きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2009.6.11 掛川・加茂花菖蒲園 |
2009.7.17(金)
今日も充実した一日でした。朝のうちは拙宅の夏の風物詩、ヨシズ張りを行いました。拙宅にはエアコンがありません。代わりに平屋の家屋南面に幅12mほど×奥行き1.8mほど×高さ2.4mほどの屋根の傾斜に合わせた専用のテラスを設置し、そこにヨシズを張って日陰を作ります。ヨシズは3.6m×1.8mのものを3本と1.8m×1.8mのものが1本。屋根から流れるようにヨシズが横一列に並んで、景観としても好ましいと自我自賛しています。風さえ出てくれれば、室内天井の大型扇風機と合わせて、それで充分なんです。これをやると、ああ、夏が来たんだなと思います。
夕方からは竹橋の如水会館に行って来ました。日本ペンクラブ常務理事で広報委員長、例会などの司会でも御馴染みの高橋千劔破(ちはや)さんの出版記念会です。「国際ペン東京大会2010」の実行委員会でもお世話になっていますし、日本詩人クラブでご講演をお願いしたこともありますから、これは絶対に行きたいと思っていました。もちろん、そんな義理絡みだけでなく、温和でバランスのとれたお人柄に惚れ込んでいるためでもあります。
この度、河出書房新社より『名山の民族史』を上梓なさり、これで『名山の日本史』、『名山の文化史』と合わせて名山シリーズ三部作が完成しました。登場する名山は3巻合わせて百山、10年の歳月をかけてお書きになったそうです。このうち『名山の日本史』は抄録を日本ペンクラブ電子文藝館に載せていますので、 http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/index.html をご覧になってみてください。
会場には300人ほどが集っていました。スピーチあり歌ありの楽しい会でした。千劔破さんはいつも司会をしていますから、ご本人のスピーチもついつい司会調。癖は抜けないねえと会場は大爆笑でした。
2次会は電子文藝館委員を中心に近くのファミレスへ。夏の夜の竹橋・神保町を満喫しました。
○高橋千劔破氏著『名山の民族史』 |
2009.6.30 東京都渋谷区 河出書房新社刊 2800円+税 |
<目次>
第一章 北海道・東北の名山
大雪山――アイヌ伝説の山地 10. 羊蹄山――道南の名峰蝦夷富士 20
八幡平――田村麻呂伝説の高原 31. 吾妻山――伝説と修験の山塊 42
燧ヶ岳――尾瀬に聳える伝説の山 52
第二章 関東の名山
八溝山――黄金神と修験の山 64. 日光白根山――補陀落夏峰の山々 75
草津白根山――火山信仰と温泉 86. 三峰山――狼伝説と消えた名刹 97
雲取山――水源の山と将門伝説 108 甲武信ヶ岳――縄文の道と三大河川 119
御岳山――武蔵武士と御岳詣で 130 丹沢山――谷多き尊仏様の山 140
第三章 甲信越の名山
四阿山――上信国境の神話の山 152 身延山――老杉繁る日蓮の旧跡 163
白馬岳――大雪渓と天空の温泉 173 恵那山――胞衣伝説と神の御坂 183
黒姫山――男姫伝説と野尻湖 194 米山――薬師で知られた北越の山 204
第四章 中部・東海の名山
仙丈ヶ岳――絵島の思いと孝行猿 216 赤石岳――山麓の南朝秘史 227
位山――謎の巨石群と両面宿儺 238 鳳来寺山――奥三河の仏法僧の山 248
第五章 近畿以西の名山
比良山――比良八荒と回峰行場 260 生駒山――古代史伝える国境の山 271
三輪山――日本最古の神の山 282 大台ヶ原山――日本最多雨の魔境 293
書写山――圓教寺の歴史と伝説 304 桜島山――海上に屹立する活火山 314
開聞岳――九州最南端の神話の山 325
その他の名山――三部作百山を書き終えて 335
高橋百名山一覧 346
沢登りの思い出と水無川の伝説
