きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.11.3 足柄峠より箱根・大涌谷を臨んで




2009.11.21(土)


 午後から実家に行ってきました。昨日、無人になった実家を売却しましたが、今月末までに必要な家財を持ち帰ってくれという買主の要望に応えて、さっそく本を運び出しました。一度に全ては無理なので、今日はダンボール箱に入れっ放しになっていたものを5箱ほど。私のクルマはステーションワゴン型ですから、普通の乗用車よりは荷物が多く詰めますけど、1回ではそんなものです。次回は軽トラックでも借りてきて、一度に運び出したいと思っています。

 たかだか5ツのダンボール箱ですが、拙宅の6畳という狭い倉庫に置いてみると、意外と圧迫感がありました。いずれこの10倍ぐらいになるのかと思うと、途方に暮れます。皆さまからいただいた本は別として、しょうもない物も多そうですので、かなり捨てるようです。どうでもいいものまで溜め込んでおく悪い癖、これを機に治らないかなあ、とも思っています。




ささきひろし氏詩集『海の血族』
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2009.11.16 東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊
2000円+税

<目次>
黄金
(きん)の灯り・6   春告魚(ニシン)・10    シェアリング・14
蝋燭
(ろうそく)岩・18    船火事・22       ちびイカ物語・26
義経
(よしつね)洞窟・30.  万年筆・34       寒波・38
北限のさくらんぼ・42  終着駅・46       父の遺言・50
ネクタイ・54      朔北
(さくほく)の旅・58   匂い袋・62
天秤だこ・66      泣きっ面
(つら)山に海霧(ガス)・70
包丁・74        海の血族・78      先住民アイヌ・82
無縁仏・86       無言のメッセージ・90  けあらし・94
母なる海・96      祝婚歌・100
.      暑寒別岳(しょかんべつだけ)のマシケゲンゲ・104
永遠を歩く・108
あとがき・112
.     写真/佐々木勇




 
海の血族

日本地図を指でなぞりながら北上すると
津軽海峡に四人の男の影が浮び上がる

明治の初めの頃
津軽海峡を渡る北前船に
腰へ脇差と矢立(筆入れ)をさす白装束にマゲ姿の男がいた
新潟県岩船から北の地に移住する我が先祖・吉次郎
(きちじろう)
農業も漁業も経験しない男が 村人に読み書きを教え
ニシン場の帳場や開拓庁支所
の臨時役人となり
筆一本を生業
(なりわい)としたこの男 風流人でもあったという

戦時下の波高い津軽海峡を航行する軍艦
寄港した函館港で 看護師の母と巡り会った海軍の父・清治
(きよじ)
終戦間近 軍艦が轟沈しても泳ぎ切り生き延びた海の男
戦後は幻の魚ニシンを追い求め
函館から船団長として日本海沿岸を北上
ソ連 後にカナダ・アラスカから生ニシンを輸入し
増毛・留萌地方の数の子加工産業を守った男の一人
**

津軽海峡で操業するイカ釣り漁船の漁師の兄
半世紀にわたり九州から稚内の沖まで
烏賊の群れを追いかけた清寶丸
(せいほうまる)の兄・繁(しげる)
中型船(二九トン)で何度も漁獲高日本一になった
「漁師は毎年一万人減り、増えるのは千人」といわれる中で
不漁が続き 燃料は六年前の三倍に高騰し
補償の無い漁業は廃業するしかない と大いに怒る

波高い津軽海峡を航行する青函連絡船
船酔いに悩まされ何度も嘔吐しながら
二等船室の畳にうずくまっていた受験生の私
――船酔いする自分は漁師にはなれない
都会でネクタイをしめ 人また人の荒波にもまれ
早三十数年がすぎる
いつの間にか先祖からの筆の遺伝子が甦っていた

海底トンネルが開通し
北の大地と内地は繋がったが
一族の男たちの心に刻印されたものは
光と影の織りなす荒れる海峡であった
私の心の中では いまも波高く揺れに揺れ
やむことのない船酔いが続いている

         * 当時、開拓庁支所が天塩国の中心であった増毛町にあった
        ** 農林水産大臣賞受賞(昭和五十九年)

