きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2007.8.20 神奈川県真鶴半島・三ッ石 |
2007.9.21(金)
特に予定のない日。終日、いただいた本を読んで過ごしました。が、まだまだHPは遅れています。お礼も2週間遅れになっています。どうぞご海容ください。
○丸山全友氏詩集『裸電球』Part2 |
2007.10.1 香川県木田郡三木町 私家版 非売品 |
<目次>
夏のはじまり…五 走り雨…五 風呂木…六
赤…六 鳴き声…七 虫取り…七
蚊…八 雪かき…八 かくれんぼ…九
読書…九 夕焼け…十 蕎麦…十
命日…十一 秋の空…十一 墓参り…十二
冬…十二 はつもの…十二 利口者…十三
一つ屋根の下…十三 好物…十四 再会…十四
冬の夜…十五 梅雨の奔り…十五 幻影…十七
秋の夜長…十七 入院…十八 雷雨…十九
雨の降る朝に…十九 坂道…二十 夏の夢…二十一
戯れ…二十二 立春の朝…二十二 しきび…二十三
参観日…二十三 家族…二十四 情(じょう)…二十五
体息…二十五 埋まる…二十六 小言…二十六
小さな乗客…二十七 一度…二十七 三寒四温…二十八
晴耕雨読…二十八 二重丸…二十九 Uターン…二十九
再生…三十 春の声…三十 無情…三十一
伝承…三十一 体業日…三十二 鶏頭…三十二
順番…三十三 省略…三十三 8月8月…三十三
田んぼ…三十四 満月…三十四 虫かご…三十五
耕運…三十五 不器用…三十六 自慢…三十七
帰ってきた祖父三十七 おやつ…三十八 核家族…三十九
無欲…四十 張り合う…四十 たかな…四十一
雪の夜…四十一 どんぐり…四十二 雨…四十三
嫁入り…四十三 彼岸…四十四 初笑い…四十五
森の中で…四十五 祖父の面影…四十六
後書き…四十六
情(じょう)
米や豆を干すと
二羽の鳩が食べにくるようになった
干さない時でも来て
牛小屋の前で牛の餌を拾うようになった
「こらっー、また食べくさって!」
その度にばあちゃんは大声で怒っている
ある日 野良猫が鳩に襲いかかると
「こらっー、鳩が死んでしまうが」
ばあちゃんは猫に大声で怒鳴っている
個人詩誌『一軒家』や他の同人誌に書かれたものを主としてまとめた詩集です。拙HPではすでに多くの作品を紹介しています。「風呂木」「秋の空」「冬の夜」「埋まる」「小言」「晴耕雨読」は同一ページにあります。他に「戯れ」「小さな乗客」「順番」「省略」「たかな」もあり、いずれもハイパーリンクを張っておきましたので、合わせてご鑑賞ください。原本から若干変わった作品もありますが、詩想は同じです。
ここでは新しく「情(じょう)」を紹介してみました。「米や豆」への「情(じょう)」が「鳩」に変わっていくところがおもしろく、「ばあちゃん」の人柄がよく出ている作品だと思いました。
○文芸同人誌『暖流』復刊11号 |
2007.9.10 静岡市駿河区 苫米地康文氏方事務局 江馬知夫氏代表・暖流文学会発行 500円 |
<目次>
◇カット 大澤弘叔 ◇目次写真〔漁港の春〕江馬
■詩■
老犬と半夏生…中村益造 2 見えなくなった目…松尾庸一 4
飛翔…江馬知夫 6 かなしみ…佐藤 隆 12
真っ赤な色で・他四編…吉塚はつ枝 32 そんな横砂・他六編…吉田直行 48
秋の晴れた日には・他二編…江馬知夫 53
□招待席□ 再読−賢治童話…板橋瑩治 13
■短歌■ 赤潮・白鷺…八嶋棗子 22
☆ 暖流サロン…佐藤・斗真・江馬 26
□記録風回想□ わが青春に悔いはあるのか(2)…佐藤 隆 8
■エッセイ■ 視る者として−朝-隅田川界隈−…安田萱子 37
□時評□ 世相を生み出す政治・他…江馬知夫 68
■創作■ バッタードリーム −同窓会始末−…斗真康文 56
★ 編集室の窓…斗真康文 70
◇執筆者・同人名簿 ◇会の規約(抄) ◇編集後記
飛翔/江馬知夫
〈いつも窓から見えるビルが
今は雨雲に覆われて何も見えません〉
ラジオから流れてきたアナウンサーの声
それは 二〇〇五年三月一〇日の真昼
今から六十年前は雨雲ではなかった
三百余の爆撃機によって立ちこめた炎と煙だった
