きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
090904.JPG
2009.9.4 筑波山・ガマ石




2009.10.30(金)


  その1

 プロバイダーのNiftyから下記のようなメールが届いて、驚きました。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 突然の連絡で誠に恐縮ではございますが、お客様が@homepageサービスを利用して開設されている下記のホームページにつきまして、ご連絡させていただきます。
【URL】
http://homepage2.nifty.com/GOMAME/
 上記ホームページに対するアクセス集中により、システムに対する負荷が増大し、この状態が継続した場合はサービスの提供に支障をきたす恐れがあると判断いたしました。誠に恐縮ではございますが、@homepage利用規約に基づき、急遽10月30日(金)13:02より、翌朝04:00まで、当該ホームページを閲覧できない状態(アクセス制限)にさせていただきました。何卒ご了承ください。つきましては、お客様側でアクセス軽減につながるような対策(例えば、画像を多用するコンテンツやサイズの大きいファイルの削除等)を講じていただければ幸いです。
 今後とも@niftyをよろしくお願いします。   ニフティ株式会社

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 何だ、こりゃ!? というのが実感です。こんなことは初めてで、さっそく拙HPにアクセスしてみると、確かに見られません。〈
アクセス軽減につながるような対策〉をしろというので、HP使用量が契約を超えているのかなと思いましたが、300Mの契約に対して、現在は40%ほどで、原因ではないと判断しました。あとは誰かが悪意の〈アクセス集中〉攻撃をかけているか、単なるNiftyのミスか…。いずれにしろ明日の午前4時過ぎにどうなっているか確認しようと思いました。

 で、「明日」の朝(^^; HPは元通りになっていました。私に誰かが攻撃をかけるというのは考えにくいし、そんなことをしても何のメリットもないでしょう。拙HPが存在しようがしまいが、世の中は淡々と流れて行きます。たぶんNiftyのミスでしょう。
 でも、この間に拙HPを訪れてくれた人には迷惑をお掛けしたようで、深謝いたします。何人かに、どうなっているんだ!とお叱りを受けました。はっきりした原因をNiftyに確かめていませんけど、まあ、発展途上のインターネットではいろいろあるわなとご海容ください。でも、本当に〈
アクセス集中〉して困るほどのHPになってみたいですね。




柳原省三氏詩集『航跡消えずして(2)
koseki kiezushite.JPG
2009.11.1 愛媛県今治市 私家版 非売品

<目次>
美しい人よ       密航少年        アデン湾の海賊
二匹の魔物       人生で一番辛かったこと お父さんは偉い
女性の友への手紙    記憶          追悼詩集
感情の細胞       鳥           鳥インフルエンザ
バードストライク    新しい関係       猪がやってきた
ああーっ        霊のいる砂浜      幽霊
骨           かまいたち       黄昏時の海岸線
臓器移植とミミズ    夢の話         落ちる
あとがき




 
美しい人よ

容姿の美しい女性は心も美しい
外容整えば内容もそれに従うと
力説していたのは船の嫌われ者船長
船の長になれば
人間性も一番勝れていると
暗に部下にいいたかったらしい

そんな傑出した二人の船長がいて
当社の嫌われ者両横綱は
猛烈にお互いの悪口を言い合っていた
一方こそ社内一の嫌われ者であり
反対に自分には人望があると
口答えできない部下に主張している

部下から見ればどっちもどっち
心の中であざ笑っているのだが
それでも微妙に好みをつけていた
両者の共通点は上にへつらい
下にやたらに威張り散らすこと
根っからの軽薄人間である

けれどもこの世に栄えるのは
どうもそんな人間であるらしい
部下思いの人望のある船長は
会社が安い外国人船員を雇用するため
真面目に働く部下の首切りを始めると
部下を守って真っ先に首を切られた

 著者の第7詩集です。手作りながら丁寧な造本で、著者のきちんとした性格まで解るように思いました。紹介した詩は巻頭作品で、〈容姿の美しい女性は心も美しい〉のと同様に、〈部下思いの人望のある船長〉も美しいのだなと思います。男の場合はえてして、容姿がそれほどでもないのに心が美しいという場合が多いようですけどね。
 本詩集中の
「密航少年」はすでに拙HPで紹介しています。ハイパーリンクを張っておきましたので、合わせて柳原省三詩の世界をお楽しみください。




