きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.11.18 神奈川県松田町・松田山山頂付近




2009.12.1(火)


 12月の第1日目は「映画の日」です。今日だけは1000円。だからというわけではありませんけど、話題の「2012」を観てきました。日本人が手がけたCGが評判だそうです。たしかにCGはよく出来ていましたが、内容そのものはB級でした。どこかで観たことがあるような地球滅亡のストーリー。どこかで観たことがあるような破壊シーン。マンハッタンがめくれ上がるというCGだけが目新しかっただけですね。思った通りと言えばそれまでですけど、まあ、1000円で楽しませてもらったと思えば安いもの。そういうつもりで観れば、それなりに楽しめる映画です。




日英対訳アンソロジー『言葉の花火』W
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2009.12.10 関西詩人協会編・大阪市北区 竹林館発行 2500円+税

<目次>
はじめに 杉山平一 1
落葉の日々 青木はるみ 10           未来がそこに 飛鳥 彰 12
ハクセキレイとともに 後山光行 14       切断されたハゼの洞察 猪谷美知子 16
二人で 岩井 洋 18              田舎の春 後 恵子 20
忘却曲線 遠藤カズエ 22            リサイクル 岡本真穂 24
においの時間 岡本光明 26           サクランボと大男 尾崎まこと 28
シチダンカの咲くころ 蔭山辰子 30       聖五月素描 梶谷忠大 32
渡り鳥−曾山浩吉君(のち浜田と改姓)に−門林岩雄 34
二羽の黄鶲
(きびたき)と少女 香山雅代 36.     渚にて 河井 洋 38
なにかの微熱倦怠感 川中實人 40        「草の根」(一つの想い) 神田好能 42
美術館の化粧室 神田さよ 44          開聞岳
(かいもんだけ) 岸本嘉名男 46
ほほほ鳥 北原千代 48             PIAZZA(広場) 木下幸三 50
道 清沢桂太郎 52               消えかけた風影 ごしまたま 54
夏至は誕生日 近藤摩耶 56           自他相愛の精神 近藤八重子 58
名前 左子真由美 60              カーニバルの夜 佐古祐二 62
花陰 佐藤勝太 64               わたしが失ったのは 島田陽子 66
風と坂の町 清水一郎 68            春風は 下前幸一 70
はんなり 花あかり 白川 淑 72        祝婚歌 瀬野とし 74
黒猫 武西良和 76               生成り 竹野政哉 78
手と瞳と 田島廣子 80             ドビュッシー「海」を聴いて 田中信爾 82
ミサイル 津坂治男 84             小商いの店先で 釣部与志 86
じゃがいも 寺沢京子 88            鎮魂 寺西宏之 90
恋唄 ときめき屋正平 92            Tony先生 外村文象 94
潮のように 冨岡みち 96            いちじくの居る夕景 永井ますみ 98
手を使う楽しみ 名古きよえ 100
.        どうして 名古屋哲夫 102
冬の動物園 苗村和正 104
.           幸福 橋爪さち子 106
東尋坊を烏賊が飛ぶ 畑中暁来雄 108
.      みずの夏 原 圭治 110
浄化 福岡公子 112
.              書記 藤井雅人 114
君にはハーモニーが聞こえている 藤谷恵一郎
.116 水脈皇子(ウォーターヴェインプリンス) 船曳秀隆 118
とじた唇 牧田久未 120
.            友の話 ますおかやよい 122
冥王星 松本一哉 124
.             鏡台 水野ひかる 126
だんごとパン 三方 克 128
.          白雪挽歌 村田辰夫 130
タンスの底から 森 ちふく 132
.        決定的瞬間 薬師川虹一 134
赤い靴 山本美代子 136
.            家の声 横田英子 138
日本国憲法小哥 吉田國厚 140
.         胃袋 和田杳子 142
おわりに 村田辰夫 144




 
渚にて/河井 洋

あなたはもう夏の人だ
サンダルは潮に濡れ脱ぎ捨てられた
子等は拙い文明の壮大な防衛に勤しんでいる

かつて
これほど絶望的な戦いにのぞんだ市民たちが
他にあったろうか

第一の土塁はとっぱされた
第二の土塁は流木によって補強されたが
そのかいもなく陥落した

ああ
あなたともとうとう参戦するのですね
私達のびしょ濡れの戦線

そして私達はいつか家族であることすら忘れ
世界連邦を組織した
ついえさろうとしている私達の文明を前にして


The Sand Front  Hiroshi KAWAI

You are already in summer,
Your sandals, wet with the tide, discarded ――
Children busily guarding this poor civilization in grand style.

Was there ever
A people who fought a battle
As desperate as this?

The first earthwork smashed.
The second reinforced in vain with driftwood,
Only to be routed in one fell sweep.

