きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.5.16 新潟・大棟山美術博物館(坂口安吾記念館)




2009.6.12(金)


 制作依頼本『見捨てられた人々』の初校を印刷所に返しに行きました。170頁ほどの校正を原稿と首っぴきでチェックするのは、正直なところシンドイ仕事です。なぜシンドイかと言うと、内容を愉しむのではなく、文字面を見るからなのでしょう。内容に入り込むと文字面を忘れて読んでしまいます。そこで校正は文字だけを追うというのが肝要になりますけど、根が小説好きですから大変、という次第。でも、そのシンドさを通り越せば、あとは楽しくなりますね。良い本に仕上げたいと思っています。




安英晶氏詩集『虚数遊園地』
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2009.5.31 東京都新宿区 思潮社刊 2200円+税

<目次>
T あそび場から
誕生 8        紅梅 10        銀河 14
ゆめ(の庭から 18   時間 22        藤 26
ほたる 30       朝顔 34        五月 36
野あざみ 40
U 遊園地
メリー・ゴー・ラウンド 44           観覧車 50
ジェットコースター 56 コーヒーカップ 64   博物館 72
水族館 80       ゆうえんち 86
装幀=思潮社装幀室




 (帯文より)

あが咲いて
ふが笑って
ほら かき分けてくる
(なにを?

ジェットコースター、コーヒーカップ、メリー・ゴー・ラウンド…。
ゆめとうつつのあわいを行ったり来たり、ここは、生者と死者が戯れる、幻の遊園地。

*本詩集中の
「朝顔」「観覧車」「コーヒーカップ」はすでに拙HPで紹介しています。一部改訂されている作品もありますが、ハイパーリンクを張っておきました。どうぞご鑑賞ください。




個人誌『翁と媼』創刊号
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2009.5 埼玉県所沢市 木村徳兵衛氏発行
非売品

<目次>
翁と媼………………3  牛の恩恵……………7  雲煙…………………10
麦秋便り……………13  あとがきにかえて…15




 
翁と媼
     ――安保条約の底知れぬ密約
()

シュル シュルルル間断ない着弾
(あか)いナナカマドは揺れ 人柱の炎は翔ぶ
爆風 爆音 茜色に燃える爆
(ばくえん)を薙ぎる
古き時代、富士山の噴火の背景は裾野地区の酷肖
(こくしょう)

――覇権国の中東への軍事侵略
子供 老人 善良な市民を巻き込む
激闘の戦禍 戦渦 苦々しい凄惨なテレビ映像――

演習場の着弾地を抱える裾野地区の農民
生活と環境の変化
雪解けの流麓は枯れ
干し大根 みず菜の漬物を囲む抒情は消え
刺々しい顔 荒れ狂う跂舞
暗く重苦しい 荒涼の日本の基地
鉄条網を射
()る流弾
薬きょう拾い生計を支える農民
流れ弾に傷付く人 尊い生命
(いのち)を奪われる犠牲者
基地を巡る数々の社会問題 苦渋の憤怒

演習場の拡張で土地は強制収容され
(※※)
頼る夫を第二次大戦に召集 南方戦で玉砕
涙の帰還。
空虚な境涯の回廊を彷復う媼
(おうな)
(おきな)の位牌に手を合わせ 平常心を養う日々
ある朝
媼の肌を逆なぜる イリュージョンの衝撃
――何事が起こっても田畑を守ってくれ―

シュル シュルルル銃砲弾の火塊 炸裂 爆雲炎
鉄条網を隔て身構え 演習場の脅威に立ち向かう
「土地を返せ」「基地を返還しろ」
プラカードを高く掲げ 労働
(たたかい)讃歌をうたう媼の姿

秋の深いある日
警備の自衛官と目線の符合
―老いぼれ 流れ弾で早くくたばれ―
……
煮え滾
(たぎ)るどろどろの腸(はらわた)を叩きつけ 峻酷(しゅうこく)の睨み
格調の高い旋律を口遊み 弄
(もてあそ)ばれた心を宥だめる

