木林 151
小詩集『ラブコール』十篇…亜久津あゆむ 156
小詩集『野ざらし』十篇…小坂顕太郎 164
〈書評〉
「天網」へのまなざし…日原正彦 174
詩集『天網』に見る星野典比古の世界…五島節子 176
強靭な母性とエロスの追求による自己解放…大掛史子 179
詩へ昇華する〈性〉…中西弘貴 181
〈いのち〉と地志のうた…川島 完 184
自らの生を生きつづけて…杉谷昭人 188
世界に座標軸を描ける人…大山真善美 190
書評「水崎野里子詩論集」…小海永二 192
静かな目…大磯瑞己 194
温もりとぶれない心眼…大掛史子 198
樹間距離の美しさへ、生きる…三島久美子 200
詩集『探り箸』を読んで…朝倉宏哉 202
有馬敲『現代生活語詩考』の「芸術性」…水崎野里子 205
『大空襲・三一〇人詩集』刊行趣意書 208
真に「抵抗」し続けるものたちとは誰か 中村不二夫氏への公開書簡…鈴木比佐雄 213
第四回鳴海英吉研究会のご案内 218
『生活語詩二七六人集』出版記念・朗読会のご案内 219
執筆者者住所一覧 220
後記 222
美しい笑い顔/浜田知章
二十人ばかりの踊り子を相手に
微笑をたたえたあなたは
稀な美しい顔をした男だったと思う
どんなに人に悪く言われようと
くさされようと
あなたの強靭な考え方は
美しい笑い顔に象徴されていると思う
従ってあなたは徹底した反軍国主義だった
軍人、警官、官僚などと威張る人を
徹底的に嫌がった
あなたの生涯は反軍国主義に満ちていると思う
踊り子たちに囲まれて
美しい横顔をしたあなたは
日本の象徴そのものであった
永井荷風よ 万歳!
反軍国主義の美しい笑い顔の永井荷風よ
頑張ってほしい
さよなら
今号は特集が3ッ組まれていましたが、その第1が7月に東洋大学で行われた「浜田知章さんを偲ぶ会」全記録です。私は自治会の組長会議があって行けませんでしたけれど、50人を超える人が集まって盛会だったようです。
紹介した詩は、そのときに朗読されたもので、今年5月に88歳で亡くなる前に口述筆記をしたという、浜田さん絶筆です。〈反軍国主義〉を貫いた〈永井荷風〉を讃えながら、実は浜田さん自身への讃歌とも採れました。改めて浜田さんのご冥福をお祈りいたします。
なお、この詩が含まれている最後の詩集『海のスフィンクス』は拙HPでも紹介しています。ハイパーリンクを張っておきましたので、合わせて浜田知章詩をご鑑賞いただければと思います。
○詩誌『橡の木』19号 |
2008.9.15
東京都羽村市 500円 内山氏方・詩の教室「橡の木」の会発行 |
<目次>
多摩川幻幻…………内山登美子 4
青い空………………安藤 初美 6 天の岩戸開き………村尾イミ子 8
今はまだ空っぽの…宇津木愛子 10 魚(うお)の季節………内田 範子 12
風が…………………池田 君代 14 気配…………………木村 和子 16
東京 原宿…………高橋 裕子 18 鳩……………………岡 ななみ 20
鳩と鹿と人と………塩野とみ子 22 揺らぐ・歩く………狩野 貞子 24
(掲載は題の五十音順)
花束……………………………26〜27 課題エッセイ「音」…………28〜34
日本の詩祭二〇〇八−先達詩人の顕彰…35〜37
編集後記
青い空/安藤初美
空は青く どこまでも高く
風もなく
日ざしは明るく
私は操られるように外に出た
となりの玄関ポーチで
男の児が仰向けになって寝ころんでいる
声をかけるとニコッとして
すぐに目を閉じた
いつもはうつむいてしまうのだが
気持がいいのか
うっとりして顔を空に向けたままだ
青インクを吸い上げたような空は
一点の曇りもなく
澄みきっている
本当は私もこの空に吸い上げられて
世界中を見たい
争いの無い世界なら
尚更見たい
大きなスポイトで吸い切れなくて
一滴落とされてしまったら
地面に大の字になって
空を見上げていたい
それなのに
先を越されてしまったのだ
わずか二歳に
最終連がよく効いている作品だと思います。第2連では〈男の児〉が何歳か分かりませんでした。幼稚園児か小学校低学年か…。ところが〈わずか二歳〉だったのです。〈気持がいい〉と〈地面に大の字になって/空を見上げていたい〉という思いに駆られるのには、年齢は関係ありませんけど、それでも〈わずか二歳〉とは! この驚きが詩になっていると思います。題は平凡ですが、その平凡ゆえに成功した作品とも云えましょう。
○詩誌『石の詩』71号 |
2008.9.20 三重県伊勢市 渡辺正也氏方・石の詩会発行 1000円 |
<目次>
はじまり…濱條智里 1
ヌーをいっぱい…北川朱実 2 午後の図書館/ある返事/一本道/おねえちゃんもこわい…真岡太朗 3
河をくだる…東 俊郎 6 階段…濱條智里 7
棒…橋本和彦 8 ミニ豚だって大きくなる…薮本昌子 9
永遠のコドモ会 Z よあけ…高澤靜香 10
三度のめしより(二十五) 釣りそこねた魚だったり こぼれたバケツの水だったり…北川朱実 12
雛祭り…加藤眞妙 16 水の今昔…谷本州子 17
春の嵐…浜口 拓 18 アサリの縁…奥田守四郎 19
アウトサイダー…落合花子 20 高速道路…澤山すみへ 21
杖…坂本幸子 22 母…西出新三郎 23
記号譚 W…米倉雅久 24 椅子…渡辺正也 26
■石の詩会CORNER 27 題字・渡辺正也
母/西出新三郎
神さまは
あちらへもこちらへも出向かねばならないので
困っている人
悲しんでいる人
どの人の家へも行ってあげる
というわけにはいかなかった
神さまはそこで
母を創って
一家にひとりずつ配ってあるいた
一千の家に一千の灯がともり
ひとつの灯の下には
かならずひとりの母がいる
人びとは母をまんなかに
夕餉の卓をかこみ
きょう一日の
困ったことや
悲しかったことを
きいてもらう
雪が降ってきた
あとからあとから
舞いおりる雪の中を
一千の灯がぐんぐんと
空へのぼってゆく
そこに神さまがいるかどうかは
べつにして
母は眠ってしまった子どもたちを
ひとりずつ抱きあげては
ベッドに運んだ
キリスト降架の
マリアさまのように
〈神さまはそこで/母を創って/一家にひとりずつ配ってあるいた〉という第2連には驚かされましたが、すぐに納得しました。母親の存在理由をこのように述べた作品に初めて出会いました。素晴らしい視点です。第4連の〈きょう一日の/困ったことや/悲しかったことを/きいてもらう〉というフレーズでは、なぜ〈子どもたち〉が(大人もそうですが)母親に一日のことを話したくなるのか、その謎も分かったように思います。この詩を、子どもをないがしろにしている母親に読んでもらいたいですね。
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