きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.4.28 富士・芝桜




2008.5.5(月)


 拙宅に、姪が午前中に遊びに来たときは、子供の日だからかな(^^; と思いましたけど、30近くになればそれはないでしょう。午後からは弟夫婦が遊びに来ました。弟と酒を酌み交わしてと思いましたが、運転をするそうで断念。どうということない話をして帰りましたけど、まあ、それでいいんでしょう。
 そうか、世間は5月連休なんだ! 頭では分かっているつもりでも、やはり実感がありませんね。親戚が訪ねてきて、やっと思い至るこの迂闊さ。昔なら一族の長としてふんぞり返っていなくてはいけない立場なんでしょうが、根が軽いからそれは出来ません。みんなが来て、そうか連休か、と思うのが関の山のようです。



大橋政人氏詩集『歯をみがく人たち』
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2008.5.1 群馬県前橋市 ノイエス朝日刊 2000円

<目次>
朝の言葉 8                チューリップ壊れた 12
春の花 16                 蕾について 20
チョウチョ 24               春 28
春の悲しみ 32               噛むようにして 36
石田さんちの酔芙蓉 40           観察 44
土と梅 48

「特になし」 52               歯をみがく人たち 56
下から上へ 60               一枚の写真 64
赤い火 72                 サブちゃんとミッちゃん 72

命座 76                  正しい山 80
時間だって 84               ダイコンはエライ 88
進化について 92              ナンデモアリ 96
宇宙暦 100                 確定 104



 朝の言葉

まあ、花はえらいね
いろんな色に咲き分けて

隣に住んでいる
田之倉トメさん、八十九歳
毎朝、勝手にわが家の庭に入ってきて
ひとまわりして出ていく

手作りの
袖なし着物とモンペ
外猫ユーちゃんを
後ろに従えて

花はえらいもんだよ
だれが色を塗ったという訳でもないのに

毎朝、同じことを言っているのに
本人はそのことに気づかない

毎朝、同じことを聞いているのに
聞いてる方も聞き飽きない

いつ聞いても
新しい
朝の言葉だ

 花が「いろんな色に咲き分け」たり、「だれが色を塗ったという訳でもないのに」綺麗な色になるという発想も面白いのですが、「毎朝、同じことを言っているのに/本人はそのことに気づかない」し「毎朝、同じことを聞いているのに/聞いてる方も聞き飽きない」という「新しい/朝の言葉」は、視座も新鮮な作品です。
 タイトルポエムの
「歯をみがく人たち」はすでに拙HPで紹介していますので、ここでは巻頭詩を紹介した次第です。他に「ナンデモアリ」を拙HPで紹介していました。いずれもハイパーリンクを張っておきましたので、合わせて大橋政人詩の世界をお楽しみください。



詩誌『きょうは詩人』10号
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2008.5.5 東京都世田谷区
アトリエ夢人館発行 700円

<目次>
●詩
さくりゃく/長嶋南子 1          ビーフジャーキー/長嶋南子 2
車中にて/伊藤啓子 4           シノダ君/鈴木芳子 6
ギター弾きの歌/吉井 淑 8        豆が煮えたら/森やすこ 10
泣きながら/森やすこ 12          春 探偵/小柳玲子 14
公園/赤地ヒロ子 16            道で/赤地ヒロ子 17
●エッセイ
探偵 19
花は散るモノ人は死ぬモノ10――そばにゐてよ 吉原幸子/長嶋南子 25
表紙デザイン 毛利一枝
表紙絵 リチャード・ダッド (C)
Reiko Koyanagi



 さくりゃく/長嶋南子

仕事をやめた
夫も亡くなったので未亡人でいく
いろけ
くいけ
おかね
じかん
主婦よりも割がいい
もっとしおしお歩きなよ
触れたら落ちるからね
っていったら
またうそばっかと友だちは笑う
親はなんども殺してきたし
男をとっかえひっかえしたとか
出たくない会合にはいいわけじょうず
うそばかりついてきた
これからは本音でいく
と また自分にうそをつく

 詩作品ですから実生活と採る必要はありませんけど、「未亡人でいく」のは保険金や年金を考えても、たしかに「主婦よりも割がいい」のかもしれませんね。この作品のタイトルは策略≠ナすから、その策略とは何かと考えると「うそばかりついてきた」ことと採れそうです。その嘘をやめて「これからは本音でいく」と言いながら「と また自分にうそをつく」ことがおもしろい処で、それも策略≠ネんでしょう。二重・三重構造になっている作品だと思いました。



隔月刊詩誌
『サロン・デ・ポエート』
273号
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2008.4.25 名古屋市名東区
中部詩人サロン編集・伊藤康子氏発行 300円

<目次>
作品
春の朝…横井光枝…4            明日を叩く…野老比左子…5
春 何を…小林 聖…6           北冥へ(一)…みくちけんすけ…7
客…阿部堅磐…8              つぼみ…高橋芳美…9
崇高な現実…足立すみ子…10         義母の一周忌を前に…荒井幸子…11
三月十九日…伊藤康子…12
散文
MMW主宰第2回「2008名古屋朗読会」<発火域> レポート…阿部堅磐…13
詩集「鮮度のいい日常」を読む…阿部堅磐…14
葛原りょう詩集「魂の場所」を読む…阿部堅磐…15
同人閑話…諸家…16
詩話会レポート…18
受贈誌・詩集、サロン消息、編集後記
表紙・目次カット…高橋芳美



 春の朝/横井光枝

今日の太陽が雲間から顔をのぞかせている
真新しい朝をいっ気に呑みこむと
私の背中に翼が生える

土手を歩く足が軽くなる

近くの学校の女生徒たちが
―おはようございます―
元気良く私の傍を通り過ぎていく

少女達の息遣いからは
甘酸っぱい未熟な桃の香りがするような

私の周りに解き放された透き通った風が
流れてゆく

冬の間 繋がれていた紡い舟を
今朝は男が上手に櫓を操って
下って行った

水面を一羽の白鷺が波紋を描きながら
翔び立っていく

鳥も舟も人も私も朝の風景の中で
息づいている春の朝

 「私の背中に翼が生える//土手を歩く足が軽くなる」というフレーズに「春の朝」を感じさせる作品です。第4連の「少女達の息遣いからは/甘酸っぱい未熟な桃の香りがするような」というフレーズにもそれは言えますね。最終連の「鳥も舟も人も私も」とも≠続けたところも意表を突いていておもしろいなと感じました。



   
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