きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.10.9 八方池 |
2008.11.9(日)
寒い一日で、この冬はじめてストーブを使いました。書斎の石油ストーブは30年も前に買ったものですが、いまだに現役で働いてくれています。初点火も問題ありませんでした。夏も冬も傍らに置いて、いつも愛情を込めた眼差しを送っているせいかな、と思います。でも、その割には埃がドッサリたまっていますから、片付けるのが面倒だから放ってあるのがミエミエですけどね(^^;
この冬も石油ストーブ1台で乗り切ります!
○南原充士氏詩集『花開くGENE』 |
2008.11.1 川崎市麻生区 洪水企画刊・草葉書房発売 1800円+税 |
<目次>
T
怪物園管理規則制定経緯 08 差し出される手 10
戸惑い 12 時の歩み 14
捨男 16 蜃気楼 18
喜怒哀楽 20 花言葉 22
花開くGENE 24 春の雨 26
わたしはわたしに向かってなにかを言った 28 I said something to myself 30
U
『トリップ』−試篇 32 念仏のごとく 38
うふんあっはん 40 あら らんらん 42
【連祷八変】 44
intermezzo『アシスとガラテアの悲恋』 48
V
他人の庭 54. 《史実の誕生》 58
眩暈 62
歴史の路地裏または理論への信仰 66 時間の自由 70
無知蒙昧の世過ぎ 72 電脳イルカの冒険 76
ジュエリーの話 80 ワイン 84
額縁 86 命の果て 88
宇宙の果て 92 痛みの果て 98
終末のイメージ 100. 祈りに代えて 102
あとがき 106
花開くGENE
ソメイヨシノから 八重桜、山桜へと
熱狂の春は 移っていった
いま その花びらも 吹き溜まり
あるいは 木々の枝に 止まっている
緑陰の 木漏れ日の かすかなほほ笑み
ほほ笑み返しながら 歩いていくと
幻の春が よみがえってくる
あそこに たむろしていた 群衆の喚声
宇宙の設計図は だれが書いたのか
だれにも 創造も想像もできないほどの 複雑系
幹から枝へ 枝から葉へ つぼみから花へ
見えないところで 確実に実現される計画
じっと観察してみても どこにも契機は 見つからない
つつじの植え込みの前で一組の遺伝子が 立ち往生する
3年ぶりの第6詩集です。ここではタイトルポエムを紹介してみました。鑑賞の参考になると思いますから、この詩集の構成と意図について「あとがき」に書かれていた内容も紹介しておきます。
<この詩集は、三部構成とした。Tは、ソネット形式を基調とした抒情的な作品を収めた。Uは、祈祷、呪文、おまじない、言葉遊びといった、いわば言葉が祈りに変化してゆくプロセスをさぐってみた作品を収めた。Vは、比較的哲学的な視点を基に、自分なりの叙事詩をまとめてみたものである。こうした三つの形式は、形式そのもののためにあるのではなく、表現したい感性(ポエジー)によってさぐられ、生み出されるものだと思う。最近のわたしは、この三つの形式によって、自分のポエジーがたしかに表現できると感じている。>
従って「花開くGENE」は〈ソネット形式を基調とした抒情的な作品〉と受け止めてよさそうです。〈GENE〉はジーン≠ニ読み、〈遺伝子〉と辞書に出ていました。〈見えないところで 確実に実現される計画〉により、〈一組の遺伝子が 立ち往生する〉というイメージは、〈花開く〉という形容と矛盾するように思えますが、この矛盾がそのまま著者の〈抒情〉と感じました。
なお本詩集中の「時間の自由」はすでに拙HPで紹介していますのでハイパーリンクを張っておきました。こちらも面白い作品ですから、合わせて南原充士詩の世界をお愉しみください。
○個人詩誌『玉鬘』48号 |
2008.10.20 愛知県知多郡東浦町 横尾湖衣氏発行 非売品 |
<目次>
◆詩 「梅花藻」「下野草」「岩桔梗」「駒草」
◆御礼*御寄贈誌・図書一覧
◆書作品「黒百合の歌」
◆あとがき
岩桔梗
高山帯の砂礫地や岩陰に
風に身を任せ咲いている
小さな塊となって
花は青紫色に澄んでいる
高山植物は種が芽生えるのに
二年以上かかるものがある
芽生えても花を咲かせるまで
早くても五年はかかると聞く
中には二十年近くもの歳月が
かかっているものもあるという
自然の厳しさに耐えて耐えて
こんなにもやさしい姿で生きている
キキョウ科岩桔梗は
草丈のわりに釣鐘型の花は大きい
少し上向きに開いている
通り過ぎていく登山者に
身の丈いっぱい
元気いっぱいに咲いて
あいさつをしてくれているようだ
今号は高山植物の特集で、それぞれの詩にはそれぞれの花の写真が添えられていました。紹介した詩は、詩もさることながら写真にも眼を奪われてしまいました。〈草丈のわりに釣鐘型の花は大き〉く、〈少し上向きに開いている〉〈青紫色に澄ん〉だ花に見ほれてしまいます。作品はそれを〈身の丈いっぱい/元気いっぱいに咲いて/あいさつをしてくれているようだ〉と表現し、見事だと思いました。
○個人詩誌『玉鬘』49号 |
2008.11.23 愛知県知多郡東浦町 横尾湖衣氏発行 非売品 |
<目次>
◆詩 「屋久島」「屋久島小弟切草」「屋久島捩摺」「屋久杉の森」「縄文杉」「祈りのかたら」
◆御礼*御寄贈誌・図書一覧
◆あとがき
屋久島小弟切草
おとぎりそう科
ヤクシマコオトギリは
屋久島の固有種
ナガサキオトギリ矮小品だという
やや地をはうようにして伸び
長楕円形の葉をつけている
小さな黄色い花は
妖精のような可愛らしさで咲いている
花崗岩の塊の岩山
台風、季節風、激しい雨……
屋久島の厳しい環境のなか
小さな姿に進化した植物のひとつ
生き残りたい生き残りたい
と懸命に思い生き続けてきた姿
こんなに小さな植物にも
大きな力が満ち満ちている
日本の進化論の島
どのくらいの時を
かけてきたのだろう
伸び伸びと五枚の花びらが
大の字に力強く開いている
こちらは屋久島特集です。屋久島といえば屋久杉や縄文杉で有名で、それらについても書かれていますが、それだけではなく、紹介した作品のように小さな花々にも眼をむける姿勢に好感を持ちました。「屋久島小弟切草」の写真も添えられていて、まさに〈小さな黄色い花は/妖精のような可愛らしさ〉でした。それを〈生き残りたい生き残りたい/と懸命に思い生き続けてきた姿〉と捉えたところに作者の力量を感じた作品です。
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