Ah,
I see that you, too, are finally joining the terrible fight ――
Our drenched water front.

Then, without noticing it, we even forgot we were a family,
And organized a global federation,
The immanent collapse of our civilization before our very eyes.

 関西詩人協会編の日英対訳としては3冊目、日仏対訳を含めると4冊目となる対訳アンソロジーです。紹介した作品は、どこにでも見られる夏の日の〈家族〉の肖像ですが、〈かつて/これほど絶望的な戦いにのぞんだ市民たちが/他にあったろうか〉というフレーズにあるように、視点が小市民的ではありません。〈拙い文明の壮大な防衛に勤し〉み、〈世界連邦を組織し〉ようとさえ考える姿勢に共鳴しました。
 なお、本アンソロジー中の島田陽子氏
「わたしが失ったのは」はすでに拙HPで紹介しています。ハイパーリンクを張っておきましたので、合わせてご鑑賞ください。




詩とエッセイ『裳』107号
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2009.11.30 群馬県前橋市
曽根ヨシ氏編集・裳の会発行 500円

 目次
<詩>
破線 2     志村喜代子          駅の名 4    神保 武子
溢れる 6    須田 芳枝          神の園 8    金  善慶
風 10      鶴田 初江          白鳥のゆくえ 12 真下 宏子
受難 14     宮前利保子          若者 16     宇佐美俊子
けい子さん 18  黒河 節子          虫の音 20    篠木登志枝
相似の声 22   佐藤 恵子
<小特集>
曽根ヨシ詩集『花ふる夕暮』への来信 24
 新川和江、新延拳、石川逸子、大橋政人、藤富保男、津坂治男、谷口謙、大石規子、柳生じゅん子、吉井淑、本郷武夫、鈴木豊志夫、佐藤憲、橋本征子(敬称略)
『花ふる夕暮』に寄せて−不在の光のなかで− 27 房内はるみ
<エッセイ>
旅の日記から 29 黒河 節子          手にふれた一冊の本 秋花七種 佐藤春夫著 31 宮前利保子
後記       曽根 ヨシ
表紙「菊」    中林 三恵
詩 カワセミ   中林 三恵




 
破線/志村喜代子

血止めの紐を解くように
脈うち出す日々
(にちにち)の圧よ
病み 滅ぶがままの終の後
(のち)にも
りくぞくと日の枡をつらね
ちりばめる剥落

十月を
壁に吊って拝
(おろが)み祈るその月半ば
切って落とされた弐万七千余日よ

根こそぎ倒れ伏す森の風
田野をのみほす泥の雨
嵐の界に ひそかにも
ヒトの異変のなんとつつましいことか

月ごよみにミシン目を入れ
引き剥がしやすくするたくらみは
()の岸への知恵か
凍てつく十月の破線よ

―  ―  ―  ―  ―  ―  ―  ―  ―

どこかで鳴っている
生きもののぬけ殻の ひび割れた背や胸から
洩れくる濁音
十月の凍土を 張りめぐらす

―  ―  ―  ―  ―  ―  ―  ―  ―

月ごよみのミシン目は剥がない
つるりと垂らしておけ
死者は 死んだ

 〈月ごよみのミシン目〉を模した表現がおもしろいと思いました。それを〈剥が〉さずに〈つるりと垂らしておけ〉というのは、〈彼の岸への知恵〉への抵抗でしょうか。最終連の〈死者は 死んだ〉という詩語にも魅了された作品です。




会報『ヒロシマ・ナガサキを考える』96号
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2010.1.1 東京都葛飾区 石川逸子氏編集 200円

<目次>
三重野杜夫の最期 P2             アンバル・パストの詩 P19
初代ゴジラと高良とみ(高良留美子) P23    元特攻隊員の願い(信太正道) P26
小川哲史詩篇 P38




 
片道橋/小川哲史

橋が鳴く
呉の街角を流れる川
緑川に架かる小さな橋
風の吹く日はひゅるひゅると
ひゅるるひゅるると橋が鳴く

橋が泣く
橋とはいうも名もない土橋
橋桁欄干かげ薄く
雨の降る日はしとしとと
しととしととと橋が泣く

橋が啼く
土橋を渡ると呉の駅
海軍軍属の発つところ
雪の舞う日はしんしんと
しんししんしと橋が啼く

橋が哭く
土橋を渡って征ったきり
戻って来ることのなかった父
桜の散る日はひらひらと
ひららひららと橋が哭く

 「小川哲史詩篇」から紹介してみました。最終連の〈土橋を渡って征ったきり/戻って来ることのなかった父〉というフレーズから、タイトルの「
片道橋」が付けられていると思います。“なく”にも各連での工夫があって、よく考えられた詩だと思いました。






   
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