初夏のころの沢登りは楽しい。渓谷に沿って登り、いくつもの滝や岩を登る快感は、経験した者でないとわからない。新緑の木洩れ陽(び)、水飛沫(しぶき)、瀬音、野鳥の囀(さえず)り。丹沢には沢登りを楽しめる多くの谷があり、東京近辺から日帰りできることもあって、沢登りファンは少なくない。塔ノ岳に突き上げる水無川本谷とその支流である源次郎沢や戸沢・新芽ノ沢・セドの沢など、また四十八瀬川右俣の勘七ノ沢・ミズヒノ沢・葛葉川本谷などなど。
だが、これらの沢には大棚や棚と呼ばれる滝をつくる岩場があり、ザイルワークを必要とする難所も少なくない。ハーケンやカラビナ、ハンマーなど岩登りの三ツ道具も、場所によっては必要だ。なめてかかると事故を起こすことになる。じつは筆者も、遭難しかかったことがある。
昭和四十二年(一九六七)の初夏のことである。社会人になって二年目、出版社に勤務して雑誌編集に携わったため、本格的な登山からは遠ざかっていた。筆者が所属する浦和西岳友会が、新人のザイルワークの訓練で丹沢の勘七ノ沢に行くことになり、同行した。
同沢のF5は、一二メートルの岩壁で、訓練にはもってこい。とはいえ上部はホールドもスタンスも細かく、水無川本谷の大棚とともに結構滑落事故の多い岩場だ。
筆者は新人たちが登ったり、懸垂下降で下りるのを、近くの岩に腰かけて見ながら、注意を与えていた。そのうち、「見本を示すからよく見てろよ」などといって、スルスルと岩を登って見せた。登り切って一服、くわえタバコのまま、固定したザイルを使って懸垂下降で岩場を下りようとした。
そのときである。ザイルをちゃんと身体に巻きつけないうちに、バランスを崩して落下したのである。見ている連中は一瞬胆(きも)を潰したという。だが幸いなことに両手でザイルを握っていた。ザイルにしがみついたまま一〇メートルほどズルズルと落下したが、かろうじて止まり、崖下の岩に打ちつけられるのを免れたのである。
両掌の皮は、摩擦熱で焼けはがれ、焼けた鉄棒を掴んだようになってしまった。それよりも、後輩たちにいいところを見せようとして、かえって無様なところを見せることになったことで、頭がいっぱいであった。
「油断大敵、いまのは悪い見本だ。てのひら、痛くなんかねえよ」
と強がったものの、このあとしばらく消えなかった掌の痛みと、忸怩たる思いは、いまも忘れない。このとき以来、筆者は岩登りをやめた。
現在も筆者はさいたま市に住んいるが、郊外から遠望する丹沢山塊に、ほろにがい思いを甦らせて掌を見たりする。
さて、丹沢水系のおかげで山麓の秦野市などは湧水(ゆうすい)も多く、名水の里となっている。弘法清水として有名な臼(うす)井戸や、ヤビツ峠の護摩屋敷の水、葛葉川上流の泉、水無川上流の竜神の泉など。もっとも湧水は扇状地の基部に多く、中央部には見られず、先端部にまた多くなる。このため中央部には江戸時代から水道(用水路)が引かれ、利用されていた。
名水百選にも選ばれた臼井戸には、こんな伝説がある。
むかし、一人の旅の僧が秦野の農家で水を求めた。だがこのあたりには井戸がなく、農家の妻女は遠くまで足を運んで水を汲んできた。僧は、その親切に報いようと、杖(つえ)で地面を突いた。すると、こんこんと清水が湧き出してきた。僧は弘法大師であった。水は弘法水と呼ばれ、その井戸は臼の形に似ていたので臼井戸と呼ばれた。
全国に数多く分布する弘法清水伝説と同型の話である。臼井戸のすぐ東方に弘法山と呼ばれる大山の支峰があり、周辺には弘法清水伝説が多い。
水の恵みを与えてくれるはずの弘法大師が、水を奪った話がある。水無川伝説だ。
丹沢山塊の主峰というべき塔ノ岳を源流とする本谷は、源次郎沢や行者岳(一二〇九メートル)に発するセドノ沢、烏尾(からすお)山(一一三六メートル)を源流とするヒゴノ沢などを集めて水無沢となり、秦野の扇状地に流れ出て水無川と名を変え、市城のほぼ中央を南東へと流れる。一帯が旧波多野(はだの)庄で川の北側が北波多野、南側が南波多野だ。水無川はその名のごとく、水の無いことが多い。『新編相模国風土記稿』は、
「平常は一滴の水無しと雖(いえども)、霖雨(りんう)するに至ては山沢の水逆流して水溢(すいいつ)の患尤(もつとも)甚(はなはだ)し」