 5年ぶりの第3詩集です。ここではタイトルポエムを紹介してみましたが、第1連の〈日本地図を指でなぞりながら北上する〉というフレーズから印象的な作品です。〈我が先祖・吉次郎〉から始まる〈四人の男〉の肖像も、日本の一時代を象徴したものになっていると云えましょう。〈船酔いする自分は漁師にはなれない〉と、〈私〉を低く位置づけたところにも共感を持ちます。〈海の血族〉を描くことで〈私〉のルーツを確かなものにした佳品だと思いました。
 なお、本詩集中の
「蝋燭岩」はすでに拙HPで紹介しています。ハイパーリンクを張っておきましたので、合わせてささきひろし詩の世界をご鑑賞ください。




森田正巳氏詩集『月末の勇者達へ』
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2009.4.15 東京都新宿区 文芸社刊 1000円+税

<目次>
まえがき 3
夢追い人達へ
奇跡の星の奇跡の国で 8            ささやかな夢でもいいじゃないか 9
今夜 ひざを抱えて眠る夢追い人達へ 10     きっとできるさ 11
このままではきっと終わらないさ 12       もう少し あとひと踏ん張りだ 13
奇跡は起こすもの 14              夢見る君に捧げる詩 16
成すことは全て自分の為 17           進歩 18
人生は素晴らしい
時には 素直になって 22
名もなき勇者 23                でもね 私はこう思う(肩の力を少し抜こう) 24
LIFE IS WONDERFUL 25      あらゆる分野で何かを目指す人々は知っている(行動が生む意味) 26
甲子園の球児たちに思う 28           情熱(故郷は遠きにありて) 29
吟遊詩人の詩
吟遊詩人の詩I 32               吟遊詩人の詩U 33
その時こそ 34                 強くなりたいと願いながら 35
吟遊詩人の詩V 36
繋がり
原風景…はるか昔 田舎の町で 38
世界の誰かのおかげさまで 40          今日もおかげさまで 41
祖母の口癖 42                 もう一度生まれたところからやり直せるとしたら 43
アルバム(時の流れが君を変えても) 44      愛妻弁当  46
思春期の娘への祈り そして願い 未来への手紙
天使のような寝顔が僕を今日まで連れてきた 48  思春期の娘への祈り そして願い(未来への手紙) 50
思春期の娘への祈りV 52            思春期の娘への祈り そして願いW 54
少しだけ寂しくなった休日 56          成長の時 57
君のいる風景 58
親愛なる仲間達へ
友情 60                    一期一会 61
飼いならされたライオン 62           サンクチュアリにあこがれて 64
原点 66                    心 清らかに 68
幸福
数に限りがあるわけじゃないさ 70        時には席を譲ってあげよう 71
耳を澄ませば 72                人生ゲーム 73
いつでもお金の主人でありたいと思う 74     幸せは心が決める 76
星の王子さまが教えてくれた 78         あなたがどう思うかで 80
注目も喝采も 81
自分を愛する
新鮮な心を汚さないように 84          誓い 85
自分を愛すると言うこと 86           心をひらいてT 88
心をひらいてU 90               今を生きる為の活動 だから生活なんだ 92
あなたの代わりはいないから 94
夢 そして 希望
望むことからはじめよう(望まなければ何も起きない) 96
変化の時はいつも今 97             目標はまるで初恋の人のように 98
理解しないでください ただ感じるだけ 99    人生の攻略本は売っていない 100
あなたの望む通りに 102
.            学校では教えてくれない 103
今 ここに焦点を合わせて 104
.         勇気を出して 105
あなたという物語 106
.             宇宙の摂理が見守る中でT 108
宇宙の摂理が見守る中でU 110
.         父から託された勇気を胸に…若者はきっとたどり着く 112
大志に生きる 114
.               夢見ることを選択しよう 116
夢が見つからないのなら 118
.          SUN FLOWER 119
今日の分だけ進歩しよう 120
.          流れは引き寄せるものさ 122
夢見る頃を過ぎても
年輪 124
.                   永遠のチャレンジャー 125
夢見る頃を過ぎても 126
.            出来ない理由を捨てて行かないか 127
老兵は死なずただ戦うのみ 128
.         自生 130
月末の勇者達へ
たった一度きりの今日を無駄にしないために 134
. 今日というイベントに参加しよう 136
誰一人 他人の評価の為に生まれてきたんじゃない 137
心の底に灯をつけて 138
.            月末の 朝の誓い 140
月末の勇者達へ 141
自分が自分らしくあることの誇りを胸に
世の為人の為が いつの日にか自分の為 144
.   水道水を飲む(ミネラルウォーターはちょっと贅沢) 145
鎮魂詩(レクイエム) 146            自分が自分らしくあることの誇りを胸に 148
統率 150
.                   難解な書籍よりも 151
登竜門 152
.                  洗濯機の中で 153
心を熱くしていよう 154
.            主人公 155
ノブレスオブリージェ 156
あとがき 158
.                 本文イラスト/森田恵子