日漢語対訳精選 大貫喜也詩集』
ohnuki yoshiya shisyu.JPG
2009.8 中国南京市 訳林出版社刊 18.00元

<目次>
自序 大貫喜也
第一章 野火の記憶
八月 2        歩哨 6        たこつぼ 8
降伏 10        銃器 14        廃墟 16
さくら 20       渇き 22        少年と鳩 26
声 28         野火の記憶 30
第二章 北海道景物礼賛
詩の街 36       二度と戻らないあなたへ 38
朱の道 42       星座 46        鳥たち 50
こんな日には 54    白樺 56        五月の小さな鐘 60
白い花 62       赤い花 64       アカシア 66
YOKOSO/ソーラン祭り
.70 晩秋の遁走曲 72    サロベツ原野 76
札幌の冬 80
第三章 人生の旅
人生とは 86      生きる 88       失せもの 92
狼少年 94       模写 98        こぶし(辛夷) 102
座標 106
.       天と地と羊の里 110
第四章 世界はいま
世界はいま 114
.    成り果てる 116.    日に何度も 118
負の遺産 122
.     コスモス(宇宙) 124
・解説・
詩人大貫喜也的世界 羅興典 128




 
人生とは

人生とは決断につぐ決断の
危うい積み木

小さなことから大きなことまで
くる日も来る日も

ぎりぎりまで延ばし考えあぐねて
最後にえっままよっと
サイコロを一つの方向になげつける

右へ行けば地獄
左へ行けば極楽
と図式のようにはいかない

潰えかけた夢
失いかけた方向を
きわどく修正して

他人には見据えられた結末でも
ご本人は濃い霧の中の
手探りの

 中国・南京市の訳林出版社から刊行してもらったという、何とも羨ましい日漢語対訳詩集です。本著は目次も含めて全て対訳になっていますが、漢語のほとんどの表現が難しいので日本語のみを記載しています。ご了承ください。ここでは第三章・人生の旅から「人生とは」を紹介してみました。〈人生とは決断につぐ決断の/危うい積み木〉という詩語が斬新だと思いました。
 なお、本詩集中の
「失せもの」はすでに拙HPで紹介していますので、ハイパーリンクを張っておきました。合わせて大貫喜也詩の世界をご鑑賞ください。




詩誌『エウメニデスU』35号
eumenides 35.JPG
2009.10.30 長野県佐久市 小島きみ子氏発行 500円

<目次> ペン画 小笠原鳥類

魚の化石、恐竜の化石 4 小笠原鳥類      夢の男 8 川口晴美
フィローノフの時空 10 たなかあきみつ     声の痣 12 たなかあきみつ
もしもあの時 14 相沢正一郎          黄昏時を過ぎて 16 春木節子
月の光が射しているのに 18 金井雄二      妹が泣いています 20 金井雄二
黒い鳥族の羽毛だった 22 小島きみ子
詩集評
失くしたものの声がする夏 26 小島きみ子
T 吃音から、告白を過ぎて、エデンまで     U 現実と虚構の、聖「ジャガー」というエクスターゼ
書評
「光」との邂逅 39 小島きみ子
「神への問い ドイツ詩における神議論的問いの由来と行方」ベルンハルト・ガイエック著・川中子義勝 編・訳
編集室 44




 
黒い鳥族の羽毛だった/小島きみ子

1 魔女の一撃

急性腰痛です。小早川整形外科病院のレントゲン技師の木元さんに
よれば、西洋ではこれを「魔女の一撃」と呼ぶそうです。「わたし
に任せてください」「辛かったでしょう わたしでよければどうぞ
掴まってください」という言葉は注射よりも効果があった。ドクタ
ーは「選択してください 痛みにつきあうか 脊椎のブロック注射
をやるか」と言うので痛みにつきあうことを選択した。

