きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2010.3.18 早稲田大学・演劇博物館 |
2010.4.16(金)
西さがみ文芸愛好会の会報原稿〆切日。今回から編集長を替わっていただいたので、私がすべてを把握しているわけではありませんが、だいたい集まったようです。あとは20日の事務局会議で素案の了承をもらって、24日に印刷・発送予定です。思った以上に順調に推移しそうです。
○新・日本現代詩文庫75『鈴木哲雄詩集』 |
2010.4.10 東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊 1400円+税 |
<目次>
詩篇
詩集『白い風化』(一九七一年)抄
避雷針・8 それだけの・9
霧中行・10 白い風化・10
二月・11 カミキリムシ・12
隕石・12 顔・13
白の少女・14 鎮魂歌・15
詩集『あかさたな万華』(一九七八年)抄
罌粟・17 樵・18
尾花の丘・19 そら・20
紫蘇をしぼりに・22 鐘の音・22
名食い虫・23 天の川・24
神を飼う男・25
詩集『太陽はまだ高いのに』(一九八五年)抄
太陽はまだ高いのに・27 吃る時間・28
Sの眼鏡・29 樹々たちの離反・31
死ねない男・32 寒夜・33
毛糸の玉・34 夏の記憶・34
出目金・35
詩集『蝉の松明』(一九九二年)抄
T
蝉の松明・37 刺青・38
野火・39 樹も・40
陽炎の森・41 森の悪寒・42
氷の城・43 ふゆのうた・45
欅島・46 羊歯島・48
毒の木・49 ハーメルンの森・50
U
飢えを買う人たち・52 自転車の島・53
V
やさしさ中毒・55 風・57
母の唄・58 背の記憶・59
アバリン パラドックス・60
詩集『やさしさ依存症』(一九九九年)抄
序章
創世幻想・62 氷山の断章・64
T やさしさ依存症
冬の銀河・65 異界の夜・67
はるの窓・69 鳩の男・70
殺意の扇風機・71 小さな背中・72
夏の雲・74 あいさつ依存症・75
五月の男・77
U 塔のうた
塔・79 紙の塔・80
飢餓の塔・81 地の怒り・83
詩集『途中橋』(二〇〇一年)抄
T 痛都市(いたみまち)
隠し絵・84 リース息子・85
少年S・86 発火域・87
風聞の海・88
U 笑う少女
父の石瑠・89 痛みの選択・90
花筏・92 笑う少女・93
V 痛橋(いたみばし)
途中橋・95 吊橋夕景・96
人橋渡河(ひとばしとか)・97 痛鳥(いたみどり)・99
詩集『神様だって』(二〇〇七年)抄
T 蛍平(ほたるだいら)の夜
切り岸・100. 呼ぶな・102
蛍平の夜・103. 山吹の海・104
歩く携帯電話・106. 映っていない・108
風景断章・108
U 神様だって
曙の境界・111. アマラとカマラ・112
ミンパイ・114. 表と裏・115
断念・116. 神様だって・117
ソラの風・118. 秋の手紙・120
蛇行川・121
エッセイ・小論
母への恋歌・124. ボギー車の風景・125
かけいさんの詩嚢(二)・127 宝ものの賀状・130
「辛口診断」から五篇
ユーモア万歳・133. 怒った方がいい・134
安易にさわるな・135. 魂はまだ来ていない・135
蛍の知恵・136
黛元男詩集『骨の来歴』が照射するもの・136
解説
柏木義雄 生滅の風景を旅する――痛みの美学・144
中村不二夫 受難者の詩と思想・150
年譜・158
避雷針
空につき出た古い塔の先端で俺は惘然とつっ立っ
ていた
いまさらどんな言葉も不要であった
ふかあい空
ぬれた森
眼下に倒れ伏す大樹の裂け目が 朝のひかりに屈
辱的な自さを晒している
待つ とは一体どんなことだったんだろう
これまでのながい季節の日々 俺はそのときのく
るのを待っていた 地平にそびえ立つ白光の雲の
峰の彼方からかすかなとどろきが伝わってくると
身を震わせ からだを熱くして奴のことばかりを
考えていた だから昨日 暗くなって横なぐりに
風雨がつのってくると もはや疑いをもたなかっ
た
近づいてくる閃光
嘆きおののく幾千の樹々
俺をつらぬく強烈な神の落下――の期待の中でひ
たすら直立していたのだ
だがいま 俺は満たされなかったペニスのように
とり残されている
ぬれた森
ふかあい空
そしてこの完全に見える空のいたるところに青白
い無数の亀裂が走っていたのを 真っ暗な地上に
立った豪華な火柱の記憶を 悪夢のように反袈し
ているのだ
俺の存在を吹き抜けていく一陣の風