と記す。長雨のときには急に出水して氾濫を繰り返してきたというのだ。
その水無川はむかし、大川と呼ばれ、船で渡るほどの水の豊かな川であったという。あるとき、旅の僧が渡ろうとしたが、渡し賃を持っていなかったため、船頭は船を出さなかった。僧だけでなく、貧しい人は川を渡ることができなかった。そこで僧は、川の水を無くして誰もが川を渡れるようにした。その僧は弘法大師であった。また、孝行な息子が病気の親に会うため川を渡ろうとして溺れ死んだので、村人はその死を憐れんだ。この話を聞いた弘法大師が水を引かせた、ともいう。
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上述の「祝う会」で著者サイン入りで頂戴しました。私は富士山を除いて本格的な登山をしたことはありませんが、ハンググライダーやパラグライダーで飛んだ「四阿山」・「白馬岳」、スキーで遊んだ「黒姫山」などが出てきて、とても身近に感じました。
内容の見本として「第二章 関東の名山」より、拙宅の近在である秦野市の「丹沢山――谷多き尊仏様の山」の一部を紹介させていただきました。ご自身が実際に体験した山行をもとに、その山にまつわる神話や伝説を紹介しているのがこの本の特徴だと思います。そのことで、読者にはより山への親しみが増してくるでしょう。山ばかりではなく、その山が源流になっている川についても紹介していて、山を中心としたその地域の文化・民俗が判るというのも大きな特徴です。〈水無川〉は私にも親しい川ですが、その謂れは知りませんでした。実際に川幅の割には流れている水が少なく、場所によっては途切れているように見える川です。〈弘法山〉も近くにあり、伝説との関連が納得できます。
都市の生活に慣れてしまった私たちは、山の存在を忘れがちですが、多くが太古から続く山の民であると教えてくれる本著は、現代の生活を省みる上でもお薦めです。どうぞお近くの書店でお求めになって、あなたの近在の山々を見直してみてください。
○詩誌『衣』17号 |
2009.7.20
栃木県下都賀郡壬生町 700円 森田海径子氏方「衣」の会・山本十四尾氏発行 |
<目次>
苦い実(H島より)/山本 萠 2
卵虫/小坂顕太郎 3 四つの十四行詩−短歌のモチーフによる/岡山晴彦(はるよし) 5
御仕立人(おんしたてにん)お京/大原勝人 7 朝の食卓/大磯瑞己 9
ツイングラス/うおずみ千尋 10 窓の外/山田篤朗 11
青木ヶ原樹海/江口智代 12 モクレン(木蓮)/酒木裕次郎 13
白い像/青柳俊哉 15 夏の散歩/颯木(さつき)あやこ 16
夏まみれ/千本 勲 17 原点/高畠 恵 18
渓流釣りの女/貝塚津音魚(つねお) 19 ひとつ へ/佐々木春美 20
候鳥/相場栄子 21 近隣(五題)/喜多美子 22
桜咲くころ/山下貴実代 23 水に寄せて/尾身詩湖 24
新体の書・三一二句(その三)/須永敏也 25 深い眠り/須永敏也 26
夢三話/酒井邦子 27 天の花 地の花/石川早苗 28
ドミソの法則/鶴田加奈実 29 草取り/小森利子 30
夜に馴染んで(訳詞)/大山真善美 31 ゴミの日/豊福みどり 32
引き手/森田海径子(かつこ) 33 独鈷考/山本十四尾 34
同人近況 35 同人詩集紹介 40 後記 41 住所録 42
表紙「衣」書 川又南岳
○詩誌『鳥』16号 |
2009.7.20
さいたま市大宮区 力丸瑞穂氏方発行所 500円 |
<目次>
詩
何処かで・心療内科…八隅早苗 2 かくしたいもの・問題…力丸瑞穂 4
方角・人形劇・以心伝心…倉科絢子 6 富士を観る・重要文化財を観て…田嶋純子 8
神田川 15…金井節子 10 伴侶・かいつぶりは…菊田 守 12
評論 この一篇(8)堀内幸枝…菊田 守 14
エッセイ
私の好きな詩(2)…倉科絢子 16 私の心のふるさと・神田川…金井節子 18
小鳥の小径…20
□金井節子 □菊田 守 □倉科絢子 □田嶋純子 □力丸瑞穂 □八隅早苗
編集後記…23
表紙 西村道子