それからの長い年月
振り返れば 瞬時に過ぎ去ってしまった時間を
思うがままに好きな道を歩きつづけた この国の人びと
気づけば 互いに人影は見えるが
呼びかけても どこからも返事は返ってこない
そんなある日 というより 昨夜のことだ
横浜駅のコンコースで見かけた二人の男
師弟のような年齢差だが そこには友情と信頼を感じた
その時 私の頭には京都の街が浮かんでいた
京都に住んだこともないのに何故だろう
生きていると 解らないことが多すぎる
解っても解らなくても 私の人生は変わらないだろう
そう思って
今まで沢山のものを失ってきたのかもしれない
いつだったか それは小春日和の午後だった
空港の屋上で飛び去っていく機影を追っていた
たちまち小さな点となって 青い空に融けていく物体を
小半日 飽かずに見つめていたものだ
多くの人びとが私から去っていったような気がした
沢山のものを失い 多くの人びとが去っていっても
その度に 昨日と何も変わらない自分がいることに気づくのだ
そして すべては幻影ではなかったのかと
いつの日か 私自身も
あの空に飛び立っていくだろう
青い色に染まり やがて 細かな粒となって
幽かにゆらぎながら融けていくだろう
これも 幻影であろうか≠ニ
誰にともなく問いかけながら
人生とは「多くの人びとが私から去ってい」くものなのかもしれません。そして「沢山のものを失い 多くの人びとが去っていっても」「昨日と何も変わらない自分がいることに気づくの」でしょうか。それは「三百余の爆撃機によって立ちこめた炎と煙」の過去を忘れ、「気づけば 互いに人影は見えるが/呼びかけても どこからも返事は返ってこない」「この国の人びと」の一員として、作者が代弁しているように思います。やがて「いつの日か 私自身も/あの空に飛び立っていく」になるわけですが、それも「幻影」、夢幻の一生を閉じることになります。しかし「師弟のような年齢差だが そこには友情と信頼を感じた」「二人の男」がいたことは忘れたくありません。それこそ夢幻だったかもしれませんけど、そこにこそ人生の意義があるように思えるのです。深く考えさせられた作品でした。
なお、本号では裏表紙の「図書の紹介」で拙詩集の宣伝をしていただきました。目に付くところに載せていただいて感謝しています。
○季刊詩誌『裸人』30号 |
2007.9.1
千葉県香取市 裸人の会発行 500円 |
<目次>
■詩
蝶・ちょう・チョウ−天彦五男 3 シャボン玉−禿 慶子 6
葉桜−長谷川忍 8
■エッセイ 吉野弘さんのこだわり−長谷川忍 10
■詩
男二人−くろこようこ 13 雪が降る−くろこようこ 16
スペインの思い出−水崎野里子 18 父に会いに行く−水崎野里子 22
■エッセイ
もったいない−天彦五男 26 組詩曲『横浜1947年』−大石規子 28
死線−五喜田正巳 33
■詩
窓の月−大石規子 34 水子−五喜田正巳 36
■雑記
受贈書・後記 39
表紙・森五貴雄
葉桜/長谷川 忍
艶やかな薄桃色の花弁と
瑞々しい緑の若葉が
まばゆい陽光の下で
互いに
寄り添っている。
やがて
小さな約束を
積重ねるように
次第に鮮やかさを増していく
若葉たち。
今朝
真新しいランドセルを背負った
子供の一団と出逢った。
通勤の私のかたわらを
颯爽と駆け抜けていった。
樹々から舞い落ちてくる
無数の艶やかさを
その頬で一心に受けながら。
「まばゆい陽光の下で/互いに/寄り添」い、「やがて/小さな約束を/積重ねるように/次第に鮮やかさを増していく/若葉たち。」。どれを採っても申し分のない表現です。特に「小さな約束を/積重ねる」という詩語が佳いですね。その若葉と重ねた「真新しいランドセルを背負った/子供の一団」。ここでは「その頬で一心に受けながら」「颯爽と駆け抜けていった」子供の姿が眼に浮かんできます。PTAの会報、あるいは新聞の新入学特集などで使いたいような作品です。こういう詩は、詩を書かない一般の人にも見てもらいたいものだと思いました。
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