1971年の第1詩集から2007年の第7詩集までの抄録と、エッセイ・小論を集めた文庫です。ここでは巻頭となった第1詩集の「避雷針」を紹介してみました。いまから40年以上前の、著者36歳。すでに円熟した作風を感じ取ることができましょう。また、避雷針をテーマにした詩は初めて見たように思います。眼のつけどころがお若いうちから我々とはちがっていたとも感じました。
本文庫中の『途中橋』から「人橋渡河」、『神様だって』から「神様だって」はすでに拙HPで紹介しています。ハイパーリンクを張っておきましたので、合わせて鈴木哲雄詩の世界をご堪能ください。
○詩誌『SPACE』91号 |
2010.5.1
高知県高知市 大家氏方・SPACEの会発行 非売品 |
<目次>
詩
妻/尾崎幹夫 2 メス/山川久三 4
涙/秋田律子 6 茉莉花/大岸真弓 8
煙突として/中口秀樹 10 多重人格論/南原充士 13
説得/木野ふみ 16 夜の境界線/松田太郎 18
ぬくもりのない家/山下千恵子 20 烙印/指田 一 24
§
忘れ物/中上哲夫 42 木の芽立ち/かわじまさよ 44
HALよ 来い/弘井 正 46 善意/高岡 力 48
あいのうた/近澤有孝 50 回り燈籠の絵のように(16)/澤田智恵 52
還暦(4)/中原繁博 60 ふらふらとする蚊/豊原清明 62
別離/筒井佐和子 64 母と子/萱野笛子 66
夢のなかで/日原正彦 69 謹慎/大家正志 72
詩記 ちいさな旅/山崎詩織 21
俳句 内田紀久子 26
短歌 大石聡美 28
エッセイ 袋/山沖素子 32
シナリオ 白黒目/豊原清明 34
コント 猫じゃあるまいし/近澤有孝 36
編集雑記 大家 76
ぬくもりのない家/山下千恵子
道の向こう側に見える家
老夫婦が住んでいる
最近 洗濯物が見えない
人の出入りもない どうしたのかしら
さきの頃 おばあさんが杖をついて
買物に行く姿がよく見られたが
庭の桜の花が満開だ
つつじが咲き あじさいが咲き
夏には浜木綿が咲く
塀の上をのらねこがのんびりと歩いている
私たちはその家の前を通るとき
無言で歩く
口にしていけない言葉があるからだ
息をひそめて姿を消して通るのです
なぜ〈私たちはその家の前を通るとき/無言で歩く〉のかと思ったら、〈口にしていけない言葉があるから〉でした。家屋とは不思議なもので、たしかに誰も住まなくなったら〈ぬくもりのない家〉になってしまいます。そんな家屋の不思議を見事に詩化した作品だと思います。
○季刊・詩と童謡『ぎんなん』72号 |
2010.4.1
大阪府豊中市島田氏方・ぎんなんの会発行 500円 |
<目次>
いつかは/ごごのゴリラ 小林育子 1 吉報/節分 相良由貴子 2
おなかふうせん 島田陽子 3 お日さま/もみじ すぎもとれいこ 4
なみだ/風に揺れる花 滝澤えつこ 5 ゆきんこ兄弟/おばあちゃん病気 冨岡みち 6
おばあちゃんは大道芸人/水族館で 富田栄子 7 だいじなことば/小さな海 中島和子 8
友だち 中野たき子 9 川の顔/寅年 名古きよえ 10
ちかくで みると/はにわの馬 畑中圭一 11 おとなになって/春の山/さくらの木のように 藤本美智子 12
トンテン ボロロン ほてはまみちこ 13 だから となりで/ふわふわしっぽのテンテンテン 前山敬子 14
灯台の手 松本恭輔 15 どこからきたの/おやぶんってだれ/海 むらせともこ 16
あいうえおおさか弁 もり・けん 17 わらびのせいれつ/おきゃくさま 森山久美子 18
モグラくんに ごあいさつ/虹の橋 池田直恵 19 春どなり/かまど猫 いたいせいいち 20
ボク キャベツ シーチキン タマゴ 井上良子 21 深呼吸/虹さがし 井村育子 22
クロッカス/まぶた 柿本香苗 23 さざなみ かわぞええいいち 24
本の散歩道 畑中圭一・島田陽子 25
かふぇてらす 前山敬子 森山久美子 26 INFORMATION
あとがき 表紙デザイン 卯月まお
だいじなことば/中島和子
小さな子は
ことばを あまり知らないけれど
だいじなことばは
ぜんぶ知っている
わたしは
大きくなって
ことばを いっぱいおぼえたけれど
だいじなことばは
たくさんのことばに
まぎれてしまった
どこに
かくれてしまったのだろう
どこかに
きっと あるはずなのに
本当にそうだなと思います。語彙が少なければ少ないほど〈だいじなことばは/ぜんぶ知っている〉んでしょうね。逆に語彙が多いとポイントがズレてしまうことは日常的に体験していることでしょう。純粋に子ども向けの詩ではありませんが、子どもの心を取り戻す詩だと思いました。