 
月末の勇者達へ

今月の仕事に一段落を付けた あなたも
シンデレラの鐘の昔を聞くまで
決してあきらめないあなたも
この広い 同じ夜空の下 共に戦う 月末の勇者

誰かを守る為の戦いなのか
ただ 自分が 自分らしくあるための戦いなのか
その答えを 密かに そっと胸に秘めたまま

誰一人 行く先の知れぬ
この社会の仕組みと 激流のごとき変化の中で
踏みとどまり やがて
逆流のうねりを起こす名もなき勇者達よ
最初の 一波を あなたから 起こし始めよう

まるで違う分野で 懸命に活躍する一人一人が
誇りという名の勲章を胸に掲げ
この同じ夜空の下 それぞれの地域から
新しい発見と 素晴らしいニュースが 連日飛び交う
そんな未来を 変化を 起こしてみせる準備を始めよう

また来る 新しい一月が
あなた自身の 人生の記録を塗り替える
そんな 濃密な日々でありますように
関東の夜空の下から 祈りを込めて

 第1詩集のようです。ご出版おめでとうございます。ここではタイトルポエムを紹介してみました。〈今月の仕事に一段落を付けた〉〈月末の勇者達へ〉の応援歌です。私は現職を離れて3年を過ぎていますが、月末ごとの成果に追われた日々を思い出しています。それは、いま思い返してみると〈自分が 自分らしくあるための戦い〉だったのかもしれません。そんな〈名もなき勇者達〉を暖かく見守る視線に共感を覚えました。今後のご活躍を祈念しています。




詩誌『兆』144号
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2009.11.1 高知県高知市
林嗣夫氏方・兆同人発行 非売品

<目次>
道照上人(落穂伝・11)…石川逸子 1       詩の庭……………………石川逸子 14
箱の中……………………増田耕三 16       献歌………………………小松弘愛 18
月光………………………大ア千明 20       方舟(ほか)………………山本泰生 23
蟻の道(ほか)……………林 嗣夫 26
加藤周一、そして詩 −後記にかえて、というには長すぎるが…………………林 嗣夫 29
<表紙題字>     小野美和




 
詩の庭/石川逸子

さみしくなったら
ちょっと寄ってみませんか
詩の庭へ

はしっこに置いてある
古びた木の椅子に腰かけ
束の間 うたた寝するのもいいし
小さな池で水浴びする
スズメたちのさわぎを
ながめるのもいいでしょう

この庭をだれがしつらえたかって
はるかな昔から
不器用でさみしがりやの詩人たちが
花を植えたり
夢と書いた凧をちょこんと飛ばしたり
魂だけ牢獄から飛んできて 作ったのでしょう

ここへ寄ったら あなたも詩人
厚ぼったい仮面はそのへんに打っちゃって
風とかけっこしませんか
いいかげん疲れたら
蜂蜜入り生姜湯などいかがです

そのとき ぽっと浮かんでくる詩は
古人のものであって
あなたのもの
あなたのものであって
詩の庭のもの

さみしくなったら
ちょっと寄ってみませんか

爆弾と地雷だけはない
世界のそこここにひっそり 隠れている
独裁者だって どうしてもこわせない
詩の庭へ

 〈古びた木の椅子〉があり、〈スズメたちのさわぎを/ながめる〉〈詩の庭〉。それは〈古人のものであって/あなたのもの/あなたのものであって/詩の庭のもの〉。ここには詩の本質があるように思います。表現された作品は個人のものだけではないと言っています。言外に、理解不能な独善的なものは詩ではない、と言っているように思うのは読み取り過ぎでしょうか。権力に対峙し、〈独裁者だって どうしてもこわせない/詩の庭〉こそが詩人の目指すものだと受け止めました。






   
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