2 鳥の淵

もう六時だった。家へ帰らなくちゃ。黄昏時の光線が部屋をケルメ
スの虫色に染める。二階の窓から空を見ると、三本の電線に黒い太
った鳥族がびっしり止まって囀っている。きょうは石をぶつけられ
ることもなく、猟師に発砲されることもなく、いい加減にしてよ、
と思う頃には静かになる。心得ているんだな、きっと。人間の傲慢
さを、あるいは鳥の領分を。鳥は、鳥である故に鳥の過ごし方によ
って空の鳥の淵に吸い込まれて行った。

3 いちばん痛いところ

本元さんに「アソコヘ行きたいのですが」と言うと「ココですよ」
と言われた。なんだ、ココはアソコだったのか。レントゲンの台の
上で「移動します わたしに任せてください」と再び木元さんが言
った。もう、処置室へ移動して、ナースが来てコルセットを巻いて
くれている。「いちばん痛いところ」にモーラステープを貼ってく
れた。眠くなるので注意の、痛み止めを飲むと、もうなんだか眠く
て起きていられない。部屋で鏡を見ながら髪を梳かすと、ベッドに
横たわった。「これがわたしで無くて誰であろう」と納得すると、
自己の自己自身がわたしの中に戻ってきて、いつもの人類の淵へ戻
れた。

4 (つばさ)で
岸邊から小船を漕ぎ出そうとすると、「わたしも乗せてください」
と、(つばさ)で話しかけてきた。 「もう船には 万物を乗せまし
た」と応えると「わたしは詩です」とその黒い点が少し羽ばたいて
見せた。はや、空は暗くなって松明を焚いて、すぐにも漕ぎ出す決
意をしなくてはならない。「この船は(今のわたしたち)という漂
流船です 今日の世界情況に安全地帯などなく 人類の もとのと
ころに根付いていることは何かを」「それはポエジー それ以外の
ものはない」 とその黒い輪郭は、 夜の川に投げ出された漂流物を
(つばさ)の先で示したのでした。

5 黒い鳥族の羽毛だった

そのとき、水底でわたしを見ていた「貌」があざやかに飛翔した。
見事なパ・ドウ・ドウだった。もう、彼は舞い降りることはない、
と思われたのに。 まだ遣り残したことがあった というように、
「貌」はいままで見たことのなかった(こえ)でわたしの眼を覆っ
たのだ。わたしは盲目だった。(こえ)に穿たれたわたしの眼はも
う何も聴こえなかった。(こえ)に向かって手を差し伸べたのだが
もう、触れることができなかった。掌を何かが穿つようだった。な
んという深緑だろう。浮き上がった掌に(こえ)が穿たれているの
だ。次々と物の輪郭がわたしの掌に訪れた。したしげにわたしの魂
に触れてぴったり交わろうとする。やわらかく深くわたしに浸ろう
としてきたそれは
Parole! いや。違う。(Luciferだ!) 途端に
「貌」がわたしを覗き込んだ。眼の中をテロップが流れている。読
むことができない。落ちてくる光のつぶが速過ぎるのだ。けれども
掌は欲望している。もっと穿たれたいのだ。掌から溢れるおびただ
しい鮮血を「貌」は呑み込むと同時に吐き出して、血を釘のように
打ち付ける。点々と点々と滴るそれは、あの電線に止まっていた黒
い鳥族の羽毛だった。

 〈レントゲン〉で見た〈急性腰痛〉を〈「魔女の一撃」と呼ぶ〉のは、その形が鳥に似ているからかもしれません。痛みですからレントゲンでは見えないはずですが、骨のズレなどを見ているのでしょうか。本来はドイツ語で、現在は英語でも同じ表現をするようです。日本語ではぎっくり腰。そこから〈鳥の淵〉、〈人類の淵〉へと展開するところがおもしろいと思います。〈(つばさ)で話しかけて〉くる鳥、〈(こえ)でわたしの眼を覆〉う〈「貌」〉など、まさに〈ポエジー〉を刺激する作品だと思いました。






   
前の頁  次の頁

   back(10月の部屋へ戻る)

   
home