シュル シュルルルロケット弾の炸裂
日米軍事実弾射撃合同訓練
(※※※)
アメリカ追随の日本 巨額な思いやり予算の浪費
生活費を切り詰め 苦渋の国民の血税だ
一日数十億 数百億円は米軍、自衛隊の火遊びに注ぐ

……激動を生きた翁の幻影 媼の玄風の舞い……
……時代錯誤か! 皇軍の進軍ラッパ轟く……

――基地の恒久化を許すな――
――返還まで頑張るぞ――
媼の握り拳は宙
(そら)を突き 欝積(ろうせき)と憤懣(ふんまん)
熱く強い唱和は
紺碧高々と響く

おぞましく潜む
金縛り……
国民に突きあたっている

※※※全国から構鋭自衛官・最新鋭武器など動員
 ※※一九八四年六月号「詩人会議」掲載「おたね婆さん」を修正・改稿
  ※国際間題研究者・新原昭治先生が米公文書館で米政府解禁文書を発見。安保条約の日本の対米従属の底知れぬ密約の数々を一九〇八年四月の同会会合にて報告

 あとがきには〈大正二桁数字〉とありますから、80歳を超えての個人誌創刊号です。あとがきはさらに次のように続きます。
<社会の荒廃、人間の凋落、これらを何処かで堰止め変えなくてはならない信念が個人誌「翁と媼」(爺と婆)を編むことに繋がりました。>
 ここではその誌名となった作品をご紹介します。中学生時代に東富士演習場に入り込んで〈薬きょう拾い〉で遊んでいた時代と重なります。〈おぞましく潜む/金縛り……/国民に突きあたっている〉のは現在でも変わりありませんね。今後のご発展を祈念しています。




護憲詩誌『いのちの籠』12号
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2009.6.15 神奈川県鎌倉市    350円
羽生氏方・戦争と平和を考える詩の会発行

<目次>
【詩】
渦巻く雪のなかで‥フイリップ・ジャコテ(後藤信幸訳)6
問‥崔 龍源 7                ポクシハルモニの帰郷‥李 美子 8
白い雲‥中 正敏 10              指‥水川まき 10
夢に見ない町‥石川逸子 12           花園‥掘場清子 13
荷を背負って‥馬場晴世 15           韓国イラク反戦・平和詩選集紹介(5)‥佐川亜紀訳紹介 16
その男と産道‥渡辺みえこ 18           子供を抱いて死んだ母に(洪一善)/光化門で(朴ヨンヒ)
にぎりめし‥島崎文緒 19            花火‥甲田四郎 20
彼岸越えての雛人形‥森田 進 22        戦争風景‥瀬野とし 22
詩に書くんか‥麦 朝夫 24           くつした‥日高のぼる 24
人間の学校 その139
.‥井元霧彦 36        迷妄のなかの少年G‥大河原巌 37
パズルの完成‥白根厚子 38           未知−いまだしらず‥山野なつみ 39
土星‥奥津さちよ 40              街道‥池田久子 41
桜散る日に‥横田英子 42            母の手‥山田由紀乃 43
何かが変わった‥稲木信夫 44          洞穴の夢‥うめだけんさく 45
ポリオの少年‥伊藤眞司 46           蝙蝠の棲む山へ‥ゆきなかすみお 47
「大詔奉戴日」の再来が招くもの‥池田錬二 48
.  生命の尊厳にかかわること‥築山多門 49
海の墓場 その2‥南條世子 50         山は生きている‥竹内 功 52
あなたは叱りつけてもいいのだ‥原子 修 53   語りまくれ‥おだじろう 54
魅惑する言葉‥比尼空也 55           記憶はどのように保持されるか‥羽生康二 56
【エッセイ】
日本国憲法を読む(第11回)‥伊藤芳博 2     「卵を割る壁」の側にならない(「反戦反核映画」考)‥三井庄二 26
継続可能な世の中を‥吉光 悠 28        慰問袋‥篠原中子 30
手話でつなぐ青年九条の会と詩‥佐相憲一 32   続続〈教科書墨塗り世代〉の思い‥若松丈太郎 34
あとがき‥57                  会員名簿/『いのちの籠』第12号の会のお知らせ‥表紙裏






   
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